180.ダークエルフさんの心遣い…幼馴染へのホウレンソウ
〔マグ〕
「ありがとうございます、ココさん」
「えぇ」
ココさんに冒険者ギルドまで送ってもらった私たち。
ココさんにお礼を言って、いつものように一瞬で消えるであろうココさんを見送ろうとするコウスケさんだったけど、ココさんはなんだかじっとこちらを見つめてきている。
…どうしたんだろう……?
同じく疑問に思ったコウスケさんが尋ねた。
「ココさん?」
「…もう大丈夫?」
「えっ?」
「さっき、泣くのを我慢しているように見えた」
「(あっ…)」
…ココさんは私を心配してくれたんだ……。
(コウスケさん)
(ん、代わる?)
(はい)
コウスケさんに代わってもらって、私は私の言葉でココさんと話す。
「…大丈夫です。もちろん悲しかったですけど……でも…もう大丈夫です」
「……恨んでないの?」
「えっ?」
恨む?誰を?
「…あなたの村の人を助けられなかった私たちを…あなたは恨まないの?」
「えっと……なんでそれで皆さんを恨むんですか……?」
「えっ?」
私が思ったことをそのまま伝えると、ココさんは初めて私の前で表情を崩した。
(なんか新鮮だなぁ……)
(はい…ココさん、今までずっと笑顔も見せてくれなかったのに……)
そんなに意外な答えだったかな……?
「だって、ヘンリエッタさんたちが行った時にはもうすでに……だから、ヘンリエッタさんたちは悪くありません。お仕事をキチンとしてくれたんですから……」
「…そう」
だから……悪いのは私なんだ……。
私が落ち込んでないでもっと早くコウスケさんにお願いすればよかったんだ……。
そうすれば……もしかしたら……!
ポン
「!?」
自分を責める私の頭に、突然ココさんの手が乗せられた。
「ココ…さん……?」
「…自分を責めてはダメ」
「えっ……?」
「あなた…今「自分がもっと早く依頼をすれば」って思ったでしょう?」
「…!?なんで……?」
「わかる。私も前はそうだった」
「…ココさんが……?」
今までずっとかっこいい姿しか見ていないので、ココさんがそんなことを言うとは思わなかった。
ココさんは私の頭を優しく撫でながら、静かに話し始めた。
「私も昔は弱かった。私を救ってくれた姉を、私は救えなかった」
「姉……?」
ココさん…お姉さんがいたんだ……。
「マーガレット。あなたにはあなたを心配してくれる人が沢山いる。だから1人で思い詰めてはダメ」
「あっ……」
そうだ……。
コウスケさんと約束してたはずなのに……。
もっとお互いにわがままになるって……そう約束したはずなのに……。
私はまた1人で悩んじゃってた……。
「…ココさん、ありがとうございます」
「気にしなくていい」
私がお礼を言うと、ココさんは私の頭から手を離し、いつもの感じに戻ってしまった。
「…あの…ココさん……」
「なに?」
「…ココさんにも……もっと頼ってもいいですか……?」
「……」
あ、あれ……?
私の顔を見て固まっちゃった……。
「ご、ごめんなさい!ココさん忙しいですもんね!いつも運んでくれてるだけでもありがたいことなのに…」
「…違う。少し昔を思い出しただけだから……」
ココさんはそう間違いを訂正した後、再び私の頭にポムっと手を乗せて言葉を続けた。
「いいよ。困った時は力になる」
「(わっ…!)」
その言葉とともに浮かべた、ココさんの柔らかい笑顔に思わず声をあげてしまった。
「?なに?」
「あっ…えっと……!その……ココさんの笑顔って初めて見たなって……」
「……私笑ってた?」
「えっ」
(わ、笑ってましたよね……?)
(うん、笑ってた…!凄くフワッとした笑みだった!)
(ですよね!ですよね!)
「笑ってましたよ!」
「…今の間は?」
「ふぇっ!?」
やばい!?
コウスケさんと話してた少しの間が気になられている!
