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184.3バカの宣戦布告…と妹分の勇気

誤字報告ありがとうございます!

自分はエッチな子なんだと落ち込んでいたユーリさんをマグとメリーと一緒に慰めまくりどうにか復活したところで、俺の部屋の扉がノックされる。


「起きてる?入るわよ?」

「あっは〜い!どうぞ〜!」


招かれた人はフルールさんだった。


「なんだ起きてるじゃない。しかも支度もバッチリだし……何してたの?」

「いやぁ…ちょっといろいろあって……」

「まだ朝なのに?」


そうですね……まだ朝なのに情報量が濃いですよねぇ……。


「まぁいいわ。ご飯できたからいらっしゃい」

「(「は~い!」)」

「……は~い」


とゆーわけで下に降りて朝ご飯。

この時間に今日の予定を聞いておく。


「ディッグさんたちは今日も迷宮ですか?」

「あぁ、そのつもりだ。なんだ?何か頼み事か?」

「いえ、今日は明日に向けてお休みをもらったので、一階層まではご一緒だなぁと」

「へぇ~そっか。ララちゃんたちが気を回してくれたのね」

「はい」

「でもショコラちゃんたちは?マーガレットちゃんとずっといたいって言いそうだけど?」

「あっはい、言われました。でも昨日のうちに「マグパワー」を補充してたので大丈夫だと思います」

「マグパワー?」

「いつもメイカさんが抱きついて補充してるものです」

「なるほどねぇ」


((納得するんだ……))


「ん…じゃあまた私とメリーの付き添いがいるかしら?」

「そうですね。空いているのならお願いしたいです」

「私はいいわよ。メリーはどう?」

「…行く」

「決まりね。それとディッグ。帰りに食材を補充しておきたいのだけど……」

「あぁ。なら帰り際に店に寄ってくか」


今まで寮の食材は俺の知らん間に補充されていた。

やっぱりディッグさんたちがちょくちょく買い足してたんだな。

フルールさんお金持ってないし。


…フルールさんお金持ってないし?

待ってフルールさんお金持ってない!


「あ~…フルールさん?」

「うん?」

「何か自分の欲しいものとかあります?」

「どうしたの急に?」

「いえ…そういえばフルールさん、お金持ってないなって……」

(『あっ』)


フルールさんとメリー以外が「今気づいた」みたいな声を出した。


俺も今気づいたのであれなんだが……。


「う~ん……別に欲しいものは無いわねぇ……それに、あまり外にも行かないし……」

「ほんとフルール?なんでもいいのよ?」

「う~ん……駄目ね……お店で変わった食べ物があればあなたたちが買ってくれてるし、正直何も思いつかないわ」

「そっかぁ……」


がっくりとうなだれるメイカさん。

隣でケランさんも残念そうにする。


(多分プレゼントの参考にしたかったんですかね……?)

(かもねぇ……そういえばフルールさんの好きなものって知らないなぁ……)

(確かに……)


聞いてみよっかな?


「フルールさん。フルールさんの好きなものって何ですか?」

「そうねぇ……お酒は好きだけど、すぐ酔っちゃうし次の日が痛いからあんまり飲まないようにしてるし……」

『(あぁ~……)』


酔っぱらってたねぇ……。


「…あとは……う~ん……やっぱり魔力たっぷりの健康な血液かしら……」


吸血鬼~。

と、そこで、ちょっと気になったので聞いてみた。


「ちなみに誰が一番おいしいと思いますか?」

「この中でってこと?」

「ですです」

「そうねぇ……」


フルールさんがメリーを除く全員を見ていく。


俺からユーリさん、そして自分の隣にいるメイカさん。

その奥のディッグさん、そしてケランさん。


そうして再び俺を見やり、


「やっぱりあなたかしらねぇ」


と結論付けた。

選ばれた俺はちょっと上機嫌になる。


「ふふん♪まぁ毎日動いて汗かいて、バランスよく食べて楽しく過ごしてますからね♪ストレスもあんまり無いですし♪」

「それもあるけど、やっぱり子供の血ってサラサラで飲みやすいのよね。…まぁその分血の量が少ないからあんまり吸えないのだけど……」

「それって若さってこと!?うぅ……私は!?私はどうなのフルールぅ!?」

「あなたはお肉ばかり食べてるから少し(あぶら)っこいわ」

「がーーーんっ!!?」


((むごい……))


