183.朝から試練の14日目…まどろみと反撃
さて……と目を覚ますと、すぐに誰かが体に抱きついていることを察する。
その犯人の綺麗なパープルヘアーを撫で、俺は顔だけを動かして反対側を見る。
こちらのお狐さんは抱きついてはいないが、手をきゅっと繋いでご自分の豊満に抱きかかえていた。
まぁつまり動けねえです。
どうすっかなぁ……。
ユーリさんは起きてくれるだろうけど、メリーはこの幸せそうな寝顔を見ていると起こす気が無くなってしまう。
いやまぁユーリさんも素敵な寝顔ですけども。
だってメリー、俺のこと避けるんだもん……。
理由は分かってて、嫌われているわけじゃないのは知ってるんだけど……それでも避けられると悲しみが激しい……。
だから寝ているときとはいえ、こうして甘えてくれるのは凄く嬉しい。
だから起こしたくない。
とはいえいつまでもこうしているわけにもいかない……。
マグはまだ寝てる(気絶)から交代できないし、とりあえず協力者を増やすか……。
「…ユーリさん」
「んぅ……おはよー……」
およ?
この感じは……。
「んふ~…♪コウスケぇ……♪」
「っ!」
やっぱり寝ぼけてる!
珍しい!
ねぼすけ狐さんはメリー同様俺の体に抱きついてくる。
俺の手を胸に抱いたまま。
マグの体が柔らかくてよかったぁ~!
めっちゃ腕折りたたまれてるもん!
これ硬かったら痛い奴だよ?
「んぅ~♪マーガレットの肌…気持ちいい~……♪」
俺の頬に自分の頬をスリスリしてくるぞぉ。
しかもいつの間にか服めくられて肌にふにふにがスリスリされてるぞぉ?
禁欲中のやつには猛毒だぞぉ?
「…んちゅ…♡」
「っ!!?」
なんで今この人俺のほっぺにちゅーしたの!?
「ちゅっ…ちゅっ…♡ぷちゅ…♡ん~…ちゅ…♡」
しかもめっちゃしてるんですけどぉ!
流星発動してるんですけどぉ!
威力半減してないバグ発生してますけどぉ!!
「ユ、ユーリさん……?」
「ちゅぅ~~~…♡」
「ん……!」
今度は物凄い吸いついてくる……!
やばいやばい……!
マグからの連戦は聞いてないってぇ……!
「ユ、ユーリさん……!起きてぇ……!」
「ちゅぅ~……ぽっ♡……えろぉ…♡」
「ひやぁ…!」
ようやく吸うのをやめたと思ったら、今度は舐めてきたぁ……!
しかも抱きつきが強くなって、俺の左腕と体によってユーリさんのふにふにがふにょんってなって包まれてるみたいになってマジやばいぃ……!!
収納されてるから左手は使えないし、気は進まないけど空いてる右手でほっぺでもつねって起きてもらうしか……
かぷっ
「ちゅうちゅう…」
「んぅ…!」
逆サイドのメリーが吸血を…って右手ぇぇぇ!!
体に抱きついてたメリーが俺の首筋に来るために右肩に乗ったぁぁぁ!!
これじゃあユーリさんのほっぺをつねるどころか、体を横にすることも……
「えろぉ…ん…れぇ…えぇ……♡」
「ちゅうちゅう…」
「んふっ!んんぅ~…!ふぅ…!んふぅ…!」
ユーリさんにねっとりと舐められながら体を押しつけられ、メリーにはちゅうちゅう血を吸われ、両サイドから与えられる快感が禁欲を志した俺の理性を容赦なく抉り取っていく。
思わず声を我慢してしまったが、「さすがに大きい声を出せば起きるのでは?」とようやく気付いた俺は2人を起こすべく名前を呼ぼうとして口を開いた。
「ふぅ~♡」
「ちゅう…ん…♡」
「んあぁぁっ♡」
そのときタイミング悪く、ユーリさんが耳に息を吹きかけ、右半身に乗っているメリーと俺のお胸のあれがこすれてめっちゃデカい声を上げてしまった。
「ん……?…マーガレット……?」
「ちゅう……ふぅ……マグ……?」
そこでようやく2人は目覚めた。
そして、涙をこぼし息を荒げてまともな思考が出来ない状態の俺を見て、揃って顔を青くしたのだった。
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「ほ、ほんとに怒ってないの……?」
「怒ってないですよ」
「……ほんと…?ほんと…?」
「うん、怒ってないよ」
2人に何度も同じことを聞かれ、それになんども同じ回答をしながら身支度を済ませる俺。
しかしそこで問題が発生。
なんとユーリさんが吸い付いたところにキスマークが付いており、しかもこれが落とせなかった
