132.9日目のすったもんだ…お金儲けの議論
お待たせしました!
「で、3人揃って寝坊したと」
「その通りです…申し訳ございません……」
リビングにて、パジャマ姿でディッグさんに謝罪する俺。
昨夜、ユーリさんを俺とマグの2人でめちゃめちゃに甘やかし、とろとろに甘やかされを繰り返し、疲れて眠ってしまったユーリさんを確認したのちに俺たちも就寝した。
寝入ったユーリさんの顔はとても晴れやかで、俺たちも満足感の中で眠ったわけだが……。
満足感がありすぎて、夢の中でマグと出会うこともなく、そりゃあもうぐっすりと眠り、起きたときには朝ご飯の時間。
つまり、トレーニング時間を大幅に超えているのである。
故の謝罪である。
そして、ユーリさんにここで一緒に暮らしてくれないか頼んだこと、俺の正体を明かしたこと、それで夜遅くまで起きていたことを話した。
ディッグさんは特に怒った様子もなく許してくれた。
「まぁそういうことならしょうがねぇか。しっかしユーリ嬢ちゃん……コウスケのことを知っても大して驚かないとはなぁ……」
「あはは…そんなことは無いんですけど……私はオーラが見れるので……」
「なるほどなぁ……」
「ね、ねぇ…ユーリちゃん……。それで、ここで一緒に暮らしてくれるっていうのは本当?」
メイカさんも特に訳は聞かず、ユーリさんがここに住むかどうかの方が気になるようだ。
メイカさんらしいというかなんというか。
「は、はい……こんな私でよければ……」
「大・歓・迎・よ〜!」
「部屋は余ってますし、別に断る理由もありませんしね」
「だな。あ〜…だがコウスケ。大丈夫なのか?」
「?大丈夫とは?」
「ハルキに無断で新しく人入れて」
「(あっ)」
そういえば借り家だった。
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「というわけで新しく住人を迎えてもいいでしょうか?」
『いいよ』
朝ご飯を食べたのち、着替えたり昨日のように髪を梳きあったりして身支度を整え、ギルドへとやってきた。
ちなみに今日も俺とメリーちゃんとユーリさんはお揃いの髪型だ。
俺が個人的に好きな、下めのツインテールにした。
ただこれだと、メリーちゃんとユーリさんでヘアゴムを使い切ってしまうので、俺はリボンで結んだのだが、2人は残念そうな顔をしてしまった。
だが、
「昨日2人が使ってた色だから、これはこれでお揃いになるかな?って思ったんだけど……駄目?」
と言ったら納得したようで、嬉しそうな笑顔を浮かべてくれた。
よかった。
そんなこんなでギルドに到着し、メイカさんたちは昨日の予定通り街の散策をするべく、ギルドの前で別れた。
俺はいつも通り通信室へ向かうと、ハルキに諸々の報告をする。
そして返ってきた返事はとても軽かった。
「…なぁハルキ……」
『うん?』
「俺が言うことじゃないけど、そんな軽くていいのか?」
『別に問題ないからね。コウスケが信頼してる人なんだろ?なら大丈夫さ』
「その信頼はどっから来るんだよ……」
ホントなんでそんな信頼値高いんだろ……?
「まぁいいか……あぁそうだ。ロッサ村の調査隊が出発したのは聞いてる?」
『うん、昨日ララから聞いたよ。これで少しでも村の様子が分かれば良いんだけどね……』
「そこは祈るしかないな……とはいえ、龍がいるにしろいないにしろ、面倒なことになるのは変わらないけどな……」
『いれば迎撃準備…いなければまた1から探すことに…か……』
そうなるな……だが……
「いたとして、倒すか、倒せないにしても退かせられなきゃここもやられるぞ。手立てはあるのか?」
『……マーガレットちゃんには悪いけど、現状ウチにはそんな武力は無いんだ……だからもし来たら、《階層移動》で居住区を守る方向で行くよ』
「へぇ、階層移動か!」
(なんですかそれ?)
階層移動。
その名の通り、各階層を動かせる、ダンジョン経営ものではメジャーな能力だ。
ハルキはそれを使って、居住区である地上のエリアと他の階層を移動させ、住人たちを守るというのだ。
その辺をマグに話すと、マグは俺が聞こうとしていた疑問を口にする。
(その被害を受けるエリアというのは、どうするんでしょうか?)