確かにメイカさん、お肉の摂取量がこの中で一番多い気がしてたけど……。

だからってストレートに言ったら大打撃すぎんよフルールさん……。


……っていうか、吸ったことあるみたいな言い方だなぁ……。


そんな俺とメイカさんを置いて、今度はユーリさんがフルールさんに尋ねた。


「あっじゃあ次に美味しそうなのは私ですか?」

「そうね。ちなみにその次はケランよ?」

「えっ!?ぼ、僕ですか!?」

「えぇ。でもあなたは逆に野菜ばかり食べてるから、もう少しお肉を取らないと旨みが足りないわね……」

「もっと食べます!」

「ふふふ…えぇ、そうしてちょうだい?」


(……なんだか……)

(いい雰囲気……かも……?)


ケランさんの分かりやすい反応に笑っているのかもしれないが、それにしたって穏やかな笑顔を浮かべている。


ここでチラッと隣のメリーを見てみた。


「…?」


こてんっと首を傾げられた。

可愛いので撫でる。


「っ!……///」


ピクッてしたあとめっちゃ照れた。

可愛い。


そんな和やかな雰囲気の中、俺たちは朝ご飯を食べ終えた。


ちなみにメイカさんとディッグさんだったらメイカさんらしい。

ディッグさんは鍛えられすぎてて歯が立ちそうにないからという、ほぼ消去法の選び方だったが、メイカさんは大いに喜んだ。


そんな彼女を、マグと一緒に暖かい目で見守った。


が、フルールさんがこちらに放った言葉で、俺たちは重要なことを忘れていたことに気が付いた。


「そういえばあなた。それそのままで外に行くの?」

「(それ?)」

「ほっぺのそれ」


トントンっと自分の頬を叩くフルールさんに習い、俺も自分の頬を触る。

しかし食べかすが付いているわけではなく、フルールさんが何を言っているのか……


「あっ」


ユーリさんが気が付いたようで声を上げた。

しかも彼女の顔が赤く染まり始める。


ユーリさん側で目に付くような場所に何が……


「…………あっ」


そういやキスマーク消えなかったんだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


暖かな食卓を囲んだのち、みんなで冒険者ギルドまでやってきた。


マークの付いた場所には怪我したとき用のガーゼを当てて隠している。


「それじゃあちょっと挨拶してきますね」

「えぇ。そこらで待ってるわ」


フルールさんの返事と他のみんなにも見送られ、やはり並んでいる冒険者の列に混じり順番を待つ。


「次の方、こちらが空きましたよ〜!」

「は〜い!」


並んでいた冒険者の人たちに頬の傷 (キスマーク)を心配されながらも、どうにか誤魔化して待っている間に順番が来たので、呼んでくれたナタリアさんがいるカウンターに素早く向かう。


「おはようございます!」

「おはよーマーガレットちゃん!今日はまた賑やかだねぇ!」

「えへへ…家族みたいなものですからねぇ♪」

(ですです♪)


異世界でこんなあったけぇ家族が出来るとは思わなかっよほんと。


「でもほっぺたどうしたの?」

「ちょっと練習で付けちゃって……どうせあとで魔法の練習するし、そのときに治るだろうってとりあえずこれだけ当ててるんです」

「そうなんだ……う~ん……あんまり無理しないでね?怪我しちゃったらみんな心配しちゃうよ?」

「大丈夫ですよ。ちゃんと大人がいるところでしか練習してませんから」


まぁその大人…ギリギリ大人がこれ(キスマーク)の原因だけどな……。


「それじゃあ、ララさんたちにもよろしくと伝えてくれますか?」

「うん!…と言いたいけど…実は今日、ララさんもリンゼさんもお休みなの……」

「(えっ?)」


あの2人が?

