117.練習室…魔法研究超楽しい
闘技場にある個人練習用の小部屋。
その中の1つ、13号室に案内された俺は、思ったよりも広いその部屋に驚いた。
「おぉ~……結構広いんですねぇ……」
「うん。いろんな人がいるからね。多少広すぎるぐらいがちょうどいいかも?ってこの大きさにしたんだって」
「なるほど~」
部屋の広さは…ん~……どんなもんだ?
大体…50m…ぐらいかな?
そんぐらいの正方形の部屋だ。
屋根はさすがにそこまでではないが、少なくとも10mはある…かな?多分。
これぐらいあれば確かに、普通に訓練する分には申し分ないと思う。
狙撃とかにはちょっと物足りないかな?どうかな?
で、向こうに見えるのは的だな。
円盤形のものと人型のものがある板タイプのやつと、鍛冶ギルドの地下にもあった木人形…と?
その隣のやつ……グレー配色をした…鉄人形かな?
あれがララさんが言ってた魔法の威力が分かる的かな?
「そっちにベンチとテーブルがあるから、そこに荷物を置くといいよ。それで、向こうにあるのが訓練用の的ね」
「あのグレーの人形が、威力が分かる的ですか?」
部屋の説明を始めたララさんに、さっそく気になった事を質問する。
「うん。あれは魔法防御力が凄く高い「魔鉄鉱」っていう金属でね。上質な魔力をたっぷりと吸った鉄鉱石のことを言うんだけど、あれはその魔鉄鉱をごし…ハルキさんが調整して、全属性耐性と威力判定機能を付けた特別な物なの」
「えっ?魔鉄鉱の耐性って一律じゃないんですか?」
「そうだよ。採れる場所によって持ってる耐性が違うの。だからハルキさんが凄く頑張って、その鉱石が採れるようにしたんだよ」
「おぉ…それは凄いですね」
「うん、凄いよね!」
俺の言葉に、まるで自分のことのように喜ぶララさん。
凄い…おめ目きらっきらしてる……。
「ふふふ…ハルキって凄いのね」
「えぇ!ご主人様は本当に……あっ……」
あっ気づいた。
フルールさんが少しいじわるそうな笑みを浮かべていることに気がついた。
徐々に顔が赤くなるララさん!
あっと俯きましたねぇ……。
「ん~?ご主人様は?」
「ごしゅ…こほん……ハルキさんは凄いんです。本当に凄いんです。それだけです」
「ふ~ん?」
フルールさんがすかさず追撃をかけたが、ララさんは落ち着いて対処。
(今の攻防…マグはどう見る?)
(そうですね~…素早く攻勢に出たフルールさんもさすがですが、すぐに落ち着きを取り戻したララさんも凄いです。あの機転の良さは見習いたいですね)
(確かに。私も見習いたいです。ありがとうございました)
(ありがとうございました。……なんですかこれ?)
(実況ごっこ。てか、それに対応してくれたマグは十分機転が利く賢い子だと思うよ?)
(いえいえ、コウスケさんが口調を変えたので、それに合わせただけですよ)
(それが凄いんだけどなぁ……)
さて…マグが機転は利くは知らんノリにものってくれるはな天使だということを再確認したところで、そろそろ魔法の練習がしたいから止めるかな。
「お二方、そろそろ練習を始めてみてもいいですか?」
「ん…しょうがないわね……」
「うん、いいよ」
フルールさんが不承不承ながら、ララさんがニコニコと俺に返事を返す。
俺もララさんにいろいろ聞いてみたいが、今回はやはり練習を優先する。
だからフルールさん。そんな文句ありげに俺の頬をぷにぷにするのはやめるんだ。
「……ぷにぷに」
ほら、メリーちゃんも参加しちゃったから。
「あっいいなぁ~、私も~」
ララさんまで参加しちゃったよ。
俺もマグのほっぺぷにぷにしたいよ。
いやそうじゃねぇや。
「あにょ……」
「もちもちね」
「やわらか~い♪」
「……えへへ」
みんなで一斉に突っつくから喋りずらい……。
んも~…早く練習したいのにぃ~……。
「…むぅ~……!」
「あらいけない。マーガレットが膨れてきたわ」
「ありゃりゃ…じゃあもう終わりだぁ」
「……むぅ…残念」
俺がどうにか脱出してやろうと策を練り始めたとき、それを察したみんなが突っつくのをやめた。
くっ……察しのいい奴らめ……。
(…まぁいい……これでようやく練習が始められる……)
(…そんなに私のほっぺたは触り心地がいいんですかねぇ……?)