(そうだね。それを聞こうとしてたんだ。さっすがマグ)
(えへへ♪)
というわけで聞いた。
その答えがこれだ。
『迷宮は今7階層まで出来ていて、8階層も下地は出来てるんだ。これを回すのはもったいないから、新しい階層を作ってそれを回す。身代わりとしてはうってつけさ』
「良いのか?なんとなくその……DPが高そうなんだけど……」
『まぁ…かなり高いけど……それをケチったら収入源が消えるって考えれば安いものさ』
「なるほど。それもそうだ」
龍に殺されたらダンジョンに吸収されてDPになるんだろうが、そのときは爆発的に増えても、永続的な収入が無くなる以上、次の手を打たなければそのまま終わりだし、そんなことを繰り返されるリスクよりは、どうにか倒して安全を確保できた方がリソース的にも精神的にも安心できる。
『それでね?そのダンジョンのことで少し相談があるんだ』
「おっ、なんか初めてまともにダンジョンの相談を持ちかけられた気がする」
『確かに。まぁ大事な話ではあったからいいんだよ。それよりも、DPを多く稼げる方法を一緒に考えてほしいんだ』
「(DPの稼ぎ方?)」
やっぱり足りてないんじゃないか。
「多く稼ぐったってなぁ……。まさか人を何人か殺すってわけにもいかんし……」
(ひぇっ!?)
「マグもどん引いてるから無しだな」
『そりゃそうだろうさ……。でも、それが1番手っ取り早いのも確かなんだよねぇ……』
(ひぇぇっ!?)
『まぁそれは無しとして、そうすると他の方法で稼がないとなんだけど……』
よかった。
流石にやんないか。
…まぁ大罪人はどうか知らんけど。
(う〜ん……でもそうなると……あっ…)
(ん?どうしたの?)
(コウスケさん。昨日教えてもらったとき、私の体の魔力量が増えてたじゃないですか)
(そうだねぇ…あぁそっか。それならこの体から取れる魔力量も増えてるはずってことね)
(そうですそうです)
(んで、増えてるんなら他の人も同じように鍛えればいいんじゃないかってこと?)
(その通りです)
(天才かよ)
(えへ〜♪)
褒められて上機嫌なマグの案をハルキに話す。
「なぁハルキ、この体から取れる魔力量って増えてるか?」
『うん?そうだね、最初の頃よりもMPが増えてるから、その分増えてるよ』
「そか。ならさ。同じように街の人たちの魔力量を増やせれば、少しだけだけどDPの足しになるんじゃないか?」
『そうだね。それが出来れば確かに良いんだけど……』
「?駄目なのか?」
学校とか建てればいけそうだけど……うん?
「もしかして教師が足りない?」
『まぁそれもあるけど……単純に今はお金が無いんだよね……』
「(えぇ……)」
世知辛いな……。
『この前フルールさんたちを買って、軍資金のほとんどを使ってしまいましたからねぇ……今は西へ東へ走り回って、必死にお金を集めているところなんですよ……』
「そ、そうなんだ……」
ハルキのトーンが下がり、フォーマルハウトが続きを話す。
それで最近ハルキと会わないわけだ。
昨日の商談とやらも、お金を工面するためなんだろう。
『ギルドに置いておく資金も用意しないとだし、この前フルールさんを売ってたやつも含めて4人ほど確保したから、そいつらの溜め込んでたお金でとりあえず3ヶ月ぐらいは余裕があるんだけど……』
「ふ〜む……ん?それならフルールさんたちを買った金も戻って、商人たちのへそくりも頂いてでまだまだ余裕じゃないか?」
『ところがどっこい。その闇商人たちのアジトから大量の奴隷を見つけてね……。DPにもなるし、帰るところのない奴隷だけでもって思って調べたら、半分以上身寄りが無くて……』
「……その人たちの住処と当面の生活費でボーナスが消えたと……」
『ははは……世の中そう上手くいかないね……』
ハルキの声に哀愁を感じる……。
(…全てを救うのって難しいんだなぁ……)
(コ、コウスケさんまでそんな声出さないでくださいよ……そ、それよりも他の方法を考えましょう?)
(せやな……)
う〜ん……そうなると……
「住人を増やすのはもう無しとして……ふむ……ここは先に金銭問題を解決してからのが良いかもね」
『う〜ん…といってもなぁ……この街で取れるアイテムとかをいろんなところで売ってはいるし、家賃収入も滞納者は今のところいないから順調だし……』
すまない……。
ただで使わせてもらっていてすまない……。
『市場も回ってるからそっちも問題無し。それでも足りてないんだから……やっぱり外からの収入源が欲しいかなぁ……』
「外…かぁ……」
こういうときのお約束だと……
「…どっかに融資して貰うとか……?」
『…………無理だね……』
あぁ……やっぱり……?
