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12.お風呂!…で追憶

新居の第3寮舎にて、部屋決めもさくっと終わり、現在それぞれの部屋で荷解きをしているところ。


部屋は男性陣と女性陣でそれぞれ端っこの部屋を借りている。


そして全員が1人部屋だ。

つまり俺も1人部屋だ。テンションが上がる。


そして俺は今風呂場の脱衣所にいる。

もちろん風呂に入るためだ。

ちゃんと入り口の札を「入浴中」にして、フラグも折っておく。


実はここに来るまでいろいろあった。


まず自分が少女の体だということで悩んだ。

しかも他人なのである。本人の魂が中に入っているとも聞いている。


とてつもなく気まずい。気まずいのだが……。


「メイカさんが一緒に入るって言い出しかねないからなぁ……」


もしそうなったら、気まずさが跳ね上がる。恥ずかしさも跳ね上がる。


そうなる前にさっさと入ってしまおうということで、覚悟は決まった。


次の問題は服だ。


村から焼き出されてしまったこの子(マーガレット)が何かを持ち出すことが出来るはずもなく、持ち物などひとつも無い状態だ。


おかげで部屋を軽く調べた後、やることがなくなってしまったので、風呂に入ろうとなったわけだ。


クローゼットは当然空っぽだったが、クローゼットの下の部分、タンス部分を調べたらタオルが数枚入っていたのでそれは回収してきた。


で、問題の服だが、あの夢で見たマーガレットちゃんは今とは違う服を着ていた。

つまり誰かがあの服を持っている可能性が高い。


じゃあ誰が?

決まっている。

メイカさんだ。唯一の女性だから。


というわけでまずはメイカさんのもとを訪れた。


「(コンコン)メイカさん、今大丈夫ですか?」

「マーガレットちゃん?大丈夫だよ、どうぞ〜」

「失礼しまーす」


扉を開けると、そこには俺と同じレイアウトの部屋に、大量の荷物が広げられている光景が目に入った。


「なんで?」

「えっ何が?」

「メイカさんそんなに荷物持ってましたっけ?」


明らか多いんだけど?

メイカさんそんな荷物持ってなかったじゃん。リュックと杖ぐらいしか持ってなかったじゃん。

積載量を確実にオーバーしてるよ?これ。


「あぁそういうこと。ふふ♡この袋に入ってたのよ」


そう言って見せてくれたのは小さな革袋。

は?と思ったがすぐに思い直す。


ここは異世界…

小さな革袋に大量の荷物…

これはつまり……


「マジックバック?」

「わっ凄い!よく分かったわね!」


そうだ、異世界物の定番、収納魔法。

それがかけられた革袋だったのだ。


「ん、それも魔道具ですか?」

「そ♡以前行った迷宮で手に入れたの。ディッグとケランも持ってるけど、私の袋が1番大きいのよ♡」

「へぇ〜!いいなぁ〜」

「うふふ♡割とポピュラーな物だから、小さい物ならマーガレットちゃんでも頑張れば買えると思うわよ?」

「ホントですか!?やった!」


冒険者にならない以上、そういう迷宮で見つかるアイテムを手に入れる機会は半ば諦めてたけど、メイカさんの言葉で俺は俄然働く意欲が湧いてくる。


「はぁ〜♡かわいい………こほん。それで、マーガレットちゃんは私に何か用があったんでしょう?」

「あっと、そうでした。メイカさん。私の服って持ってますか?」

「えっ?えぇ持ってるけど……」

「私、替えの服が無いのに気づいて、このままだとお風呂あがりに同じ服を着ることになるなって思って…」

「あっそういうこと。ちょっと待ってて、確かこの辺に……」


うっかり本題を忘れてしまったが、どうにか伝えることができた。


メイカさんはそう言うと、広げた荷物見渡し探し始めた。


それにしてもメイカさん、整理整頓出来ない人なのかな…?

どえらい散らかりようだ。


まぁまだ荷物整理の途中だししょうがないだろう。


「あっ!あったあった。はいこれ♡」

「ありがとうございます。…あれ?こっちの服は?」


見つけた服を俺に渡してくれるメイカさん。

だが受け取った服は3着あった。


「その二つはね、私が旅先でマーガレットちゃんに似合うだろうなって思ってお土産に買ってきたの♡だから遠慮なく持ってって」


もらった服はそれぞれ

夢で見たスポーツルック。

黒いフリフリのゴスロリ系ワンピース。

淡いピンク色のふんわりしたこれは…チュニック…で良いのかな?

下は…なんて言うんだっけ…ダメだかぼちゃパンツとしか出てこない。

とにかくそんな感じのパジャマだ。


「おぉ…すごくかわいい!ありがとうございます、メイカさん!」

「はぅ…(バタン)」

「メイカさん!?」


お礼を言ったらメイカさんが倒れた。

なんでさ。


「はぁ〜マーガレットちゃん可愛すぎるぅ…尊いわぁ……」

「え〜っと…恐縮です…?」


いつものだった。

そうだろうとは思ったけどさ!