なんかいつ来ても働いてるあの2人が?


…あれ?

別に不思議じゃないな?


「あの人たち、ちゃんとお休み出来るんですねぇ……」

「マーガレットちゃん……気持ちはよ〜く分かるけど、もうちょっと柔らかくお願い……」

「あっすみません」

「私もね?最初はやっとお休みする気になったのかなぁ〜って思ってたんだけど、どうやらただのお休みじゃないみたいなの」

「えっ?どういうことですか?」


お休みにそんな種類あったっけ?

休日、祝日、有給ぐらいしか出てこないけど……?


「私も昨日いた先輩に聞いただけだから詳しくは知らないんだけど、なんでも、近いうちにマスター会議をするほどの問題らしいよ?」

「マスター会議を?」


(って、なんですかそれ?)

(知らん。でも多分、各ギルドのギルドマスターを集めて会議することじゃないかな)

(確か冒険者の街であるこの迷宮都市だと、ダンジョンマスターの次に偉いのはギルドマスターの皆さん…なんですよね?)

(うん、それであってるよ)


この迷宮都市には、他の国とは違い貴族がいない。

なので、この街の創設者であるダンジョンマスターが一番偉いのはいいとして、次点で地位があるのはこの街の人口の半分以上を占めている冒険者をまとめるギルドマスターたちだ。


正確には、それぞれのギルドで専門技術を学んだりただのお手伝いをしたりしてる人もいるので、みんながみんな冒険者というわけではないが、それでも冒険者たちがお世話になる施設を管理している彼らは高い地位を持っている。


「マーガレットちゃんは昨日いたんだよね?何か聞いてないの?」

「残念ながら。私が隠密ギルドから帰ってきたときには、ララさんはもう話し込んでいたようですし……」

「そっかぁ………あっそうだ。実はそこの机にマーガレットちゃん宛てのララさんからの置き手紙があったの。はい、これ」

「ありがとうございます。読んでいいですか?」

「うん、いいよ」


ナタリアさんに許可をもらい早速目を通す。



マーガレットちゃんへ


今日は急用が出来てしまい、私もリンゼも、エストちゃんやシャールちゃんたちも顔を出すことが出来ません。

チェルシーちゃんにも急遽お休みを取ってもらいました。

ご主人様とマルちゃんが決めたことなので、連絡は必要ありません。


理由も出来れば聞かないでほしいな。

ご主人様かマルちゃんが「いいよ」って言ってくれたら教えるけど、それなら多分自分で言うと思う。


だから、それまで待っててほしい。

なので理由はここでは言えません。

ごめんなさい。


マーガレットちゃんは気にせず、明日の試合のことを考えてね。

明日は絶対みんなでマーガレットの勇姿を見るから、絶対に勝ってね♪


ララより



…凄いプレッシャーかけられた……。

いやまぁいいけどさ……どうせ元からそのつもりだし……。


(チェルシーたちまで呼ぶなんて……やっぱり昨日の通信は何かよくない内容だったんじゃ……)

(そうかも……とはいえ、向こうから言ってこない以上、こっちは言われた通り頑張るしか出来ないし、ここで考え込んでも仕方がないよ。今は練習のことを考えよう)

(…そうですね……分からないことが多すぎますから、まずはやるべきことを済ませちゃいましょう)



