105.あれやこれやの悩み事…賑やかな歓迎会
どうして同じ体の中にいるのか?
どうして2人分の体が無いのか?
どうして…隣に立って、同じ地面を歩けないのか……?
ユーリさんの歓迎会の途中、これまであまり構ってあげられなかったメリーちゃんを甘やかしていたら、急にマグが駄々をこね始めた。
それで急遽自分の部屋に駆け込んだ俺に、マグはそんなことを聞いてきた。
それを聞いた俺は言葉に詰まってしまった。
…俺は…もともと死んだ身だ。
車に轢かれて死んで、それで終わりのはずだった。
こうやって誰かと話すことすら本来は出来ないはずだった。
だが、なんの因果か…こうしてマグの体の中で俺は生きている。
そしてその彼女と文字通り心で結ばれ、いろいろあったが楽しく今日までやってきた。
だが…マグに言われて……自分も考えたことがあるそれを彼女に言われて……どう返せばいいのか分からなかった……。
マグは俺と並んで歩きたがっている。
俺と同じ世界で、一緒に……今みたいに片方ずつではなく…一緒に同じものを知りたがっている。
俺だって出来ることならそうしたい……。
でも…その手段が無い……。
ハルキに聞けば何かあるかもしれない。
なんらかのヒントぐらいは聞けるかもしれない。
…俺はそんな単純なことも忘れていた。
毎日マグと話して、日々を過ごすのが楽しかったから忘れていた。
…最近物忘れが激しすぎるよな…ホント……。
とにかく、俺はどう答えるか考えて、考えて……やっぱり誤魔化すのはダメだと思った。
(マグ……ごめん……体をマグに返す方法のこと、すっかり忘れてた……)
(いえ…私も今の今まで忘れてましたから……)
(…マグも……?)
(はい…その……コウスケさんと一緒にいられるのが嬉しくて……夢の中で会うっていう2人っきりの時間も楽しくて……その……はい……)
一緒だ……。
なんだか無性に嬉しくなってしまう。
(そっか……俺もだよ。俺も、マグと一緒で、毎日いろいろあるけど楽しくて……うん…本当ごめん……)
だがそれはそれ。
楽しいのはいいが、だからって忘れていいとはならん。
(いえ…私こそごめんなさい……。コウスケさんがモニカちゃんやメリーちゃんを甘やかしてるのを見てたら…急に寂しくなっちゃって……)
(そっか……うん、分かった。明日ハルキに相談してみよっか?)
(えっ?でも…いいんですか……?)
(当然。俺だって……その……)
(?)
(…マグとデートとかしたいし……)
(!…〜〜っ!コウスケさぁんっ♡!)
ぬあぁ〜……!
やっぱり恥ずいよこういうのはさぁ〜……!
勢いでいけるかと思ったけど、羞恥心のやろう、直前で戻ってきやがって……!
(ごほんっ!と、とにかく!明日ハルキに聞くってことで、この話は終わり!下でみんなが待ってるから早く行くよ!)
(んふふ〜…は〜い♡)
くっ……この小娘……!
絶対今「可愛い」って思ってる……!
…俺今度からカッコつけてる子に冗談でも「可愛い」って言わないようにしよう……!
気恥ずかしすぎるわこれ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ただいま戻りましたぁ〜」
「マーガレットぉ!」
「…今日はよく来るなぁぁふ!」
リビングに戻ってきた俺に、早速ユーリさんが体当たり…もとい、飛びついてきた。
ユーリさん…モニカちゃんのところで釘刺したはずなのに……。
というか若干お酒の臭いが……
「ぐふっ……それで…どうしたんですかユーリさん……」
「メ、メイカさんとフルールさんがぁ……!」
「あー!マーガレットちゃん帰ってきたぁ!」
「あらぁ?本当ねぇ?ほ〜ら、マーガレットもこっちにおいでぇ?」
声のした方を見ると、そこには顔を赤くしながら楽しそうにコップを掲げ、俺を誘うメイカさんとフルールさんがいた。
ディッグさんは彼女らの反対側で困り果てた顔をしており、メリーちゃんがその影に隠れている。ケランさんはキッチンで水を持ちながら様子を見ている。
2人の近くの机の上には、何本かの酒の空き瓶が並んでいる。
臭いの元はあれだろう。
…俺らはそんなに時間開けましたか……?
「…出来上がってる……」
「そうなんだよぉ!2人ともぐびぐび飲んじゃって…ディッグさんとケランさんが止めるのも聞かずに……」
「んもぅ〜…ユーリちゃ〜ん!ひっく…!人を酔っぱらいみたいに言ってぇ〜!」
「そうよぉ?久しぶりの美味しいお酒だからちょっと飲みすぎてるかもだけど……そんなに言うほどじゃないわよぉ」
ベロンベロンですよ……?
(ありゃ〜…メイカさんは酔うと、ずっと私を抱えて離さなくなっちゃうんですよ……)
(おおぅ……じゃあ捕まったら……)
(駄目ですね……フルールさんもふわふわしてますし…多分フルールさんも離してくれないでしょうね……)
(うわぁ……)
「マーガレットちゃ〜ん!」
「マーガレット」
俺がマグと話しているところに、メイカさんとフルールさんの酔っぱらい2人が声をかけてくる。
「「こっち♡」」
…自分たちの太ももをぽんぽんと叩いて呼んでくる。
(……ごくり…これが大人の魅力……!)
