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167.面倒な人…狐さんは可愛い人

ユーリさん、メリーちゃんと冒険者ギルドへ向かう俺。


メリーちゃんを中心に、俺とユーリさんが両隣で彼女と手を繋いでいるのだが、メリーちゃんが全くこちらを向いてくれない。


しかも日傘もユーリさんに持たせていた。

まっすぐユーリさんの方に頼みに行ってた。

前まであんなに俺のことを頼っていたのに。

何故だ。


(…ねぇマグ……ほんとにこれ嫌われてないの……?)

(はい!大丈夫ですよ!)

(なんでそんな言い切れるの……?)

(それは……!…うぅ〜…!)


前と同じで、マグは嫌われていないと言うが、その理由に関しては言いたくても言えないといった様子……。


くっ…気になる……!


そうこうしているうちに冒険者ギルドの入り口へと着いた。


と、そこに見知った人影を見つける。


「あっ!マグぅ〜!」

「おはよ〜!」


入り口にいたのは私服姿のショコラちゃんとパメラちゃん。


ショコラちゃんは元気爽やか半袖短パン。

パメラちゃんはリボンのアクセント付きワンピース。

足元はお揃いの靴に靴下。

多分教会の人にもらったのだろう。


「おはようショコラ、パメラ。今日は2人もお休みじゃなかったっけ?」

「うん、そうだよ!」

「だからマグに会いに来たの。昨日ララさんとお話ししてたのが聞こえたから、ここで待ってれば会えるかなって」

「そうだったんだ」


わざわざ休みの日にまでこうして会いに来てくれるなんて、本当に良い友達を持ったな…マグ……!


親目線なことを考えてる俺を置いて、2人はユーリさんとメリーちゃんにも挨拶をする。


「ユーリさん!おはようございます!」

「うん!おはよう、ショコラちゃん!」

「おはよう、メリーちゃん♪」

「……おはよう」


挨拶を済ませたパメラちゃんがメリーちゃんに質問をした。


「メリーちゃんって、お日様苦手なの?」

「あっそうだね。前もフルールさんと一緒に日傘差してたよね」

「フルールさん…って、メリーちゃんのお母さんだっけ?」

「そうだよ!すごくキレイな人なの!ユーリさんもキレイだけど、フルールさんはなんかこう……すごいの!」

「へぇ〜……!」


何故か質問されたはずのメリーちゃんが一切喋らずにショコラちゃんとパメラちゃんだけで話が進んでいる……。


そこにユーリさんが微笑みながら間に入った。


「ほらほら、とりあえず中に入ろう?ここだと邪魔になっちゃうよ?」

「はっ!そ、そうですね…!」

「メリーもお日様が苦手ならここじゃあダメだよね……ごめんね……?」

「……大丈夫」


というわけで入場。


「ごめんなさい、ちょっと挨拶をしてきます」

「あっじゃあショコラも挨拶する~!」

「私もご挨拶しよっと」

「うん、わかった。じゃあ迷宮の入り口辺りで待ってるね」

「(「「は~い!」」)」

「じゃっ行こ?メリーちゃん」

「……(こくり)」


というわけでまずはララさんかリンゼさんに挨拶するべく受付カウンターへ。


相変わらずそこそこの長さの待機列に並んで待っている間に……


「ショコラ、パメラ。その服ってナバロさんにもらったの?」

「あっうん、そうだよ」

「優しい商人さんが、いらない古着とかをいろんなところから譲ってもらって、それを寄付してくれたんだって!」

「へぇ〜」


(ハルキさんですかね?)

(ハルキだろうなぁ。それか昔教会で世話になって、立派な商人に成長して、恩返しのために頑張ってくれた人とか?)

(それは…素敵な方ですね…!)


