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138.今日の話と大事な話…元気いっぱい子供組

「マーガレットくん…マーガレットくん」

「ん……?グリムさん?どうしましたか?」

「もうすぐ帰る時間ではと思ってね」

「(えっ?)」


持ってきてもらった雷の魔導書初級編、全6冊。

5冊目をメモを取りながら読んでいる俺に、グリムさんがそんなことを言ったので顔を上げ壁に掛けられた時計を見ると、すでにいつもメイカさんたちが帰ってくるぐらいの時間になっていた。


((全然気付かなかった……))


マグと2人、本を読み感想を言いながら気になった部分をメモしていたので、そこまで時間が経っていることにまったく気付かなかった。


むぅ……しかしまだ5冊目が途中なんだよなぁ……。


「ちなみに貸し出しはしてないよ。本は一冊一冊が手作りの貴重品。同じものはまず無いからね。それに冒険者は命のやり取りをする危険な仕事だし、だからって他の人なら良いというのもアレだからね」

「そうですかぁ……」


むぅ~……残念だが仕方ない。

著者名と本の名前はメモしてあるから、今度来た時に読むとしよう……。


…と…おや?


「チェルシーとシエルが寝てる……」

「最初は君が本を読んでいる姿を眺めていたんだが、しばらくしたら眠ってしまってね。シエルはともかく、チェルシーくんはララの元に戻さなければだから、起こさないとなんだが……」

「すやすや……」

「すぴ~……」

「…これを起こすのはかわいそうですね……」

「そうなんだよ……だけど、寝てる間に帰ったなんて知ったらシエルも悲しんでしまう。だからまぁ…悪いとは思うけど、そろそろ起こそうか」

「はい」


そうしてチェルシーとシエルを優しく……してたら全然起きなかったので、ちょっと頬をつねってみたりして起こした。

ごめんね。


でもそれでも若干手間取ったよ。

なんなら君、普通に起きたよね?

普通に「おはよう」って言ったもんね?

よく眠れたようでよかったです。はい。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「で……なんでここまでついてきたんですか?」

「いやぁ…せっかくだから久しぶりに顔を出そうかと思ってね」

「ふ、ふんっ!あたしは別に、マーガレットとチェルシーと別れるのが寂しかったからとかじゃないからね!」

「そっかぁ……私は寂しいなぁ」

「ふえっ!?ふ、ふふ、ふ、ふ~ん?お、おおお子様ねぇ~?」


めちゃくちゃどもりながらそんな返事をするシエル。

顔赤いしエルフ耳がピコピコしてるしで喜びを隠しきれてないよ。

可愛いねぇ。


「ふふふ…まぁそれはいいとして……」


問題は……


「なんで私はまだグリムさんに抱えられてるんですかね?」


そう、2人を起こし、グリムさんが近くのスタッフに片付けを頼んでいて、その人にお礼を言ったまでは良かった。

だが何故かグリムさんは膝に乗っている俺を再びお姫様抱っこした。

それにチェルシーもシエルもツッコミを入れずに魔術ギルドを出て、ちょっとしたところでとうとう我慢できずに俺がツッコミを入れたのだ。


「えっ?」

「いやなんでそんな心底分からないって顔してるんですか。おかしいでしょこれ。なんで《賢王》がネズ耳幼女をお姫様抱っこしてるんですか」

「いやぁ…なんだか楽しくなっちゃってつい……」

「そっかぁ……楽しいかそっかぁ……じゃあチェルシーとシエルはなんで何も言わないの?おかしいと感じないこれ?」

「「えっ?」」

「ねぇなんでみんなそんな不思議がるの?これ私がおかしいの?」


違うよね?

だって道行く人々がみんな見てくからね。

何人か冒険者ともすれ違ったよ。

冒険者ギルド勤務の俺は、この街の大半の冒険者に顔知られてるよ。

つまり大体顔見知りだよチクショウ。

俺の耳を見てめっちゃざわついてるよ、それは当然か。


んでもって、《賢王》って異名を持ってるグリムさんも有名人だからめちゃくちゃざわざわしてるよ。

ただ歩いてるだけなのにギャラリーがいっぱいだよ。

明日の1面ゲットだぜ。


まぁ新聞がこの世界に無いから大丈夫だけ…ど………はて?

本当に無いんだっけ?


休憩室の壁際……何かコーナーがあったような……。

そして休憩中の先輩が何か読んでるのを見たことがあるような……。


「…グリムさんグリムさん」

「うん?なんだい?」

「新聞ってありますかね?」

(新聞?)

