174.薬の調合…エルフっ子の初めてとご褒美
マグたち子供組+エストさんの、悪気のない(マグ以外)純粋な誉め言葉により半泣き状態になってしまったユーリさんを、シャールさんがめっちゃ慰めて復活させたところで今日はお開きとなった。
そのときには俺も自立歩行が出来るようになっていたのでよかった。
駄目だったら多分ユーリさんに抱えられて魔術ギルドに行くことになるからな……。
それはやっぱり恥ずかしいよ……。
ギルドを出てからみんなと別れ、俺はシエルと2人で魔術ギルドへ向かう。
ツンデレデレなシエルと話しながら魔術ギルドへと到着した俺は、早速受付に向かった。
「魔術ギルドへようこそ…ってあら。おかえりシエル。それといらっしゃい、マーガレットちゃん」
「ただいま」
「こんにちは」
「今日はどんなご要件?」
「マナポーションが欲しいんですけど、初めて買うので専門家の意見が欲しくて……」
「なるほど、良い判断だね」
「(「わっ!?」)」
俺たちが受付のお姉さんと話していると、突然後ろから聞き覚えのある声がかけられた。
「もう!マスター!いつもいつも驚かさないでください!」
「おや、驚いたのかい?」
「ハッ!お、驚いてませんよ!マーガレットが大きい声を出すから何かと思っただけですよ!」
(同じタイミングでしたよね……?)
(マグ、しーっ)
(は〜い)
後ろにいたのは魔術ギルドのマスター…グリムさんだった。
ちょうどいいや。
探す手間が省けた。
「グリムさんこんにちは」
「うん、こんにちはマーガレットくん。マナポーションが欲しいと言ってたけど、練習に使う用かな?」
「はい。今日の練習で魔力不足になっちゃって……もうあと2日しかないから、出来る限り練習したいですし……」
「ふむ、そうだね。しかし、マーガレットくんはポーションについてどれぐらい知っているのかな?」
「う〜ん……」
(どう?マグ)
(いえ、さっぱりです)
(了解)
「…正直あんまりですね。薬ということぐらいしか知らないです」
「そうか。なら、その辺のことを教えながら選ぼうか」
「お願いします」
「シエルも来なさい。ちょうどいいから一緒にお勉強だ」
「えっ…あっ…!は、はい……!」
一瞬だけ素が出てすぐに取り繕ったシエルと共に、グリムさんの案内に着いていきながら薬の話を聞く。
「まず、薬と言ってもかなりの種類がある。傷薬一つ取ったってそう。塗る、飲む、振りかける、注射する…手段も多ければ、それに合わせた調合も必要だからね」
「塗り薬はよく見かけますね。飲み薬…ポーションタイプもたまに見かけますけど…注射はともかく振りかけるっていうのは……?」
俺の疑問に答えてくれたのは隣を歩いているシエル。
「昔、ポーションや粉薬を直接傷口にかけて治そうとした人がいて、それで少しだけ回復効果が出たから、そこからかけるだけで治せるような薬の研究が進められてるらしいわよ」
「(へぇ〜……)」
ポーションはともかく、粉薬を振りかけて使う…かぁ……。
……粉塵ジェントルマン……?
でもあれはそういうシステムだしなぁ……。
……いや…出来なくはない…か……?
風魔法に粉薬を乗せれば、効力は下がるかもしれないけど広域回復が出来るかも……?
