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115.現状の戦力差…いじめっ子の背景

フルールさん、メリーちゃんの2人を、いつもハルキと話すのに使っているテレフォンオーブのある通信室へと招き入れた。


戸締りをしっかりと確認した後、早速オーブを起動する。


「……おぉ…!」


メリーちゃんがそれに目を輝かせて見入っている。

そんな可愛らしいメリーちゃんを撫でながら、俺はハルキたちに話しかける。


「もしも〜しハルキ、フォーマルハウト、いる?」

『はい、おりますよ〜…あら?お客様ですか?』


おっ、フォーマルハウト。

ハルキは仕事かおねむかな?


「うん、そう。フルールさんとメリーちゃんだよ」

『あぁ、あなた方が!お話は聞いてます。初めまして、私はダンジョンマスターのナビゲート役をしております、フォーマルハウトと申します。以後お見知り置きを』


フォーマルハウトがフルールさんとメリーちゃんに挨拶をする。


しかし、ダンジョンマスターのナビって、あっさり言ったな。

まぁ俺がここに連れてきてる時点で、ハルキのことは話してるんだろうなって察したんだろうな。


それにフルールさんは若干驚いた顔をして答えた。


「え、えぇ…初めまして。ダンジョンマスターのナビゲート役がいるなんて知らなかったわ……」

『えぇ、世界広しと言えど、ナビがいるダンジョンは他には無いでしょう』

「…つくづく不思議なところね…ここは……」


フルールさん。なぜ俺を見る。

確かに俺も不思議生物ではあると自覚しているけども。


「……」


そしてメリーちゃんはフルールさんの後ろに隠れて様子を伺っている。


大丈夫だよメリーちゃん。

フォーマルハウトは優しいナビ妖精だから。

姿見たことないけど。


『それで、本日はどのようなご用件でしょうか?』

「改めて、私たちを買ってくれたことのお礼をと思ってね。ハルキは?」

『ハルキは今商談に出ています。なので申し訳ありませんが、すぐには戻って来ませんね……』


商談かぁ……。

またウチの世界の物が増えるんかなぁ?

お菓子増えねぇかな……?


「そう……。まぁいいわ。そういうことなら私の用事は終わりよ。私たちは……」

「……(ぎゅっ)」

「…ここでコウスケの用件が終わるのを待つわ」


フルールさんはこの部屋から出ようと言おうとしたのだろうが、メリーちゃんが未だ繋いだままの俺たちの手を強く握って抗議したため、フルールさんはやむなくここで待つことにした。


まぁ別に、聞かれたって大して問題の無いことだから気にしなさんな。


『分かりました。あぁそうだコウスケさん。ルークくんのことならある程度調べは付きましたよ』

「おっありがとう」

『いえいえ。チェルシーは私の妹でもありますから』


へっへっへ〜。

これで対策がしやすくなって、より効果的な特訓が出来るぜぇ〜。


「…あなた…そんなこと依頼してたの……?子供相手に大人げ無いわね……」

「情報握ってないと安心出来ませんからねぇ」

「……悪い顔」

「へっへっへ〜」


褒めすぎやでおふたりさん。


(負けられないですからね…これも戦いの内です)

(そうそう。向こうも調べたきゃ勝手にすりゃ良いのさ)


まぁ無理だろうけどね。

寮はオートロックだし、そもそも住宅街のど真ん中だから遠くから見ることも難しい。


いつも練習してる中庭は見られるかもしれないけど、基本動作しかしてないから見られても特に問題無し。


それに俺には頼りになる味方がいるからな。

良かった、真面目に働いてて。


だからあとは実力だ。

それをどうにか身に付ければ、まず負けることは無い。

それでも当然、油断は禁物だけどな。


「それじゃあフォーマルハウト、まずはそれから聞いていいかな?」

『分かりました。そうですね……まずはステータスを比較してみましょう。ルークくんのステータスは……』


ハルキ調べのルークのステータスをフォーマルハウトに口頭で伝えてもらい、その内容をホワイトボードに書いていく。


ちなみにその時もメリーちゃんは頑なに手を離そうとしなかったので、俺はフルールさんにペンのキャップを取ってもらった。

凄く書きづらい。


でもメリーちゃんの手から離れようとすると、きゅっと力を込められ、じっと見つめてくるので、俺の精神力では離すことが出来ない。

適当な理由も思いつかない。

なので諦めた。


ともかく、ホワイトボードに書き出したルークのステータスはこんな感じだ。


ルーク

MP 33/33

体力 D

筋力 D

魔力 G

敏捷 D

技術 G

知力 G


「……DとGしか無いじゃん……」

(えぇ…しかも清々しいほどに脳筋なステータスです……)

『ルークくんはFランク。使える魔法は身体強化のみで、それを日常的に使っていたためのMP量ですね』

「日常的にって……」


それ、つまり子供同士のケンカでも使ってたってことでしょ?


