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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第3章…鍛治コンテスト
208/434

205.商業ギルド…訪問見学

『……コウスケ……?物凄い疲れた顔してるけど大丈夫……?』

「……どうにか……?」

『まったく大丈夫じゃない……』


いつものように通信室でハルキと話をするためにテレフォンオーブを起動して開幕の会話がこれだ。


疲れた顔?

そりゃあそうだ。夕べはお楽しみだったものですから。


…主にマグが……。


俺は後半ほとんど抵抗らしい抵抗もできず、ただただマグに上半身の至る所をくすぐられたり舐められたりキスマーク付けられたり好き放題襲われてただけだから……。


うぅ……!

マグにはまだ大きい状態の息子を見せるわけにはいかなかったけど…あれはちょっと後悔した……!

とんでもない生殺しだった……!


好きな子に服(めく)られて、その上あっちゃこっちゃにちゅっちゅぺろぺろ……。

しかもガッツリ密着された状態で!


この子ズボン脱がすのは諦めてくれたけど、容赦なく俺の体の上に横になって乗ってきたから、それはもうガッツリとお硬いものをマグのお腹に当てちゃって……!

その上お腹舐めるときなんか、マグの膨らみかけのふにふにの間に挟まれて……!


しかもずっと嬉しそうな顔でこっちを見てくるの!

これマグ実は知ってるんじゃないの!?

その上で俺がこうして悶々としてるのを見てにやけてるんじゃないの!?って疑うレベルだよ!


うぅぅ……でも耐えた……。

耐え切りましたよ……!


背中にまでぺろぺろされて、上半身の半分がマグのものにされちゃったけど、それでもなんとか欲を抑えてやりましたよ……!


でももう無理だよぉ……!

理性がもうあるか怪しいよぉ……!


今だってマグの体なのに、物凄いムズムズして落ち着かないもん……!

いっそのことマグが寝てるうちにトイレで済まそうかとも考えたし……。


でもやっぱり子どもの体にそういう感覚を与えるのは早いし、それになんとなく睡眠○っぽくて駄目な気がするんだよぉ……!


今朝は体操とストレッチでちょっとすっきりしたんだけど、このままだとマジでマグのことを襲いかねない……。


そうなると普通に犯罪だし、何より、いくら襲う側に回ることもあるマグでも俺に…というか男性に恐怖を覚えてしまう可能性が……。


うぅぅ……!

でもこのままだとマジでヤバいしぃ……!


マグのことを襲うリスクを背負って我慢を続けるか、彼女が寝ている間に手早く済ませて応急処置を施すか……。


犯罪か倫理観の死か……選ばないといけないのか……?


…なんてことをマグの聞いてる前でハルキに相談するわけにもいかず……


「…大丈夫…大丈夫だから……」

『そ、そう……?何かあったら僕もマル子も相談に乗るからね……?』

『そうですよコウスケさん。あとマル子って呼ばないでください』

「…ありがとう……」


でもマグが起きてるときに相談するわけにはいかんのじゃ……。


(んふふ〜…♡昨日のコウスケさん…すっごく可愛かったですよ〜…?)

(うっ……)

(それに今までコウスケさんの肌ってあんまり見てなかったなって思って……ものすごくドキドキしましたし……♡)

(うぅ……)

(それにコウスケさんの体……とても(たくま)しかったですよ……♡)

「あぅぅぅ……!///」

『コウスケ!?どうしたの!?』

『急に赤くなってうずくまってどうされました!?』


マグにめっちゃ恥ずかしいこと言われましたぁ……。


大体逞しいなんて……俺はバイトやら学校やらに行きはしてたけど、それ以外はほとんど家でゆっくり趣味を謳歌してたんだから、体はそんな喜ぶほどしっかりはしてないと思う。

むしろ細いと思うんだけど……。


「ハルキぃぃ……早く本題を……俺に仕事をぉぉ……」

『う、うん…わかった……』


こんなのずっと食らってたら心が耐えきれなくなるぅ……!

仕事していろいろ考えないようにしないと……!


『あ〜…こほん……それじゃあ本題だけど、今日は商業ギルドに行ってほしいんだ』

「(商業ギルドに?)」

『そ。この間の試合の日に商業ギルドのマスターが来るはずだったんだけど、急な仕事が入って結局最後まで来れなかったって残念がってたし、確かこの前来た商業ギルドの人にも来てほしいって言われてたんでしょ?』

「あぁ、言われた言われた。試合が終わるまで待ってほしいとも言った」

『でしょ?そこのマスターも君に会うのを楽しみにしてたし、出来れば早いうちがいいと思ってね。それで今日は何か約束とかあるかな?』


なるほど。


(マグ、何か約束した?)