ちょっと言ってみよう。
「…もしもその薬を風魔法とかで味方に飛ばせば、離れたみんなのことも治せそうですねぇ」
(「っ!?」)
「うん、そう考えた者もいたよ。ただ、風で飛んでいってしまったり、そもそもそれで魔力を使ってる間に他のことした方がいいよね?っていう人が続出したりで、実用化出来た人はいないんだよ」
「(「なんだぁ……」)」
マグとシエルのその手があったか!な反応は、グリムさんの言葉で落胆に変わり、俺と共にガックリと項垂れる。
やっぱそんな上手い話はそうそう無いんだなぁ……。
「ははは。まぁとにかく、いろんな使い方がある薬だけど、次はその作り方について教えよう」
と、そう言うグリムさんが扉を開ける。
どうやらここが目的地のようだ。
部屋の中には薬やその材料と思わしき物が並んだ薬棚が沢山並んでいた。
グリムさんはその中の1つの棚から薬瓶やすり鉢などの道具と、薬草や水などの素材と思わしきものを取り出して机に置く。
「グリムさん、これは?」
「君に渡す魔力薬の準備だよ」
「今から作るんですか?」
「あぁ。ちょうど今予約分や緊急時用を除いて薬は切らしていてね。せっかくだからシエルに教えながら作らせてもらうよ」
「えぇっ!?あ、あたしが作るんですかぁ!?」
突然言われたシエルが大きな声を上げた。
「シエル、調合の経験は?」
「ま、まだ練習中だもんっ!なのにいきなりマーガレットにあげる薬を作るなんて……!」
「大丈夫。きちんと今までの勉強の成果を出せれば、ちゃんとした薬を作れるはずさ」
「で…でも、マスター……いきなり誰かに飲ませるなんて……」
「使わないと効果が分からないだろう?それに、マーガレットならシエルが作ってくれたものなら喜んで飲んでくれるよ」
そんなことはねぇよ。
そう言いたかったが、せっかくシエルが一歩踏み出しそうなのに野暮なことを言うわけにはいかない。
「………ね、ねぇ……」
「?」
「…あ…あたしの作った薬…飲んでくれる……?」
言葉を飲み込んだ俺に、シエルがおずおずと尋ねてくる。
(正直モノによるとしか言えないけど……)
(う~ん……でもシエルなら変な薬を作ることは無いと思います)
(まぁねぇ……変なのが出来たとしても、事故かなんかの産物だろうとは思うねぇ)
(はい。だから大丈夫だと思います)
(だね)
なら、それを伝えてあげよう。
「うん。飲むよ」
「ほ、ほんと…!?あっ…でっでも、変なのが出来たら飲まなくていいからね!?下手したら死んじゃうんだから!」
「う、うん…わかった」
真剣な顔でそう言われてしまえば、いつもみたいに茶化すのも憚られる。
俺が素直に頷いたのを確認したシエルは、グリムさんに向き直る。
「マスター…お願いします」
「うん。じゃあ早速作っていこう。マーガレットくんはそこの椅子に座って待っていてくれ」
「はい」
満足げな顔と声でシエルと共に薬を作り出すグリムさん。
(…もしかしたら、こんな風にしてみたかったのかなぁ……)
(そうかもしれません……今2人…お師匠さんとお弟子さんというよりは、お母さんと娘さんみたいに見えます)
(そうだね。とても仲のいい親子に見えるよ)
薬草をすり鉢でゴリゴリとすり潰していくシエルと、その横で力加減や出来上がりの目安を教えるグリムさん。
その様子をぼんやりと眺めながら、俺とマグは同じ言葉を呟いた。
((…いいなぁ……あっ……))
(マグも?)
(はい。コウスケさんもですか?)
