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193.戦闘終了…一面の花畑

〔モニカ〕


モニカ「あっ…」


何かを話していたマーガレットちゃんたちがルークくんの方を向いた。

でもマーガレットちゃんはまだ角とか尻尾とかついたまんまだ。


マーガレットちゃんは逃げるわけじゃないの……?

もう試合は終わったんだよ……?

ダニエルさんも一向にルークくんを止めようとしないし……まさか……?


パメラ「マグぅ…!うぅぅ……!早く帰ってきてよぉ……!」

サフィール「パメラさん……大丈夫ですよ……マーガレットさんはもうすぐ戻ってきますよ……」


後ろから聞こえるパメラちゃんの泣き声と、パメラちゃんを慰めるサフィールちゃんの声を聞いて、思わずさっきのようにうっかり口に出してしまいそうになるのをなんとか止めた。


危ない危ない……。

せっかく飛び出そうとするのをやめてくれたのに……。


それにショコラちゃんもようやく放心状態から帰ってきたんだし、チェルシーちゃんとメリーちゃんはそれぞれハルキさんとフルールさんの腕の中でぐったりしてるし、逆にぐったりしてたリオちゃんは回復して、シエルちゃんも復活したし……。


…うん…言わなくてよかった……。

「マーガレットちゃんがルークくんを止めようとしてる」なんて言ったら……また大変なことになりそう……。


…でも…マーガレットちゃん……。

まさか本当に……?


そしてその「まさか」は実現された。


ディッグさんとケランさんが前に出て、そのあとをマーガレットちゃんが続いていく。

メイカさんは何かの魔法を唱えた。

それを唱え終わると、ルークくんの動きが急に止まった。


よく見ると、足が土に飲み込まれている……。

あれがメイカさんの魔法……?


グリムさんは動かず、ただ見守るだけ……。

そしてユーリさんは……


モニカ「わ…!」


ユーリさんは踊っていた。

それがとてもキレイで…私は思わず見惚れてしまった。


……ハッ!

マ、マーガレットちゃんは!?


ダニエル「お嬢!どうする気だ?」

マグ「噛みつきます!」

ダニエル「そうか、わかった!………はぁっ!?」


か、噛みつくっ!?

どういうことっ!?


マグ「まぁ見ロ名ブヨ!」

ダニエル「はっ!?えっ!?何っ!?」


さすがのダニエルさんも驚いている……。

そうだよね…なんで噛みつくなんて結論になったのかわからないよね……。

しかもなんて言ったのかもよくわかんないし……。


み、みろめい…ぶよ……?


シエル「ね、ねぇモニカ……マーガレットは何するつもりなの……?」

モニカ「えっと……なんか…噛みつく…らしいよ……?」

シエル「はっ?」


シエルちゃんもやっぱり驚いた。

他の子たちもあまりの突拍子の無さに訳がわからないという顔をしている。


うん…私もわからないよ……。

わからないから……


モニカ「…ユーリさんの踊りキレイだねぇ……」

シエル「…そうねぇ……」


現実逃避してみた。


う〜ん……なんだかもう驚くことが多すぎて疲れたのかな?

大変な状況なのはわかるんだけど……今私…すごく落ち着いてる。


不思議だなぁ……。


ハルキ「…子供たちが一周回って落ち着いている……」

シャール「ん……エストを抑えるだけでいいから助かる」

エスト「痛い痛いっ!シャール!わかったから!エストももう落ち着いてるからぁ!」


あ…エストさんがシャールさんに関節技をかけられてる……。

痛そう……。


エスト「見てる!モニカちゃん見てるから!モニカちゃんがなんか凄い暖かい目で見てるから!!」

モニカ「ん…悟りを開いた」

ダイン「いや、悟り開いたっつーか…単に疲れただけな気がするんだが……?」

ララ「あ、あはは……まぁまぁマスター……それならそれで…ほら…ね……?」


ダインさんとララさんが何か言ったけど、よくわかんないな…うん……。


ハルキ「ははは……あっ!ほらみんな!マーガレットちゃんがルークに近づいたよ!」


苦笑いのハルキさんの言葉で、私たちは再びマーガレットちゃんの方を見る。


ディッグさんとケランさんが攻撃を受け止めて、メイカさんが魔法で足止め。

その隙にマーガレットちゃんがルークくんに飛び込む。

ユーリさんは踊りでみんなをサポート……すごい連携の取れた動きだ…!


ディッグ「嬢ちゃん!」

ケラン「決めてくれ、マーガレットちゃん!」

マグ「合点承知の助ぇ!」

ハルキ「ぶふっ…!」


なんだかハルキさんが急に笑い出した。

それにしてもマーガレットちゃんはなんて言ったの…?

