181.再び教会へ…仲直りと内緒のお話
「ただいま〜マーガレットちゃ…んっ!?」
「あっおかえりなさいメイカさん」
「おかえりなさ〜い」
「えっ!?えっ!?何してるの!?」
相変わらず正確にいつもの時間に帰ってきたメイカさんたち。
換金と迎えをしに来たメイカさんは、書類を整理しているチェルシーの後ろにピットリと寄り添い、そこからクッキーと水を与えている俺と、それを嬉々として口で受け取るチェルシーに驚きの声を上げた。
んでまぁ…何してるかと聞かれれば……
「甘やかしてます」
「甘えてます」
「ずるい!」
「(「う〜ん…さすがメイカさん」)」
二言目には欲望が漏れ出した。
これには周りの冒険者やスタッフも「わかる〜」と頷いて……羨ましかったの?
どっちが?
「マーガレットちゃん!あとで私にも「あーん」して!」
「なんだかんだいつもしてるじゃないですか」
「それはそれ!その後ろから抱きついて食べさせてほしいの!」
「(「う〜ん…さすがメイカさん……」)」
こんな公の場で堂々とそんなことを……今更かな?
「まぁメイカさんたちが帰ってきたし、私たちもそろそろ上がらせてもらうよ」
「うん!ありがとうマギーちゃん!」
「どういたしまして。チェルシーも今日は一段と頑張ったね」
「マギーちゃんがお世話してくれたからだよ〜♪」
正直邪魔になってないか心配だったのだが、彼女は今までよりも張り切って仕事を進め、今日分の自分の仕事のほとんどを終わらせてしまった。
合間合間に俺もサポートはしたが、それよりも彼女を甘やかしていた時間の方が長い。
…もしかしたらチェルシーもララさん並みの仕事を捌く実力を秘めているのかもしれない……。
でもこれ以上社畜を増やしたくはないので言わない。
チェルシーもララさんの仕事量に引いている様子だし。
「ショコラ〜、パメラ〜」
「は〜い!」
「なぁに〜…あっ!メイカさんこんにちは!」
「こんにちは〜!」
「うん、こんにちは〜♪」
あの2人を呼ぶとすぐにこちらに来てメイカさんと挨拶を交わした。
「メイカさんたち帰ってきたし、そろそろ帰ろう?」
「うん!」
「は〜い!……でもララさん戻ってこなかったね……」
「えっ?ララちゃんどこかに行っちゃったの?」
「実は……」
メイカさんに事情を説明する。
「へぇ〜……リンゼちゃんは?」
「リンゼさんも帰ってきたあとその話をしたら上に行ってそのままで……」
「そうなんだぁ……あんまり大変なことが起きてないといいけど……」
「はい……っと、それじゃあ帰る支度をしますね」
「あっうん。じゃあ向こうで待ってるね」
「はい。行こ、2人とも」
「「うん」」
ショコラちゃんたちの着替えを済ませるため、俺たちは更衣室に向かう。
休憩室に入る前にチラッと執務室の方を見てみたが、やはり出てくる気配はなかった。
ほんと…何があったんだろう……?
気になりはするものの、今はそれよりもすることがあるので大人しく更衣室へ。
ぶっちゃけ家から制服を着てきている俺には何の用もない部屋なのだが、ショコラちゃんとパメラちゃんは当然のように俺を更衣室に連れ込んだ。
マグと付き合っているロリコンの俺には、その同年代である2人の着替えはやはり目の毒。
だがしかし下手に目を逸らせば追及が来るのは目に見えているため、仕方なく2人の着替えを眺める。
何故マグに代わらないかというと、2人がずっと俺を求めて話しかけてくるからだ。
マグが表に出ていたときの2人は仲の良い友達として接してきていたのに、俺が表に出ているとちょくちょく甘えてくるのだ。
そして今日、マグの甘やかし方だと「違う」らしいというのが分かったので、俺が出ざるを得ないのだ。
そのことでマグは少し落ち込んだ。
さて、着替えが終わった2人と共にホールへと戻った俺たちは、まずチェルシーに別れを告げに行く。
「チェルシー、またね!」
「あっうん!またね〜!」
「また明日〜!」
「うん、ばいば〜い!」
ショコラちゃんとパメラちゃんがそれぞれ挨拶を交わしたあと、明日はオフになった俺も別れを告げる。
「じゃあね、チェルシー」
「うん!あっ…ねぇマギーちゃん」
「ん?」
「今日はありがとう!…よかったらまたしてくれる……?」
どうやらかなりお気に召したようだ。
でもあれ結構恥ずかしいんだよなぁ……。
…でも……こんな期待されてちゃ断れないよなぁ……!