「うん、私もいつも読んでいるよ」


あった。


「最近はよくマーガレットくんのことが書かれていてね。この街に住んでいる人は大体読んでるはずさ」


終わった。


「貴族嫌いなこの街の人たちが、何も言わないどころかむしろ応援してるような雰囲気だったもんで、気になって今日試してみたら、見事に私も君の(とりこ)になってしまったよ。はっはっはっ」


なるほどそれで今俺をお姫様抱っこしてるのか、わかるかボケ。


「だから今回も、ねずみになった君のことをどこかで記者が見てるかもしれないね。明日の記事が楽しみだよ、はっはっはっ♪」

「そうですかぁ、あっはっはっはっはっクソがっ」

「あっ!マギーちゃんそんな汚い言葉使っちゃダメだよぉ!」


我慢できず本音が漏れた俺に、チェルシーから注意が入る。

でももう我慢できない俺はそれに反発することにした。

ついでに犠牲も増やそう。


「やだぁ~!知らないところでみんなの笑いものにされてるとか聞いたら誰だって口が悪くなるよチェルにゃん!」

「ちょっ!?そ、その呼び方は……!」

「へぇ…チェルにゃんか。可愛らしいじゃないか、私もそう呼ぼう」

「ほら~!グリムさんはこうなるんだから~!」

「死なばもろとも」

「えぇ~っ!?」

「シエルも可愛いと思うでしょ?」

「ま、まぁ?悪くないんじゃない?」

「シエルちゃん!?」

(新聞って何ですか?)

(新聞ってのはねぇ……)


そんなこんな騒ぎながら、俺たちは冒険者ギルドに到着。

入り口にはお掃除中のグルメな先輩スタッフがいた。


「ただいま戻りました~」

「おっ!おかえりマーガレットちゃ…んんんんんっ!?」

「お疲れ様で~す」

「ちょちょちょちょちょっ!?待って待ってなんでネズミっ!?なんでお姫様抱っこっ!?なんで《賢王》っ!?なんでっ!?」

「私が知りたいです……」


特にお姫様抱っこ。


「ははは、マーガレットくんの反応が楽しくてついね」

「そのせいで明日の1面飾りそうでご立腹な私です」

「そ、そうですか……っと、マーガレットちゃん。《イシオン》の皆さんと、お客さんが待ってるよ」

「えっ?私にお客様ですか?ありがとうございます」

(誰でしょう……?ダニエルさんとか?)

(あり得る)


グルメパイセンにお礼を言い、そのままギルド内へと行く。

すると聞きなれた声が耳に入ってきた。


「すん…あっ!マーガレットおかえ…りぃぃぃっ!?」

「どうしたのユーリちゃん?そんなにおどろ…えぇぇぇぇぇっ!?」

「うん?うおっ!?嬢ちゃんっ!?その耳どうしたんだっ!?」

「マ、マーガレットちゃんが獣人になってる……!?」


はい。

《イシオン》の皆さんの声を聞き、ギルドにいた人たちが集まってきました~。

見ろっ!人がゴミの……と、おや?


メイカさんとユーリさんの影にそれぞれ見知ったちんまい人影がおるぞ?


「マ、マーガレットちゃん……!?」

「…お前…ついにそこまで……」

「モニカちゃんとリオ?」


もしかしてお客さまって2人のこと?


「マグ~!おかえぇぇぇぇっ!?」

「ショコラ?どうしたのぉぉぉぉっ!?」


あっ。ショコラちゃんとパメラちゃんも来たのだわ。

カオスなのだわ。


「おかえりマギーちゃん……んんんんっ?って、グリムさん!」

「やぁララ。久しぶり」

「お久しぶりです……!まさかあなたがギルドから出てくるなんて……!」

「おいおい。それじゃあ私が引きこもりみたいじゃないか」

「そうじゃないですか……」


グリムさん引きこもりだったの?

こんな堂々と幼女をお姫様抱っこするような人が?


「お、おい……!グリムって……」

「あ、あぁ…《賢王グリッジス》だ……!」


周りもグリムさんに気付き始め、再びざわつき始める。


いや気付けよ。

俺を抱えてるのは誰だよって真っ先に思うだろ普通。


「はっはっはっ。これでは落ち着いて話せそうにないな。ララ、上を借りるよ」

「あっはい…こちらです」


グリムさんがいけしゃあしゃあとそんなことを言い、ララさんの案内で《イシオン》とユーリさん、モニカちゃんとリオ、ショコラちゃんとパメラちゃん、そして俺を未だに下ろそうとしないグリムさんとチェルシー、シエルが続く。