どうしよう。
仕方が無いのでそれは後回しにして、自分の支度が整ったところで未だ寝間着姿の2人にも準備を促す。
「ほら、ユーリさんたちも支度を整えないとですよ」
「でもぉ……」
「…………」
「…も~……じゃあ俺にいろいろさせてください。それでいいですか?」
「「……!…うん!」」
はぁ……やっぱりただ大丈夫だって言うだけじゃ駄目だなぁ……。
何か交換条件を出さないと、相手がスッと納得してくれない……。
無料なのは落ち着かないって気持ちはよく分かるけどね……。
…しかし……多分普通に支度の手伝いしただけじゃあまり納得しないかもなぁ……。
きっと「ほんとにこれでいいの……?」って言ってくると思う……。
寝ぼけてるときのわざとじゃないって分かってる出来事なんだから、正直しょうがないなぁ…程度にしか思ってないんだけど……。
あ~でも……確かによく覚えてないけど大変なことをしたっていうのは怖いよなぁ……。
……しゃあない……ちょっとお返ししますか……。
「じゃあまず2人とも、とりあえず顔を洗ってお手洗いを済ませてきてください。その間に準備しますんで」
「う、うん……」
「……わかった……」
うん、やっぱ気にしてるな。
その罪悪感……無くしてやるぜ☆
というわけで姿見の前に椅子をセッティングして、いつものように髪を整えられる状態にする。
そしてそれぞれ専用のクシを取り出して机に置く。
さ~て……何をしてやろうか……?
つっても、くすぐりぐらいしか思いつかんのだが。
「………ただいま…」
「ん…おかえりメリー。んじゃ早速お座りよ」
「………(こくり…)」
メリーがおずおずと椅子に腰かける。
やはりまだ気が晴れていないようだ。
なので安心させるために声をかける。
「ねぇメリー、覚えてる?」
「…?」
「俺がいつだか、やられたらやり返すって言ったこと」
「!」
「…今がそのときだと思わない…?」
そう話しながら彼女の手の甲を撫でる。
「っ!」
「とはいえ、このあとユーリさんもいるわけだし、今日はみっちり練習する予定だし……なる早コースでいくから、そう緊張しなくていいよ」
「……(ホッ)」
「…で・も……」
「ひゃっ…!」
ホッと息を吐いたメリー。
そんな彼女の耳にボソッと囁くと、メリーには珍しいびっくりした声をあげた。
「この前のお風呂の分……まだしてなかったよね……?」
「ふゅ…!んぅ…!」
「だからぁ……♪その分もこの短ぁ~い時間に詰め込むから…よろしくね♪」
「っ!!?」
「じゃっ♪いきま~す…♪」
「…ふぇっ…!ま、待ってぇ……!」
「ダ~メ♪」
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〔ユーリ〕
「はぁ……」
またコウスケに気を遣わせちゃったなぁ……。
私たちの気が済まなかったとはいえ、かなりしつこくしちゃったかも……。
「ん……!」
「ん?」
今メリーの声が聞こえたような……?
「んふ…!んぅん…♡」
「っ!?」
な、なんかえっちな声が聞こえたような……!
「ふにゃあっ!」
「っ!!」
してる!これ絶対えっちなことしてるぅ!
えっ?えっ?なんで?なんでえっちなことなんで?
ま…まさか……!
やっぱり怒っててその仕返しをしてる!?
あわわわわわ……!
それじゃあメリーちゃんを先に行かせたのは失敗だったかもぉ……!
私が先に行ってコウスケの機嫌をよく確認しておけば……
「ひゃふぅっ!んふふ!んんーーっ!」
「くすくす♪必死に声我慢してえらいねぇ…メリー♪」
はわっ!コウスケだ!
私は扉に顔を寄せて耳を澄ます。
用はもう済んでいて、バッチリ下も穿いているので何の問題も無い。
「じゃあこういうのはどう?」
「ふひゃうぅっ!あふっ!あはは!ご、ごめんなしゃ…!ふふふふ!んふふっ!ごめんなしゃいぃ!」
「ほぅれほぅれ♪ここかなぁ?こっちもいいかなぁ?」
「ふにゃっ!はっはふぅっ!んひゃうふふふ!ゆ、ゆるひてぇぇあははははは!」
あわ…あわわわわ……!
なんだか大変なことになってるよぉ……!
で、でもメリーちゃん……これは…笑ってる……?
笑ってるのに大変な目に……ってことは……くすぐられてる……?
くすぐり……?コウスケの……?
……それってまずいのでは……?