「…うん、いいよ」
「やったぁ!じゃあまたね!マギーちゃん!」
「うん、またね」
やっぱり人妻の自覚無いだろ。
そう思ったが文句はハルキに言うことにして、チェルシーの喜ぶ答えを返して彼女と別れた。
メイカさんが指し示していった方に向かうと、目当てのパーティを見つけた。
「あっマーガレット。ショコラちゃんとパメラちゃんもお疲れ〜!」
「おう、嬢ちゃんたち!お疲れさん!」
「みんなお疲れさま」
「ユーリさん、ディッグさん、ケランさんもお疲れさまです」
「お疲れさまです!」
「お疲れさまです」
ユーリさんたちに挨拶を返す俺たち。
早速俺は本題を話し始める。
「皆さん。今日はちょっと教会に寄って行きたいんです。だからショコラたちと一緒に行ってもいいですか?」
「ん…教会ってことは、ロッサ村の人たち?それなら私たちも久し振りに会いたいから着いて行ってもいいかな?」
「わっ!大歓迎です!」
「メイカさんたちと会えたら、みんなきっと喜びますよ!」
「ほんと?よかった〜!」
2人の言葉にホッと胸を撫で下ろすメイカさん。
それに待ったをかけたのはケランさんだ。
「その前に、フルールさんにそのことを伝えないと…また怒られますよ?」
「うっ…!そ、そうね……」
「あっじゃあ私が先に帰って伝えますよ。私は村の人たちを知りませんし」
「あっそっか……ごめんね。じゃあお願いできる?」
「はい」
ユーリさんがフルールさんたちに伝えることが決まり、俺たちは彼女と別れて教会へと向かう。
一度行ったとはいえ、あのときはココさんに抱えられて屋根の上を走っていったので、道など全く知らない。
なのでショコラちゃんたちに案内してもらうことに。
道中世間話をしつつ歩き、10数分歩いたであろうところで目的地に到着した。
「ここが教会?」
「はい!」
「ナバロさんって方が私たちのお世話をしてくれてるんです」
「へぇ〜」
パメラちゃんが軽く説明をしつつ、俺たちは正面の大きな扉を開けて一声かけて中に入る。
「ごめんくださ〜い!」
「はい、どちら様でしょう……おや、あなたは……」
すると、奥から見知った神官が現れた。
「お久しぶりです、ナバロさん」
「えぇ、お久しぶりです、マーガレットさん。そちらの方々は?」
「こちらは私がお世話になっている冒険者パーティの方たちで、ロッサ村の人たちとも顔見知りなんです」
「なるほど、そういうことでしたか。初めまして、この教会の管理を任されているナバロという者です」
「初めまして。私はメイカ」
「ケランと申します」
「俺はディッグだ。突然訪ねてしまってすまない」
「いえいえ。ここは教会ですから、来る者は基本拒まず…ですよ」
基本…って……。
いやまぁ確かにそうだけど、それを堂々と言っちゃうかね普通?
「と…立ち話もなんですし、こちらはどうぞ。ショコラさん、パメラさんは手を洗ってきなさい」
「「は〜い!」」
ナバロさんに着いていき、応接室のような部屋に案内された俺たち。
「どうぞ、お掛けになってください」
「ありがとうございます」
俺たちは並んでソファーに座った…ところで、ショコラちゃんたちが戻ってきた。
「「ただいまマグ〜!」」
「おかえり2人とも〜……っと…うん?」
戻ってきた2人の後ろに、部屋を覗き込むようにしている多数の人影が目に映る。
「ねぇ、そこにいるのって……」
「うん。村のみんなだよ!」
「前のことがあるからマグと顔を合わせづらいんだって」
「(あぁ……)」
まぁ…あれだけ荒れた姿を見ちゃったらなぁ……。
「マグは怒ってないよ〜って言ってるんだけどね〜」
「みんなマグの名前を聞くだけでソワソワしちゃって……」
(相当気にしてるね……)
(あ、あははは……)
やれやれ…と言った感じでそう告げるショコラちゃんたちだが、そこにナバロさんからもタレコミ情報が届いた。
「そういうお二人も、マーガレットさんの名前を聞いては、ソワソワしたりニヤニヤしたりしておりますよ?」
「「うえぇっ!?」」
「あら〜♪マーガレットちゃんに甘えたいのねぇ〜♪」
「「っ!!」」
((図星だぁ))
顔を赤くして俯いた2人を見て、俺たちは同じ感想を呟いた。
そこで2人の様子を見て微笑んでいたナバロさんが、そんな俺たちに今日の用件を聞いてきた。
「ふふふ…ところで、本日はどうされましたか?」
「はい。実は依頼していたロッサ村の調査報告を受けたので、それをみんなにも伝えようと思いまして」
『おぉぉ!』
俺が用件を伝えると、道中で教えていなかったディッグさんたちと扉のところでまごまごしていたロッサ村の住人たちが歓声を上げた。
(コウスケさん。そろそろ…)
(ん、代わろっか)
(お願いします)
(うん。マグも頑張ってね)
(はい!)
