148.新たな友達の気配…帰り道での遭遇
お昼ご飯を終え、ギルドへと戻ってきた俺たち。
メイカさんたちは、せっかくだからフルールさんたちとゆっくり過ごすと言って途中で別れた。
なのでギルドに戻ったのは俺とショコラちゃん、パメラちゃんの3人だけだ。
カウンターの中へと入り、ララさんがいつもいる奥の方に向かうと、そこにはララさんとチェルシーがいた。
「ただいま戻りました」
「「戻りました〜♪」」
「おかえり〜」
「あっ!おかえりマギーちゃ〜ん!」
「うわっと!」
机をバックにしてる相手へのタックルハグはご遠慮ください!
そんなことはお構いなしに、チェルシーはショコラちゃんたちに話しかける。
「ショコラちゃんとパメラちゃんもおかえり〜!今日はどこにいってたの?」
「モニカのところだよ!」
「チェルシーの言ってた通り、すっごく美味しかったよ〜!」
「でしょでしょ?いいなぁ〜、私も行きたかったぁ〜!」
「じゃあ今夜は白兎亭にしようか」
「やったぁ!ララ姉大好き!」
どうやらララさんたちの晩ご飯が決まったようだ。
ほんと美味しいよね、白兎亭。
無事に決まったところで、ララさんが俺に朗報をくれた。
「マギーちゃん。一昨日練習した時に、回復魔法を覚えたいって言ってたでしょ?」
「えっ?え〜っと……」
(あっ言いました言いました!)
「あっそうだ。言いましたね」
あっぶねぇ〜!
(ごめんなさい〜!コウスケさ〜ん!)
(セーフセーフ。ショコラちゃんたちが不思議がってないからセーフ)
しっかし…マグがそんなことを言ってたなんて……。
回復魔法かぁ……。確かに試してなかったなぁ……。
「こほん…それで、それがどうかしたんですか?」
「うん。明日医療ギルドに資料を届けるついでに、見学と回復魔法のコツとかを聞いてみない?」
「(えっ!いいんですか!)」
(やった!これでコウスケさんがいつ抱きつかれて怪我をしても直せるようになりますよ!)
(それで回復魔法を覚えたかったの?)
(はい!)
そ、そんな理由……嬉しすぎる!
(も〜!ほんと出来た恋人だなぁ〜マグは!)
(えへへへ〜♡ありがとうございます〜♡)
これはご褒美が必要ですな!
と、それはまた後で考えるとして……
「是非行かせてください!」
「うん、分かった。じゃあそう伝えとくね。チェルシーちゃん、明日医療ギルドにマギーちゃんを案内してあげてくれる?」
「うん、わかった!あたしも《サフィーちゃん》に会いたいしね!」
「サフィーちゃん?」
チェルシー、医療ギルドにも友達いるのか。
交友関係広いなぁ〜。
「サフィーちゃんっていうのはね、チェルシーちゃんの医療ギルドのお友達で、シスター見習いの子なの。本名は《サフィール》ちゃん」
「シスター……ということは教会なんですか?」
「うぅん。確かにこの街の教会も医療ギルドの管轄だけど、教会とはまた別にギルドの建物があるの。白い屋根が目印だよ」
「へぇ〜」
ということは、ナバロさんも医療ギルドの人ってことなのかな?
と、今度はチェルシーが話し始める。
「サフィーちゃんはね!すごく真面目で、丁寧で、優しくて、可愛い女の子なの!マギーちゃんみたいでしょ?」
「ほんとだ、マグみたい!」
「マグはたまにイジワル言うようになったけどね♪」
パメラちゃん……俺が好きな人の話をはぐらかしたの根に持ってるな?
「それにぃ……うふふ♪マギーちゃん驚くと思うなぁ!」
「えっ?何が?」
「ふふふ♪サフィーちゃんの種族♪」
「?珍しい種族なの?」
「これ以上はダ〜メ♪会ってからのお楽しみだよ〜!」
「えぇ〜!」
気になるなぁ……。
俺が絶対に驚く種族かぁ……。
獣人、ドワーフ、エルフには会ったから……竜人族とか……?
やべぇ…それだったら、龍絶許マンとしてはどう接すればいいか分かんないぞ……!?
そんな俺の様子を見て、ララさんがフォローを入れてくれた。
「ふふふっ、大丈夫。マギーちゃんならきっと仲良くなれるよ♪」
「そ、そうですか……」
ふぅむ……ララさんがそう言うなら、竜人族とかではない……かな?
となるとなんだろう……?
「うん…マギーちゃんなら大丈夫だよ」
「(?)」
チェルシー…?
なんで少し寂しそうな顔を……?