(いえ、何も無いですよ)

(わかった)


「特に無し。だから問題ないよ」

『そっか。なら後で迎えにいくから一緒に行こうか』

「ハルキも用事があるのか?」

『そりゃあ僕も商人の端くれだからね。商業ギルドに行くのは不思議じゃないだろう?』

「そりゃそうか」

『そうゆうこと。それじゃあそっちに向かうから、そろそろ切るね』

「ん、了解。また後でな」

『うん、また後で』


通信を切った俺はこの後のことを考える。


……絶対ショコラちゃんとパメラちゃんが騒ぐから、どう納得させるか考えないと……。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「わぁ……相変わらず大変そうだね……」

「そう思うなら助けてください……」


ぎゅむむぅ〜!


「ごめん無理」

「知ってた」


迎えに来たハルキと一緒に苦笑いする。

何故かと言うと、まぁ予想通りショコラちゃんとパメラちゃんがぐずったからだ。


通信室から戻って、ララさんに先週分の相談料(銀貨5枚)をもらったところで、昨日の余韻が残っている感じのルンルン楽しげな様子で出社してきた2人に俺が商業ギルドに向かうことを告げると、2人は「がーん…!」とでも聞こえてきそうなほどショックを受け、そして俺の腕にそれぞれ抱きついて、今に至るまでヤダヤダアピールをし続けていた。


ハルキが来てより一層抱きしめる力を強めた2人は、ぐいぐいと引っ張り、俺をハルキから遠ざけようとし始める。


強化魔法を使ってない状態で二人掛かりで引っ張られれば抵抗しても勝てないので、俺はずるずると引きずられていく。


「いや…2人とも……?一応仕事なんだけど……」


ぐいぐい


駄目だ…聞く耳持ってくれない……。


と、そこでハルキが2人に話しかけた。


「商業ギルドでやるのはモデルの仕事だよ。昨日発売された雑誌に載ってたようなことをまたしてもらうんだよ」


ぴくっ


おや?ハルキの言葉で止まったぞ?


「マーガレットちゃんには以前からまたモデルをやってほしいって声がかかってて、今日がその日なのさ」

「……綺麗な服着る……?」

「うん。マーガレットちゃんに似合う、可愛かったりかっこよかったりする服を着てもらうつもりらしいよ」

「……また本に載る……?」

「何枚か描いてから厳選する作業があるけど、確実に数枚は載るよ」

「「…………」」

「マーガレットちゃんはモデルだから、本が出来たらその見本を届ける予定だよ。だからそのときにいち早く見せてもらうこともいいんじゃないかな?」

「「……じゃあいいかな……」」


ハルキの説得によって2人が俺を解放した。


「ありがとう。それと、魔術ギルドにも見本は送るから、そっちでも見ることが出来るはずだよ」

「「…………(こくり)」」


目を合わせてから頷く2人に微笑むハルキ。


う〜ん……さすが商人……。

それか大人の力だな……。


「それじゃあ行こうか、マーガレット」

「はい。んじゃ、いってくるね2人とも」

「「…うん、いってらっしゃい」」


2人と他のギャラリーに見送られ、俺たちはようやく商業ギルドへ出発した。


「……人気者だねぇ……」

「はぁ……人気なのはいいけど、どこか行くって言うたびにああなるのは考えものだよ……」

「ははは……それはまぁ…ね……」


ハルキの苦笑いに俺はもう一度ため息を吐いた。


~〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「(ここが商業ギルド……)」


ハルキに商業ギルドのマスターの人柄を簡単に聞きながら、道中でいろんな人に試合のことを祝われながら歩き、そして現れた目の前の建物に俺とマグの声が重なった。


暗い黄色……オリーブ色…って言うんだっけ……?

緑寄りの黄色…といった感じの屋根のギルドだ。


これもまた他のギルドと同様に大きいのだが、その大きさは冒険者ギルドの次に大きいかもしれない。

あぁでも、医療ギルドも大きかったな……。どっちだろう……?


