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151.新たな目標…義妹の真実

チェルシーが泣き止み、恥ずかしそうな彼女とララさんにもう一度別れを告げ、すっかり暗くなってしまった道を歩き家へと帰る。


その道中で、前から俺の見知った人が走ってくるのが見えた。


「…ユーリさん?」

「あっ!マーガレットいたぁ!遅いからみんな心配してたんだよぉ!」


前から走ってきたのはユーリさん。

仕事着の踊り子の服ではなく、オフの日の普通の服を着ている。


そんな彼女に謝罪と理由を話す。


「ごめんなさい……ちょっと…ギルドへ案内をしてて……」

「そうなの?も〜…優しいのは良いところだけど、ほどほどにしないとこうやって心配されちゃうよ?」

「はい……」

「…何かあったの?」


ほんの少しの問答で、俺に元気が無いことに気が付いたユーリさん。


俺は…少し迷ったが、正直に今回のことを話した。


「…そっか……それは難しいね……」

「はい……」

「でも、マーガレットがそのとき助けに入ってなかったら、あの子たちはもっと酷い目に遭ってたかもしれないし、別れ際にお礼も言ってくれたんでしょ?」

「……(こくり)」

「なら、新しいお友達が出来たことを喜ぼう?それで、次にあの子たちが来たときに、同じような理由で断られないようにするの」

「それは……」

「うん、難しいことだよ。でも、それがみんな幸せなことだと思う。チェルシーちゃんも、その子たちも、それに…マーガレットも。そうでしょ?」


(…確かにそれが実現すれば、チェルシーと離れて不安にさせることなく、エリーゼとフレデリカの2人と堂々と街中や迷宮を案内できるよね……)

(はい…。何より…あの2人にも、みんなと仲良くなってもらいたいです…)

(うん。立場や種族を気にせず、みんなで一緒に遊びたいよね)


それに、それがこの街の本来の在り方だと、ララさんも喜んでくれると思う。


(でも…とても難しい…ですよね……)

(そうだね……人の意識はそう簡単には変わらない。そのうえ、人は多数派の意見に流されやすい。何より大元を正さなければそんな夢物語を実現しようがない……)

(…………)

(でも……それが出来ればとても素敵なことだと思う)

(…はい……!私も素敵だと思います…!)


マグもそう思ってくれていたことを嬉しく思いつつ、ユーリさんに返事を返す。


「…そうなれば凄く嬉しいです……!」

「…♪ならさ。少しだけ頑張ってみよう?もちろん私も手伝うし、メイカさんたちもきっと手伝ってくれるよ!それにここのダンジョンマスターだって、わざわざ街の地下に迷宮を作ったんだから街が良くなるのは賛成のはずだし、怒られるようなことは無いよ!多分!」


そうだなぁ……ハルキならそうかもしれないなぁ……。


(…素敵な街造りか……また新しい目標が出来ましたね…!)

(うん…!また明日ハルキに相談してみよう!)

(はい!)


新たな目標が出来たところで、俺はその目標をくれたユーリさんにそれを伝える。


「ユーリさん。私…私たち、新しい目標のためにもっと頑張ります。エリーゼとフレデリカが次に来たときに、良い思い出が出来るように頑張ることにしました!」

「ふふっ…♪うん!でも、頑張りすぎちゃ駄目だよ?ただでさえ頑張ってるんだから」

「(あはは……は〜い!)」

「も〜…本当に分かってるの?」


しょうがないなぁ…といった様子で微笑むユーリさんは…


「それじゃあ帰ろうか。あんまり遅いとフルールさんに怒られちゃうもんね♪」


そう言って俺に手を差し伸べる。


「(はい!)」


俺たちはそんな彼女の手を握り、元気に返事をした。


そうして手を繋いで歩き出したところで、俺はユーリさんにさっきの俺をお礼を言う。


「ユーリさん。ありがとうございます」

「うん?なにが?」

「ユーリさんのおかげで新しい目標が出来たんです。だからお礼を言いたくて……」

「お礼なんて…私は話を聞いて、ちょっと提案をしただけだよ」

「その提案のおかげで私たちは前に進めたんです。だからありがとうございます」

「ふふふ…そっか。それなら素直に受け取っておこうかな♪」


上機嫌な彼女と並んで歩いていると、先程払い逃げした串肉屋台が見えてきた。


(…さっき多めにあげて逃げてきたから、しばらくは顔を合わせたく無いなぁ……)