王国に頼んだら見返りに何を求められるかわかったもんじゃ無いし、帝国と共和国はあんまり話を聞かないんだよなぁ……。
どういう国なのかもマグに聞いた範囲でしか知らないし……。
ハルキが前に手紙を出してたけど、望みは薄いって言ってたし、今も無理っつったし、この線は諦めよう。
じゃあどうすっかってわけだけど……。
「…お金を稼ぐのって大変だなぁ……」
『本当にね……』
(あぁ…また……!)
『お2人とも、とりあえず今日のところはこれで終わりにしましょう?ただずっと悩んでいても良い案は出ませんから』
『…そうだね……』
「それがいいか……」
フォーマルハウトの言う通り、一旦落ち着くことにする俺たち。
とりあえず別の話題を出しておこう。
「そういや、ショコラちゃんとパメラちゃんっていう、マグの友達のことは知ってるか?」
『あぁ、昨日ララがとても嬉しそうに話してたよ。可愛い妹がまた増えるかもって』
「はははっ、だろうな。すんごい喜んでたもん」
(えぇ、私まで嬉しくなっちゃいましたよ)
『それで、それを聞いたリンゼも大喜びしちゃってね。また従業員が増えるって』
「あぁ……仕事多いもんね……」
(リンゼさんいつも忙しそうに走り回ってますからね……)
そんな他愛のない話をしているとき、ショコラちゃんたちが教会住みだというのをふと思い出した。
教会かぁ……かなり広かったけど、ありゃ大変だろうなぁ……。
テレビで見た、体育館に避難した人たちみたいにぎゅうぎゅう詰め…なのかどうかは知らないけど、住まいが用意されるまではちょっと不自由かもね……。
というかハルキ……。
金が無いって言いながら、無料で住処を与えようとするとか……まぁその優しさに世話になってる俺が言うことじゃないけどさ……。
はぁ……しかし教会で避難民を…か……。
よく見たのは孤児がお手伝いをしながら住んでいるとかかなぁ……。
あっ、本の話ね。
そんで、孤児にシスターが勉強を教えるとか……あっ。
「ハルキ、学校ほどじゃなくても、教会で子供たちに勉強を教えるぐらいはできるんじゃないか?」
『うん?…あぁ…うん……出来るね。そうだね…あんまりお金は出せないけど、それでも良いって人に頼めば子供たちのレベルアップが出来るか……うん、早速やってみよう。それに今週の講習会もあるから、それの結果次第で頻度を増やしてみても良いし……』
「大人たちに今更学校を〜とかはムズイかもだけど、子供たちと接して大人組にも刺激があれば儲けもんだよな……。あとはやっぱ良いものがドロップするのが1番やる気になるから、そこらへんももう1度洗ってみるとか?今欲しいものは何ですか〜?ってアンケート取ったりして」
『あぁそれは良いかも。商人としての情報網を使えばいろいろ聞けるからね』
「あっ、そうだ。特産品は何かあるか?」
『一応あるけど……コレ!と言えるものが無いんだよね……。大体のものが他より上質だから』
「ふ〜む……なら観光地は?」
『観光地?』
「そ。この街のメインはダンジョンだけど、他にも何か目玉があっても良いと思うんだよ。それにちなんだお土産ショップも建てちゃえば収益にも直接繋げられるし」
『なるほど……う〜ん、悩むぞ〜……あっ、一応聞くけどカジノはあり?』
「う〜ん……いや、無しかな。確かに儲けは出るだろうけど、賭け事に国の許可が出たら絶対破産するまでやる奴が出てくるし、それを狙った金貸し、それによる強盗やら窃盗のトラブル増加。そうなると治安が悪くなるし、警備の人手を増やせば解決するような単純なものでも無いからやめといた方がいいよ」
『まぁそうだよね……この街はただでさえいろんなところから人が来るから、これ以上争いの種を増やすのは良くないか……』
(すごい白熱してます……)
ちょっと思いついたことからどんどん話しが膨らんでいき、俺とハルキの議論は白熱。
結局、帰りが遅いと呼びにきたララさんが来るまで続き、その日はお開きとなった。
(…お2人とも、すごい語り合ってましたね……)
(こういう友達とあれこれ相談しながら何かするのって好きなんだよね)
学校の授業のグループワークは死ぬほど嫌いだけど。
そんなこんなで、俺はララさんと共に下へと戻っていくのだった。
毎日投稿をしていた身としては、この空いた2日間…忘れないようにしなきゃってずっと思っててソワソワしまくりましたね。
まぁでも忘れるよりはずっと良いので大丈夫でしょう!
そんなわけで、次回は2/18(木)更新予定です。
時間も相変わらずな感じです。
ではでは。