(うん……やっぱりちょっと…ね……)
もう両親に会うこともできない俺たちは、目の前の光景を微笑ましく…少しだけ羨ましく眺めていた。
~〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「うん…それで瓶に全部注ぎ込んだら……」
「…完成……!」
「(おぉ~)」
少し経って、薬は無事に完成した。
俺たちはその功労者たるシエルに惜しみない拍手を送る。
「さぁ、マーガレットくん。さっそく飲んでみてくれ」
「はい」
「うっ…!ちょ、ちょっと待ってマスター……!まだ心の準備がぁ……!」
「ここまできて何を言っているんだい?ほら、私が大丈夫だと言ってるんだから大丈夫だよ」
「うぅぅ……!」
どうやらシエルは、出来上がった薬の出来に自信が持てないようだ。
薬瓶をぎゅっと握ってもじもじしている。
…やれやれ。
「シ~エル」
「っ!」
「ほらほら、私にそれちょ~だい?」
「うぅぅ…!や、やっぱりマスターが作った薬の方が……!」
(も~…シエルったらぁ……)
(目の前で作ってたんだし、変なのが入ってないって知ってるんだから、大丈夫なのにねぇ)
(ですです)
ほらぁ、マグもこう言ってるんだから大丈夫だよ。
「シエル」
「う~……!」
「もぅ…私はシエルが頑張ってるのを目の前で見てたんだよ?その私が言うんだから大丈夫だって」
「あぅぅ……!で、でもぉ……!」
ほんっとこの子…出会い頭に魔法ぶっぱしてきた子と同一人物には思えんなぁ……。
「シエル。初めて作ったものだから不安なのは分かるけど、だからってずっとそのままだと何も進まないよ」
「マスター……」
「何かあれば私が治せる。だから安心して渡しなさい」
「……はい……」
グリムさんの説得でようやく渡す気になったシエルが俺に近づいてきた。
「…マ、マーガレットぉ……これ……」
「うん」
「そ、その…ダメだったらすぐにペッてしてね!味も全然美味しくないと思うし、ちゃんと魔力が回復するかも分かんないし……!」
「ごくごく……」
「ってもう飲んでるっ!?」
だってシエルの話長いんだもん。
う~ん……確かに苦いなぁ……。
まぁ甘いものを一切入れてないからなぁ……しょうがない……。
「ぷぁ……」
うぅぅ……苦みが口の中に残ってるぅ……。
で……?肝心の魔力は……あ~……。
「ど…どう……?」
「なんか……こう……「あ~…」って感じ?」
「ど、どういうこと……?」
「う~ん……コリに効く~…って感じ?」
「…えっと…マスター……?」
「うん、成功だね」
「(「成功なんだ……」)」
薬による魔力回復ってこんな湿布貼った感じなんだ……。
こんな《チョイデイン》みたいな感じなんだ……。
「今回のは初歩の初歩。一番効能が薄い調合だからね。あんまり効いた感じがしなくても仕方がないさ」
「そうなんですか?」
「あぁ。この前の件で、マーガレットくんに薬の耐性が皆無だということが分かったからね。だから薄いものにしたのさ」
「(あぁ…なるほど……)」
そうだね……。
めっちゃ苦しかったからね……。
その辺り汲んでくれてありがたいよ……。
「もし失敗でも、何も感じないだけだから問題ないしね」
「なるほどぉ……ん?じゃあシエルはそれを知らなかったから……?」
「いや、知ってるはずだよ?」
「(えっ)」
「ただ自信が無かっただけさ」
「あぅぅ……」
ふぅむ……そうか……。
まぁ初めてだって言ってたし、この前俺があんなことになってたから失敗は怖いよな。
あれ、俺のせいじゃね?
「そうだ、マーガレットくん。しっかり出来た子にはご褒美が必要だと思うんだがどう思う?」
「えっ?あ~まぁそうですねぇ」
「じゃあマーガレットくん。シエルの頭を撫でてあげてくれないか?」
「えっ!?」
「?そんな簡単なことでいいんですか?」
「うん。シエルは君に甘えるのが癖になってしまったようだからね」
「ちょっ!?マスター!?」
「へぇ…そうなの?シエル」
「うぇっ!?そ、そそそそんなわけないでしょ!?あんたに…あ、頭をなでなでされたり…ぎゅってしてくれたりなんて……別に……」
言葉がどんどん小さくなって、チラチラとこちらを窺いながらのものになる。
も~……ほんと分かりやすいんだからぁ。
俺は机の上に薬瓶を置くと、シエルに近づいてスッ…と彼女に見えるように手を動かす。
「っ!…………」
するとシエルはピクッと反応し、さりげなく頭を下げて撫でやすいようにして待つ。
…なんだこの可愛い生物は。
(シエル可愛い……♡)
(マグもそう思うか)
(はい…なんだかんだ言いながらも甘えてくる感じ……私すごく好きなので♡)
(そうなの?)
(はい♡)
…なんだろう……。
何故かちょっと恥ずかしい気分になるんだけど……?
…ま、まぁいいや。
俺はシエルの頭に手を乗せ、優しく彼女の頭を撫でる。
「…………♪」
よかった……。
顔は見えないけど、シエルのエルフ耳がピコピコ動いてる。
…エルフ耳ってそんな流暢に動くの?