これもよくあるやつだね。

なんでか現実ではあんまり聞かないけど。

多分それよりも事件が多いからだろうな、きっと。

毎日起こってるもんな。


まぁそれはともかく。


「似合ってるよ2人とも」

(うんうん♪)

「えへへ〜、ありがと〜♪」

「やった〜♪」


はい、可愛い。


「マグの服も可愛いよ~♪」

「ほんと?ありがとう♪」

「それってもしかして練習用の服?」

「そうだよ。パメラよく分かったね?」

「だってメイカさんと一緒にいるんでしょ?メイカさんならマグにもっとフリフリの可愛いやつを着せそうだから……」

「(わぁ大正解)」


そんなこんな話している間に順番が回ってきた。

対応してくれたのはグルメ先輩だ。


「いらっしゃい、誰かに用事かい?」

「今日はこれから練習いってきますのご挨拶と、ララさんかリンゼさんがいらっしゃるなら聞きたいことがあったので来ました」

「ララさんなら上にいるかな。リンゼさんはその辺りに……あぁいたいた。リンゼさん!」

「はい…っと、これはマーガレット様、ショコラ様、パメラ様、おはようございます」

「「「おはようございます!」」」


受付の奥から出てきたリンゼさんに、みんなで元気な挨拶を返した。


「それで、本日はどうされましたか?」

「えっと…これから練習に行くというのと、その練習にララさんが「腕の立つ冒険者」を呼んでいるらしくて、その人のことを聞けたらなぁ…って」

「そうですか。ですが、「腕の立つ冒険者」の件はこの後会えますからそれまでは秘密です。ララさんが言っていないのでしたら尚更です」

「やっぱりそうですよね……」


まぁ俺もそこまで本気で聞き出すつもりはなかったし別にいいや。


「それで…今日の付き添いの方はショコラ様とパメラ様ということですか?」

「いえ、ユーリさんとメリーちゃんもいます」

「なるほど、でしたら問題ないですね。戦闘訓練はやはり大人の目があるほうが安心出来ますから」


それはまぁそうだろう。

俺だっていろいろ聞くことが出来るし、危険なことだと教えてくれる人がいれば安心できる。


でも俺だけだと不安だと言外に言われている気がしてちょっと悲しい。


「あぁそれと、件の冒険者の方はもうお部屋にいらっしゃいますので、闘技場の受付で案内を受けてくださいね」

「えっ!?もう来てるんですか!?」

「えぇ。と言っても、先ほど来たばかりですからお気になさらず。本人たちも何を教えればいいのか悩んでおりましたし、考える時間が出来てむしろ喜んでいるかもしれませんよ?」

「あははは、それはそれで申し訳ないですけどね。でもありがとうございます。さっそく向かいます」

「はい。怪我などはしないようにお気をつけて」

「はい!」

「じゃあね~リンゼさん!」

「お仕事頑張ってください!」


各々でお礼を言ってその場を後にする。


さてさて…ユーリさんたちは…っと、いたいた。

…って…ありゃ?


「あれユーリさんの知り合いかなぁ?」

「違うと思う。ユーリさん、あんまり他の人と話さないし…」


ショコラちゃんの疑問に答える。


俺らがいつも引っ付いてるからな気もするけど……。

それでユーリさんの交友関係を狭めさせていたらちょっと申し訳ないな……。


と、考える俺の横でパメラちゃんがボソッと呟く。


「…ユーリさん、困ってる気がする……」

「うん…あんまり楽しそうじゃない感じ……」


ショコラちゃんもそう言ったのを聞き、俺は再びそちらへ目を向ける。


…相手は男性3人組。

恐らくパーティ勧誘…かな?


もうちょい近づかないと話が周りの雑踏に呑まれてよく聞こえないけど、あんまり楽しそうではない。


「…とりあえず行こう」

「「うん…」」


ショコラちゃんとパメラちゃんが俺の手をそれぞれ握る。


不安なのかな?

まぁ確かにあの人ら、見覚えが無いしね。


「ん…あっおかえりマーガレット」

「お待たせしました。そちらの方々は?」

「この人たちは……」

「んん~?なんだこのチビ共は?」

(あっこの人嫌いです)


はい、マグの嫌い判定入りました~。


「…この街に着いて日が浅いから、案内も兼ねて誰かここの迷宮に入ったことのある冒険者がパーティに欲しいんだって」

「なるほど」


まぁ理屈は分かるが……。

わざわざ迷宮の入り口…つまり冒険者ギルドの最奥にいる、子連れのユーリさんにそれを頼むのはなんかおかしいよなぁ……。


そもそもユーリさんは今日武器を持ってきていないし、いつもの仕事着 (踊り子の服)でもない。

それに……


(…イヤらしい目です……)