マグと交代して彼女が村のことを話すのを見守る。
そんなマグに、ショコラちゃんとパメラちゃんが後ろから優しく抱きついてきた。
彼女たちは村のことを知っているから、村が全焼しているということを話すマグのことが心配なのだろう。
いい子たちだなぁ……。
そしてマグは村の調査結果を話し終えた。
このときも3人の犠牲者のことは言わなかったが、それでもその場には重い空気が漂い、誰も一言も発することなく、ただ時間だけが過ぎていく。
そんなやばい空気の中、マグが口を開いた。
「…えっと……そういうことで、しばらくの間は龍が出ることは無いと思います……」
「…そうですか……」
答えられない村の人たちの代わりにナバロさんが答えてくれた。
しかしそれ以降会話が続かず、場は再び沈黙に包まれる。
(……コウスケさん……)
(うん、なぁにマグ?)
(……どうしたらいいでしょうか……?)
(…マグだって悲しいんだから、無理に場を打開しようとしなくてもいいと思うよ?)
そういうのは大人に任せときなさい?
(でも……みんなに期待させちゃったのに…こんなことしか言えないなんて……やっぱり言わなければよかったかも……)
(そんなことはないよ。みんな村のことは気になってたみたいだし、それなら遅かれ早かれ知ることになる。それなら、今マグが教えることで、この前の件は終わりだって言外に伝えてみんなとのギクシャクを緩和する。これの方がよっぽど良い……そうでしょ?)
(…確かに……そっか…それなら…もしかしてこれからは教会に顔を出しやすくなる……?)
(だと思うよ)
逆に「そんな気まずいこと教えやがって…!」ってなるかもだけど、そうなったらどうにかショコラちゃんとパメラちゃんだけ回収して関わらなければいいし。
まぁそんな薄情なこと、マグには言わないけどさ。
(その辺は相手の出方も見といた方がいいけどさ。やっぱりマグだって村の皆さまと仲良くしたいでしょ?)
(はい、もちろんです)
(だったら「言わなきゃよかった」…ってことは無いよ。だから安心なさい)
(…ありがとうございます……♪)
(ん♪)
マグに元気が戻ったようでよかったよかった♪
(でもここからどう会話をすればいいか……)
(う〜ん…そうだなぁ……)
確かにこの重苦しい空気を打開するのは……なんかいい感じの話題があればいいんだけど……。
う〜ん……。
(……とりあえず、抱きしめてくれてるショコラちゃんとパメラちゃんの手をさすってあげては?)