以前メイカさんとメリーちゃんと3人でコウスケに「おしおき」されたときも、コウスケはやられたことを返すように執拗に耳に息を吹きながらじっくりとくすぐってきた……。
あのときは途中で疲れて寝ちゃったけど、もしかしてさっきの「おしおき」としてまたあれをされちゃうの……?
こっちが本気で嫌がってないか不自然にならないように確認しつつ、大丈夫だと判断したら一つ上のランクに上げる……。
そんな厳しくて激しくて…でも優しいのを今メリーちゃんに……?
ごくり……。
……何をしているのか……真実を知るのは大事なことだよね……。
誰に言い訳しているのか自分でも分からないが、そんなことより扉の向こうが気になる私は、そっ…と扉を開けて隙間から部屋の様子を窺う。
「っ!」
視界に飛び込んできたのは、椅子に座っているメリーちゃんと、メリーちゃんを椅子から逃がさないように彼女の膝の上に乗っているマーガレット…コウスケの姿だった。
でもコウスケはガッツリと乗っているわけでは無く、単にお尻を足に触れさせている程度…ほとんど中腰と言っていいような感じだ。
メリーちゃんは細いから、あまり重さをかけないように配慮してるんだ……。
コウスケらしいなぁ……。
「ふぅ~…♪」
「ひぁぁぁ……!」
…やってることは容赦ないけど……。
コウスケのお耳ふーふーはゆっくりと少しずつじっっくり息を送ってくるから、体がゾクゾク~ってして力が抜けちゃうんだよねぇ……。
…それが気持ちいい…ごほんごほんっ!
「はい、お疲れ様~♪」
「はぁ…♡はぁ…♡はぁ…♡はぁ…♡」
「あ~……水用意しときゃよかったかなぁ……?」
あっ…終わったみたい……ふわぁ…!
メリーちゃん……口を大きく開けてぐったりしてる……!
しかもよだれも垂れちゃって……。
でも…なんだか……
「ユーリさん?」
「ひゃああっ!?」
「うわぁっ!?」
いつの間にか近くに来ていたコウスケに驚いて思考が中断される。
「コ、コウスケ…いつの間に……!?」
「いや思いっきり正面から行きましたけど……」
「えっ?」
「ユーリさん…メリーのことをジッと見つめていて俺が近づいても全然気付かなかったじゃないですか……」
「そ、そうだった……?」
「はい。しかもなんだか上の空って感じでした」
あ、あれぇ……?
そんなに見つめてた……?
「で、ユーリさん」
「う、うん…なに…?」
「メリーがダウンしたので、回復を待っている間にユーリさんを仕留めようと思うんですけど」
「あぁうんそうだね、メリーちゃんぐったりしてるし待って今なんて言った?」
何か恐ろしい言葉が聞こえたんだけど気のせいだよね?
「次はユーリさんの番ですよと言いました」
それは髪の毛を整える順番だよね?
「……じゃあもっとはっきり言います。次はユーリさんに「おしおき」をする番です」
あっ……もう言い逃れできないや……。
「さ、ユーリさん?どうせこんな簡単なことでいいのかなぁ?って悩んでたんでしょうけど、よかったですね。お望み通り「おしおき」してあげますよ♪」
「ふ、ふぇぇ……」
バレてるぅ……!
「で…でもでも…!私は今日も迷宮に入るし……あ、あんなにぐったりしたらメイカさんたちに悪いし……!」
「それぐらいちゃんと調整しますよ♪」
「あぅ……!そ…それにほら!あの~…その~……!」
どうにか出来ないか言い訳を探すが、それは逆に自分を追い詰めることになってしまう。
「…まさか……メリーにだけ受けさせて自分は逃げる……なんて、言いませんよね?」
「そ、それは当然だよ!ただその……あ~…ほら!帰ってから!帰ってからなら迷惑かけないし…ね!?」
「ふぅむ……まぁ確かに…ここであんまり疲れさせて、迷宮で怪我しました~なんてのは俺も嫌ですからね……分かりました。帰ってからにしましょう」
よ…よし……!
とりあえずぐったりしたまま迷宮に入ることにはならずに済んだ……!
…そのかわり帰ってきてから大変そうだけど……。
どうにか山を越えたと思っている私に、コウスケはもういつも通りの調子に戻って私を呼んだ。
「んじゃあユーリさん。普通に髪と尻尾梳いちゃうので椅子に座ってください」
そう言いながらぐったりしてるメリーちゃんを強化魔法を使ってベッドに運ぶコウスケ。
その間に椅子に座っておく。
もしかしたら不意打ちされるかも……と密かにドキドキしていたのだが、特に何事もなく髪も尻尾も整えてもらえた。
「はふぅ……♪ありがとうコウスケぇ……♪」
「えぇ…はい……どういたしまして……」
……前からそうだけど、コウスケは私の尻尾を整え終えた後、いっつも疲れた顔をしてる気がする。
もしかして本当はしたくない……?