しかしそこはさすがのコウスケさん。
すぐに打開策を出してくれた。
(自分会議してましたって言うんだ)
「じ、自分会議してました!」
「…そう」
あれ!?
(これ大丈夫ですか!?なんだかちょっと可哀想な子を見る目をされてませんか!?)
(大丈夫だ、問題無い。ココさんだっていろんな仕事してるんだから、自分会議する人ぐらい不思議じゃないはずだ)
(そ、そうですかね……!?)
「あっ!マグ〜!」
この後どうしようと考え始めた私のことを呼ぶ声が聞こえた。
「あっ!パメラ!」
「おかえり〜!ココさんもこんにちは!」
「こんにちは」
いいところに来たねパメラ!ちょうど困ってたよパメラ!
その手に持ってるのは掃除道具だねパメラ!
「え、えっと…ココさん……わ、私そろそろお仕事に戻りますね……?」
「ん」
……それだけ!?
やっぱりちょっと引かれちゃってませんかコウスケさん!?
うぅ……!
ちょっとだけ距離が縮んだかも…って思ったのにぃ……!
「マーガレット」
「はい……」
「…またね」
「っ!…はい!」
「……」
私が返事をするとすぐにその場からいなくなってしまったココさん。
でも…
(…最後ちょっとだけお顔が赤くなってませんでしたか……?)
(うん、なってた気がする。そうかぁ……マグは遂にココさんまでもデレさせたかぁ……)
(えぇっ!?)
デレさせたって……!
(そ、それを言うならコウスケさんだって!みんなと仲良くしてるのはコウスケさんで、パメラとショコラにも今までと同じどころか私のときよりもずっと仲良くなってますし、コウスケさんの方がみんなをデレデレにさせてると思います!)
(そりゃマグの愛らしい見た目でちょっとかっこつければみんなデレるに決まってんだろ!)
(反撃された!?)
「マグ?」
((ハッ!))
しまった!パメラがいるんだった!
「こ、こほん……ごめんねパメラ?ちょっと考え事してたかも……」
「また?も〜…マグはすぐに考え込んじゃうんだからぁ」
(コウスケさんのせいですね)
(マグも共犯だからね?)
いつも表に出てるのはコウスケさんなんだから私は悪くないと思いま〜す。
ぎゅっ
「およ?」
「ふふん♪考え事してるマグは隙だらけだから、こうやって抱きつき放題だから別にいいけどね〜♪」
…確かに考え込んでるコウスケさんも隙だらけだからなぁ……。
…今度不意打ちでちゅーしちゃおうかな?
きっと驚くよねぇ♪
まぁそれはともかく。
「パメラ。ショコラと一緒に2人に話したいことがあるの」
「んぅ?なぁに〜?」
「ロッサ村のこと」
「えっ!?」
「隠密ギルドに依頼してた村の調査が終わったから、そのお話をしたいの」
「う、うん!わかった!じゃあ行こ!」
「わわっ!」
パメラは私から離れる代わりに私の手を握ってギルドの中に走っていく。
やっぱりパメラも気になってたんだね。
…当たり前か。
私たちの村だもんね。
そうしてギルドへ入ると、ホールをお掃除中のショコラを見つけた。
そのショコラをパメラが大きな声で呼ぶ。
「ショコラ〜!」
「あれ?パメラ…とマグ!おかえり〜!」
「うん、ただいま」
「聞いて聞いてショコラ!あのね!あのね!」
って…待って待って!
そんな大声で言ったら、いつも心配してくれてる冒険者さんたちにも聞かれちゃう!
そうなったらゆっくりお話出来なくなっちゃうよ!
「パ、パメラ…!まずはララさんかリンゼさんに帰ってきたことを伝えないと……!」
「あっそっか!」
「それでパメラはお掃除しに行ったんじゃないの?」
「あっ!」
あぁ、やっぱり。
じゃあお仕事が終わってから話した方がいいかな?
でも出来れば早く教えてあげたいなぁ……。
どうしよう?
というわけでコウスケさんに相談してみる。
(ん〜…そういうことならララさんもリンゼさんも許してくれると思うよ?それよりもマグ…)
(はい)
(教会の人たちにも教えてあげるの?)