が、がってん……?


と、とにかく、ディッグさんとケランさんが、メイカさんの魔法で動きを封じられてるルークくんをさらに抑え込んで、そこにマーガレットちゃんが……近すぎない……?


あ、あの距離だと…キ、キキ…キスも…出来ちゃう…………はっ!?ま、まさか……!?


モニカ「ね、眠りについた王子様を起こすのは確か……!?」

チェルシー「えっ!?モ、モニカちゃん…そ、それって……!?」

パメラ「えっ!?えっ!?ま、まさかマグの好きな人って……!?」

ショコラ「マ、マグ……!もうそんな大人に……!?」

シエル「えぇっ!?マーガレットってそうなの……!?」

リオ「いや、それは無いと思うなぁ……」

サフィール「ですねぇ……それにさっき「噛みつく」って言ったんですよね?」

みんな『あっそっか』


ふぅ〜……。


リオ「…お前ら…そこまで露骨にホッとしてやるなよ……さすがにルークが可哀想だろ……」

シエル「だって…ねぇ?」

チェルシー「うん…それだと趣味悪いというか……」

パメラ「もしそうならマグの目を覚まさせてあげないとっていうか……」

みんな『ねぇ?』

ハルキ「…女の子って怖い……」


あっ大丈夫ですよハルキさん。

ハルキさんがチェルシーやララさんたちとラブラブなのはよくわかりますから。


シエル「それにリオだってそう思うでしょ?」

リオ「まぁ…なぁ……さすがにちょっと…とは思うけど……」

シエル「サフィールは?」

サフィール「あはは……えっと……マーガレットさんならもっと良いお相手が見つかるかなぁ…とは思います……」

シエル「でしょ?」


シエルちゃんの言う通り。

マーガレットちゃんならステキな王子様と出会えると思う。


ハルキ「…あぁ〜……ほ、ほらっ!今はそれよりもマーガレットちゃんの応援でしょ!?」


ハッ!そうだった!

ルークくんに近づいたマーガレットちゃんが……首筋に噛みついている……。


みんな『…ほんとになんで?』

フルール「血を吸ってるのよ」


私たちの疑問に答えてくれたのはフルールさん。


でも…血を吸ってるの……?


フルール「もっと正確に言えば魔力を吸ってるのよ」

モニカ「魔力を……?」

ハルキ「なるほど。暴走するなら、その暴走してる魔力を吸って無くしちゃえば収まるよねってことだ」

フルール「そういうこと」


なるほど……。

確かにそれなら、叩いたり魔法で攻撃して気絶させるよりもルークくんに負担が少ないかも……。

マーガレットちゃんはそこまで考えて……


そう思ってマーガレットちゃんのことをじっと見つめると……それが目に入った。


マーガレットちゃんの口の中…ルークくんの首筋に噛みついてる、ほんのり緑色に光るキバが……。


ドクン…


…あれ…?

なんだろう……?


なんだかルークくんに噛みついてるマーガレットちゃんを見てると……ドキドキしてきた……。


フルール「魔力を吸い出せばいいだけだから、牙が刺さるところしか傷は付かないし、あの状態なら吸ったその場からすぐに強化魔法に使えるから暴走することもないわ」

ハルキ「1番合理的な手段ってことだね。でもそれを実行に移そうとはそうそう思わないよね……」

フルール「まぁねぇ……そこはマーガレットだし…ってことで」

ハルキ「ははは…そうだね」


フルールさんとハルキさんの会話がぼんやりと聞こえる。


ケガは少ないんだ…そっか……。

…なんだろう……私は…何にドキドキしてるんだろう……?


その答えはメリーちゃんが言った。


メリー「……かぷかぷ……いつもわたしからだけど……もしもしてもらったら………〜〜〜!!」

モニカ「…………」


かぷかぷ……。

マーガレットちゃんにかぷかぷされる……。

……いいかも……。


かっこいいマーガレットちゃんに…あんな風に食べられちゃう……。

食べられる……マーガレットちゃんに……。


…どうしよう……。

すごくドキドキする……!


なんで……?

なんでこんなに……!?

食べられたいなんて……そんなの変なのに……!


でも…マーガレットちゃんなら……。

優しいマーガレットちゃんなら……もしかしたら…………ハッ…!?


ダメダメダメダメ…!

うぅぅ…!どうしたんだろう私……?