っておや?
その耳の動きが緩やかになってきたような……?
そしてシエルがじ〜っと何かを待つように上目遣いで見つめてくるんだが……?
(コウスケさん…!ぎゅう〜、もですよ!ぎゅう〜!)
(あっそっか……)
マグのおかげでさっきのシエルの言葉を思い出した俺は、要望通り彼女の背中に手を回して、頭を撫でながら抱きしめる。
「…♪」
(ありがと、マグ)
(いえいえ、どういたしまして)
マグにお礼を言いつつ、シエルをなでなでぎゅう〜っとする。
だが、要望通りだというのに、シエルは再び何かを期待するようにこちらを見てくる。
(えっ…なんだろう……?)
(…………キス?)
(いやいやいやいやまさかそんな嘘でしょ?)
(さすがに冗談ですよ〜)
冗談キツイよマグさん。
(多分褒めて欲しいんじゃないですかね?何も言わずにぎゅっとされるだけだと寂しいんだと思います)
(あ〜…褒め言葉かぁ……)
確かに恋人でも悲しい時でもないのに無言で抱きしめるのはなんかシュールだなぁ。
「…シエル」
「…!」
あっ…ピクってした。
「シエル…初めてなのに上手に薬が作れて凄いね」
「そ、そんなことないわよ……♪」
当たってるみたいだ。
さすがマグ。
よし、このまま褒めていこう。
「ううん…凄いよ。シエルならどんどんいろんなお薬を作れるんじゃないかな?」
「そ、そうかしら……♪」
「うん。あっでも怪我とかには気をつけてね?」
「えぇ、それはもちろんよ」
「そっか、それならいいの。凄いお薬を作っても、シエルに何かあったら喜べないからね」
「そ、そんなに心配しなくても大丈夫よ……私、マスターに褒められるぐらいには頭がいいんだから……!」
「出会い頭で魔法使ってきたのに?」
「うっ……!そ、それは……」
「くすくす♪冗談だよ。でも次やったら怒るからね?」
「や、やらないわよ!……友達だもん……///」
あっ今キュンってきた。
(か、可愛い……!)
あっ、マグもキュンってなってる。
「……そっかぁ……友達かぁ……♪」
「えっ?えっ?も、もしかしてマーガレットはそう思ってないの……?」
「ん〜?」
アワアワと慌てるシエルも可愛らしいが、さすがにそれは素早く訂正させてもらう。
「そんなことないよ。私は親しくない人に抱きつくような軽い女じゃないよ?」
「うぅ……よかったぁ……!」
(甘えてるときのシエルって、すごく素直になるんですねぇ♪)
(そうだねぇ♪なら、こっちはその気持ちに応えて、めちゃくちゃ甘えさせてあげよう)
「シエルは友達だよ♪むしろ私は、シエルが友達だって思ってくれてて嬉しいな♪」
「えへへ……♪…あたし、素直じゃないでしょ?だから同世代の友達ってあんまり出来なくて……だから、本で見た時からずっと友達になりたいって思ってたの……」
「ん…本?」
新聞とかじゃなく?
「うん。あのね?魔術ギルドって図書館でもあるでしょ?だから商業ギルドの人がよく発売する予定の本の見本をくれるんだけど、マーガレットが洋服のモデルで本に載ってるのを見て、こんな可愛い子と友達になれたら素敵だなって思ってたの」
「(あの本かぁ)」
言われてみれば、ギルド同士で交流があっても不思議じゃないし、そもそも、元の世界にもそういうのあるもんな。
それにシエルだって女の子だもん。
オシャレしたいよね。
「あの本ね?置きたいって言うお店が多すぎて、予定よりいっぱい作ることになって発売日が遅れてたんだけど、それも終わってもうすぐ出るんだって!」
「へぇ〜、そんなことになってたんだ」
「知らなかったの?」
「初耳です」
でもそうかぁ〜……。
確かにそれだけ人気が出るのも分かるなぁ。
マグやユーリさんが可愛いのは言うまでもないけど、他の人もレベル高いし、何より服がみんなオシャレだったもんなぁ……。
お金と時間の余裕が出来たら街に繰り出して、いろんな服を着たマグの姿を目に焼き付けようって思ったもん。
「で、シエルはそれが欲しいの?」
「えぇ!ギルドにあるのはいっつも誰かが読んでるし…待ってる人もいるからゆっくり読めないんだもの……」
「そんなに人気なんだ」
実は結構歴史のある雑誌なのかな?