なんて考える俺をよそに、ハルキが何かを見つけた。


「ん……あれは……」

「…?何か見つけましたか?」

「……ギルドマスター見つけた……」

「(えっ?)」

「ほら……」


ハルキの指した方を見ると、ギルドの入り口に縦じまセーターの上に半そでジャケットを羽織った獣人の女性が立っており、その人がまっすぐにこちらを見つめているのを見るに、向こうもこちらに気付いているようだ。

どうやらあの人がギルドマスター…ミュイファさんのようだ。


(…ふにふにですね)


マグによるふにふに判定が降りた通り、彼女の胸部はたわわってた。

そしてミュイファさんの獣人部分…つまり耳と尻尾だが……


(丸耳か……)

(尻尾は……無いですね……)

(ユーリさんとかショコラちゃんみたいに、隠せないほどの尻尾ではないってことだね)

(となると……う~ん……もうちょっと近づかないと細かく見れませんね……)

(だね。ま、すぐに分かるよ。しかし…ハルキが驚くってことは、普段はあんな風に出迎えとかしないタイプなんだろうな……ダニエルさんと違って)

(そうですね。いつも忙しい方だとは聞きましたが、もしかしたら予想よりもかなり忙しい人なのかもしれませんね。グリムさんと違って)


そんなこんな失礼な話をしながら近づいていく。


獣人の種族予想は俺たちのひそかな楽しみなので、ハルキには待ったをかけているのだ。

本人が自己紹介で答えを言う前に当てたいところだ……と考えている俺の視界からミュイファさんが消えた。


「(えっ?)」

「こっちだよ♪」

「(へっ?)」


不意に後ろから声が聞こえ振り返ると…


「わぷっ…」

(ん……こ、これは……!)

「ふふふ…可愛いね~♪」


視界が柔らかいものに遮られて真っ暗になった。

どうやら抱きしめられているのだということに一瞬遅れて気付いた。


じゃあこれふにふにだ!?


「んむぅ~っ!」

「あははは♪暴れない暴れない♪これ好きなんでしょ?」


マグがねっ!

いやまぁ俺も好きだけどさぁ!


未だに女性のお胸に包まれるのに慣れてないんだからやめてぇぇっ!

せっかく落ち着いてた欲が刺激されちゃうからぁぁっ!


というかシンプルに息が詰まって苦しいでーすっ!


「…ミュイファさん…それ…息できてないですよ……?」

「おっとうっかり」

「ぷはっ!はぁ…はぁ……!」


うっかり殺しかけんなや!

くそぉ……医療ギルドのジルさんがまともだったから油断してた……。

サンキューハルキ……。


「ごめんごめん♪うわさに聞いてた《戦慄の天使》に会えるって思ってたらテンション上がっちゃってさぁ~♪姿が見えたからカッコよく出迎えよう…と思ってたんだけど、我慢できなくて迎えに行っちゃった☆」

「それでなんで抱きついてきたんですか……」

「やぁ~、うっかりうっかり☆」


ウッ◯ャンかよ……ひ◯助かよ……。


「はぁ…ミュイファさん……せめて自己紹介はしましょうよ……」

「あっそうだね。おほん、では改めて。あーしミュイファ~、よろしくマグぴっぴ~♪」

「(マ、マグぴっぴ……?)」


なにそのオールドスタイルなギャル口調……。


「真面目に挨拶してくださいよ……」

「あはは♪だって反応がいいんだもん♪ねぇねぇマーガレットちゃん♪」

「な、なんでしょうか……?」

「ここ見てここ…」

「(…?)」


ミュイファさんに言われるままに、彼女の肩に目を移す。


「ちらっ♡」

「(っ!?)」


ジャケットをちょいっとずらしたところは肌が露出しており、彼女のセーターはノースリーブだということが判明した。


ノースリーブなだけなら別に問題は無いのだが……


「あ、あの……ミュイファさん……?」

「な~に~?」

「……肩の部分は……?」


そう。腕だけでなく肩の部分までもが露出しているのである。

支えが首の部分だけで、彼女のたわわも少しだけはみ出しており非常に危険である。


「その服はちょっと露出が多いんじゃ……」

「これを見てもそう言えるかにゃ~?」

「はっ?」


ミュイファさんは楽し気に後ろを向きジャケットを肩だけ出るように脱いで……


「(へっ……?)」


……何故ミュイファさんの背中は露出してるのかしら?

なんで襟首しかセーターが見えないのかしら?