「ほらほら、明日のお楽しみでしょ?マギーちゃんはこれとこれ、お願いね」
「あっ、はい。わかりました」
ララさんに資料整理を頼まれて思考を中断する。
そう…だな、明日のお楽しみ。
そういうことにしておこう。
「チェルシーちゃんはこっちお願いね」
「うん、わかった!」
「ショコラちゃんとパメラちゃんは、朝と同じように仕事を覚えていこうね」
「「は〜い!」」
「それじゃあ、お願いします♪」
『お願いしま〜す!』
ララさんの号令で、俺たちはそれぞれの仕事に取り掛かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「じゃあね、マグ!」
「また明日〜!」
「うん!またね、ショコラ、パメラ!」
問題なく仕事をこなし、いつも帰る時間になったので今日のお仕事は終了。
ショコラちゃんたちも俺に合わせて帰れるようにララさんが調整してくれたようで、彼女らの着替えを待ってからギルドを出て別れた。
なお、更衣室の中でお喋りしながら待っていたため、2人の着替えシーンはバッチリ目に入っていた。
2人とも同じ下着だったのを見るに、ナバロさんら教会の人が用意してくれた物を身につけているのかもしれない。
早くお給料をもらって、一緒に服を買いに行く…その様子を見たいものだ。
マグとショコラちゃんとパメラちゃん…モニカちゃんたちここで出来た友達たちと、仕事や過去をちょっとだけ忘れて、楽しんでほしいな。
絶対癒されるから。
そんな平和な光景を思い浮かべながら歩いていると、たまにおやつとして買い食いする串肉屋台辺りで揉めているのか、人がその屋台を囲むように集まっているのを発見した。
(どうしたんだろう……?)
(あそこのおじさんは気さくな方ですから、あんなに揉めるなんて珍しいですねぇ……)
気になった俺たちは、野次馬たちの合間を縫って様子を見に行く。
人だかりを抜けると、やはり串肉屋台で揉めていた。
気さくなおじさんと揉めている相手は……2人の女の子。
どちらも大体チェルシーと同じぐらいの子だ。
片方の女の子…少しくすんだ白いショートヘアーの子は、背中に大きな盾とショートソード…かな?
盾に隠れて柄の辺りしか見えないが、長さ的に多分そうだと思う。
どこか高級感のある洋服の上に、白い胸当てと腰当を身に着けており、ひと目で騎士だと分かるような姿だ。
もう一人もひと目で分かった。あれは魔導士だ。
こちらは水色の髪を編み込み、後ろに流しており、その髪は白ショートの子と同様に少し鮮やかさが足りない。
恰好は、これまた高級感のあるローブに身を包み、背中には両手杖を背負っているので、ひと目で魔導士だと判断した。
その2人…いや、見た感じ、白い子が主におじさんと言い合っていて、水色の子はただ不満げに頬を膨らませているだけのようだ。
「だからっ!なんでって聞いてるのっ!」
「常識だからだろうがっ!そんなことも知らねぇのかっ!」
「それがどうしてって聞いてるんでしょーっ!」
…なんか不毛な争いしてるな……。
なにが原因なんだありゃあ……?
俺は隣の野次馬に話しかける。
「あの……何があったんですか?」
「あいつらが金を払わないで去ろうとしたから止めたら、口喧嘩になったんだと。…ってマーガレットちゃん?」
「えっあっはい」
俺はあなたを知らない……いや、どこか見覚えが……?
「あっ。この前の試験で合格した人!」
「おぉ!覚えてたんだ!」
そうそうこの人、最終試験で俺が手伝うっつったときに、心配してくれた青年だ。
「かなり遅れましたが、合格おめでとうございます」
「ありがとう。あの後話し込んでたみたいだけど、怪我とかはしてないよね?」
「はい。ご心配をおかけしました」
「…正直今もかなり心配だけどね……ここ最近の新聞の記事が……」
「…………大変ご心配をおかけしております……」
ほんと……あの新聞作ってるやつしばきたいなぁ……。
こんなにも迷惑かけやがってんだから、多少強引な手を使ってもいいかな……?
「ごほん……とにかく、あのままだとまずいですよね……」
「そうだね。あのままだったら衛兵を呼ばれて終わりだろうね」
「?さっきから何故そんなに冷めているんですか?あの子たちに何か恨みでもありそうな感じですけど……」
「…あ~……」
青年は言いづらそうに俺から視線を外す。
「あの……?」
「………あの子らは貴族なんだよ……」
「…なるほど……」
高そうな服を着てるとは思ったけど、やっぱりそんな感じなのね……。
「いやでも、どうして確定できるんです?」
「…この街の門には、相手の素性を簡単に見れる機能があるらしい……門番はそれを誤魔化すため…というわけでも無くて、そこで捕まえられるのならそれでいいからなんだって」
「なるほど……それで、怪しいと思った人には監視が付く……今のあなたのように」
「さすがお嬢」
「ちょっ…その呼び方をするのがギルドの方針にでもなってるんですか?」
「そうだよ」
「夢ならいいのに」
どうせダニエルさんの悪ふざけだろうし……今度会ったらまた文句言ってやる。
どうせ聞かないだろうけど。
そんな会話をしている間もいざこざは続いている
このまま帰ってもいいんだけど……。
(な~んか聞いてる感じだと……「わがまま」っていうよりは、「世間知らず」って感じなんだよなぁ……)
(本当に知らなくて、説明不足に文句を言ってる…ということですか?)