マーガレットちゃんは普通の…普通……えっと…わ、私とおんなじ、おんなじ!女の子で、甘いものが大好きで、美味しそうに食べてる姿が可愛くて、でもお仕事のときはかっこよくて、あと甘えさせてくれるときもかっこよくて、いっぱい甘えたくなっちゃって、ちょっとわがまま言っちゃってもちゃんと答えてくれて、嬉しくて離れたくなくなって、それに今だってかっこよくて…ううん。今のツノと尻尾がある姿はもっとかっこよくて、見てるとドキドキして…私もマーガレットちゃんにかぷかぷって…………あれ……?


え、え〜っと……?おかしいな……?

なんだか考えてることが一周したような……?


考えすぎて頭がぐるぐるしてるとき、後ろでパメラちゃんがひっそりと呟いた。


パメラ「なんだかマグ、吸血鬼みたい!」

フルール・メリー「「…っ」」


えっ?


シエル「吸血鬼…って、おとぎ話とかに出てくるやつでしょ?」

サフィール「いえ、吸血鬼は実際に存在しますよ」

シエル「そうなの!?」

サフィール「はい。とはいえ、獣人やエルフと同じように、いろんな国によって生活圏を減らされてしまってますし、そんな中でも特に少ないらしいですから」

シエル「へぇ〜……やっぱり国の人間なんてそんなもんよね〜……マーガレットは別だけど……」

サフィール「?」

シエル「う、ううん!なんでもない!」


私は聞こえたよシエルちゃん…。

最後にボソッと言ったこと……シエルちゃんもマーガレットちゃんのこと大好きだもんね…♪


メリー「…………」

リオ「メリー?どうしたんだ?」

メリー「っ!…な、なんでもない……」


メリーちゃんどうしたんだろう…?


リオ「なんでもないとは見えないぞ?……便所でも我慢してんのか?」


リオちゃーん!?

もうちょっとふんわりとぉ…やんわりとぉ……!


メリー「……(ふるふる)」

リオ「そうか?」

メリー「……ねぇ…リオ……」

リオ「ん?」

メリー「………リオは吸血鬼ってどう思う……?」

リオ「どう思う…つってもなぁ……」


メリーちゃん…どうしたんだろう?

もしかして、吸血鬼の出てくる怖いお話を聞いたとか…?


リオ「う〜ん……正直会わないことにはなんとも言えないなぁ……」

メリー「……怖そうとかは……?」

リオ「そうだなぁ……確かにそういうおとぎ話も聞いたことはあるけど……俺はあんまり好きじゃなかったなぁ……」

メリー「……そうなの…?」

リオ「あぁ。だってさ。ああいう話って大体人間が主役でよ。吸血鬼は出てきてもほとんどが敵役なんだよ。それで悪いことをしてるから懲らしめるってのはいいとしても、大体人族側だっておいおい…って思うようなことをしててさ。それが良いなら相手のやってることも良いだろ?って話もあって、あぁ…これは結局、人族が都合のいい話なんだって思ってさ……」


あぁ…ちょっとわかる……。

獣人たちとか他の種族は、いつも誰かに虐げられてて、それを物語の主人公が助けて……でもそれって、他の人族はみんな、人族以外のことをそういう目で見てるってことだよね?って……。


それに……助けられた人たちだって、その主人公に尽くすばっかりで、お礼を言われることはあっても、あんまり報われてる気がしないというか……。

ほとんどのお話で主人公は人族のお姫様や貴族の人と結婚しちゃって、他の人は「幸せに暮らしました」ぐらいしか書いてないことばっかだし……。


人族以外が活躍するお話ってあんまり無いんだよね……。

その数少ないお話も、昔に奴隷から解放されるために戦ったとか、そんなのばっかりだし……。


…奴隷から解放されたはずなのに、今も他の街では人族以外の種族は苦しい思いをしてるし……。


リオ「まぁだから結局、会って見ないとわからないんだよな。マーガレットだって、貴族って聞いただけなら絶対関わろうとしなかったし、ましてや友だちになんかなろうとしなかっただろうしな」

シエル「あ、あたしはまだ気を許したわけじゃないもん!」

リオ「…そういや聞いたぞ?お前、初めて魔術ギルドにマーガレットが来たとき、不意打ちで魔法撃ったそうじゃないか?」

シエル「うっ…!」

みんな『えぇっ!?』


シエルちゃん何やってるの!?