マグとそう結論が着いたところで、ナタリアさんが手紙の内容を聞いてきた。


「なんて書いてあったの?」

「理由は言えないけどチェルシーたちも含めて今日はお休みだということと、明日の講習会にはちゃんと参加するから頑張ってって書かれてました」

「そっかぁ……チェルシーちゃんもお休みなんだ……残念だね……」

「はい……元からお休みの私はともかく、ショコラたちが寂しがりますね……」

「マーガレットちゃんもお休みだもんねぇ……」


俺たち2人ともがいない上に、ララさんとリンゼさんという教育係もいないとなると、かなり心細くなるかもしれない……。


と、考えていると、ナタリアさんが俺に提案する。


「そうだ。せめてお昼は一緒に食べてあげられないかなぁ?それなら少しは元気が出ると思うの」

「あっそれいいですね。私からお願いしたいぐらいです」

「ほんと?それじゃあそう伝えておくよ〜!」

「はい、お願いします!」


よしよし。

これならショコラちゃんたちも喜んでくれると思うし、メリーも2人に会えて喜ぶと思う。

いいじゃないか〜♪


「うん、任せて!それじゃあ練習頑張ってね〜!」

「はい!いってきま〜す!」

「いってらっしゃ〜い!」


ナタリアさんに送られ、俺は迷宮の入り口付近にいるディッグさんたちの元へと向かう。


「あっおかえりマーガレットちゃん!」

「おかえりマーガレット。何か手紙もらってたけど、誰からの?」


おぉ…さすがユーリさん。

そこそこ離れてるぐらいだったらこの人混みの中でも分かるのか……。


「これは…」

「まさかラブレター!?」


ザワッ!?


「違いますよ。今日お休みのララさんからです」


ふぅ〜……


「(…………)」


そんなざわつく?


俺たちが周りを見ていると、まったく気にしてないメイカさんが俺に尋ねてくる。


「ララちゃん今日お休みなの?」

「はい。リンゼさんとチェルシーと一緒に急用だそうです」

「そっかぁ……ショコラちゃんたち寂しがっちゃうね……」

「はい。なので先輩がお昼ご飯は2人も一緒にお願い出来ないかって…」

「あっいいね!2人とも喜ぶよ〜!」

「でしょう?なのでお願いしちゃいました」

「わぁ〜い!可愛い子たちとご飯〜♡」


((えっ?))


「いやお前は迷宮だろうが」

「ハッ!?そ、そうだった……!」

「お前何しに来たんだよ……?」


思いっきり一緒に食べる気満々だったメイカさんは、ディッグさんの指摘により即座にズーン…と沈んでいった。


メイカさん……欲望に忠実過ぎんよ……。


一方、友だちに会えると分かったメリーは上機嫌。


「……♪」

「よかったわね、メリー」

「……うん♪」


この笑顔だけでも英断だったと思えるね……♪


「それではそろそろ行きましょうか」

「はい」

「あっ!待ってマーガレットちゃん!」

「(?)」


ケランさんの言葉に賛同した俺に、メイカさんから待ったが掛かる。


「どうしました?」

「一緒にご飯が食べられないなら、せめて下まで手を繋いで〜!」

「あっはい」


(…ここに来るまでも繋いでたじゃないですか……)

(マグ…しっ)

(は〜い)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


メイカさんたちを見送り、闘技場の受付ホールに来た俺たち。

そこで久しぶりの顔と鉢合わせた。


「おっ」

「げっ」

「「げっ」とはなんだよ」

「そうだぞ!チビ!」

(あ゛っ?)


ルーク少年とその一味だ。

開幕早々「チビ」発言によりマグが10歳の女の子が出すべきではないドスの利いた声を発した。


とはいえ、ここで言い返さなければマグをバカにされたままで終わってしまう。

俺は年長者の余裕を持って答える。


「い~や、別に。君らもこれから練習?」

「ふんっ!お前相手に練習するわけないだろ?」

(じゃあなんでここにいるんでしょうね)


マグがチクリと棘のあることを言った。

確かにそれは気になるので尋ねてみる。


「じゃあなんでここにいるのさ」

「ははは!宣戦布告のために決まってんだろ!」

「そんなことも分かんないのかよ?」

「バーカ!ぷぷぷ♪」


(どっちが……)

(マグ、落ち着け。しょうがないよバカは自分がバカだって気付かないんだから)

(む…なるほど……かわいそうですね……)


辛辣ぅ☆


「で?宣戦布告って?」

「ふん!しょうがないから教えてやるよ!」


(俺が聞かなかったら誰に言うんだろう……?)

(コウスケさんが聞かなかったらどうするんだろう……?)


「俺は!お前に!無傷で勝つ!」

「いいぞぉルーク!」

「かっこいいぞー!」

「(…………)」

「なんだぁ?怖気づいたかぁ?なんならハンデをやってもいいんだぜ?」

「うーわっ!優しいなぁルーク!」

「まぁな!はーっはっはっはっはっ!」


(……どうするマグ?言う?)