マグの言う通り、男たちはユーリさんの体をジロジロと見ている。

チラチラとではなく、ジロジロと。


そりゃあ温厚なユーリさんも、嫌な顔を隠そうとしないわけだ。

…俺も気を付けないとな……。


「さっきも言ったけど、私はもう別のパーティでお世話になってるし、今日は攻略に行くわけでも無いから無理。他をあたって」

「おいおい、さっきから聞いてりゃ随分なものいいじゃねぇか」

「獣人が人間様に楯突く気かぁ?」

「ガキのお守りよりも楽しいことしようぜって話なんだぜ?」

「お断り。行こ、みんな」


男たちの挑発にも乗らず、さっさとこの場を立ち去ろうと促すユーリさん。


…ユーリさんのこういう感じ、久しぶりに見たなぁ……。


とかなんとかぼんやり考えていると…


「待てよ」


と男の一人がユーリさんに手を伸ばした。


『(あっ…!)』


と思った瞬間には男は投げられていた。


『(へっ?)』

「うおわっ!?」


ドスンッ!という音と共に男が尻から着地する。


実に見事な投げ技だった。

確実に「一本!」である。


投げた当人であるユーリさんは男から手を離し…


「……」

「っ!」


スッと目を細め睨みつけると、ビクッと怯えた男から視線を外し、再度…


「行こ」


と言って俺たちを促した。


俺たちは静かに頷くと、迷宮へ続く階段を下りて行った。


明かりが(とも)るその階段を降りる途中で、俺はユーリさんに話しかける。


「ユーリさん……」

「…ごめん。怖い思いさせちゃって……」


(やっぱり気にしてますね……)

(まぁ気にするよねぇ……)


と、その謝罪に異を唱える者がいた。

ショコラちゃんである。


「ユーリさんは悪くないよ!あの人たちが強引なのがいけないんだから!」


それに同調したのがパメラちゃん。


「そうですよ!むしろスカッとしました!ユーリさん、すごくかっこよかったです!」

「……!(こくこく)」


さらにメリーちゃんも頷いて同意を示す。

しかしユーリさんはまだ気にしている様子。


「…マーガレットは……?」


そう俺に聞いてきたのだ。

それに対する俺たちの答えは決まっている。


「(はい、かっこよかったですよ!)」

「…そう……?」


それでもまだまだ不安げなユーリさん。


(こうなったらあれだ)

(あれとは?)

(褒め殺し)

(…コウスケさん)


駄目かな……?


(私も混ざります)

(さすがマグ)


そうと決まれば早速…


「…まぁあの人たちの気持ちも分かりますけどね~」

「「「えっ?」」」

「……?」

「ユーリさん美人ですし、一緒にいたいなぁって思うのも頷けますよ〜」

「…へっ!?」


(はい、マグ交代)

(は~い♪)


「それにユーリさん、ふにふにですから…」

(マグ?)

「ごほんっ!…スタイルもいいですからね!あの人たちがじ~っと見つめるのも分かると言いますか、私もあわよくばふにっと…」

(マグ?)

「げふんげふんっ!」


この子俺よりスケベになってないか?

恋人としてはそういうマグもアリアリの超有りなんだけど、保護者としてはかなり心配だわこの子。


「…ふふ……」


だがそんなマグの様子が可笑(おか)しかったのか、ユーリさんは少し噴き出してしまった。

それを見たショコラちゃんとパメラちゃんも、ユーリさん褒め褒め大会にエントリーしてきた。


「確かにユーリさん、かっこよかったけど…やっぱり可愛いですよね!」

「えっ?ショコラちゃん……?」

「うん!それにお肌もスベスベ、髪もツヤツヤ、尻尾もモフモフで綺麗です!」

「パ、パメラちゃんまで……!?」


2人に褒められ、さすがに照れ始めるユーリさん。

そこにとどめを刺したのはメリーちゃん。


「……うん、可愛い♪」

「…あぅぅ……!」


あっ、照れすぎて耳がぺたーんの尻尾しゅーんってなった。


『(可愛い!)』

「うぅぅぅ……!!」


俺たちの声が揃った。

みんな気持ちは一緒なんやな!