(それは…確かに……お釣りもいらないって言ってったのに、その日のうちに出会うってすごく気まずいですよね……)

(うん……幸い屋台側にはユーリさんが歩いてるし、人通りも多いから、これに紛れていけば多分大丈夫だろう……)


そう思っていたのだが……。


「あ、マーガレットちゃんいたよ!」

「やっぱり!狐の子が走ってったからそろそろ来ると思ってたんだ!」


なんと通行人の告発によりバレやした。


なんでや。

なんでバラすんや。


というかユーリさんがむしろ目印になってしまっとるやん。

ユーリさんも目立つんだから当たり前か……。

迂闊だったわ……。


「ほら、お嬢ちゃん!さっきのお釣り渡すからこっち来い!」

「あっはい」


バレちまったもんはしょうがないので大人しく受け取り、ついでに尋ねる。


「もしかしてあの人さっきの騒ぎを見てた人ですか……?」

「そうだよ。お嬢ちゃんがあの2人の分を差し引いても多すぎるお金を渡してきたからどうにか返さないとって思ってたら、何人かが探してくれるって言ってくれてな。まったく、賄賂(わいろ)なんてどこで知ったんだ?」

「すみません…ほんのお詫びの気持ちにと思ったんですけど……」

「そりゃ金が貰えるのは嬉しいが、さすがにお嬢ちゃんから貰うのは抵抗があるって!それに、そういう貴族っぽいことをするなんて…ちょっと見損なったぜ……」

「えっ。割と冒険者の皆さんもヒソヒソ裏金・裏報酬渡してるところを見ますよ?」

「おい!?子供の前で変なことすんじゃねぇよ!?」

「いや〜…まさか見られてるとは思わなくてぇ……」


いやいや…ギルドホールで堂々と「金を渡すから素材を融通してくれよ……な?」とか、「あんたの情報通りだったぜ……次も頼むよ…ヘッヘッヘ……」とかしてたら、見ようとしなくても見えてしまうって。


まぁ確かに賄賂はその余裕がある裕福な貴族っぽいことではあるけど……俺としては商人の方がやってるイメージなんだよなぁ……。


…おじさんやってないの?

偉いね。


「…マーガレット……相変わらず何やってんの……?」

「ははははは、ごめんなさい……」


相変わらずと言われて否定できないってのも悲しいなぁ……。

でも毎日なんらかのイベントに巻き込まれてるからなぁ……。


「あっでも500ゴルはきっちり引いてくださいね」

「…金にうるさい貴族は多いが、自分から金を減らしていく貴族なんて見たことないぜ……ほんっとお嬢ちゃんはお嬢ちゃんだな」

「それ褒めてます?」

「褒めてるよ。んじゃあその銀貨は返してもらって、銅貨を50枚だな」


まったく褒められた気はしないが、別に悪い意味では無さそうだしもういいや。


それよりも…やっぱり硬貨をジャラジャラ渡したり貰ったりって慣れないなぁ……。

もうちょい簡単にしとけよなぁ…ったく……。


なんか少しメダルゲームをしてる気分だよ……。


「48…49…50っと!まいど!また来てくれよ!今度は普通にな!」

「私としては毎日普通に生きてるだけなんですけどねぇ……まぁ、また来させていただきますとも。では」


会計を済ませ、再びユーリさんと手を繋いで歩く。


「あそこの屋台のお肉美味しいもんね。私も毎日我慢するのが大変で……」

「あぁ…良い匂いがするうえに、見た目も凄く美味しそうで、実際に美味しいって知ってますしね……分かります」


そんな良店との仲が悪くならなくてよかったと思いつつ、俺たちは住処へと帰っていった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「遅い」