まったく思いつかなかった。
(そうですね。2人のおかげで落ち着いて話せたわけですし……)
(うん。優しく撫でてあげなさいな)
(はい)
そんなわけで、座ってるマグに後ろから抱きついている2人の手をそっ…と撫でるマグ。
だがあまりにそっ…としすぎたようで、2人はくすぐられたようにピクピクっと反応して笑い出した。
「ふっ…ふふ…!マグぅ……!くすぐったいよぉ…!」
「んふふ…!すごいゾワゾワってする〜……♪」
「あ、あれ?弱すぎた?」
うん、弱いね。
「も〜!心配してたのにくすぐるような悪い子は…こうだぁ!」
「ふやぁっ!?」
突然脇にパメラちゃんの手が突っ込まれくすぐり始める。
「あはっ!あははは!誤解…誤解だよパメラぁ!あはははは!」
「あっ!ショコラもする〜!」
「ふえぇっ!?ショ、ショコラまでぇ!?や、やめ…」
「うりうり〜♪」
「こちょこちょ〜♪」
「あははははははっ!」
お礼代わりに撫でたかっただけなのにくすぐり攻撃と勘違いされたマグは、2人にめちゃくちゃくすぐられることになった。
そのおかげで場の空気はかなり和んだのだが、くすぐられるマグも、その感覚がやんわりと届いて凄くムズムズする俺も、それに気づいたのは2人が満足してくすぐるのをやめたあとだった。
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ディッグさんたちが村の皆さまとご挨拶に行き、一緒にいたがるショコラちゃんたちを教会の案内に駆り出させる。
俺がそうマグにお願いしたのだ。
その理由については、もうすでにマグと話はついている。
そうしてナバロさんと2人きりになったところで、意図的にそうしたことを察している様子のナバロさんがマグに尋ねた。
「それで…何かあの子たちには言いづらいことがある…ということでよろしいですか?」
「……はい……出来れば……あまりショコラたちには知って欲しくないんです……」
「ふむ……」
ナバロさんは静かに続きを促す。
それに応じたマグはゆっくりと話し始めた。
「……さっきのロッサ村のお話ですが……みんなに言ってないことがあるんです……」
「…それは……?」
「…村の周囲を調べていたとき……男の人が1人と、女の人が2人……その3人分の死体を見つけたそうです……」
「なんと……!」
…本当はこの件は俺が話そうと思っていた。
村の方々に調査結果を教える…という目的は済んだのだし、言いづらいことは俺が代わりに言おうとした。
だがマグは…
(…私が言います……)
(でも……)
(……私に伝えさせてください……)
静かに…それでいて強い意志を持ってそうお願いしてくるマグに、俺は渋々頷いたのだ……。
「…何故…それを私に……?」
ナバロさんがマグにそう尋ねる。
「……本当は直接伝えるべきだとは思ってるんです……でも…子どもに聞かれるかもしれないし……私にはいつもショコラたちがいますから……」
「そうですね……あのお二人は、あなたのことを心から信頼しているのだと、あまりよく知らない私が見ていても分かります。大事にされているのですね」
「はい。2人は私の大切な友達ですから」
ここまで辛いのを我慢するようなゆっくりとした口調だったマグは、その返事だけはしっかりはっきりくっきりと答えた。
それにナバロさんはふんわりと微笑む。
「あなたの気持ちはよくわかりました。私も、子どもにあまりにも残酷なことを教える気はございません。子どもには伸び伸びと育ってほしいですから。ですが、必要に差し迫ったら言ってしまうかもしれません……それでもよろしいですか?」
「はい。ナバロさんにお任せします」
「任されました。では、マーガレットさんも皆さまとお話をしてきてはいかがですか?」
なんとか話し終えてホッとする俺。
しかしマグはナバロさんの提案に少しもじもじとする。
どうしたんだろう……?
「……それがですね……」
「?」
「その……私もちょっと…顔を合わせづらいと言いますか……この前みんなの前ですごい泣いたのが恥ずかしいと言いますか……」
「あぁ…それは……う〜ん……」
マグ……。
気持ちは分かるけど、残念ながらそれを越えないと今度遊びに来てもそっから始まることになるよ……。
(コウスケさぁん……!)
(う〜ん……俺が出てもいいけど、マグが直接話したいなら、やっぱりマグが頑張らないと……)
(うぅ〜……!)
「マグ〜?」
「まだお話してるの〜?」
「あっ…ショコラ、パメラ……!」
悩むマグの元に、ショコラちゃんたちが戻ってきた。
「ディッグさんたちは…?」
「みんなとお話ししてるよ!」
「マグもこよ〜よ〜!」
「えっ…えっとぉ……!」
(コウスケさぁんっ…!)
…困ったらすぐ俺を呼ぶようになってるなぁ……。
それ自体は嬉しいことだし構わないのだけど、さすがに毎回俺が助けるのもマグのためにならないし……。
(う〜ん……ならせめて2人に手を繋いでもらえば?さっきみたいに勇気が出るかもよ?)
(ハッ!なるほど!)
