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127.幼馴染…の昔と今の姿

〔ショコラ〕


「落ち着いた?」

「「はい……」」

「じゃあ帰るわよ」

「「はい……」」


フルールさんがマグとユーリさんにお説教をしていた。


強く抱きしめるユーリさんに、途中まで抵抗していたマグが急に大人しくなったかと思うと、その次にはマグの方からも抱きしめ返し、それに喜んだユーリさんと、ユーリさんに頭をぐりぐりして甘えだしたマグは、段々となんだか見てはいけないものを見させられているような雰囲気を出し始め……というところでフルールさんの雷が落ちた。

魔法で生み出した本物の雷が2人に落ちた。


そうしてお説教が始まり、それが今終わったところだ。


「…なんか…すごかったな……」

「う、うん……いろいろと……」

「う~ん……今度やってみようかなぁ……」

「「えっ?」」

「えっ?」


今日仲良くなったリオとお話していると、横にいた、マグと同じく冒険者ギルドで働いているらしい女の子…チェルシーがそんなことをサラッと言った。


ど、どういうことだろう……?

ちょっと聞いてみよう……。


「や、やるって……だ、誰に……?」

「ん?…んふふ~……内緒♡」

「!?」


わっ!なんか……!

すごくドキッとした!

女の子同士なのに……!


チェルシーが着てる服も、他の従業員さんたちが着ているものと同じデザインなのに背中だけバッサリ開いてるし……!


「お、大人っぽい……!」

「ふふふ…まぁ、みんなよりは上に行ってるとは思うよ?」

「!」


そう言ってチェルシーが見せてくれたのは……ゆ、指輪っ!?


「チェ、チェルシー……!それって……!?」

「んふふ…♡」


チェルシーは微笑みながら「しーっ」と自分の口に指をあてる。

その笑い方もすごく大人っぽい綺麗な笑みで、私は少し見とれてしまった。


「お~い、ショコラ?」

「ふぁっ!?ど、どうしたのリオ……?」

「いや、ぼーっとしてたから呼んだだけだよ。大方、チェルシーに見とれてたんだろ?」

「う、うん……」


同じ女の子なのに、すごくドキドキしてしまってなんだか恥ずかしくなる私にリオは話を続ける。


「そうだなぁ……オレも最初見たときはドキッとしたよ」

「えっ?リオも……?」

「あぁ。すごく幸せそうでさ……。それをおふくろに話したら、「それは恋だね」って言ってたんだ」

「恋……」

「なんでも、恋する女の子はとてもキレイになるんだとさ」


恋…かぁ……。


私は村にいたころからの友達の方を見る。


…今日、マグに婚約者が出来た話を聞いた。

そのときのマグはとても辛そうだった。

でも…たまにすごく幸せそうな顔をするときがあった。


それに……今のマグはどこか違う……。


今日いろんなお話をした、今までずっと遊んできたいつもの大好きな友達のマグと、教会で私を抱きしめてくれたり、魔法の練習をしてる時のちょっとかっこいいマグは、まるで別人のように思えてしまう。


でも……どっちのマグも変わらず優しかった。

私の知ってるマグはもちろんだけど、ちょっとかっこいいマグも、すごく優しかった。


…むしろ優しすぎて危ない気がする……。


なんだろう……身の危険を感じるような……知らない人に声をかけられたときのような危険さじゃなくて……。

こう……入ったらもう抜け出せなくなりそうな…駄目になりそうな危険さ……みたいな?


でも……さっき迷宮のボスのお話をしているときや、メイカさんを倒したとき、それとユーリさんに抱きつかれて暴れてたときは多分…そのかっこいい方だった気がする……。


迷宮のボスのお話をしてるときはすごくかっこよくて、ちょっと怖いところもあったけど……そのマグが顔を真っ赤にして「お姉ちゃん」って言ったとき……。

ちょっと可愛いと思った……。


そのあとの甘えだしたマグは、私もよく知ってる。

何か嫌なことがあったときや、怖いことがあったときに、私やパメラにあんな風に抱きついてたから。

…そうなるとしばらく離れてくれなくて大変だったなぁ……。


…まぁとにかく、私はマグがちょっと変わったのは、《恋》をしたからじゃないかと思った。


でも、問題はその相手だよね……。

今日話してくれた婚約者なわけは無いし……ハルキさんも違うらしいし……。

ディッグさんかケランさん…でもなさそうだなぁ……。

となると、一緒に働いてる人か…冒険者の誰かかなぁ……?


「ショコラ、どうしたんだ?」

「ん?う~ん…ちょっとね……」


リオに呼ばれて、私は考え事をやめる。


ちょうどメイカさんも起きて、みんなでユーリさんを家に誘っているところのようだ。


…ちょっとまって……?