「……やっぱマーガレットちゃんってすげぇな……」


誰かが言ったその一言に、ギルド内にいる全員が頷いた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


この人数はさすがに待合室には狭いということで、会議室の方に案内された俺たち。

予想通りグリムさんは俺を膝の上に乗せて座り、それをメイカさんとユーリさんが羨ましそうに見つめてくる。


…これ今夜せがまれるな、絶対。


ララさんとチェルシー、ショコラちゃんとパメラちゃんは、ギルドスタッフとしてみんなにお茶を配る。

俺も参加しようとしたが、グリムさんがまったく放してくれず、説得も無理だったので諦めた。


全員にお茶が配られたところで、ディッグさんが口を開く。


「あ~…あんたは《賢王》グリッジス…で間違いない…のか?」

「あぁ、そうだよ。《イシオン》のディッグくん」

「…あんたに知ってもらえているとは嬉しいな……」

「不思議なことじゃないさ。この子の人気を知っているならね」

「…そうだな。いつも嬢ちゃんの近くにいる俺らが、目立たないわけが無いか」

「うん、あのですね。大人な会話してるところ申し訳ないですけど、人をそんなトラブルメーカーみたいに言うのやめてくれません?」

『?』

「……まさかこの場の全員にそんな顔されるとは思わなかったなぁ……」


みんなしてそんな不思議そうな顔で見ないでくれ……。

さすがに心に傷を負うから……。


「大丈夫だよマグ」

「パメラ……」

「マグが変なのはいつものことだよ!」

(うっ!?)

「ふて寝します」


心に傷を負った俺たちは机の上で腕を組んで伏せる。

必ずクラスに1人はいるあれである。


「マ、マグ?どうしたの?」

「も~、パメラっ!変って言うのはダメだっていっつも言ってるでしょ!」

「ほ、褒めてるもんっ!」

「褒めててもダメなのっ!」

「うぇぇ!?ご、ごめんねマグぅ~!」


ショコラちゃんとパメラちゃんの言い合いの最中も、大人組の会話は進む。


「えっ!?獣人化の薬っ!?」

「えぇ。その効果でマーガレットくんにねずみの耳が生えたのです」

「も、元に戻るの……?」

「はい。明日には消えているでしょう」

「そっかぁ……ほっとしたような残念なような……」


メイカさん。

気持ちは分かるけど抑えて?

みんないるのよ?


パメラちゃんを撫でて仲直りしている横で繰り広げられる会話にツッコミを入れる俺。

そんな俺にリオがモニカちゃんを連れてやってきた。


「ほら、聞きたいことがあるんだろ?大丈夫だってマーガレットだから」

「う、うん……それはそうなんだけど……」


今聞き捨てならないこと言われた気がする。

でもモニカちゃんが話そうとしてるからツッコめない。


そして、深呼吸をして覚悟を決めたらしいモニカちゃんが、俺に問うてきた。


「マ、マーガレットちゃんっ!」

「うん」

「あ、あの……その……えっと……」


失速した。

とはいえここで急かしてもいい結果にはならないのでじっと待つ。


「え、えっとね……マーガレットちゃんが貴族の子だって聞いたんだけど……本当…?」

「そうじゃよ」

(そうじゃよ……ふふふ…)

「そ、そうなんだ……」


それが聞きたいこと?

…いや、そっか……この街の人は貴族に良い印象が無いんだっけ……。


「…ごめんね?言うほどのことじゃないって思ってたから言わなかったんだ」

「そっか……」

「……幻滅した?」

「うぅん。マーガレットちゃんらしいなって思った」

「私らしい?」

「うん。私は他の貴族の人って知らないけど、マーガレットちゃんがいつもお姉ちゃんたちがお話してるような酷い人じゃないって思うから…」


(そりゃ嬉しいね)

(はい)