シエル「あ、あれは…マ、マーガレットが本当にマスターが気にするほどの子か、テストしたのよ…!」

リオ「だからって不意打ちは無いだろ……?」

シエル「うっ……」


うん……シエルちゃん……。


モニカ「めっ…!」

シエル「うぅぅ……ごめんなさい……」

パメラ「あれ?でもあのあと、私たちと一緒にマグに甘えてたよね?」

リオ「だよな?あんときにゃぁもう許したのかマーガレットは……」


リオちゃんがパメラちゃんの言葉に頷きながら呆れた声を出した。


あのとき……私がマーガレットちゃんのことを知ったときかぁ……。

その前にシエルちゃんとそんなことがあったんだ……。


……大変だなぁ…マーガレットちゃん……。


メリー「……あ、あの……!」

リオ「うん?あぁ悪い。まぁとにかく、俺の答えは「目で見て確かめる」…だな!やっぱり自分の目で確かめるのが1番だよ」

モニカ「うん…!私もそうかな…!マーガレットちゃんが貴族だって聞いたときちょっと残念だったけど…でも、マーガレットちゃんはマーガレットちゃんだってわかったし…!」


それにマーガレットちゃんは、そんな私を許してくれた……。

えへへ……♪


パメラ「私もそうだねぇ。むしろこの街に来るまで、貴族の人はみんなマグやマグのお父さんお母さんみたいに優しい人たちだと思ってたよ。ね、ショコラ?」

ショコラ「うん。だからみんな貴族が嫌いっていうのが信じられなかったなぁ……」


そっか……。

確かにマーガレットちゃんとご両親しか知らないのなら、そう思っても仕方がないかもね。


サフィール「私もそうですね。…そういう差別は…ちょっと……」


…サフィールちゃん……。

そうだよね…だってサフィールちゃんも……。

…マーガレットちゃんは知ってるのかな……?


チェルシー「…それで?シエルちゃんはどーなの?」

シエル「あたしは……ま、まぁ…別に気にしないわよ?」

チェルシー「ふふふ…よかったねメリーちゃん!」

メリー「……うん!」


チェルシーちゃんの言葉に、メリーちゃんはとても嬉しそうな顔をして頷いた。


ハルキ「君たちお話もいいけど、闘技場のお友だちを見なくてもいいの?」

みんな『………ハッ!』


そういえば戦ってるんだった!

マーガレットちゃんはもうルークくんの魔力を吸い終わったかな?


そう思ってマーガレットちゃんを見ると……


みんな『…………』


みんな言葉が出なかった。

でも怖いとかそういうことじゃなくて、むしろすごすぎて声が出なかった。


だって…マーガレットちゃんの周りに……ううん…闘技場の半分以上が……


モニカ「…お花で埋まってる……」

チェルシー「キレイ……」


マーガレットちゃんから円状に広がる形で、色とりどりのキレイなお花が咲いていってるから……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〔コウスケ〕


ディッグさんたちの協力もあり、無事にルークの首元に噛みついた俺。

そのまま魔力を吸い出しているのだが……まったく終わりが見えない。


いや、まぁ…凶暴性はだいぶ無くなったし、ちょっとずつ安定してきてるのはなんとなく分かるんだけど……。


…吸ったあとの魔力の処理に困りまして……。


最初は俺の強化魔法に注ぎ込んでいたのだが、注ぎ込みすぎて体がバチバチし始めて、超帯電状態を有に越えたと言いますか、触れただけで電気やられ状態に出来そうな感じになっちゃいました。

このままだと古龍クラスにいけるんじゃなかろうかと、撃龍槍ぶっ刺される側になるんじゃなかろうかと思ったりなんだりしちゃったりなんかして。


仕方がないので他のことに魔力を注ぎ込もうとした俺に、マグが天啓を授けてくれた。


(魔力がいっぱい……う〜ん……あっそれなら、お花がいっぱい咲かせられませんか?)


マグさんマジ天使。

というわけでそれを実行に移すにあたり、ダメージゾーンを作り出す《D・ブルーム》だと問題があるので、ならばと王の話を頭の中でしまくった。


とはいえそこまで深くは考えておらず、ただひたすら、「マグに綺麗な花を見せたい」という一心で花を咲かせまくることにした。

なのでリジェネとかスター獲得とか、ましてやNP獲得なんてものは付いてない。

付いたら終わらない。

ただ花を咲かすだけだ。


「吸った魔力で花の庭園作ってみた」という企画が生まれた瞬間だった。


ある程度吸って咲かせてを繰り返した頃、ようやくルークがまともな反応を返してくれた。


「う…うぅ……?…はっ…!?な、何やってんだよお前…!?」

「ちゅうちゅう」

「うぅぅ……いや、喋れって……!つか離せよ……!」

「ちゅう?ちゅうちゅちゅう」

「ぐぅぅ…!口離してから喋れよ…!」


俺がちゅうちゅう言うたびに、ルークはくすぐったそうに声を上げる。


喋れとか口離せとかうるさい奴だぜ。

でもまぁこれならもう大丈夫かな?