しょうがないので友達に助けてもらうことを提案。
「えっと……まだちょっと恥ずかしいから……手…繋いでもいい…?」
「!いいよっ!」
「えへへ♪私もいいよ〜!」
「…!…ありがとう!」
無事に2人と手を繋ぐことが出来たマグは、そのまま村の面々の元へと向かい、まだ少しギクシャクしながらもどうにか話が出来るようになり、しばらくすればもう普通に会話が出来るようになった。
…ふむ……?
少し人数減ったかな……?
まぁ仮住居をハルキが建ててくれてるらしいし、仕事に就いた人もいるだろうから別に不思議じゃ無いか。
さて……出来れば楽しいトークタイムを邪魔したくはないが、残念ながらそうも言っていられない。
俺は少し罪悪感を感じながらも、マグにそれをやんわりと伝える。
(マグ。時間大丈夫?)
(えっ?あっそっか!フルールさんたちを待たせてるんだ!)
そういうことだ。
しかしメイカさんたちはまだ楽しそうに話し込んでいて、あまり邪魔を出来る雰囲気ではない。
(ど、どうしましょうコウスケさん……?)
(ん~……でもあんまり遅いとフルールさんに怒られるし……仕方ない、俺が出よう)
(あぅぅ……お願いします……)
マグは少し考えたが俺に任せることにしたようだ。
悪いね。
でも試合が終わればフリーになるから、お休みの日にでも遊びに来ようね。
そう心の中で謝って、とりあえず俺は「マグの声」を聞き逃さないであろうメイカさんに話しかける。
「メイカさんメイカさん」
「うん?どうしたのマーガレットちゃん?」
「そろそろ帰らないとフルールさんたちに怒られちゃいますよ?」
「えっ!?もうそんな時間!?あっほんとだ!ディッグ~!ケラーン!」
メイカさんが他の2人も呼んでくれたので思いのほか楽になった。
まぁ問題はこっちなんだが。
『えぇ~!?マグ帰っちゃうの~!?』
ショコラちゃんとパメラちゃん…それに村の子供たちである。
「やだやだ~!もっとお話ししようよ~!」
「マグ泊まっていけないの~!?」
「もっと遊びたい~!」
と、俺は初めましてな女の子たちがそう駄々をこねれば…
「なんだよ~…つまんねぇな~」
「なぁ~1日ぐらい泊まってっても大丈夫じゃないか?」
と、男の子たちももっと遊びたいと別れを惜しむ。
う~ん……愛されてるなぁ、マグ。
だがすまない少年少女たちよ……。
ウチにはちょっと恐くて寂しがりやな吸血鬼のおかんと甘えん坊の娘さんが待っているのだ。
それにこちらも甘えん坊なお狐さんもお待ちなのだ。
だから今日のところは帰らせてもらうぜ。
「ごめんね~…ウチにも寂しがりやな子がいるから……」
「むぅ……メリーかぁ……」
「じゃあしょうがないかなぁ……」
メリーのことを知っているショコラちゃんたちは納得してくれたが、知らない他の子たちはそうはいかず、メリーのことを俺たち知っている組に聞いてきた。
その説明でまた時間を使ってしまったが、自分の妹分だと分かると大人しく引いてくれた。
(結構あっさり引いてくれるんだね……)
(村では、新しい子が出来たらみんなの弟や妹みたいに可愛がってましたから、年下のためって言われると弱いんですよ)
(へぇ~、優しい子たちだねぇ)
(はい!自慢の友達ですよ!)
俺が素直な感想を述べると、マグは自分のことのように誇り喜んだ。
村だからこその絆…かな?
まぁ多分かなり珍しいだろうけど、マグのところがそれであってよかった。
……誰か陰でハブられたりしてないよな……?
ちょっと邪推が混じったが、とにかく俺たちはみんなと別れ帰路に就いた。
空はもうとっぷりと日が暮れ、月が少量の雲に隠れたりしながらも空に浮かんでいた。
「……これ怒られますかねぇ?」
「……フルールは優しいから怒らないよ多分きっと……怒らないといいなぁ……」
『…………』
…俺たちは早歩きで寮へと戻ることにした。
村のみんなとも無事和解……そして相変わらずもみくちゃにされるマーガレット。
まぁ和解って言っても、そんなケンカしたとかじゃないんですけどね。
でも多分「和解」でいいんじゃないかな。多分。
さて、次回の更新は7/15(木)の予定です。
お楽しみに!