(う~ん……いや、やっぱ面倒なのでちゃっちゃと切り上げて練習しましょ?)

(そうだね。そっちのが有意義だわな)


「ハンデいらないよ。じゃね」

「「「うぉい待て待て待てぇぃ!!?」」」


((めんどいなぁ……))


「なにさ?」

「俺の優しさがいらないのか!?」

「(いらない)」

「はっ!ルーク、こいつほんとにバカだぜ!ハンデがあったって勝てないのに、それもいらないなんてな!」

「本当は負けるのが分かってて意地はってるだけなんじゃないか?」

「なるほどぉ?」


ニターッと笑うルークと他2名。


あぁ~……めんどくせぇ~……。


「そうかそうか。周りの目もあるし、今更無かったことになんて出来ないもんなぁ?」

「うわぁ…かわいそー……♪ぷぷぷ♪」

「でも?今の俺は、ようやくあのバカおやじから解放されて機嫌がいいからなぁ……特別に許してやってもいいぜ?」

「おぉ!さすがルーク!誰よりも優しいなぁ!」


(へぇ……ってことはジェイクさん、成功したんだな……)

(それで私たちにこんなに突っかかってくるんですねめんどくさい)


おっと……。

マグのイライラがそろそろ限界かも?


が、こちらのことなどお構いなしにガンガン話を進めるルークたち。


「たーだーしー?「許してくださいルーク様」って言って土下座したらだけどなぁ!」

「うわー!容赦ねぇー!はははは!」

「マジでかわいそうだわー!」


(はぁぁぁ……)

(マグ、大丈夫?)

(ものすごいイライラします)

(…もうちょっだけ頑張って……ちゃんと甘やかしてあげるから……)

(は~い……)


ゲラゲラ笑う少年グループにマグがもう限界の様子。


「それで?どうすんだ?ん?」

「結構です」


それだけ言ってさっさとその場を去ろうとするが、3バカがそれに気を遣うわけも無く……


「おいおい!ほんっとバカだぜあいつ!」

「もう無理だわ!バカすぎて!あははは!」

「バーカバーカ!」


と、ずっと煽ってくる。


(はぁぁぁぁぁぁ……!)


いかん。

マグが苛立ちのあまり技出す前の格闘家みたいなため息吐いてる。


もうちょっと!もうちょっとだから!

ここでスーッと去れば終わりだから!


しかし、そんな終わりかけの場面で割って入ってしまった少女が出た。


「…マグはバカじゃないもん!」

「(メリー……?)」


まさかのメリーである。

人間そんなに好きじゃない…系の女の子であるはずのメリーが3バカに食って掛かったのだ。


まったくの予想外である。


「なんだこのドチビ?」

「…謝って。マグに謝って」

「なんでんなことしなきゃいけねぇんだよ?」

「バカじゃねぇの?」

「いいから謝って!」

「やだよ!」

「謝れぇ!」

「こっの……!」


メリーがルークに抱きつきマグへの謝罪を要求する。


(メリー……)


マグも心なしか嬉しそうだ。


が、振り払われたらさすがに危ないだろうと俺は静かに強化魔法を発動させた……次の瞬間。


「っちっ…!邪魔だっ!」

「……あ…!」

「…やばっ…!」


ルークがメリーを振り払った後にやっちまったと声を上げた。

しかしメリーが硬い床に倒れこむことは無かった。


「……?」


ぎゅっと目をつぶったメリーが不思議そうに目を開けた。


「(大丈夫?メリー)」

「!」


そんなメリーに、彼女を後ろから支えている俺は声をかけた。


一方、一瞬で移動してメリーを受け止めた俺に驚きを隠せない様子のルークたち。


「なっ…!?はっ…!?」

「那覇?」


沖縄がどうかしたんだろうか。

まぁどうでもいいや。


俺は同じように驚いているメリーに手を伸ばす。


「メリー。行こ?」

「…………うん♪」


ボーっと俺を眺めていたメリーは、その手を嬉しそうにとってくれた。


「フルールさんも行きましょ?」

「……そうね」

「「「…っ!?」」」


俺に答えながらも、最愛の娘に手を上げた少年グループをジロッと見るフルールさん。


(こ、怖いですね……)