そういえば、アリシアさんが言ってたなぁ……。

確か、骨を折る大怪我だっけ?


「…大人は止めなかったのか……?」

『父親が元冒険者、母親は一般女性、主に(しつけ)は父親がしていたそうですが、これが厳しい物だったようで、それが怒る時にする普通のこととして覚えてしまったそうです』

「元凶かよ……」


子育ては難しいって聞くけどさぁ……。

その反動が周りに行っちゃってるってのはなぁ……。


「親はいじめのことは知ってるの?」

「はい。ですが、いくら叱っても逆効果となってしまってるようで、怒られたら殴る、怒られたら殴るの繰り返し。他の子供たちは、むしろずっと怒っている父親に迷惑しているような状態です」

「どっちも駄目だな」

「容赦無いわね……」


聞いた感じだと、多分頭ごなしに叱り付けてるんじゃないか……?


なんでこんなことをした、それはいけないことだ、そのあたりを言ってるのかもしれないが……。

なんでって…嫌なことがあったからとしか言いようがないし、いけないことって言われても、大人が殴りながら言っても意味が無い。


最初はちゃんと聞こうとしたのかもしれないが……だとしても、何回かやって、この叱り方じゃ駄目だって思うはずだけどなぁ……。

他の子たちが迷惑するってことは、すでに何回かやったってことだからな。


それに、子どもの意見をちゃんと聞こうとしてるんだろうなぁ……?

人の話を聞かないやつの話なんか聞くわけ無いぞ?


つーか、大人がやってることは大体真似するぞ。

あの人がやってたから良いと思ったってな。


んで、そこでキチンとこれこれこういうのだから駄目だよって教えないと、ずっと繰り返す。

だって、怒られたらやってるやつを免罪符か道連れに出来るから。


なんであいつは良くて俺は駄目なんだってなったら、そっからグレてくからな。

自分が守らないことを人にぐちゃぐちゃ言うやつは信用されない。

ただのクレーマーだもの。


「なら、その学ばない親にもどうにかなってもらうか、親から引き離してストレスの原因を取り除くかしないと根本的な解決はしないな……」

「そこまで行くと…個人の問題だから首を突っ込むのは無理じゃない?」

『いえ、おそらく可能です』

「「えっ?」」


フルールさんの正論に、フォーマルハウトが待ったをかける。


だがギルドが関わることでも無し、どうやって……


『ルークくんには兄がいるのですが、その兄も冒険者でして、現在4人パーティで迷宮を絶賛攻略中です』

「もしかして、その兄のところにルークを預けるってこと?」

『はい』


それが出来れば問題は解決するだろうが……その兄も冒険者ということは、素行に問題があったりしないのか?


それに、人が増えれば出費も(かさ)む。

身内とはいえ、それはあまり良く思わないんじゃないか?


「それは名案だと思うけど……ギルドの頼みでも、難しいんじゃないの?」


フルールさんが疑問を口にしてくれた。


そうだ。そもそもギルドが個人の問題に関わるのはあまり褒められたことじゃない。


『いえ、ギルドからの要請では無く、マーガレットさんからの要請ということなら、(こころよ)く協力してくれると思います』

「えっ?なんで?」

『そのお兄さんとは顔見知りな上に、向こうはマーガレットさんに感謝していますからね』

「(?)」


俺に感謝……?

えーっと…待てよ待てよ……?


(冒険者の兄、だから男性で……)

(4人でパーティを組んでいて……)

(俺に感謝している人……?つっても、誰か特定の冒険者に感謝されるようなことをした記憶が……)

(……あっ、分かりました!)

(マジっ!?誰々!)


俺が今まで会話したことのある冒険者を順繰りに思い出していると、一緒に考えていたマグがピンと来たようだ。


(ほらっ!あの~…名前は知らないんですけど、この間Dランクに上がったあの人たちじゃないですかっ!?)

(…えーっと……?…あっ!あの人らか!)

(ですです!)