(うん。だからまだ大丈夫だと思うんだよねぇ……本格的なわがまま貴族になる前にキチンと教えてあげればいいと思うんだけど……)
(じゃあまずは、世間知らずなんだってことを確定できる情報を集めるところから、ですね)
(!)
マグ……あんたほんと天才やで……!
あやふやな状態でことを進めるのはギャンブル。
だから証拠が必要。
それを怠れば冤罪になる。
(…ほんと、マグは頭良いよねぇ♪)
(えへへ…そんなことないですよぉ……♪)
あ~…照れてるマグも可愛いなぁ♪
よし、早速聞いてみよう。
「…あの、もしかしてですけど…あの子たち、「なんでお金を払うの?」って聞いたんですか?」
「うん?あぁ…そうだけど……」
「んー……それで、店主が「そんなの当たり前だろ」って言ったんですか?」
「あ、あぁ……」
「それでずっと同じことを言いあってる?」
「う、うん……」
「ん~……なら白かなぁ……」
(ですね)
「えっ?」
それなら多分「世間知らず」だな。
マグもそう言ってるし、あとはそれをどう伝えるか……。
「ったく!親に連絡して引き取ってもらうからな!」
「なんでよっ!?親は関係ないでしょ!?」
あ~……。
(…激しくなってますね……)
(ありゃまじぃか……?周りも、あの格好で貴族だって察してるからか誰も助けに入らない…どころか、「ざまぁないな」って感じだし……)
(はい……なんか……嫌な感じです……)
(…そうだね……)
とはいえ、ここであの子らをかばうと、やっぱりお前も貴族の子だなってなりかねない。
そうなるとここでの生活が辛くなってしまう……。
何人か仲のいい人はかばってくれるだろう……。
問題は……この街で出来た友達にそう思われること。
モニカちゃん、チェルシー、リオ、シエル……。
あの子たちにそう思われたらかなりきつい……。それはマグも同じだろう……。
それに、今まで優しくしてくれた冒険者の人たちや、他のギルドの人たちも……。
どうしよう……。
多分これだと思うんだけど、そのあとの可能性が怖すぎる……。
じゃああの子たちをこのままにする……?
本当にそれでいいの……?
俺たちの予想が違って、あの子らが噂に聞くクソ貴族だった場合はそれでもいいけど……。
(……コウスケさん……)
(マグ……?)
(…私と代わってください)
(なっ!?)
ここでっ!?
それって……!
(マグがあの子らの潔白を証明しに行くってか!?)
(はい)
(そう言うってことは、出て行った後のことも考えたんだろう!?)
(はい。リオやチェルシーたちに、冒険者の皆さんに悪く思われるかもしれないって考えました)
(……そのうえで代わるって……?)
(はい。このままなのは嫌なんです。…コウスケさんが私のために嫌われそうな行動をしないように頑張ってくれているのは分かってます……でも!助けられるかもしれないに、見てるだけなんて嫌なんです!)
(っ!)
…マグは……村を焼かれたときに何もできなかったと泣いていた。
今までだって、何かの役に立ちたいとずっと言っていたし、役に立てたと思ったらとても喜んでいた。
…自分も大変だって言うのに、他人のことをよく心配していた。
(はぁ……)
(…ごめんなさい……わがまま言って……でも……)
(いや…こっちこそごめん)
(え……?)
(マグのためだって言って、結局マグのことを全然分かってなかった……助けよう)
(っ!ホントですかっ!?)
(うん。それに、マグの言う通り、後味が悪くなっちゃうのは嫌だからね)
(ありがとうございますっ!)
喜ぶマグの声を聞いて、俺はこの声が沈むことの無いように頑張ろうと、自分を奮い立たせる。
のだが……
(ただ…その……)
(?)
(…何かあったら甘えていい……?)
(っ!?~~~~っ!もちろんですっ♡♡♡)
(…ありがと)
情けないのは承知だが、やっぱり怖いものは怖い。
「この世で一番怖いものは何?」と聞かれたら、大真面目に「人間」と答えたいと思っているほどだからだ。(実際にそんなこと言ったら変な目で見られるので言わない)
でもみんな怖さは分かってると思うの。
世間体が悪いから言わないだけだと思うの。
そう思うことにして生きてます。コウスケです。
よし、現実逃避終了!
俺は攻撃を行う!
「じゃあそういうことで」
「えっ?待って?どういうこと?」
「骨は拾ってくれるとメイカさんとかが凄く喜びますんで」
「今まで聞いたことの無い「骨を拾ってくれ」だねっ!?」
「さらばだ……未来を担うツッコミ芸人さん……」
「俺は別にツッコミがしたいわけじゃないよっ!?」
隣の青年にもご挨拶をかましたところで、俺は揉めている店主のおじさんと女の子たちの元へと向かい……
「こんにちは。何かあったの?」
努めて明るくそう言った。
また新キャラが増えてしまった。
次回更新は4/7(水)予定です。
…今そこそこ進んだところを書いているのですが、それでもまだ試合に行ってません……。
せめて200話までには第二章を終わらせたい……。
ではでは……。