「ごめんなさい……」


寮へと戻ってきた俺を玄関口でフルールさんが待ち構えていた。

そしてひと言叱られました、ホントごめんなさい。


「ふぅ…みんな待ってるわよ。早く手を洗ってきなさい」

「はい……」


みんなまた待ってくれてたのか……。

それはまた悪いことしちゃったなぁ……。


手洗いうがいを済ませた俺とユーリさんは、リビングへと向かい、扉を開ける。


「ただいまうわっ!?」

「…………おかえり」

「た、ただいまメリーちゃん……」


扉を開けると、まん前に膨れっ面のメリーちゃんが立っていて驚いた。

それだけなら割とよくあることなのだが、扉スレスレの位置に立っていたのでとても心臓に悪い。

ぶつけるかもしれなかったと思って超怖い。


そんな俺の心情を知ってか知らずか、メリーちゃんは膨れっ面のまま俺に抱きつくと、ぐりぐりと強めに頭を押し付けてくる。


「ちょ…メリーちゃん……ちょっと痛い、ちょっと痛い……!」

「……(ぐりぐりぎゅ〜)」

「あなたの帰りが遅いから、ずっとそこで待ってたのよ。それを見かねたユーリがあなたを迎えに行ったの」

「そ、そうだったんですか……ごめんねメリーちゃん……」

「…………(ぐりぐりぐりぐりぎゅむぅ〜)」

「ごめんごめんごめんごめん痛い痛い痛い痛い痛い…!」


激しさを増したメリーちゃんのぐりぐり攻撃に苦しみながらも、どうにか抱きしめ返すことに成功する。

そのままこちらからも若干強めに抱きしめると、メリーちゃんはぐりぐり攻撃をやめてくれた。


「ほらほら、早く席に着きなさい。みんなお腹減ってるんだから」

「あっ…はい。行こう、メリーちゃん」

「……(ぎゅっ)」

「うん。椅子くっ付けて座ろう?」

「……うん」


よかった……。

どうにか移動は出来るようになった……。


「すみません…皆さんも待たせてしまって……」

「まぁその話は食いながらしようぜ」

「うんうん!なんで遅くなったのか、キチンと教えてもらうからね!」

「はい…」

「それじゃ、みんな揃ったし……いただきます」

『いただきます!』


そうしていつもより遅めの夕ご飯を食べ始める。

俺は隣にピッタリとくっついているメリーちゃんにご飯を食べさせてあげながら、事の経緯を話した。


そしたらまずはフルールさんが反応した。


「…なるほど……王都の貴族の子ね……」

「はい」

「あなたは相変わらず妙なことに巻き込まれるわね……」


フルールさんにも言われてしまった……。


次にケランさんが話始める。


「でも…確かに王都の貴族に苦い思いをさせられた人もいっぱいいるし、その子たちがいくら素直でいい子だとしても、危害を加える…まではいかなくても、何か嫌がらせをするぐらいはありそうだね……」

「はい……リンゼさんにも言われました。これが一番だからって……」

「…そうだね……確かに合理的だと思うよ」


やっぱりケランさんもそう思うか……。


俺がメリーちゃんに、物凄く慎重に水を飲ませながらそう思っているところに、メイカさんが尋ねてきた。


「ねぇコウスケ」

「なんでしょうメイカさん?」

「その子たちはどんな子なの?」

「短めの白い髪に、白い鎧を着けた騎士風の子がエリーゼという子で、水色の髪にローブを着た魔導士風の子がフレデリカ。エリーゼは元気で明るい女の子で、フレデリカはそんなエリーゼを支えてるような、少し落ち着いた女の子です」

「へぇ〜!ね、可愛かった?」

「やっぱりそこ行くんですね……」

「だって気になるじゃない〜!」


さすがメイカさん。

ブレない。


「可愛かったですよ。外見も、中身も」

「そっかぁ!会ってみたかったなぁ!」

「明日には出て行ってしまいますから多分無理だと思いますよ?……どうにか見送りぐらいはしたいですけど……」


(馬車の時間も宿の位置も聞いてませんからね……)

(あんまり多くの人に聞かれたくないことだからね……誰が何をするか分からないし……)

(…難しいですね……)

(うん……)


一見善人に見える人ほど、犯罪を犯したときの手法がえげつない…なんてのも、物語ではお約束なところもあるし……。


人は見かけに寄らないんだよ……ホント……。

でも数少ない判断材料だから、それを頼りにしちゃうんだよ……。


俺も可愛いなぁ…って思って育ててみて、声を聞いたりキャラストーリーを見たりしてイメージと違う…ってことよくあるし……。

それはそれで好きってのもあるけど、やっぱり最初に持ったイメージとかけ離れてると戸惑うよね。


それでも気にいるもんは気にいるけど。


ぎゅっ


と、そんな話をしていると、メリーちゃんが俺の腕に抱きついて、再び膨れっ面を向けてきた。


「メリーちゃん……?」

「……(ぷく〜)」

「えっと……」


俺が助けを求めて周りを見渡すと、メイカさんがもしかして…と口を開いた。


「メリーちゃん…その子たちに()いてるんじゃない?コウスケがまた可愛い子と知り合ったから」

「えぇ……?」


そうかなぁ……?