うぅんでも…自分でクシを用意してくれたし、いっつもコウスケの方から誘ってくれるし……う~ん……?
聞いちゃお。
「ねぇコウスケ」
「はい?」
「尻尾を梳いてくれるのは嬉しいんだけど、どうしていつも終わったあと疲れた顔をしてるの?」
「…あ~……」
鏡越しに見るコウスケは、少し気まずそうに顔を逸らしてほっぺをカリカリする。
…?言いづらいことなのかな……?
やっぱり本当は私に気を遣ってくれてた……?
「…コウスケ…もし気を遣ってるのならこれからは自分でするから……」
「いや、ユーリさんの尻尾をモフモフするのは趣味に入ってるのでそれは嫌です」
「えっあっそう……?」
よかったぁ……ってあれ?
「じゃあどうして?」
「……ユーリさんの声が……」
「?私の声?」
コウスケにしてもらうのは気持ちが良いから、確かにちょっと声が出ちゃってるけど……。
他の人に聞かれるのはちょっと恥ずかしいけど、コウスケなら別に今更だしいいかなって思ってる。
でもそれがいけないのかな?
そう思ってると、コウスケは私にとって衝撃的なことを言った。
「……えっちなので……」
「!!?」
えっ!?ええええええっち!!???
「え、えっちって……ど、どこが……?」
「えっと……尻尾を梳いてるときの声が……です……」
「え、えぇ……?」
気持ちいい声は出てるけど……それがえっちなの?
「う~んと……その……なんか……喘○声みたいで…ドキドキするというか……」
「あえ○ごえ」
って何?
「あえ○ごえって?」
「し、知らないんですか!?」
「うん」
「…………教えるべきかなぁこれ……?」
「?」
物凄い難しい顔をしている……。
「そんなに悩ましいものなの?」
「えぇまぁ…悩ましいものですね……」
「ふ~ん……」
そうなんだぁ……大変だね。
そんな軽く考えてるのが伝わったのか、コウスケは信じられないものを見るような顔で私を見た後、少し目を閉じたかと思えば次いでメリーちゃんを見る。
「…よし……ユーリさん」
「ん?」
「意味を教えますのでお耳をお貸しください」
「あっうん」
どうやら教えてくれるらしい。
さっき目をつむったのは多分マーガレットが起きてないかを確認したんだと思う。
それでメリーちゃんも確認したということは……あんまり子どもには知られたくないことなのかな?
「いいですかユーリさん…?」
「ふぁ…」
「ユーリさん?」
「だ、大丈夫大丈夫…!続けて…」
こしょこしょとお耳の側で話すコウスケの吐息にピクッとしてしまい慌てて誤魔化す。
うぅ……あのときのこと思い出しちゃう……!
コウスケにじっくりと耳を責められたときのこと……!
ダメダメ……!
ちゃんとお話聞かないと……!
「…?えっと…それでですね……」
「う、うん……」
「喘○声っていうのは…その……気持ちがいいときに出ちゃう声のことで……」
「?それなら別にこんなこしょこしょしなくてもいいんじゃない?」
もしかしてこれも「おしおき」の一環なのかと思ったが、この後の言葉でそんなことはなかったと理解する。
「それがその……マッサージとかそういう健全なやつじゃなくて………胸とかお尻とか触られたときに出てくるようなえっちな気持ちよさを感じたときの声のことです……」
「…………へ……?」
胸とかお尻とか……?
えっちな気持ちよさのときの声……?
あ……あわ、あわわわわわ……!
「そそそそれってつまり……えっちなことしてるときの声って…こと……?」
「……(こくり)」
「そ、それを私はずっと言っちゃってた……?」
「…………(こくり)」
「あ……あぁぁぁ……!」
そ…そんなぁ……!?
じゃ、じゃあ私はずっとコウスケにえっちな声を聞かれてたってことぉ……!?
コウスケにぃ……!男の人にぃ……!!
「……ユーリさん……帰ったあとの「おしおき」……無しにしてあげますね……」
「う…うぅぅ……!」
コウスケが私の背中を撫でて慰めてくれるけどぉ……!
「もういっそひと思いにやってぇぇ……!」
恥ずかしすぎて私はしばらく立ち直れず、そんな私をコウスケと目覚めたマーガレット、回復したメリーちゃんが慰め続けてくれた。
うぅぅ…恥ずかしいぃぃ……!
もっとちゃんといろいろ勉強しよう……!
ユーリさん、ついに自分の声に気付くの巻。
次回の更新は7/21(水)の予定です。
次回もお楽しみに〜!