まぁとにかく、無事に着替えを手に入れた俺はピンクのふわふわ服とタオルを持ち、ほかの服はクローゼットへシュート。


そうして俺は今脱衣所にいるのであった。


さ〜て、さっそくお風呂には〜いり〜ましょ〜っと♫


まずは服を脱ぐのだ。

ワンピースタイプだから…えーと…?

あっ、まず腰のリボンを(ほど)かないとか。

……んで、後は普通に脱ぐっと。


そうして下着姿になり、着ていたワンピースを洗濯機にシュート。


そこで俺は脱衣所にある鏡を見る。


…小さい子とはいえ、女の子の裸を見るのは気恥ずかしいが、それでも確認したいことがあった。


んー……ん〜…………よし。

特に傷は無さそうだ。


もしかしたらケランさんが直してくれたのかもしれない。


ま、とにかく安心した。

体に大きな傷が出来てたら、それを見るたびその時のことを思い出してしまうからな。


よし、んじゃあ確認も済んだところで……ふぅ〜……いくか……。


一度深呼吸。

吸って〜、吐いて〜。

落ち着いたところで……


下着を脱ぐ!


そしてまとめて洗濯機にストライク!!


タオルを持ってレリゴー!!!

扉をガラリンチョ!!!!


「おぉ…すげぇ……」


勢いに任せて風呂場に突撃した俺は、予想より広い風呂場に思わず素が出てしまう。


修学旅行で行った旅館の風呂と同等かそれ以上だ……。


しかもこれ、タイルじゃん。

製法とか知らないからよく分かんないけど、こんだけびっしり張り巡らされてるのはこっちじゃ結構凄いんじゃないか?


おぉ!シャワーまである!

こうなるともう異世界感ねぇな!

はっはっは!!

脱衣所で洗濯機に向かって言うことだったなこれ!!!


……うん、まぁ、なんだ。

便利である喜びと異世界感が無い残念さが混ざってなんか複雑だけど……。


とりあえず…体洗って風呂入るか……。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「あぁぁ〜〜……!」


体を洗い、湯船に浸かると自然と声が出てしまった。

なお体を洗うのにも一苦労あったのだが、割愛する。


しっかし…これじゃあ完全におっさんだぁ……。

はぁ〜…でもすごく疲れが取れていく気がするぅ……。


「…色々あったよなぁホント」


肩までずっぷり浸かり、今日の事を思い出していく。


車に轢かれて死んで、

気が付いたら馬車の中でメイカさんに膝枕されてて、

迷宮都市に着いて、

門番さんとあれやこれや話して、

白兎亭でモニカちゃんとお友達になって、美味しいご飯も食べて、

ギルドでハルキとチェルシーちゃんに会って、

この子(マーガレット)記憶を見て、

ハルキと話し合って、

目標が決まって、

新しい家…家…?まぁいいや。新しい家に来て、

チェルシーちゃんと友達になれて…か……。


「濃いねぇ…」


あまりに濃厚な1日に思わず笑ってしまう。


それでもまだやりべき事がある。

やりたい事もある。

だけど今は…ゆっくりしよう……。


「〜♫」


自然に鼻歌が漏れてしまう。

前世で好きだったとあるプロジェクトの歌。


…あぁ、そうか……。

こっちの世界じゃ聞くことが出来ないのか……。

曲だけじゃない。動画だって、テレビだって、向こうの本だって、もう見ることが出来ない。


当然、向こうの人に会うことも…家族や友人にももう会えない……。


「……すんっ…」


そう考えたら涙が出てきた。


そうだ、異世界に来た衝撃や、この子(マーガレット)の心配をしていて忘れていたけど、俺だって親に会うことが出来ないんじゃないか。


だが…この子よりはまだマシなはずだ。

だって死んだのは俺1人だ。

この子とは逆で、俺だけがピンポイントで死んだんだ。


もう会えないのは同じかもしれないが、それでもこの子の状況よりはだいぶ良い。


だから……今だけ。


「…ぐすっ……はぁ……ひっく…」


泣くのは今だけ……。

今だけだから……。


そう俺は誰かに言い訳をしながら、涙が収まるまで静かに泣き続けた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ふぅ……少し入りすぎたかな…」


ようやく涙が収まり冷静になれた俺は、思ったよりも長く風呂に入ってしまっていたことに気付いた。


いかんいかん…。

他の人だって入るんだから、あんまり長風呂しないようにしないと……。


そう自分を戒めながら、タオルで体を拭き脱衣所に戻る。


…まだメイカさん達は来ないのかな?

それとも表の札に遠慮させちゃってるか?

もしそうなら後で謝らないと……。


そう考えながら着替えに持ってきたパジャマに着替えようと手を伸ばしたところで俺は致命的な物忘れに気付いた。




「下着の替え…持ってないじゃん……」

割と緊急事態

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