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130.吸血鬼のマッサージ…悲鳴飛び交うマイルーム

さて、いろいろあったがお風呂が終わり、夕食も食べ終えた俺たちは雑談に興じた。


ちなみに俺の隣にはメリーちゃんとユーリさんが座っており、俺がメリーちゃんに「あーん」してあげてるのを見た、完全に甘えんぼモードのユーリさんが私にもとおねだりをして、俺は無防備に目を閉じて口を開けるユーリさんにもドキッとしつつもどうにか完遂した。


ついでに言えば、向かいにいるメイカさんも羨ましがったので、少しだけやってあげた。

ら、気絶した。


…メイカさんはこれで日常生活に支障をきたさないのだろうか?


兎にも角にも、俺は今日フォーマルハウトやララさん達に聞き忘れたことをディッグさんに尋ねた。


「ディッグさん、運動用の動きやすい服とかってあるんですか?」

「うん?あぁ、あるぞー。それがどうしたんだ?」

「ほら、これからしばらく戦闘訓練とかもしないといけないし、試合の日にフリフリの可愛いやつを着ていくわけにもいかないので、何かちょうどいいものは無いかと思いまして」


俺がそう言うと、ディッグさんは素直に自分が間違っていることを言った。


「あぁ、そういうことか。てっきり俺が持ってるかを聞いたのかと思った」

「あ〜、そうですね。ちょっと聞き方が雑だったかな?すみません」


これは俺の言い方が悪かったな。

ディッグさんにこんな服ある?って聞いたら、そりゃあ自分が持ってるかどうかを答えるよ。

やー、うっかりうっかり。


「いやいや、構わねぇよ。…しかし服かぁ……」

「この街だと、他で見るような簡素な布の服の方が珍しそうですからね」


ディッグさんが悩み、ケランさんがその理由を説明してくれた。


確かに…ローズさんの店にも、他の洋服屋でも、そんな服は見当たらなかったなぁ……。


「ん~…でも、冒険者が多い街なんだし、兵士だっているんだから、稽古着(けいこぎ)ぐらいはありそうだけどねぇ……」

「はい。それを今日聞き忘れちゃって……」

「まぁしょうがないよ。それだけ集中してたってことでしょ?」

「それに、ショコラちゃんもいたじゃないか。久しぶりで話したいことがいっぱいあったんだろう?」

「…はい。いろいろと」


メイカさんとケランさんがフォローを入れてくれる。


マグとショコラちゃんは本当に楽しそうに話していた。


…俺も、少し()()()の友人を思い出した。

元気にしてるかなぁ……。

……してるだろうなぁ……。


「あぁ、そうだ。マーガレット」

「はい、なんですか?フルールさん」


ちょっと思い出に(ひた)った俺に、フルールさんが話しかける。


「昨日は酔いつぶれちゃって、約束したマッサージが出来てないでしょう?今日よかったら埋め合わせさせてくれる?」

「(!ぜひっ!)」

「ふふっ…はいはい」


やった!

マグが絶賛してたフルールさんのマッサージ……気になってたんだよなぁ……!

最近急に激しい運動をするようになったから、体中バキバキで……。


「あっ!私も私もっ!」

「分かってるわよ。順番ね」

「わぁ~い!」

「ユーリ、あなたもね」

「ふぇっ!?」


あぁ~…言ってたねぇ……。


「嬢ちゃん、明日はどうするんだ?」


女性陣が盛り上がっているところで、ディッグさんが話しかけてくる。


「明日は仕事で魔術ギルドに行く予定です。なんでも、大きい図書館があるそうで、見学ついでに勉強してこようかなと」

「へぇ!図書館かぁ!」

「嬢ちゃんは本好きだしな。いいじゃねぇか」


ケランさんが図書館に反応した。

ケランさんも本好きなのかな?


