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2.迷宮都市…の門番

街に近づくにつれ、メイカさんたちも驚きの声を上げた。


「これは……」

「噂にゃ聞いてたが、コイツァ想像以上だぜ……」

「すっごいおっきい……」


先程遠くから見た時もそうだったが、いざ近くで見るとより一層、その壮大さに圧倒されてしまう。


分かってたつもりだったけどアニメとかで見るのとはやっぱり全然違う。


「この街が目的地ですか?」

「そ、ここが目的地の迷宮都市よ」

「迷宮都市…?」

「この街の中にダンジョンがあるからそう呼ばれてんだよ」

「しかもこの街、ここのダンジョンマスターが一夜で作ったそうだよ?あくまで噂だけどね」


俺の疑問にメイカさんたちが答えてくれた。


しかしダンジョンマスターが街を作った…か。

俺がよく見ていた小説サイトとかだと、大体そういうところのダンジョンマスターって「転生者」のパターンが多いんだが……。


俺もダンジョンマスターにちょっと興味あるし。

ただグロ耐性が低いから多分向いてないけど。死なないダンジョンとか言うのは簡単だけど、作るのはかなり頭使うだろうからなぁ。


そうこうしているうちに、俺たちの乗っている馬車は塔の入り口に着いた。

そこに門番であろう2人の男性兵士が近づいてきた。


「よ〜し、止まれ〜。仕事だから検閲させてもらうぞ〜」


ゆるい門番さんだなぁ。


「だから、そういうことをオレら以外の前で言うなっつってんだろうが!」

「いいだろべつに〜、そんなカリカリしてたってしょうがないんだしさ〜」


もう1人の門番さんは真面目だなぁ。


「ったく、すまない、見苦しいものを…」

「いえいえ、お気になさらず」

「そう言ってもらえると助かる。では、少しの質問と馬車の中を確認させてもらう。」

「えぇ、どうぞどうぞ」


御者のおいちゃんと真面目な門番さんが話し合っている中、ゆるい門番さんが馬車の中をのぞいてきた。


「え〜と?男性が2人に女性が1人、あと女の子が1人と残りが積荷っと。お三方は冒険者で?」

「はい、そうです」

「なるほどなるほど、となるとここの噂を聞いた口で?」

「えぇ、そうよ。ダンジョンマスターがギルドと協力して管理しているダンジョンなんて、冒険者なら気になるに決まってるでしょう?」

「しかも、転移魔法付きのアイテムがあるってんだろ?そりゃあ行くしかないだろぅよ」

「僕は宿や食事のレベルが高いというのが気になっています。見たことのない料理が出てくるとも聞いているのでとても楽しみですね」

「そうそう、ここは料理も上手いですからね〜、絶対満足しますよ〜」


楽しそうに話す、ゆるい門番さんとメイカさんたちの会話を聞いて、俺の「ダンジョンマスターは転生者」という予想が現実味を帯びていく。

転移魔法とか鉄板だしな。


街を作ったダンジョンマスター……。

大体こういうものの裏には神様や魔王みたいな、なんらかの存在がいることが多い。


いるかどうかは分からないし、いたとしても友好的であるかどうか…


「それで?嬢ちゃんはここに何しに来たんだ〜?」


ゆるい門番さんが相変わらず楽しそうにこちらに話しかけてきた。


何しにって言われても、さっきここの事を知ったばかりだしなぁ……。

んーとりあえずは…


「…観光?」

「なんで疑問形なの?」


流石のゆる門さんも俺のこの答えには困惑している。

ごめんね?このキメ顔に免じて許して?