(あっ…)
忘れてた……。
(う〜ん……パメラたちに言えば教会のみんなにも伝わるでしょうけど……そうですね……あれから1回も行ってないですし…せっかくですから私が直接教えてあげたいです)
(そっか。ならまずは、ララさんかリンゼさんに連絡だね)
(はい!)
えへへ〜♪
やっぱりコウスケさんは頼りになるなぁ〜♪
というわけで早速ショコラに聞いてみる。
「ショコラ。ララさんかリンゼさんは?」
「リンゼさんは今日は商業ギルドだって。ララさんはさっきギルドマスター宛てに来た通信で、なんだか怖い顔して上に行っちゃった」
「怖い顔?」
「うん。こ〜んなシワ寄ってたの」
「そうそう。あんな顔初めて見たよ」
「へぇ〜……」
どうしたんだろう?
何か危険なことが無ければいいんだけど……。
と、そこにもう1人友達が近づいてきた。
「あっマギーちゃんおかえり〜!」
「ただいま〜チェルシー。ララさん上にいるんだって?」
「そうなの。すごく難しいお話みたいだよ?」
「そうなんだ……それじゃあ時間かかっちゃうかなぁ……」
「何かララ姉にお話?」
「ん〜……」
困ったのでまた彼に相談。
(…どうしましょうコウスケさん……?)
(そうさなぁ……別に知られて困ることではないけど、冒険者のみんなマグのこと好きだからなぁ……。バレたら落ち着いて話せなくなりそう……)
(そうなんですよぉ……)
(うん。だから…そうだなぁ……今の時間で人のいない部屋なら更衣室か会議室……でも上で難しい話をしてるんなら、ハルキと話せる通信室がある会議室はあんまり得策じゃないか……)
(それなら更衣室…ですね)
(だね。一応休憩中の人もいるから、そこら辺を上手くやっとくのも忘れないようにしないとだけど)
(はい、わかりました)
「…じゃあ、ちょっと他の人に言って上でお話するよ」
「そんなに大事なお話なの?」
「あのね……こしょこしょ…」
「…え…!そっか、それなら早く教えてあげないとだね!」
「うん」
「えぇ〜!なになに〜?」
「もうちょっと待ってねショコラ」
「むぅ〜!」
ほっぺたを膨らませるショコラ。
それを見たコウスケさんが私に言ってくる。
(ショコラだけ仲間外れみたいだし、要点だけ教えてあげれば?)
(そうですね…)
なのでショコラにもこしょこしょ……。
「…えぇっ!?村のもがが……!」
「声が大きいよぉ…!」
ほらぁ…何人かこっち見てるよぉ〜……!
「詳しくは上で話すから…!」
「う、うん…!」
ヒソヒソ話してなんとかカウンター裏に行った私たち。
とりあえず書類がひと段落着いたらしい男性の先輩職員に、私が代表として断りを入れに行く。
「あ、あの……!」
「うん?どうしたのマーガレットちゃん?」
「え、えっとですね……少しお耳を貸してくださいませんか……?」
「?いいよ」
「ありがとうございます……!実は……こしょこしょこしょ……」
「ふんふん……うん…なるほど…わかった。そういうことなら構わないよ」
「ありがとうございます!」
許可ももらい、早速みんなと更衣室へと向かう私たち。
いつもコウスケさんがしているように扉をノックしてから休憩室に入る。
こんこん
「失礼しま〜す……」
「ん…あぁマーガレットちゃん。お疲れ様〜」
「お疲れ様〜」
「あ…お疲れさまです」
中には2人の先輩が休憩していた。
うん、やっぱり更衣室で話そう。
「マーガレットちゃんたち、今日はもうお仕事上がりなの?」
「あっいえ、そういうわけではないんです…」
「マギーちゃんが大事なお話があるって言ったの。だからあたしたちちょっと更衣室に篭るね!」
どう答えようか迷った私に気が付いたのか、チェルシーが理由を簡単に話してくれた。
でもそれで納得してくれるのかなぁ……?