一番ヤキモチ妬きそうなマグだって、あの2人と仲良くなるのに乗り気だったのに……?


「メリーちゃんはコウスケにべったりだもの!友達が増えたら、自分と一緒にいる時間が減るかもって思っても不思議じゃないわ!」

「それは……」


あり得る……。


メリーちゃんは最近、俺が寮にいるときはずっと一緒にくっついてくるからな。

懐かれてるのは嬉しいし、見られて困るもんも特に無いから気にしてないけど。


そこにフルールさんからの追加情報も入る。


「その子、本当は自分で着替えも出来るのよ?」

「えっ?そうなんですか?」


フルールさんもメリーちゃんの着替えを手伝ってたし、てっきりそういうもんだと思ってたんだけど……。


「私が一緒のときはいつもやってたから、その時の(くせ)でやっちゃうけど、本当は言われなくても自分からやれる子なのよ?みんなが甘やかしてくれるから、思う存分甘えてるんでしょうね」

「なるほど……」


まぁ…この子も相当な苦労をしたみたいなんだもんな。

それが無くたって、可愛い妹分は甘やかしたくなるのが俺というもの。


フルールさんに注意されない限りは好きにさせるつもりだ。


そう思いながらメリーちゃんに最後の一口を差し出す。


「あーん」

「……あ〜……はむ」


これにてメリーちゃんのご飯は終了っと。


その様子を見ていたユーリさんが微笑む。


「くすっ♪こうして見てると、本当に姉妹にしか見えないよね〜」

「ふふふっ、それだけ仲良く見えてるのは、素直に嬉しいですね」

「でもコウスケ。メリーちゃんが相手でも、駄目なものは駄目ってちゃんと言わないとだよ?」

「分かってますよユーリさん。甘やかしすぎも良くないですからね」


それでメリーちゃんが、噂に聞くワガママ貴族のようになってしまったら申し訳ないからな!


「本当?じゃあもしメリーちゃんにお仕事休んでって言われたらどうする?」

「とてつもなく悩むと思いますが、頑張って仕事に行きます」

「すでに負けそうな雰囲気出てるけど大丈夫なの?」

「多分きっと問題無いですわよ?」

「不安しかない……」


ギリギリ!ギリギリだから!

これが職場に良い印象が無かったら秒で負けてただろうけど、幸い楽しいお仕事だから頑張れる!


そんな俺にメイカさんが羨ましそうに言葉を漏らす。


「良いなぁ〜…私ももっとメリーちゃんに甘えられたいのに、今日のお昼もユーリちゃんの方が頼りにされてて寂しかったんだよ?」

「あはは……それは…えっと……」

「いい!謝らないでユーリちゃん!悲しくなっちゃう!」

「あなたはむしろメリーに付き纏いすぎなのよ。流石にトイレにまで着いていこうなんて駄目に決まってるでしょ?」

「(えっ)」

「「えっ?」」


フルールさんの言葉に思わず反応してしまった俺に、メイカさんとフルールさんが反応し、他のみんなも顔を向けてくる。


「えっと……俺、ここ最近いっつもメリーちゃんにトイレに連れ込まれて、終わるまで手を握って待ってるんですけど……」

『…………』


なんとも言えない空気が流れる中、当のメリーちゃんはそんなこと全く気にしない。


「……ん〜…」


俺に抱きついてなでなでを要求してくるマイペースなメリーちゃんに、俺たちはなんとも言えない空気の中、黙々と食事を再開するのだった。


…俺はメリーちゃんを抱きしめ返してなでなでしているために手が塞がったので、メリーちゃんの反対隣にいたユーリさんと、俺の対面にいたメイカさんに食べさせてもらった。


…食事ってこんな大変なことだったっけか……?

今日…第一章の登場人物まとめを見たら、隠密ギルドの「ヘンリエッタ」さんと「ベック」さんがいなかった……。

3ヶ月越しの発覚……悲しみ……。


というわけで「第一章の登場人物まとめ」に2人と「動く絵画」の紹介を追加しました。


そして次の更新は4/16(金)の予定です。

まだまだ見直しして、こういうものを無くしていきたいと思いますので、皆さま引き続き暖かい目で見ていただけると幸いです。


それでは、次回をお楽しみに!

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