(とても良い)
(そうなんだ……)
正直ずっともちもちしてたい。
あれだ。あの〜…にぎにぎボールみたいなもんだ。分かんないか。
まぁいいや。
俺は気を取り直すと、テーブルにマジックバッグを置いて、中から昨日買ったノートとペンを取り出してそれも置く。
「それは?」
「試したことを記録するためのノートです」
「へぇ〜…本格的ね……」
フルールさんに答えながら準備を終えた俺は、早速魔法を使うべく広いところへ移動…
「あっ、ねぇコウスケさん」
「なんですか?」
するところでララさんからお呼びがかかった。
「魔法の練習…少しだけ見てっても良いかな?」
「もちろん良いですけど……お仕事は大丈夫ですか?」
「今日の仕事量なら大丈夫だよ」
「ではご自由にどうぞ」
「ありがとう〜!」
ララさんなら別に見られて困るようなものは無いし。…そんなもの元から試さないし。
仕事が徹夜しないと捌けなくなるとかじゃなければ俺から言うことは特に無い。
ララさんにそう返すと、今度はフルールさんが聞いてきた。
「それで?何から試すつもりなの?」
「まずは障壁魔法ですね。まだ試したことがないので」
昨日鍛治ギルドでバックラーを着けるかどうかの際、メイカさんに言われたことだ。
そのときメイカさんは今度教えてくれると言ってくれたが、どうせなら今ここで試してみたい。
さて……適性は雷、次点で無属性。
雷の壁……真っ先に出てくるのはフェンスかなぁ……。
確かにあれなら突撃を躊躇わせることが出来そうだが、遠距離攻撃を防げそうには思えない。
となると無属性でバリアを貼るのがいいか?
バリアで出てくるのは……バリア、マバリア、マカエシ辺りかな。
でもこれ魔法しか防げないんだよな……。
「こうげき」なんかむしろ弱点だもんな……。
じゃあ他のやつ。
ドームシールド、ガンシールドとかどうだろう。
特にガンシールド。
左手に魔力で作ったバックラーを付けることが出来れば、防御問題は大体解決したようなもんなんだが……。
なんなら攻撃もそれで出来るし。
それなら「冥」「天」「海」を使い分けれるようにもしたいね。
ワイヤーアクションも出来るようになるし。
とはいえ、盾だと受け止めた時の衝撃で吹き飛ばされかねないんだよな……。
ただでさえ男子と女子で力の差もあるのに、その中でもマグはさらに非力な部類。
かたやルーク少年は、男子の中でも粗暴な部類。
まぁまず間違いなくふっ飛ぶ。
それに障壁の強度が分からなければ、そもそも耐えれるかも分からない。
構造によって、同じ魔力量でも防御力に差は出来るのか……同時にいくつまで作れるのか……それは自在に動かせるのか……。
色々試したいことはあるが、まずは魔力障壁を作るところから始めよう。
あとはそれからだ。
さて…詠唱分は……。
ふむ……これでいいかな?
「《【我が前に現れよ】、[衝撃防ぐ]【魔力の壁】。[マナウォール]!》」
俺がそれらしく並べた詠唱を唱え終えると共に、俺の前に白く濁った半透明の壁が生まれた。
ふむ…大きさは俺が3人分ぐらいの幅と成人男性ぐらいの高さか……。
んで…肝心の強度だが………あ〜…しまったな……。
誰かに頼もうにも肝心の威力に関する知恵がまるで無い。
どの程度で人は戦闘不能になるのかのラインを調べてなかった。
はぁ…うっかりしてた……。
じゃあ先に威力を調べるか。
そう考えた俺は魔鉄鉱の人形の方を向く。
魔法は……そうさな、基本のものにしとこう。
それを基準にして考える。
「《【奴を撃て】、[蒼き一筋の]【稲妻】。[サンダー]!》」
早速的にズドンとしてみると、魔鉄鉱の人形はグレーから鮮やかなオレンジ色へと変わっていった。
…そういえば威力の目安も聞いてないや……。
しっかりしろ〜俺。
まだボケるには早いぞ俺。
「マ、マギーちゃん……今の…サンダー……?」
「?はい、そうですよ」
忘れっぽいことを戒めていると、ララさんが若干引き気味に話しかけてきた。
どうしたのララさん。
また俺何かやらかしました?
「魔杖無しでオレンジ色まで……マギーちゃん、魔力高いんだね……」
「えっそうなんですか?」
「うん、その人形はね?1番低いのが青で、青から緑、緑から黄色、黄色から赤、赤から黒って感じで上がっていくの」
えー…ということはつまり……?
「…オレンジ色は強い方……?」
「うん…2階層の魔物なら、魔法耐性が高い相手以外は大体一撃で倒せるよ……」
「おぉう……」
2階層の魔物ワンパン…って……。
確か、ルークも2階層のやつをボコスカ出来る実力があるらしいから……攻撃力なら並んだかな……?