「そうなんだ〜!」
「あんまり遅くなっちゃダメだよ〜?」
「「「は〜い!」」」
いいんだ……と、私も返事しないと…
「はい、わかりました」
「じゃあ行こマグ!」
「早く早く!」
「わっわっ!押さないでよ〜!」
急かす2人に背中を押され、私たちは更衣室に入った。
中には予想通り誰もいなかった。
チェルシーが扉を閉めると同時に、ショコラとパメラが早速聞いてくる。
「それでそれで?村はどうだったの?」
「お家は?広場は?お花畑は?」
「待って待って!え〜っとね…!」
私はまず村のことを、次に村の周りのことを話した。
でも村の周りで見つかった3人のことは言わなかった。
それを言うのはショコラたちには早いと思ったから。
それでも村が全焼しているのはかなり堪えるようで、2人はものすごく元気を無くした。
「そっか……ショコラたちのお家…燃えちゃったんだ……」
「ぐすっ……うぅぅ…!みんなの村がぁ……!」
泣き出してしまったパメラの背中を、チェルシーが優しくさすって慰める。
…やっぱり村の外で犠牲者が出てることを言わなくて正解だった……。
そしたらもっと泣いてしまってたかも……。
「…マギーちゃん……マギーちゃんは大丈夫だったの……?」
「実は…私もちょっと泣いちゃった……」
「…そっか……よしよし……」
「あっ……」
パメラを慰めていたチェルシーが、私の頭を撫でてくれる。
その手は温かくて、また泣いてしまいそうで……私はその前に話を変えることにした。
「えと…そ、それでね…!村のことを他のみんなにも教えてあげたいの!」
「うん、いいと思う」
「あっ…でもマグ……」
パメラがこちらを気遣うような目で私を見る。
そうなんだよねぇ……。
正直ちょっと顔を合わせづらい……ってあれ?
「そういえばパメラ、あのときいなかったよね?」
「え?あぁ、あのときは私寝ちゃってて……それで、マグが帰った後にそのことを教えてもらったの。あのときは寂しかったなぁ……」
「あ…ごめんねパメラ……」
「ううん!気にしないで……いや……」
と、そこでパメラの目が怪しく光った…気がした。
パメラがこういう顔をするときは、大抵何かイタズラを思いついたときなんだよね……。
その予感は当たりのようで、パメラは両手を合わせて笑顔で私の名前を呼んだ。
「ねぇマグ〜?」
すごい甘えた声だ……。
「……何?」
「私ぃ…寂しかったんだよ〜?」
「う、うん……」
「マグが生きてるって聞いたのに、あれから全然顔を見せてくれないし」
「それは……」
…私が顔を合わせづらいだけだから、本当に私が悪いんだよね……。
「…ごめん……」
パメラが本気で言っているわけではないとわかってたけど、私は我慢出来ずに謝った。
そうしたら、パメラはまさかそんなに重くなるとは思わなかったのか、ものすごく慌てて否定し始めた。
「あっ!?えっとそうじゃなくてね!?それはショコラから話を聞いたから、しょうがないと思うよ!だからそこはいいとして!」
「い、いいとして……?」
「…ふふふ……マグの好きな人のこと教えて♪」
やっぱりそうか〜。
「でもダメ」
「えぇぇっ!?」
「その代わり…えいっ!」
「きゃっ!」
パメラにぎゅっと抱きつく私。
ふふふ……村にいた頃よりも私に抱きつく回数が増えてるからね……。
この前コウスケさんにぎゅってされてなでなでされる心地よさに目覚めたんだろうことはお見通しだよ!
そう勝ち誇っていた私に、パメラは衝撃の一言を放った。
「…なんだかマグ……今日はあんまりなでなで上手くないね」
「っ!!?」
ガーン……!
そ、そんな……!?
「なんていうか……冒険者の人たちみたいななで方っていうか……嫌いじゃないんだけど…むしろ好きなんだけど、前みたいにもっとこう……ふにゃ〜ってなるようなのがいいな〜」
「なぁっ!?」
それはつまり……私のなでなでじゃあダメってこと……!?
うぅぅ…!