絶句する俺たちをミュイファさんはニヤニヤ見やり、ジャケットを戻す。

そして今度は下を少し(めく)りあげた。


「(ぴっ!?)」

「ぷっ…ふふふ……「ぴっ!?」だって……♪」


俺たちの反応にミュイファさんが噴き出すが……これはしょうがないと思う。


だってミュイファさん……お尻の割れ目部分がちょびっと見えてしまっているのだ。


これあれか……!?

いわゆる…「童貞を殺す服」ってやつじゃないか……!?

なんでこの世界に……!?


いやそれよりも…!


「な、何してんですか…!?早く隠してくださいよ…!」(小声)

「え〜?どうしよっかな〜?」

「早く隠さないと……」

「隠さないと〜?」

「…ミュイファさんは痴女だから近づいちゃ駄目ってモニカちゃんに真面目に教えます」

「おっと…それはさすがに悲しいな……仕方ないな〜……」


知ってる大人に告げ口しても飄々としてそうなので、グリムさんとジルさんに勝った実績のあるモニカちゃんの名前を出してみたら、ミュイファさんも大人しく従ってくれた。


(いやモニカちゃん強すぎでしょ……)

(ですね……まさかミュイファさんまでこうなるとは……)

(困ったらモニカちゃんに頼ろうかなぁ……)

(本人は喜びそうですけど……その分迷惑もかけちゃいますよ?)

(それな……ほどほどにしよう……)


ごめんねモニカちゃん……。

多分どっかであと1回2回は頼ると思う……。


「さてと…ま、結構楽しめたし、そろそろ中入ろっか?」

「ようやくですか……」


俺がモニカちゃんに謝罪している横で、ミュイファさんとハルキがようやく中に入る話を始めた。


う〜ん…長かった……。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「楽しめたかい?」

「(はい!とっても!)」

「そりゃよかった♪」


ミュイファさんに商業ギルドを案内してもらったあと、彼女の執務室で一服している。

この部屋には俺たち3人しかおらず、ミュイファさんも他のギルドマスターと同様に俺たちの事情を知っているようなので、俺は女の子のフリをせずに話せる。


とにかく凄かった、というのが俺たちの感想だ。

まず受付は市役所かと言うほどさまざまな部門の窓口が並んでいた。


商品の郵送、受け取り窓口に税金を納める窓口。

馬、馬車の貸し出しや王国全体の地図の販売。

商品の発注手続き書類提出窓口や、諸々の相談窓口などetc(えとせとら)……。


お金の預かり引き出し窓口もあったので、市役所と銀行と郵便局をまとめたようなカオスなホールだった。


さすがに金庫や重要書類のある場所はNGだったが、郵送の仕方と馬の借り方、税金の納め方は覚えたのでまぁよし。


馬とか乗ったことないけど。


で、そんな大量の部門を抱えて2階建ては狭くない?と考えていると、まぁ予想通り地下空間があった。


地下1階は書類や冷蔵、冷凍の荷物保管庫。それと各部屋にあるモニターオーブの映像が見える監視室。

そして新聞の作成とそのネタ集めを担当する部門やらで、他にもチラホラと仕事部屋っぽいものがあった。

地下2階はほぼ金庫と警備室だった。


この執務室は受付窓口軍団と同じ1階にあり、ここには他にも荷物の保管所がある。


で、今回用があるのは2階。

服飾関係のエリアで、ドレッサールームに撮影室…もとい、写生室。

背景に飾る物や本人に持たせる小物などが置いてある部屋など……とにかくたくさんだ。


扉からチラッとだけ見せてもらったドレッサールームには街の各服飾店から届いた新作の見本で、今日は多分あの服たちを着てモデルをするのだろう。


可愛いものからかっこいいものまで……キュートクールパッションセクシーまで。

露出が多いものはあんまり着させたくないが、どれもマグに似合いそうだった。

まぁさすがにサイズは全部合うわけでは無いが。


しかしあれだけ大量の服やアクセサリーが並んでいるのを見るとテンションがどえらい上がる。

あれはユーリさんに合いそうだとか、あっちの服はアイドルみたいで可愛いからモニカちゃんたちと着てアイドル活動しないかな……とか。

妄想がはかどるはかどる。


そんなこんな楽しんだ俺に、ミュイファさんは嬉しそうに笑って話を続けた。


「出来ればあのキツネの子にもきて欲しかったんだけどねぇ」

「今日言われたもので……事前にちゃんと頼めば多分来てくれますよ」

「そうかい?それならまた次の機会にしようかな」


今日来れなかったユーリさんの話をした後、ミュイファさんは仕事の話を切りだした。


「さて、それじゃあ今日の仕事内容を教えるよ?まずこのあとはモデルの仕事で、さっきのドレッサールームから君に着てほしいと届けられた服を着てもらって転写してもらう」

「えっ?着てほしいと届けられたって?」

「むふふ♪昨日売り出した君がモデルをした本。あれは協力してくれた人とお店、それと魔術ギルドの図書館にサンプルとして渡したんだけど、その時点ですでに「ぜひウチの服も!」って要望がかなり来てね」