そこにさらにマグが畳みかける。


「ふふふ~、ユーリさん♪ぎゅ~♪」

「わっ!あ、危ないよぉ~……!」


そう言いつつも引きはがそうとしないユーリさん。

これにショコラちゃんたちも乗っかる。


「ショコラも~♪」

「私も〜♪」

「……わたしも♪」

「あっあっ!?も、も~…しょうがないなぁ~…!」


セリフとは裏腹に嬉しそうな声を出すユーリさんに、マグたちもニッコリ…


「あ、あの~……」

『(?)』


と、そこで後ろから声をかけられた。


なんだよ今いいとこなのに……と振り返ったマグの視界が捉えたのは、かなり困惑した様子の冒険者パーティだった。


その代表らしき女性の人がひと言。


「えと…危ないですよ……?」

『(えっ?)』


そう言われて俺たちは気付いた。

ここ階段のど真ん中だわ…と……。


確かに危ないし、横幅が広く避けて通れるとはいえ階段のど真ん中でわちゃわちゃしてたら普通に邪魔だ。


というわけで…


「ごごごごめんなさい!すぐ行きますすぐ行きます!」

「あわわわ…!み、見られた…!見られちゃったぁ……!」

「パメラ、大丈夫!マグはいつも恥ずかしいとこ見られてるから!」

「(ぐはっ!!)」

「……///(ぷしゅ~…)」


即座に謝って階段を下り始めるユーリさんに、恥ずかしがるパメラちゃん、それを慰めるショコラちゃん、それにダメージを受ける俺たちとこちらも顔を真っ赤にするメリーちゃんが続く。


無事に全員階段を下り終え、空いているベンチに並んで座る。


『はぁ……!はぁ……!』


そこで息を整えているマグたちに、1人体力的に余裕だったユーリさんが呟いた。


「……見られちゃったね……」

「……見られましたねぇ……」

「……(こくこく)」


マグとメリーちゃんがそう返すと、続けてショコラちゃんとパメラちゃんもしゃべり始める。


「…でも…ユーリさんが元気になってよかったです……!」

「…うん…!それに…ユーリさんの体、見立て通りスベスベで気持ちよかった……!」

「パ、パメラちゃん!?」

「わかる」

「マーガレット!?」


マグはもうちょい自重しなさい。


…まぁ…確かにスベスベのモチモチだけど……。


「も、もぉ!みんな私を慰めようとしてくれるのは嬉しいけど、さすがに恥ずかしいよぉ!」

「確かに慰めたいとは思いましたけど……」

「ショコラたちはウソ言ってないですよ?ねぇ?」

「うん。私たちは本当にユーリさんって素敵だなぁって思ってますから、全部本心ですよ?」

「……(こくこく)」

「うぇっ!?あっ…えっと……あ、ありがとう……」


マグたちの言葉に再び照れ倒すユーリさん。

その光景はやっぱり……


『(可愛い)』

「あぅぅぅ……!!」


そうしてマグたちはそこでしばし雑談をして、ユーリさんを落ち着かせたりまた照れさせたりした後、目的の闘技場へと向かうのだった。


あ~……遅刻…怒られないといいな~……。

階段でわちゃつくのはやめましょう。

そりゃそうだ。


でも子どもの頃はアパートやらマンションの友だちと遊ぶとき、階段とかに座ってゲームしたりしてたなぁ…って。

最近…はまぁ、このご時世なので当然として、その前からもあんまり見なくなった印象ですね。


下りやすくて何よりですわ。

そしてごめんなさいね、子どもの頃階段上がるか下りるかするとき邪魔しちゃった人。


まぁそれはさておき、次回は6/3(木)に更新を予定しています。


お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] いや、ユーリさんが可愛いのは真理でしょう(キッパリ) だって浮気(愛人)公認してる正妻(マグさん)が、常にふにっと狙ってる肢体の持ち主ですし、容姿も恐らく上位陣に連ねる位のだろうしね( ,…
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