「俺たちは…そうだなぁ……そういやぁ、街の散策をしてねぇなぁ……」

「あっ…そうですね……いつもはまず街の下調べからしてましたけど、ずっと迷宮に潜りっぱなしでしたからね……」

「えぇ~!?でも明日はマーガレットちゃんの案を試しに行こうって……!」


こちらの話にメイカさんが入ってきた。


確かに、今日倒せなかったボスにリベンジしようって話してたよな。


「ん~…でも、それを試すにも道具が必要ですし、明日はその辺りの準備をするついでに街を見て回ればいいのでは?」

「う~ん…正論……!しょうがないかぁ……ユーリちゃんはどうする?」

「じゃあ私もご一緒していいですか?私もこの街のことをあんまり知らないので」

「そっか。じゃあ決まりね!」


俺の案が採用され、メイカさんたちの明日の予定が決まった。


というわけで解散。


食器の後片付けを手伝い、フルールさんがお風呂に入っている間、リビングで待つことにする。


ディッグさん、ケランさん、メイカさんたち冒険者組は、各自明日準備するものを確認するべく、各々(おのおの)の部屋に戻り荷物の点検。


なので今ここにはメリーちゃんとユーリさんしかいない。


そして俺は今、昨日と今朝に試し損ねた動物用のクシでユーリさんの尻尾を()いている。


「ふあぁ……♪マーガレット…ほんと上手だね……♪」

「…ありがとうございます」

「んふぅ…!そこいい……!ねぇ…もっとぉ……♪」

「…はいはい」


俺から申し出たことだが、正直やめたい。


ユーリさんの尻尾をモフモフできるうえに、より(つや)やかにも出来る。

さらにはただ梳くことさえ楽しい。

なのでずっとしていたいぐらいなのだが……。


「んぅ……!」

「……」

「ふあぁん……!」

「…………」


尻尾を梳くたびに、ユーリさんから甘い声が漏れてきて、再び俺は理性を保たせる戦いを強いられてしまったのだ。


(ユ、ユーリさん……すごく…その……えっちです……!)

(言わないでマグ。今全力で心を無にしようとしてるから)


どうしてこのお狐さんはこう、えってぃのか。

演技とかではなく、素でこれだからもうほんとどうしましょう状態である。


というか毎日のように美女に抱きつかれて、お風呂まで一緒に入り始めて、夢の中では可愛い恋人とチュッチュッして、まだ理性が残ってる俺凄くない?

男としてどうなの?草食系なの?とは思うけど。


などなど、いろいろ考えて現実逃避しながら無事にブラッシングを終わらせる。

ブラシじゃなくてクシだけど。

んなこたどうでもいい。


「はふぅ……♪気持ちよかったぁ……♪」

「それは良かったです」


どうやらユーリさんも満足してくれたみたいだ。

上手くできてたみたいで安心した。


「…ねぇマーガレットぉ……」

「…そんな甘えた声出さなくても、またやってあげますから……」

「やった♪ありがとう!」

「こちらこそ、楽しませてもらいました」


やれやれ……。

次もさせてくれるのは願ったり叶ったりだが……ユーリさん、甘えた声でおねだりすればなんでもしてくれるって思ってないか……?


さすがにそこまで俺は甘くないぞ弱いけど。

ちゃんと節度は守らないとだからな好きだけど。


「上がったわよ~」


あっ、ちょうどいいタイミングでフルールさんが上がってきた。


「お待たせ、それじゃあ部屋に行きましょ?それともここでする?」

「部屋でお願いします」


絶対声出るから、リビングでなんてやってらんないぜ。


ユーリさんの甘い声が散々響いた後とはいえ。

今更かな?って思ったとはいえ。


俺は、部屋で、お願いします。


てなわけで俺の部屋にやってきました、俺、フルールさん、メリーちゃん、ユーリさんの4人。


「ユーリさんは明日の準備とかは?」

「お出かけ用の物は()()に全部入れたから大丈夫だよ」


そう言ってユーリさんは、今日手に入れたと喜んでいたマジックバッグを指す。


「そういえば、それのランクって何なんですか?」

「Fの11だって」

「へぇ!Fランクを拾ったんですか!」

「そうなの!宝箱の罠を解除して、中を見たらこれがあったんだよ!」


よほど嬉しかったことなのか、ユーリさんの尻尾がエラい勢いでぶんぶんと振られる。


Fの11とは、《Fランクのマジックバッグ》で《11種類まで入る》という意味。

「そのバッグどんなん?」

「お~これはFの11だぜ~」

みたいな会話が冒険者間では日常的に飛び交っている。


「いやぁ~これが手に入ってホントによかったよ~!それまでは全部自分で持たないとだったから、すぐに荷物がいっぱいになっちゃって……」

「あぁ~……あ?」


そこで俺は何かに気付く。


(…確かユーリさん……昨日どっちゃりと大量の戦利品を売却してたような……)

(そうですよね……?ということはつまり……)