「ぷぁ……ごっそさん」

「はぁ……はぁ……なんなんだよ…!」

「目覚めたか坊主?」

「あ…?っ!?イ、《イシオン》のディッグさん…!?」

「暴走は収まったようだね」

「ケランさんも!?暴走って……ま、まさか…俺が……!?」


よし、完全に安定したな。

はぁ〜やれやれ。面倒事を増やしやがってまったくよ〜。


「お、お二人が止めてくれたんですか!?」

「いや。止めたのは嬢ちゃんだよ」

「君の魔力を吸い出したのさ」

「す、吸った!?」

「その魔力を使ってこんなことになってるよ」


ケランさんがルークを起き上がらせて周りを見渡す。


「なっ…!?」


そこに広がる色とりどりの花たち。


どうよ、この見事な花畑。


「これを…こいつが……!?」

「(あっ?)」


指差すなや小童(こわっぱ)


「そうよ。あなた、ここの結界が発動するぐらいまで追い詰められたのに気絶はしなかったのよ?」

「えっ…ここの結界が……?ってことは俺は……」

「そ。試合はマーガレットちゃんの勝ち。そしてあなたは死にかけたの」

「…っ!」


メイカさんストレートにいくなぁ……。


「…そうか……負けたのか……」

(今気付いたんですね)

(まぁ寝起きみたいなもんだし……)


ま、なんにせよこれで終わりだな。

これでモニカちゃんとチェルシーに謝らせて、そのあと俺はモニカちゃんのクッキーを…………おん?


待てよ……?

確か……「ノーダメ完全勝利したらご褒美のクッキー」だったよな……?


俺……被弾したよな……?

それはもうガッツリと……言い逃れが出来ないほど見事に……。


「とりあえず2人とも検査した方がいいね。どっちも体力も魔力も使ってるし、一応専門の医者に診てもらおう」

「そうだな。坊主、動けるか?」

「あっ…は、はい…!」

「頑丈なやつだな。将来は中々に有望かもしれんぞ?」

「えぇ。そのためにも、ここで後に残るような傷を見過ごさないようにしないとですね」

「マーガレットちゃんは?というかそろそろ魔法解いてもいいんじゃない?」


メイカさんに話しかけられるが、正直今それどころじゃない。


(あかん…マグ……ノーダメの約束が……!)

(えっ…?…あっ……!?た、確かに……!?ということはクッキーは……)

(……お預け……!)

(そんなぁぁ……!?)


「マーガレットちゃん?」

「みなさ〜ん!無事に落ち着かせられたんですね…って、メイカさんどうしたんですか?」

「ユーリちゃん。マーガレットちゃんが何か考え込んじゃってるのよ」

「えぇ…?もう、マーガレット!せっかく勝って、暴走も無事に止められたんだから笑顔笑顔!」


((無理です……))


さすがに口にはしなかったが、確かに人命救助は上手くいったのだし喜ぶべきか……。


「そう…ですね……うん……」


顔を上げると、観客席の人たちが歓声を上げて大はしゃぎしているのが目に入った。

何人かはこちらに手を振ってる者もいる。


その人たちに手を振りかえしつつ観客席を見渡していくと、モニカちゃんたちが座っている区画を発見した。


「マグ〜!」

「おめでと〜!」

「マギーちゃんかっこよかったよ〜!」


元気に手を振りながら声をかけてくれるショコラちゃんたち。

リオを筆頭に大声での声援は苦手な子たちも、笑いながら手を振ってくれている。


(…ま、勝ったからいいか)

(…ですね♪)


純粋に勝利を喜ぶことにした俺たちは、モニカちゃんたちにも手を振りかえしたあと、メイカさんたちと一緒に闘技場建物内の医務室へと歩いていった。


俺たちが退場するまで…いや、してからもしばらくの間、観客席からは拍手の音が鳴り響いた。

ついにルークとの試合が終わった!長かった!

試合自体は瞬殺みたいなもんだったけど!


…いや…ほんと…第二章長かったなぁ……。


……はい。そんなわけで次回予告。

次回の更新は8/20(金)の予定です。


試合も終わり、こういう話でやることと言えば祝勝会!というわけで祝いの話です。

お楽しみに!

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[気になる点] 〉マグ「まぁ見ロ名ブヨ!」 ごめんコウスケさん、私も分からんですたい [一言] 無事に救出できたようで安心しましたが、今回の件でフラグだったのが確定に成ってる娘が出始めた様ですね? あ…
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