(…確かに2人の周りだけ妖艶な雰囲気が漂ってるよな……)
これは……危険だ……。
あそこに行ったら戻って来れそうに無い……。
「マーガレットちゃん、ほらほら……好きなだけふにふにして良いのよ?」
(!!)
(あっやばい、マグがやばい)
それはあかん。
(ふにふに……!)
ほらもうマグがふにふに脳になっちゃったよ。
落ち着いてマグ。あれはハニートラップやで。色仕掛けやで。あそこ行ったらゲームオーバーやで。
「ふふふ…ほら、私のもふにふにして良いのよ…?お風呂でずっと気にしてたでしょ…?」
(!!!)
(マーグ。落ち着けマーグ。出来る出来る、君ならできる)
(はっ!?そ、そうですよね……ふにふに……落ち着かないと……ふにふに……)
うん、駄目そう。
これ俺が主導権握ってなかったら、もうあの2人のところにふらふら歩いて行ってそうなぐらいだよ?
なんなら今抱きついてるユーリさんにふにふにし始めそうだよ?
なんでこんなえっちぃ子になったんじゃろうねぇ……?
「ほ〜ら、ユーリちゃんもおいでぇ?」
「まだあなたの体を触り足りないのだけど?」
「(えっ?)」
ユーリさん体弄られてたの?
「ち、違うよ!?耳とか尻尾のことだよ!」
「あぁ、なるほど…」
そっか…美人のお姉さんたちにいたずらされる美少女というえちえちな展開では無かったか……。
…いや、ケモミミ部分でも十分では?
「んも〜!マーガレットちゃん早くぅ!」
「ユーリ…あなたもよ?」
「ど、どうしようマーガレットぉ……!?」
「う〜ん……」
このままだとあのセクシーふにふにたちに捕まってしまう……。
そうしたら一体何をされるのか……。
なんにせよ、自由に飲んで食べておしゃべりしては難しくなりそうだなぁ……。
ふ〜む……何か別のことに気を逸らさせないと……。
ぎゅぅ〜……!
「……」
「……?マーガレット?」
俺はそこまで考えて、未だ俺に抱きついているユーリさんに視線を向ける。
今のユーリさんは、この前ローズさんのお店で買った服のうちの1つ、ゆったりしたシャツにノースリーブの半裾…て言うのかは分からないけど、あの〜…服の丈が胸の下ぐらいまでの…ハーフ…ジャケット?かな?
まぁそれにミニスカートと膝下ソックスにブーツという格好だ。
つまりちゃんと服を着ている。
…そのハーフジャケット(?)も、ユーリさんの豊かな胸部装甲で胸にかかるぐらいになっちゃっててえちぃけど。
とにかく、ちゃんと、服を、着ている。
「ユーリさん。その服似合ってますね」
「えっ?あ、ありがとう…?」
「それでユーリさん。その服は動きやすいですか?」
「う、うん…動きやすいけど……なんで今それを……?」
俺の突然の賛辞と質問に困惑しながらも答えてくれるユーリさん。
ってかやっぱりユーリさんからもお酒の臭いがするな……。
ちょびっと飲んだんかな?
「この前ユーリさんに踊りを見せてもらうって約束したじゃないですか」
「う、うん…そうだね……あっ、もしかして……」
「はい、今それをお願いしても良いですか?」
「うん…なるほど……それで捕獲を免れようってことだね?」
「その通りです」
さすがユーリさん。
ちゃんと意図が伝わって良かった。
「分かった。…んー…でも、ここじゃあちょっと危ないかなぁ……」
「そこの窓を開けると中庭に出るんで、そこなら広いので大丈夫だと思います」
「ん、分かった」
ユーリさんと窓際まで行き、カーテンを開ける。
「おぉ!これぐらいあれば大丈夫だよ!」
「よかった。それじゃあお願いしていいですか?」
「うん、任せて!」
(わぁい!ユーリさんダンス、楽しみ!)
ユーリさんは頼もしい返事をすると、庭に出て行く。
マグが嬉しそうな声を上げるのと同じタイミングで、メイカさんたちもそれに気がつき、各々声を上げる。
「なになに?ユーリちゃんのダンスぅ?」
「あらあら良いわね。どんなものか楽しみだわ」
「良いですね。是非お願いします!」
「お!いいじゃないか!」
「……?」
「メリー嬢ちゃん、今からユーリ嬢ちゃんが踊りを見せてくれるんだとよ」
「……踊り?」
「おう!まぁ見てのお楽しみだ!」
「……?……(こくり)」
酔っぱらい組の声に他のみんなも窓際に集まってくる。
…そういえばユーリさん…明るいけど人付き合いはあんまり得意じゃないんじゃなかったっけ……?
こんな期待込められて大丈夫かな……?