マグと導いた予想を確かめるべくユーリさんに尋ねる。


「え~っと……昨日の大量のアイテムはつまり……?」

「?うん、全部自分で持ってきたよ?」

「あ、あんないっぱい持ってて魔物とかに襲われたら……」

「あはは!さすがに持ったまま戦うのは無理だからねぇ!少しずつ階段の近くに貯めこんで、帰る時に全部持ってきたんだよ!」

「そ、それでもまだ2階層がありますよ?」

「2階層の魔物なら余裕で逃げれるから問題なかったよ?」

「(…………)」


開いた口が塞がらないとはこういうことか。

ユーリさんのあまりの豪快さに、ただただ呆然としてしまった。


「…まぁ、それのおかげでそんなことも無くなるでしょうし、問題ないでしょ……。それよりほら、マーガレット。早くベッドに横になりなさい」

「あっはい」


フルールさんに呼ばれてフリーズしていた脳が動き出した。


はぁ~……さすがユーリさん……。

いろんな話が出てくる出てくる……。


まぁフルールさんの言う通り、マジックバッグを手に入れたことだし、今はメイカさんたちと一緒に行動してるから大丈夫だろう。

……多分。


それはともかく、俺はフルールさんに言われた通りベッドに横になる。


「それじゃあ…足の方からやってくわよ?」

「はい、お願いします」


そしてマッサージが始まったわけだが……


「いだっ!いだだだだっ!」

「この辺ね?んっ……」

「あだだだだだだだだだだだだっ!痛い痛い痛い痛いっ!?」

「…もう少し静かにしなさいな……」

「そ、そんなこと言ったって……!」

「ほら、ここは?」

「っ!そ、そこはなんとか……!」

「ふ〜ん…じゃあやっぱりここなんだ……」

「〜〜〜〜っ!!?」


足を揉まれると大体激痛が走る。


ま、まさか……ここまで体が悪くなってるとは……!


マグは元々インドア派。

本が好きで花遊びが好き。

ショコラたち村の友達と遊んでいた頃はまだマシだったのかもしれないが、貴族としてのマナーなどの習い事が始まり、それも無くなってしまった。


俺が入ってからは少しだけ運動していたのだが、やはりいきなりハードになりすぎたかぁ……!?


「く…はぁ〜……!あぁぁ〜……!」

「はぁ……身体中ボロボロじゃないの……誰かのために頑張るのもいいけど、ちゃんと休息は取りなさい?」

「と、取ってたはずなんだけどぉ……!」

「…あなたは優しすぎるのよ。大体誰かのことを考えてたり、構ってあげたりしてて、おまけに考え始めると止まらない……体だけじゃなく頭の休まる時間が必要ね」

「ぐうの音も出ないぃぃ……!」


確かにずっとメイカさんやユーリさんやメリーちゃんを甘やかし、1人になればマグといろいろ話す……。

さらには夢の中でもマグとイチャコラしてるので、気力はいつも最大になるのだが、やはり体力の回復は出来ていない……。


…そりゃあボロボロだわ……。


「ふぅ…こんなところかしら?」

「はぁ…はぁ……ありがとうございました……」


その後も痛みに耐えながら、また、気持ちの良いところで声を我慢しながらも、フルールさんのマッサージが終わった。


血行が良くなった気がするし、体が軽くなった気もする。

しかし…ほとんど効くってマジか……。


今日はおとなしく早めに寝るしかないか……。

こりゃあ勝負はマグの勝ちだなぁ……。


「それじゃあユーリ。次はあなたね」

「ほ、本当にするんですね……」

「当然でしょ?そのためにここにいるんじゃないの?」

「え、え〜っと……」


ユーリさんは、邪魔にならないようベッドの端にころころ移動した俺をチラッと見た。


そんなユーリさんに、フルールさんは近づくと耳元でボソッと囁いた。


「…あなたがマーガレットから離れられなくなったのは知ってるのよ?」

「ふえっ!?」

「だからあの子に何も言わなければ、あなたは絶対について来ると思ったの」

「さ、策士だ……!?」

「ふふふ…諦めて横になりなさい?それとも……さっきみたいに甘い声が出ちゃいそうで怖い?」

「なっ…なっ!?き、聞いてたんですか……!?」

「あれだけ大きい声じゃあ、聞こえない方がおかしいわ。…もしかしたら2階には届いてないかもだけど♪」

「!…ま、まさか……!?」

「ふふふ…♪メイカが聞いたらとっても喜びそうだと思わない?ユーリちゃん可愛いって」

「……!?………!?」

「それで?…どうするの?」

「……お……お願いします……」

「よろしい」


なんか長いこと話してたみたいだし、ユーリさんが凄い焦って、反対にフルールさんはとても楽しそうにしてるけど……何を話したんだろう?

普通に説得じゃ駄目なのか?


「というかフルールさんはなんでそんなにユーリさんをマッサージしたがるんですか?」

「ん?だって……この子、あなたぐらい美味しそうなんだもの……♪」

「ひえっ!?」


諦めてうつ伏せになったユーリさんが悲鳴をあげる。

しかし時既に遅し。

あわれ、ユーリさんはフルールさんに(またが)られてしまった!


合掌。


その後、俺の部屋にはユーリさんの気持ちよさそうな声と悲鳴が響き渡ったのだった。


しっかし…まさかここで吸血鬼らしいところが見れるとはなぁ……。

体バッキバキだとめっちゃツラいよ…

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