ユーリさん…泊る所はこれから探すって……えっ?

石畳でも、河原の砂利の上よりは寝やすいって……?


あっ…マグが上目遣いでユーリさんにお願いした。

いいよ、マグ!

絶対に野宿なんてさせちゃダメだよマグ!


揺らいではいるけど、まだ断ろうとするユーリさん。


行っちゃえマグ!もうあと一押しだよ!


…来た!お姉ちゃん呼び!

…よし!ユーリさんが諦めた!


「…ふぅ……やばかったな……」

「うん……まさかユーリさんがあんなに危機感の無い人だったなんて……」

「マーガレットが失敗してたら、ウチに呼ぼうかと思ったよ……」

「私も…教会を借りてるだけだけど、泊りに来て!って言っちゃうと思う……」


ユーリさん……綺麗な人なんだから、もっと自分のことを大事にしてよ……。

せっかくの綺麗な髪や尻尾がぐちゃぐちゃになっちゃうよ……?


「あはは……あたしもララ姉にお願いして、ギルドの部屋を開けてもらおうかなって思っちゃったよ……」

「う~ん……さすがにそれは無理かなぁ……?」

「あっララ姉!」


チェルシーの言葉に返したのは、いつの間にかチェルシーの後ろにいたララさんだった。


「ララさん、こんにちは」

「こんにちは」

「うん、こんにちは。リオちゃん、ショコラちゃん」

「ララ姉、溜まってたお仕事はもう終わったの?」

「うん。あれぐらいだったら3時間あれば終わっちゃうよ」

「…確かリンゼ姉が明日までに終われば早い方って言ってたけど……」

「楽な書類ばっかりだったからね~。マギーちゃんが入ってくれたおかげで、私も少し楽できるようになったし」

「…あれで楽だなんて言ってるのララ姉だけだよ……」


チェルシーがものすごくげんなりしてる……!?

い、いったいどれだけのお仕事があったんだろう……!?


気になった私はチェルシーに聞いてみた。


「ララさんのお仕事ってそんなに忙しいの?」

「うん、なんといってもララ姉はここの《副ギルドマスター》だからね!」

「えっ?初耳なんだけど?」


チェルシーの言葉に今度はマグが反応した。


…最近のちょっとかっこいいマグだ。


「あれ?言ってなかったっけ?ララ姉は《冒険者ギルドの影の支配者》って言われてるんだよ?」

「ちょっと待ってチェルシーちゃん?それは私も初耳だよ?」

「えっ?……あっ……」

「チェルシーちゃん……?」

「…………(目を逸らす)」

「誰がそんなこと言ってたのか…教えてくれる?」

「え、え~っとぉ……」


ふわっ……!?

ラ、ララさん……笑顔で怒ってる……!


「…ララさんは怒ると怖いんだよ……」

「そ、そうなんだ……」

「マギーちゃん?そんなことないよ?」

「あっはいすみません」


教えてくれたマグが速攻でララさんに謝った……。


するとララさんは今度は私の方を向いた。


「ねぇショコラちゃん?私そんなに怖くないよね?」

「え、えっと……こ、こわくないです……」

「……ショコラちゃん…目を合わせてくれないと答えを言ってるようなものだよ……?」


だ、だってぇ~……!

あんなに優しいお姉さんだったララさんが、今はすごく怖いんだもん……!


「リ、リオちゃんは……?」

「……怖くないですよ?」

「だからこっち見てくれないとぉ~……!」


男の子みたいな性格と話し方のリオも、やっぱり怖かったみたいでララさんと目を合わさない。


いや…これは誰でも怖いかな……。


「まぁララさんが怒ると怖いのはいいとして」

「よくないよマギーちゃん!こんなに怖がられると傷つくよぅ!」

「汝の主に甘えなさい……」

「はぅっ!?」


マグの言葉に、それも良いかな?って顔をするララさん。


主って…ララさんも結婚してるんだぁ……。

でも、ララさんほど綺麗な人なら不思議じゃないかぁ。


私と同じぐらいに見えるチェルシーが結婚してるっていう方が驚いたよ……。


「それでね、ショコラとリオもウチ来る?」

「「えっ?」」


なんでそんな話に?


「う〜ん…いや、オレはいいや。そういうのは前もって言っておかないとうるさいからな」

「そっかぁ…ショコラは?」

「えっと…」


本音を言えば行きたい。


マグと一緒にいられるし、ユーリさんとメリーちゃんとももっとお話が出来るから。


でも……


「…私も、今日はやめとくよ……。また今度パメラと一緒に誘ってね?」

「そっか…うん、分かった。それじゃあ、パメラや村のみんなと、ナバロさんによろしくって伝えてくれる?」

「うん」


あぅ…やっぱりちょっと惜しいことしちゃったかな……?