そりゃコウスケさんのなでなでが1番だけどぉ……!
何がいけなかったのかなぁ……?
(コウスケさぁん……!)
(あいあい、なぁに?)
(パメラをなでてください!それを見て勉強します!)
(いつも見てるししてるじゃない)
(だっていつもされてるときは嬉しくてそれどころじゃないですし、誰かにしてるときは「いいなぁ…」って羨ましさでいっぱいなんですもん!)
(そんな堂々と覚えてない発言されるとは思わなんだ。んじゃあよく見とけよ〜)
(はい!)
コウスケさんに代わってもらい、コウスケさんのホッとするなでなでを覚えようと集中する。
「…こほん。それじゃあパメラ……これならどうかな?」
始まった!
「ふぁ…!んぅ…♪これが一番好きぃ♪」
わかるよパメラ!
コウスケさんのなでなでってすごくいいよね!
…ハッ!
いけないいけない……ちゃんと覚えないと……。
…パメラ…羽をパタパタさせて喜んでるなぁ……。
私のなでなでとどう違うんだろう……?
「あっ!いいなぁパメラ!マグぅ…ショコラもなでなでして…?」
「あたしも〜!」
ふわぁ…やっぱり人気だなぁ…コウスケさん……。
「ん。順番ね?」
「「は〜い!」」
「どう、パメラ?これでいいかな?」
「ん〜…もっと〜……!」
「も〜…あんまり遅くならないようにって言われたでしょ?」
「むぅ〜……!」
「むぅじゃない(ぷに)」
「んにゅ…いじわる〜」
「知ってる」
いやいやコウスケさん。
私そんないじわるじゃないですよ?
「ほら、代わりに後ろに抱きついてていいから」
「むぅ…そういうことなら……」
それで納得するんだ……覚えとこ。
「じゃあ次ショコラ、おいで」
「やったぁ♪」
「あ〜ん!マギーちゃんあたしはぁ!?」
「早い者順だよ。ちゃんと撫でてあげるから、ね?」
「ぷく〜……わかった……」
「うん、ありがと」
「マグぅ……」
「はいはい、お待たせショコラ。はい、ぎゅ〜」
「んふ〜♪」
わぁぁ……ショコラの尻尾…すごく嬉しそうにパタパタしてる……。
お耳もピコピコして………いいなぁ……。
「マグぅ……♪」
「ん〜?」
「マグの匂い好きぃ♪」
「ありがと。どんな匂いなの?」
ショコラの感想にコウスケさんがそう返した。
そういえばショコラは昔からそう言ってくれるけど、私ってどんな匂いがするんだろう……?
「えっとね〜……昔はお花の香りとお日様の香りがしてポカポカしてたんだけど…今は…なんだろう……?ふわふわ……?」
「(ふわふわ?)」
ってどういうこと?
「う〜ん……いつものマグはそうなんだけど、今みたいにかっこいいマグのときは…なんだか安心するような……ふわふわで甘えたくなる匂いなの〜♪」
「へぇ〜。同じ私なのに不思議だねぇ」
「ねぇ〜」
コウスケさんは不思議そうに流したけど…わかる。
私はわかるよショコラ!
なんていうか…甘えたらしっかり返してくれるっていうか……ずっとぎゅ〜ってしていたくなるような感じがする…みたいな……。
それで〜…ぎゅってするとふわふわ〜ってなって〜♡
すごく幸せになれるの〜♡
なんて考えている間に、コウスケさんたちは違う話を始めていた。
「ねぇショコラ。髪とか尻尾って、いつも自分で手入れしてるの?」
「ん〜…自分でするときもあるけど、お母さんとかパメラにしてもらうことの方が多いよ〜」
「そっかぁ。ふわふわもふもふ綺麗だねぇ」
「えへへ♪でしょ〜♪」
ショコラの尻尾がふりふり〜♪と楽しそうに揺れる。
自分の尻尾とみんなのことが褒められて嬉しいんだろうねぇ♪
「マ、マギーちゃん……」
「ん…ショコラ。そろそろ…」
「むぅ…しょうがないね……」
「ん、ありがとね。私とパメラにくっついてなさいな」
「うん、そーする」
チェルシーの寂しそうな声に反応したコウスケさんは、ショコラをパメラと一緒に後ろに回すと、改めてチェルシーに向き直る。
「それじゃあ…」
と、チェルシーを呼ぼうとしたところで…
コンコン
「こら〜。そろそろお仕事戻らないとだよ〜!」
『(あっ……)』
扉が叩かれ、ドア越しにさっき休憩していた先輩の声が聞こえてきた。
もうそんなに時間が経って……あ〜…まぁ、ロッサ村のお話をして、ショコラたちをぎゅーしてなでなでしてたから、それぐらいは経ってるかぁ……。
でも……。
みんなでチェルシーの方を見ると…
「〜〜〜〜!」
チェルシーはほっぺたをこれでもかと膨らませて震えていた。
彼女の目にはうっすらと涙が……って…!