「(そ、そんなに……?)」


確かにマグは可愛いけど……まさか街1つ動かすほどの美少女だとは……。

う~ん……まぁ納得だけど、ユーリさんやあのときいた他のモデルさんだって美人さんだったのに…なんでこうマグの話題ばかり上がるんだろう?


その理由はミュイファさんの次の言葉で判明した。


「君は今までのモデルの中で初めての子どもモデルだからね」

「えっ?今まで子どものモデルはいなかったんですか?」

「そうだよ。そもそも、新しい服なんてものは貴族のもの。庶民は古着や比較的簡素な作りをしてる貫頭衣などが基本だったからね。こんな風に服を紹介する本なんてのも、貴族が見るもので庶民には馴染みが無いものだったのさ」

「(そうなんだ……)」


マグも知らなかったか……。

なんというか、マグのいたところって失礼ながら「辺境」ってイメージがあるから、多分無いかな…?って思ってたけど……いやほんと失礼だな。


「…ん?それなら貴族の子ども向けの服とかはあったんじゃ?」

「あったよ。でもあいつら親に似て性格が悪いのばっかりでね。やつらと直接話をしたときに、こんな服が欲しいと出された見本本のモデルの顔が何人か落書きされたり切り取られてたり傷だらけにされてたりでめちゃくちゃにされてるのを見て、貴族向けの本にモデルは使わない……人形で十分だってなってね」

「(うわぁ……)」


あまりにもな事情に、俺とマグは思わず声を漏らした。


そんな小学生レベルの貴族がいるの……?

そんなのが治める土地とか行きたくないなぁ……。


「ま、そういうわけで貴族どもにモデルを使わないってことになってね。で、しばらくしてこの迷宮都市で商業ギルドをやってくれないかって、そこの彼から提案されてね。このまま頑張ってもロクなことになりそうにないし、こっちに賭けてみようって考えてこうなったのさ」

「(へぇ~……)」


なんというか……貴族ってほんとしょうもないのが多いんだなぁ……。

…もしかして全部同じやつの話とかじゃないよね……?


「それでこっちに来てからまたモデルと転写士を雇って本舗つくり始めたんだけど、他の領地やら国からきた人たちも「新しい服は貴族のもの」って認識でさ……しかもここは冒険者の街でしょ?そもそもそんなオシャレな恰好よりも、動きやすさを優先する人ばっかりで……」

「(あ~……)」

「じゃあ他の住民は?というと…やっぱりさっきの認識が邪魔してさ……ちょっとずつ受け入れられてはいるんだけど、それはやっぱり余裕のある家だけ。一応この街ならよっぽどのことが無い限り職にあぶれることは無いし、飢えや寒さで死ぬことは無いんだけど……どうしても新しい服ってのは「贅沢品」ってことになっちゃうんだよねぇ……」


まぁなぁ……。

飢えや寒さの心配が無くなったからって、じゃあ贅沢すっか!ってなれる人はほとんどいないだろうなぁ……。


「大人すら「贅沢品」って言ってるものを、子どもに買ってあげられる人はほとんどいない…ってことで、子ども服自体が少なめで、子どもモデルを雇っても大した紹介が出来そうに無いから、今まで雇ったことが無かったんだ」

「(なるほど~……)」

「だからローズさんが君にモデルを依頼したことが私たちには衝撃的でね。そしてこうして成功を収めた。彼…彼女?には先を見据える力があるのかもしれないね」


確かに今聞いた時勢の中で、俺にモデルを依頼するなんて普通考えないよなぁ……。

ローズさんには先見の明があるのかな?


「まぁ驚いたのはそこだけじゃないけど……」


多分容姿についての感想だろうけど、なんて言えばいいか分かんないからスルーしよう……。


「こほん……ま、そんなわけで君はこの界隈じゃとんでもない有名人なのさ!」

「な、なるほど……」

「んで、仕事の話に戻すけど、午前はモデルの仕事で、お昼ご飯も実は仕事の一環として行ってほしいんだ」

「(えっ?)」


休憩無しっすか?