でも、パメラを置いて私だけマグとお泊まりなんて出来ないからね……。


残念がる私に、マグは「ふむ……」と顎に手を当て少し考える素振りを見せた後、こんなことを聞いて来た。


「…ねぇ、ショコラ」

「うん…?なぁにマグ?」

「村のみんなってさ…今お仕事を探してるんだよね?」

「うん…そうだけど……」


突然のマグの質問に驚きながらも返事をする。


なんだろう……?

何か考えてるみたいだけど……。


「ショコラとパメラは確か、教会でお手伝いをしてるんだよね?」

「うん。といっても、自分たちの分の洗濯やお料理のお手伝いとか、あとは大体お掃除ばかりで、こんな風にヒマな時間がいっぱいあるんだよね……」

「ふ〜ん?…てことは、2人が抜けてもなんとかなりそう?」

「ん?うん、多分大丈夫だと思うけど……?」


抜けても…って、私たちに何かお願いでもあるのかな?


「ん〜……それならさ。いっそのこと冒険者ギルド(ここ)で一緒に働かない?」

「えっ?いいの?」


それは…すごく良いお話だと思う。

でも、マグが勝手にそんなこと決めちゃって良いのかな……?


その疑問はすぐに解消された。


「ララさん、教育係にまわす余裕ってありますかね?」

「うん、今はお仕事も溜まってないし、人手が増えるのは大歓迎だよ!」

「だってさ。どうする?」

「やる!」

「わぉ即答……」


そりゃそうだよ!

マグとチェルシーと一緒に働けるし、憧れの冒険者さんたちもいっぱい見れるし、その人たちのお手伝いもできる!

しかもそれでお金ももらえる!

こんなのやるっきゃないよ!


「パメラに聞いてから、とか言うと思ってたんだけど……」

「大丈夫!パメラもきっと喜んで受けてくれるよ!」

「そう?まぁ、無理強いはしちゃ駄目だよ?」

「分かってるよぉ!」


パメラなら多分断らないし大丈夫だよ!

だってパメラもマグのこと大好きだもん!


……?「フラグっぽいなぁ……」ってどういうことだろ……?


それを聞く前にララさんが嬉しそうな声を上げた。


「やった!じゃあナバロさんにはこの後連絡してお話ししておくよ」

「ありがとうございますララさん!」

「うん。あっでも、ちゃんと自分からもお話ししてね?」

「はい!」


えへへ♪

まさかこんなところでお仕事が決まるなんて……しかも友達もいて、楽しそうなところでなんて、運が良いなぁ〜♪


…あっでも……さっきチェルシーがお仕事が多いって言ってたよね……。

邪魔とかしないように早くお仕事を覚えないといけないけど……どうしよう……ちょっと不安になっちゃった……。


…でも頑張ろう……!

せっかくマグがくれたチャンスなんだから、ここで私が頑張らないとね!


「ん~……じゃあ、今日はこれでお開き…かな?」

「そうだな。ララさん、フルールさん、イシオンの皆さん、ユーリさん、オレはこれで…」

「うん、気を付けてね」

「おう、そうか。グラズたちによろしくな」

「またね、リオちゃん!」

「はい!んじゃあな、マーガレット、ショコラ。チェルシーとメリーもな」

「うん、今日はありがとね」

「じゃあね、リオ!」

「またね!」

「……またね(ふりふり)」


リオが帰っていったし、私もそろそろ教会に帰ろうかな。


「それじゃあマグ。私も帰るね」

「うん。いい返事貰えるといいね」

「絶対もらえるよ!じゃあね!チェルシー、メリーちゃん!」

「またね!」

「……またね(ふりふり)」

「メイカさんたちも、また今度!」

「じゃあね!ショコラちゃん!楽しみにしてるよ!」

「今度私ともゆっくりお喋りしようよ!」

「はい!」


ユーリさんと約束をしながら、マグたちから離れて冒険者ギルドから出ていく。


ふふ~ん♪

マグともゆっくり話せたし、メイカさんたちとも会えたし、新しい友達もできたし~♪


ふふ、今日はすごくいい日だったなぁ~♪


教会に帰ったら、パメラとナバロさんに冒険者ギルドで働けないか聞いてみないと。

えへへ♫

楽しみだなぁ♪


思わずスキップしてしまいそうになりながら、私は早足で教会へと帰っていった。


……あれ?

何か忘れてるような……。


…まぁ、いっか!

人多いなぁ…って今更思ってしまう私。


うん…まぁ……しょうがないね☆

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