(うん……)


これは3バカが悲鳴上げるのもしょうがないよ……。

同情はしないけど。


そんなアホどもはさておき、俺はメリーと手を繋ぎながら受付で部屋の鍵を受け取ると、さっさとその場を離れた。


部屋に向かう途中で、俺はさっきのお礼をする。


「メリー、さっきはありがとね」

「…!……か、家族を守るのは当たり前…だから……」

「(メ、メリー!)」

「んきゅ!?」


感極まった俺たちは思わずメリーを抱きしめた。


メリーがそんなこと言ってくれるなんて……嬉しすぎるよぉ!


「あぅ…!あぅ…!」

「メリー!ありがとー!」

「あぅぅ…!」


(コウスケさんコウスケさん!私も私も!)

(どうぞどうぞ!)


「メリー♪えへ~…♪嬉しかったよ~♪」

「…っ!…だって…ほんとのことだし……」

「っ!も~♪可愛いなぁ~♡」

「んむぅ~…」


あぁ~♪

もちもちほっぺをすりすりしてるところとか尊すぎるわぁ~……♪


と、そこで。

それを同じく微笑ましく眺めていたフルールさんが、急に申し訳なさそうな顔をして謝ってきた。


「…ごめんなさい2人とも……本当は保護者の私が止めるべきだったのに……」

「んにゅ……大丈夫ですよフルールさん。コウスケさん、元からまともに取り合う気なかったですし、私もそうするので」


容赦ねぇ~。


「でもフルールさんだったら、メリーが止めに入ったところで一緒に来てもおかしくなかったのに……何か考えてたんですか?」


ん…確かに。

メリーが来たから、フルールさんも割って入ってくるものだと思ってた。


「…この子が他人のために体を張るなんてって思って……一緒にいたはずなのに、知らない間にこんなに育っちゃったんだって思ったら、なんだかボーっとしちゃって……」


この成長の喜びを噛みしめてたのか……。


そんなフルールさんにマグが呟いた。


「…やっぱりフルールさんっていいお母さんですよね」

「な、何よ突然……?」

「いえ…本当にそう思っただけなので」

「?」


……マグは途中から両親と疎遠になってたらしいから、フルールさんとメリーの関係が羨ましいのかな……?


ぎゅっ


「メリー?」

「…♪マグもママのことをママって呼べばいい」

「(「へっ?」)」


突然何を言い出すんだこの子は?

しかしマグはちょっと乗り気なようで……


「…ママ?」

「……長女より年上の子どもが出来ちゃったわ……」


あっ。フルールさんも割と良いらしい。

ん…そうなると……


(マグはお姉ちゃんということかな?)

「っ!?メリー!ちょっと私のこと「お姉ちゃん」って呼んで!?」

「……わたしの方が先にママの子どもだったからお姉ちゃんはわたしの方」

「えぇっ!?」

「もう…あなたたち、()()仲良くしなさい?」

「「!……は~い!」」


そんなわけでマグに新しくお母さんと姉妹が出来ました。


元々家族()()()だったのが、より一層家族に近づいたんだな……。


「「「…♪」」」


…ふふ♪

微笑ましい、良い家族だねぇ♪


……ん?

そうなると俺はその家庭に婿入りすることになるのか?

恋人と妹と未亡人の家に居候?……なんだかエロゲのシチュエーションみたいだな……。


なんて馬鹿なことを考えている間にも、マグたちはもらった鍵の番号の部屋へと仲睦まじく歩んでいった。

次回は7/24(土)更新の予定です!


お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 〉「いつもメイカさんが抱きついて補充してるものです」 「なるほどねぇ」 毎朝貰ってるからこその納得の仕方ww [気になる点] 今更ながら気付いたのですけど、受付嬢に果し状叩き付ける冒険者…
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