固定ファンがいるものは強いからね。
「えぇ!だってマーガレットが出るのよ?みんな欲しがるわよ!」
「いやいや…私がここに来たのまだ2週間も経ってないし、それならシエルやチェルシー、モニカちゃんにリオとサフィールちゃんっていう、私と同世代の可愛い子が先にいるじゃない」
「かっ…かわいい…!?」
((可愛いよ。シエル可愛いよ))
「ま、まぁ…うん……確かに、チェルシーもサフィールもキレイだし、モニカやリオが可愛いのも分かるけど……」
「(シエルもね)」
「〜〜っ!!///…と、とにかく!みんな可愛いけど、マーガレットは特別なのっ!」
「(う〜ん……)」
(それが分かんないんだよなぁ……マグが可愛いのは当然としても、それならチェルシーたちに同じような話が来ててもおかしくないのに……)
(ですよねぇ……いくらコウスケさんが魅力的な人柄だとしても、モニカちゃんたちだって素敵な子なのに……)
(うんうん。マグが特別ってどういうことなんだろう?)
((う〜ん?))
シンプルに聞いてみるか。
「なんで私が特別なの?」
「だってマーガレットは貴族なのよ?それなのにお仕事に文句は言わないし、人族以外の種族にも優しいし……」
「う〜ん…貴族はまだしも、それだけなら他の人だって種族に寛容だと思うんだけど……」
やっぱり貴族ってのが大事なのかな?
「…ううん……そんなことないのよ………今はそうだけど、前はみんな他の種族から距離を置いてたの……」
「(えぇ?)」
チラッとグリムさんを見ると、彼女は静かに頷いてから話し始める。
「…この街が出来た当初は、住民のほとんどが奴隷や貧民層の者でね。他国から人が来る度に衝突が起きていたようなものだったんだが、みんな嫌いな相手は同じだろ…ってダンジョンマスターがまとめてね。そうしてからお互いに相手のことをよく見るようになって、それから仲良くなっていったのさ」
「なるほど〜…って、それならその共通の敵たる私は?」
「さっきシエルが言った通りさ。それに、私が最初会った時に言ったこともね」
「…え〜っと……?」
(なんでしたっけ……?)
(忘れた……)
「君は他の貴族と違うってことさ」
「(あぁ……)」
そういや言ってたような……。
「だから君は、どうかそのままでいてくれ」
「そのまま…って言われても……」
「いつも通り、シエルやチェルシーくんたちを甘やかしてくれ」
「それでいいんですか……?」
「あぁ、それが彼女たちの求めるものでもあるからね」
「(?)」
まぁ甘えられるのは吝かではないけど……グリムさんやララさんだって甘やかせるだろうに……。
「だから、そろそろそちらに戻ってあげなさい」
「(そちら…?…あっ……)」
「……(じ〜)」
俺がグリムさんと話していたから、相手をしてもらえなかったシエルがそわそわと落ち着かない様子で見つめてきていた。
…ほんとこの子いつもとのギャップが凄いな……。
尊すぎんだろ……!
「ごめんねシエル〜!(ぎゅう〜)」
「んぅ…♪なでなでもぉ……♪」
「は〜い、仰せのままに♪」
「んふふふ……♪」
そうしてしばらくの間、めちゃくちゃ甘えてくるシエルを、はちゃめちゃに甘やかしてあげた俺。
その様子を、グリムさんはとても穏やかな笑顔で眺めていたのだった。
ツンデレエルフとか王道すぎて好き。
でも果たしてシエルはツンデレになってるのか心配になるぐらいデレデレなんですよねぇ……。
まぁ可愛いから後悔とか無いんですけどね。
さ、次回の更新ですが6/24(木)の予定です。
どうぞお楽しみに!