「ふふ。それって貴族らしくないってこと?」

「あっ…!えっと………えへへ……」

「そこは否定しないの〜?」

「無理だろ〜。だって実際マーガレットって貴族らしくねぇもん」

「え〜、リオまで?」

「マギーちゃんは貴族じゃない貴族さんだよね!」

「チェルシー?」

「そうねぇ…言われても疑っちゃうわよね」

「シエル?」

「うんうん!マグはそんなヒドイことしないもん!」

「そうそう!そういうところが変なんだよね!」

「ふて寝します」

「あっ!?こらパメラぁ!」

「あぁぁぁ!ごめんねマグぅ!」

「ふふ…あはは…あはははは…!」


俺たちのやり取りにモニカちゃんが笑い出す。

それにつられて俺たちも自然と声を出して笑い出す。


ひとしきり笑いあったところで、俺が視線を感じそちらを向くと…


「うっうっ…!ディッグぅ……!私もあっちに混ざりた~い……!可愛い子とおしゃべりしたい~……!」

「我慢しろメイカ……今すげぇ盛り上がってんだから、せめてそれが終わってから……あっ……」

『…………』

「見ろメイカ。泣き出し始めたお前にみんな引いてるぞ」

「そ、そんなぁぁっ!?」


崩れ落ちるメイカさん。

それを支えるディッグさん。

お茶を避難させてるケランさん。


う~ん、息ピッタリ。


と、そこでユーリさんがモニカちゃんに話しかけた。


「よかったねモニカちゃん♪」

「あ……はい…!ユーリさんの言った通りでした…!」

「うん?どういうこと?」

「実はねマグ。モニカとリオはお昼終わりぐらいに来たんだよ」

「(えっ!?)」


ショコラちゃんの言葉に驚く俺たち。


お昼終わり…って……!


「えっと…じゃあ今までずっと待ってたの……!?」

「あぁ。今日は魔術ギルドに行ってるからいないって言っても、それなら待つって言いだしてさ……」

「ごめんねリオちゃん……」

「いんだよ。オヤジに頼まれたし、それに…ほら……友達だろ……?」

「…!うん…!」


なんと美しい友情……!

尊い……!


まぁそれはともかく。


「ごめんねモニカちゃん。そんなに待たせてるとは(つゆ)知らず……」

「う、ううんっ!私が勝手に待ってただけだから…!それに待ってる間にショコラちゃんとパメラちゃんとお話してたし……!」

「そっか。それはよかった」


(…えへへ……なんか…こういうのっていいですよね……♪)

(そうだねぇ……友達同士も仲良くなれるって、いいことだよホント)


元の世界じゃ無理ゲーだけどな。

いきなり知らない子紹介されて一緒に遊ぼうぜとか言われても、いつもの調子で遊べねぇ人類だったからな。


いやほんと。

マグのためっていうのが無ければ、俺多分もっと寂しいセカンドライフだったと思う。

セカンドライフってか…別に俺自身は生き返ってないけど。


「それでね…?ユーリさんたちはマーガレットちゃんが帰ってくるちょっと前に来たんだけど、そのときに、思い切って話してみろってリオちゃんが言ってくれてね…?」

「メイカさんたちならよく知ってるだろうからって進めたんだよ。そしたら《イシオン》の皆さんが、「マーガレットはあれで繊細だけど、優しさに関しては異常なほどに(ふところ)が広いから大丈夫」って……」

「(褒められてる気がしないんですけど)」


なんならちょっと(けな)してる気がするんですけど。


「んで、そのあとユーリさんが「マーガレットは気にしないよ。むしろ言わなくてごめんって謝ってくるかもだよ?」って言っててな」

「謝ったねぇ」

(謝りましたねぇ)

「うん…!だからユーリさんの言う通りだったの…!」

「ふふ~んっ♪マーガレットのことならまかせてよっ!なんてったって……」


この言葉の後ってろくなこと無いのがほとんどだと思うの俺だけ?


「一緒にお風呂入ったりぃ、体を洗いっこしたりぃ、一緒のお布団で寝た仲だもんねっ!」

『…………』


ほ~らみんな黙っちゃった。

そんなメイカさん特攻のマウントをモニカちゃんたちにやらんでも……


『いいなぁ~っ!』

「(えっ?)」


リオを除く子供たちが、みんなユーリさんの言葉に反応した。


「マグの体はどうでしたか!?」

「(すごい質問だ)」

「えへへぇ~、もちもちですべすべで綺麗だったよ!」

「やっぱりぃ!」

「マ、マーガレットちゃんに洗ってもらったって……!」

「うん!いつも撫でてくれるときよりも優しく洗ってくれたよ!」

「ふわぁ…!な、なでなでよりも優しくかぁ……!」

「はいはい!マギーちゃんは照れてましたかっ!」

「うん!すっごく可愛かった♡」

「いいなぁ~!あっそうだ!実は今日魔術ギルドで……」

「ちょっ!?チェルシー…!そ、それ言っていいの……!?」

「なになに!気になる気になる!」

「えへへ…実はですねぇ……」


俺の話題で盛り上がる子供たち。

それを楽し気に見てる大人たち……あっ…メイカさんが仲間になりたそうにユーリさん見つめている……。


グリムさんにホールドされていて逃げることもできない俺に、唯一盛り上がっていないリオが話しかけてきた。


「…マーガレット……」

「…なんじゃい……?」

「…………頑張れ……」

「…………ありがと……」


よかった……常識人(リオ)がいて……。

ふふふ…ヒロインズの顔合わせが出来た……。

だが問題はみんな働いているということ……。

…遊ぶ時間が…あんまりない……どうしよう……?


こほん……。

次回は3/8(月)更新予定です。


お楽しみに!

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