「ちなみにオレンジ色って人にやったらどうなりますか?」
「一般人なら瀕死になるかな」
「怖っ」
「冒険者でも、そうだねぇ……Fランクぐらいなら痺れて動けなくなるかなぁ」
「なるほど……」
ルークは確かFランク冒険者……暴力小僧とはいえ子供であることから、耐久力もまぁそんなもんだと思う。
(ふむ…なら攻撃面は大丈夫そうか……)
(そうですね……あの速度なら避けられることもないでしょうし、あとは威力の調整をすれば……)
(一撃死は駄目だからな……。そこまでする気も無いし……。まぁこれで威力は分かった。あとはこれに耐えられるぐらいの障壁を作れれば……)
(万全…ですね)
そこまで話し合った俺は、さっき出した魔力障壁を見る。
…ん〜……試すにしてもここは近いか……。
とりあえずこの壁動かせねぇかな?
それが出来れば、一々こんな壁を作んなくても、要所要所にピンポイントで移動させて防げるようになる。
そうすればMPも節約出来るかもだし、視界も広く取れる。
あぁそうか、逆に視界を遮ることも出来るのか。
やばいな。
壁1枚であれこれやりたいことが思い浮かんでくる。
これはぜひとも全部試したい。
よしじゃあ早速……
(コウスケさん、ノートノート)
(おっとそうだった……)
実験に夢中になってしまった俺をマグが静止してくれた。
危ねぇ危ねぇ……。
何のために昨日買ったと思ってんだ俺は……。
(ありがとうマグ)
(いえいえ)
マグにお礼を言いつつテーブルまで戻る。
そして適当なノートを手に取り、発動するときの詠唱文と仕草、効果を書き記していく。
その様子を見ていたフルールさんが呟いた。
「へぇ…結構細かく書くのね……」
「そうですか?これぐらいならまだ普通だと思いますけど……」
その俺の言葉に、今度はララさんが口を開く。
「確かに詠唱文と効力はよく書かれてるけど、仕草まで書く人は少ないんだよ?」
「そうなんですか?」
「うん。みんな唱えるときは大体魔力を込めて相手に振るって感じだから、わざわざそこまで書かないんだよ」
「へぇ……」
(言われてみれば、村に来た冒険者の方に魔法を見せてもらった時もそんな感じでしたね……)
(ふむ……となるとやっぱり、仕草までは関係無いのかな……?)
(多分そうだと思います。仕草まで固定されていたら、使える場面も限られてしまいますし……)
(そっかぁ……)
…なら別に、どの体勢で撃っても良いってことだよな?
わざわざ相手に向けて武器やら手やらを振る必要は無いってことよな?
…これ、使えるかも。
とはいえ、さすがに相手を捕捉してないと当てられないよなぁ……。
全弾自動照準仕様に出来れば、他のことしながら念じるだけで良いから楽なんだけど……。
そこまでいったらチートかな?
ま、ゲームでは駄目だけど、リアルファイトなら別にいいだろ。
それを実現する手間がかかるわけだしな。
人力チーターみたいなもんだ。多分。
と…これでよし。
ノートに書き終えた俺は、次に壁の強度と移動の可否を確かめるためにマナウォールを見る。
次はこいつを動かしてみよう。
(う〜ん……念じれば動くかな?)
(サンダーオーブのようにですか?)
(そうそう。てかそうか。難しく考えなくても、もう実例があるんだしさっさと動かしちゃえばいいのか)
そういやオーブ、ぐりぐり動かしてたわ。
じゃあ同じ感じでやってみりゃ良いだけだわ。
ボケてるなぁ〜……。
そういうことなので、オーブと同じ要領で動かそうとしてみるが……。
「……?動かないな……?」
(えっ?)
壁がまったく動かせない。
なんでだ?
大きさか?質量か?
動かす魔力と同等以上の魔力がいるとか?
(なんでだろう……?だってオーブは……ん〜……あっ…)
(なんか分かったのマグ?)
(多分、詠唱…というか、意識の問題じゃないですか?オーブのときは元から動かすことを前提に魔力を編んで、それに合わせた詠唱文でしたけど、今回はただただ壁を生み出しただけなので……)
(…なるほど…言われてみれば確かに……)
この壁を作ったときの詠唱文は確か…… 《我が前に現れよ、衝撃防ぐ魔力の壁。マナウォール!》だったし……動かせないか考えたのも作ったあと……あぁ、うん。これだわ。
(さっすがマグ)
(いえそんな…まだこれだって決まったわけじゃないですし……)
マグがめちゃくちゃ照れた声で謙遜する。
いやぁマグが言ってくんなきゃ気づかなかったよ、こんな基本的なことなのに。
…疲れてんのかな……?
ストックがかなり危うい……。
そろそろ毎日投稿はやめるかもしれません。
楽しみにしてる方には大変申し訳ない……。
また後日、改めてお伝えします。