「といっても、そんな身構えなくていいよ。新しい食べ物の試食をして欲しいんだ」

「試食……」


新作というと……はっ!


「もしかしてドーナッツですか!?」

「その通り〜!マルちゃんに提案したのは君だって聞いたよ〜?何パターンか用意するから、食べ比べてみてくれ!」

「やった!」


ドーナッツ〜が食〜べら〜れる〜♪


プレーンはあるとして、紅茶とか果物を混ぜ込んだやつとかあるかな〜?

そもそも穴あるかな〜?

無いタイプも大好物だぞ〜?


チュロス的なやつもあるかなぁ?

あれ厳密にはドーナッツでは無いけど、美味いから好き。

リングかな?スティックかな?


いや…待てよ……?

サーターアンダギー的なやつとかかもしれないぞ……?

えっ……好き……パクパク食べれる……。


「よっぽど楽しみなんだねぇ♪」

「わかるわかる。僕も久しぶりのドーナッツが楽しみだからね〜!」

「むふふ…♪一応すでに試食は済ませてあってね。君たちには完成形をご提供するよ♪ちなみに超美味しかった♪」

「「い〜な〜!」」


俺とハルキの声が重なる。

元の世界の食べ物が食べられるのだから、こうなるのも必然だと言えよう。


(いいないいなぁ!私も早くコウスケさんたちの世界の食べ物食べたいなぁ!)

(いいよいいよ〜!マグも気にいるよ〜!)

(楽しみです〜♪)


「それともう一つ新作料理があるよ♪」

「えっ!?なんですか!」

「それはあとのお楽しみ♪」


なんだろう……!

すっごい気になる……!


「それで、お昼の後にはモデルの続きがあればそれをやって、そのあと君にインタビューがしたいんだ」

「(インタビュー?)」

「君はこの街の人気者だからね。そんな君のことを知りたいと思ってる人はいっぱいいるんだ。だから君のことを本に一緒に載せようと思ってね。とはいえ、好きなものや趣味といった簡単な質問とちょっとした雑談ぐらいだけどね」

「(なるほど……)」

「もちろん断ってくれても構わないよ。恥ずかしいと思う気持ちはよく分かるからね」


さっき半ケツ見せびらかしてきたのに?

でも指摘したらまたからかわれそうだからさっさと話を進めよう。


「ハルキはどうするんだ?」

「僕は新作料理の試食で呼ばれただけでね。ついでにここまでの案内と他の商会と商談をするつもりだったから、それが終わったらコウスケ仕事っぷりを見学させてもらうよ」

「やめて恥ずかしい」


インタビューはマグのことだし任せるとしても、モデルの仕事をハルキに見られるのは恥ずかしい。

というか俺のことを知ってる人に見られるのが恥ずかしい。


マグの姿だからいいけど、大人の男が女の子女の子してるところを見られるのはさすがに恥ずかしい。


普段はいいんだよ、必要なことだから。

でもこう…任意のものだと……ちょっと……うん……。


「くすくす♪マーガレットちゃんは恥ずかしがり屋さんでちゅね〜♪」

「ミュ、ミュイファさん…近いです……!」

「当ててるのよん♪」

「指摘する前に言った……!?」


またミュイファさんにからかわれて顔を赤くしてしまう俺。


(コウスケさん!恥ずかしいなら変わりますよ!)

(いや……うん……まぁいいか……)

(やった!ふにふに♪)


やっぱりか〜。


「むふん♪初めましてミュイファさん!この体の持ち主です!」

「おっ!?今の一瞬で変われるんだねぇ!」

「はい!ハルキさんも実際に会うのは初めてですよね?」

「そうだね。コウスケとは上手くやってる?」

「それがコウスケさん……私が子どもだからダメってことが多くて……その分いっぱい甘えさせてくれるんですけど……」

「「あぁ〜……」」


……これ引っ込んでても地獄かも……?

どこのギルドマスターも濃いなぁ……。

まぁ、濃くないと話に絡ませづらいっていうのもありますが。


さてさて次回の更新は9/25(土)の予定です。

お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 〉貴族は小学生レベル マジでそれならこの国って言うか世界、大々的な改革をしないと不味いんですけど………マジ?これマジなの?? [一言] マグさんが狙い撃ちしてるのってたぶんですが、キス…
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