(コ、コウスケさぁん……!)
「「マグぅ……!」」
私たちは頼れる彼に声をかける。
コウスケさんは何やら考え込むように手をアゴに当ててチェルシーを見つめていた。
その視線とチェルシーの泣きそうな眼差しが合った。
「…仕方がない。ショコラ、パメラ。戻るよ」
『(えっ!?)』
私たちは驚き、チェルシーは本格的に泣いてしまう数秒前…といった感じになってしまう。
だけどコウスケさんがそんなチェルシーをほっとくわけがなかった。
「ショコラ、パメラ。私の分のお仕事、ちょっとだけ手伝ってくれる?」
「う、うん……」
「いいけど……」
「ありがと。さてチェルシー」
「……?」
「おかげで私はチェルシーにべったり出来そうだから、お仕事中でも良ければめいっぱい甘やかしてあげるよ?」
『(!!)』
それって……!
「お仕事するチェルシーを後ろからぎゅってしてなでなでして、ひとつ終わるたびに「よくできました♪」ってご褒美をあげる」
「ご褒美?」
「うん。昨日モニカちゃんにもらったリンクスさんお手製クッキーがまだあるの。だからこれをチェルシーに「あーん」してあげる♪」
「ほんと!?」
(「「あー!いいなぁー!」」)
「これでお仕事頑張れる?」
「うん!すっごい頑張っちゃう!」
「そっかそっか♪」
我慢してもう少しで…ってところでお預けになったチェルシーは、さっきまでの悲しそうな雰囲気がウソみたいに明るい笑顔でコウスケさんに抱きついた。
そしてそこで終わらないのがコウスケさん。
「ショコラとパメラも、私の分のお仕事してもらうわけだし、ちゃ〜んと食べさせてあげるから☆」
「「わぁい!マグ大好きぃ!」」
「ほらほら、行くよ」
『は〜い!』
ショコラたちにも「あーん」の約束をして、2人の不満を取ってあげた。
さすがコウスケさん!
…でも……
(コウスケさぁん……私は……?)
(ん〜…それなんだよなぁ……今日はもうマグのことをめいっぱい甘やかすつもりだったから、これ以上何を足せばいいのか……)
やった♡さすがコウスケさん♡
大好きぃ♡
(それだけで満足ですぅ♡)
(そう?マグは謙虚だねぇ)
(そんなことないですよ〜♡)
えへへ〜♪
何をお願いしようかなぁ♡
いつもみたいに甘えちゃう?
それとも前から考えてたように甘えさせちゃう?
それとも……こちょこちょってくすぐってもらって……ちゅっちゅってしてもらって……じゅるるるってしてもらって……♡
ごくり……♡
ふへへ……♡
どうしようかなぁ……♡
私はもう今夜のことで頭がいっぱいになった。
はぁ……♡
やっぱりコウスケさん…好きぃ……♡
「……何かマズった気がするなぁ……」
「ん?何か言ったマグ?」
「いや…なんでもない……」
次回もちょっと重くなりそう……。
まぁでもコウスケとマグだから…ね……。
…はい、というわけで次回の更新は7/12(月)の予定です。
次回もぜひご覧ください!