「あー、その子はちょっと訳ありでな?」

「そ、そうそう、それで私たちギルドに行かなくちゃいけないんだけど、検閲は問題なかったかしら?」

「え?あ〜そうですね〜。あとは積荷の確認だけなんで、もう少しだけですけど〜…もし急ぎの要件ならここにあるテレフォンオーブを使います?」


わぁ、離れた相手と連絡できそうな名前だぁ。


「ここにあるのか?」

「えぇ、塔の各門の近くにある兵舎と街の各ギルドに専用のテレフォンオーブが置いてあるので、何か起きたときでも迅速に連絡することが出来るんですよ〜」


やっぱり連絡用か。


「専用?アレは確かごく一部の職人しか制作方法を知らないうえに、そのほとんどが国に属していて、国ぐるみのトップシークレットのはず……いったいどうやって……」

「ふっふっふっ…じつはですね〜……」

「ダンジョンマスター殿がすべて用意してくれたんだ。」

「「「「すべてっ!?」」」」

「あっ!俺が驚かせたかったのに〜……」


ゆる門さんがもったいぶってる間に、御者のおいちゃんとの話が終わったらしい真面目な門番さんが教えてくれた。


俺にはまったく凄さが分からんけど、みんなが呆然としてるところを見ると、かなり貴重な物なんだろう。

ちょっと気になる、聞いてみよう。


「あの、それってどんな物なんですか?」

「えっ?あぁそうか…嬢ちゃんは街自体初めてだもんな、そりゃしらねぇか」


そうだったのか。

それは良い事を聞いた。いろいろと聞きやすくなったな。


「テレフォンオーブっていうのは、オーブ同士を使うことによって遠くの相手と連絡を取れる魔道具なの。主にお城やギルドみたいな重要拠点に置いてあるのよ」


魔道具。さっきの転移アイテムとはまた別なのか。


「テレフォンオーブの作り方はさっき言った通り、一握りの魔道具職人しか知らないうえに国家機密にもなっていて、少しでも探ろうとすると捕まってしまうほどでね。そういうのもあってとんでもなく高価で、貴族でもなかなか手に入らないような代物なんだよ」

「俺たちが知ってるギルドにあるやつだって、各街にあるギルド間を繋ぐためのものだけだしな。王都のギルドにあるやつは城とも繋がってるんだが…自分たちの都合ばっか押し付けてきやがって、冒険者どころかギルドの奴らも煙たがっててなぁ……」

「うわぁ…緊急事態起きても解決できなそう……」

「ちょっとディッグ、純真無垢なマーガレットちゃんに変なこと教えないでよ!」


メイカさんたちが教えてくれたが、どうやらそこまで便利なものじゃないらしい。


というかこの世界の貴族、腐ってんの?

ヤダなぁ…ただでさえ目上の人間と話すの疲れるから嫌なのに…。


そもそも人と話すのもあんまり得意じゃ無いんだよなぁ……。

バイト先で培った営業力で当たり障りのない会話が出来るぐらいで……。


「メイカ…確かに子供に聞かせる話じゃねぇけどよぉ…嬢ちゃんももう10歳になったわけだし、あんま過保護過ぎんのもどうかと思うぞ…?」

「何言ってるの!もう10歳!されどもまだ10歳なのよ!?」


10歳か、10歳なのかそうなのか〜…

10歳で知り合いと旅とかすごいアグレッシブだったんだなぁ。

俺が10歳の時どんなんだったかなぁ……。


「いやいや、メイカさん…確かにそれはその通りですけど、だからってあんまり過保護なのはマーガレットちゃんのためになりませんよ?」

「ケラン…!なんてこと…あなたは味方だと思ったのに…!」

「どこでそう思ったんですか!?」


ケランさんがフォローしてくれたけど、なんか言い合い始まっちった……。

俺の勘だけど、多分コレ長くなるやつだ。


うん、ほっとこう。


「門番さん、そういえば検閲の結果はどうなんですか?」

「え、あぁ問題無いが…」

「えっお嬢ちゃん、アレほっとくの?お嬢ちゃんの話なのに?」

「多分長くなるでしょうし、下手したらこっちに飛び火しそうなので」

「ひどい!お嬢ちゃんひどい!お嬢ちゃんが話の中心なのに!」

「ディッグさん、そのテレフォンオーブ?は結局使うんですか?」

「お、おぅそうだな…使わせてもらおうか…」

「じゃっ、早く行きましょ?テレフォンオーブも見てみたいですし」

「あ、では馬車を止めますね。どこに止めれば?」

「はいは〜い、じゃあオレについてきてくださ〜い」


しばらくほったらかしにしてしまった門番さんたちに話しかけつつ、俺たちと未だに興奮しているメイカさんとその矛先を向けられている犠牲者ケランさんを乗せた馬車は塔の中へと入っていくのだった。


「ちょっと!?皆さん助けてくださいよ!」

「聞いてるのケラン!?マーガレットちゃんには、将来私の家で一緒に暮らしてもらって朝から晩まで可愛いぃって過ごして…」

「もうなんの話だかも分からないです!いい加減にしてくださいっ!」


頑張れケランさん。

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