「が、がががんばりましゅ……!」
あっ駄目だこれ。
ガチガチに緊張してらっしゃるわ。
ここは言い出しっぺの俺が緊張をほぐしてあげないと……。
俺は庭に出てユーリさんのそばまで行き、彼女を元気付けることにする。
「ユーリさん」
「マ、マーガレットぉ……!」
「おぉぅ……大丈夫…に見えませんけど……今まで誰かの前で踊る機会とかは……?」
「ひ、1人2人ぐらいなら……。で、でもこんな大勢の前なのは初めてで……!しかも物凄く期待されてるしぃ……!」
「あー……なるほど……」
これは俺が悪いなぁ……。
元は俺に見せるって言ってたものなのに、今日初めましてなフルールさんやメリーちゃんを含めた5人がプラスされちゃって……。
そりゃ緊張するわなぁ……。
「って、それなら断ってくれても良かったのに……」
「だ、だってぇ……!さっきまでは大丈夫だったんだもん……!」
「あ〜…急に来た感じですか?」
「……!(こくこく)」
わかる、わかるわぁ〜……。
ん〜…でもそれならどうするか……。
「…どうしますか?言い出したのは私ですし、ユーリさんがやめたいのならそうしますよ?」
「うぅ……で、でももうみんな期待しちゃってるし……それに、これも修行の一環だと思えば……!」
なんの修行だろうか……?
しかし…やはり言い方が悪かったか……。
ユーリさんは責任感が強いから、そこら辺も考慮に入れて、誰かのためって形にしないと納得しないかも……。
「んー…それなら私にお願いしたいこととかありませんか?」
「えっ?う〜ん…でも、これはマーガレットへのお礼でもあるんだし……」
「ユーリさんが困ってるのにただ見守るだけなんて嫌ですよ……」
「あぅ……その言い方は反則だよぉ……」
だってこう言わないと絶対断るじゃん。
「頼みたいこと…じゃあ……う〜ん…でも…それはさすがに……」
「なんですかユーリさん?言ってみてくださいよぅ。無理のない範囲なら良いですよ?」
「えっと…マーガレットは大丈夫かもだけど……私の心の問題が……」
「心の問題……?」
俺への頼み事で自分の心の問題を解決しないといけないやーつって何?
俺は、どゆことかわからん…という顔をするが、ユーリさんは自分の考え事で頭がいっぱいのようだ。
それでもチラチラとたまにこちらを見てくるので、その心の問題が関わるお願いについて考えているんだろう。
(う〜ん……ユーリさんは何をお願いしたいんだろう……?)
(……ユーリさんのあの感じ……もしかして……)
(マグ?何か分かったの?)
(コウスケさん。多分ユーリさんは……ゴニョゴニョ…)
(…えぇ…!そうなの……!?)
(はい、多分…)
(それ外れてたら凄く恥ずかしいやつなんだけど……?)
(大丈夫ですよコウスケさん。間違ってて恥ずかしくなってるコウスケさんも可愛いですから!)
(全然大丈夫じゃないが?)
はぁ……まぁいいや……。
とにかく、マグの予想が合ってるか確認してみようか……。
「…あ〜……ユーリさん……?」
「う〜……う?なに?」
「…えっと……ですね……その………ごほんっ!ユーリさん!」
「う、うん…?」
「……その…お、踊りが終わったら…わ、私が目一杯甘やかします…ので……!」
「!」
う〜……本当にこれでいいの?マグ……。
ユーリさんは俺に甘えたい…って……。
マグやメリーちゃんと違って、ユーリさんはもう15歳で、こっちの世界では成人してるんだよ……?
これをわざわざお願いしようとするとは……
「ホントっ!?」
あっれ〜?
なんでそんなお目々キラキラ輝かせて前のめりで聞いてくるの〜?
「は、はい……そんなことで良ければ……」
「うん!いいよ!むしろお願い!」
「わ、わかりました……」
いいの?本当に?
それで緊張取れちゃうの?
「むふん!それなら私、頑張るからね!ちゃんと見ててね!」
「あっはい」
まぁ喜んでるみたいだしいいや。
考えるのを諦めた俺は、メイカさんたちのいる窓際に向かい、メリーちゃんのもとへと…
「マーガレットちゃ〜ん!お〜い〜で〜♡」
「……」
…ふわふわしてるメイカさんの隣に座った。
あんまりほっとくと泣き出しそうで……。
まさかとは思うけど、同時にあり得るとも思ったので仕方なく……。
「…マーガレットちゃん…お水いる?」
「…ありがとうございます……」
ケランさんから、本来メイカさんとフルールさんに渡す予定だったのであろう水をもらう。
その配達予定人たるお2人はと言うと……
「マーガレットちゃ〜ん!私にもあーんってしてぇ〜♡」
「マーガレット、これ美味しいわよ?食べさせてあげるわね?ほら、口開けて?」
この通り水を素直に飲みそうにない状態なので、俺とケランさんで水を飲む。
…はぁ〜…疲れた体に染みるわぁなぁ……。
すっかり忘れてた第一章の登場キャラまとめ……いい感じになってきたので近い内に出そうと思います。
待っていたかもしれない皆さま、もう少しだけお待ちください。
すみません……。