(なるほど…4人パーティだし、俺とも確かに話してるわ。てことは……)

「…コウスケ」

「ん……?」


マグと良い線まで行ったところで、フルールさんの声に呼ばれた。


「どうしました?」

「何か分かった顔をしたから聞いてみただけよ。大方(おおかた)、マーガレットと話してたんでしょ?」

「よく分かりますね」


俺がただ考え事をしてるだけかもしれないのに。


「分かるわよ。あなた、1人で考えてるときはほとんど動かないけど、誰かと話してるときはちょこちょこ動くし表情もよく変わるもの」

「えっ」

(言われてみれば……)

「……(こくこく)」

「…マジか……」


そんなに違ってたなんて知らんかった……。


「それで?目星はついたんでしょ?誰なの?」

「えーっとですねぇ……」


そういや言ってないっけか?


俺はフルールさんたちに事の顛末(てんまつ)を話した。


「へぇ……」

「……ふ~ん……」


その結果2人の目線が冷たくなった。

怖い。


「あの…何かまずったでしょうか……?」

「えっ?違う違う、あなたに落ち度は無いわよ」

「あ…よかった……」

「ほんとあなたは心配性ねぇ……」


だってねぇ……怖いんだもの……。


「……マーガレットは大丈夫なの?」


メリーちゃんがマグの心配をしてくれる。


良い子や……。


「うん、大丈夫。それにこの前の休みに会った時、ちゃんと謝ってくれて仲直りもしたしね」

「……ふぅん……」

『大丈夫ですよお二方。コウスケさんがマーガレットさんをきっちり守って、《戦慄の天使》と呼ばれるようになったんですから』

「あぁそういうこと」

「納得が早い」


解せぬ。


「それならいいわ」

「……(こくり)」


メリーちゃんも納得しちゃった。

解せぬ。


「はぁ…その二つ名を考えたやつにもひと言言いたいんだが……フォーマルハウト知らない?」

「知りませんね」

「そっかぁ……」


ほんっと誰なんだろう……?

あの時見てた冒険者の誰かだったらもう分かんねぇなぁ……。


『こほん。そろそろ話を戻しますね』

「あっはい」

『それでは、マーガレットさんのステータスを伝えますね』


というわけで書き出した結果がこちら。


マーガレット・ファルクラフト

MP 42/72

体力 E

筋力 G

魔力 C

敏捷 F

技術 D

知力 C


「う~ん…やっぱり運動能力がネックかぁ……」

(あっ!でも前より上がってますよ!)

(ん…やべぇどうだっけ……?)

(も~!)


マグに怒られつつ、彼女に教えてもらいながら今のステータスの隣に前のステータスを書いていく。


マーガレット・ファルクラフト

MP 42/72  up!        MP 20/20

体力 E  up!       F

筋力 G           G

魔力 C  up!        E

敏捷 F          F

技術 D  up!        E

知力 C           C  


ふむ…こんなもんかな……?

分かりやすく「UP!」マークを付けてみた。


「うん。やっぱり身体能力が低い」

(う~ん……)


これにはマグも苦笑い。

やっぱこれを補う戦術が必要だな……。


「ねぇマーガレット」

「はい、なんでしょう?フルールさん」

「今更で悪いんだけど、ステータスって何?いえ、あなたの強さを表してるのは分かるんだけど、なんでそれが分かるの?」

「あ~…えっとですねぇ……」


そういや知らないか。

うん、そんなんばっか。

その辺のこともお話ししよう。いつか。


俺はフルールさんたちにハルキがそういう能力を持ってることを話す。


「…なるほどね。それで私たちが吸血鬼だってことも知ったのね」

「はい」

「…だから買ったの?」

「いえ、ハルキがああいう不当行為が嫌いだからです」

「そ、そう…ならよかったわ……」


フルールさんが「とんだ早とちりを……」みたいな感じで照れている。可愛い。


…でも……今かなり重要な分岐点をバッサリやった気がする……。


…ま、まぁ…大丈夫だろう。


『はい、ハルキはそういうのが嫌いなだけで、他種族がどうこうはあまり気にしません』

「分かったわ……はぁ……こんな人間が近くに2人も…いえ、マーガレットも入れて3人かしら?」

(はい!)

「元気に返事をしております」

「そう、なら3人ね。ふふふ……」


フルールさんが可笑(おか)しそうにコロコロ笑う。


レアだ……新鮮だわ……。


その後ろのメリーちゃんも嬉しそうにはにかんでいる。


いつものだ……かわいいわ……。


2人をのんびり眺めつつ、俺は次の話に進むのだった。

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