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101.不思議な魅力…別に能力は上がらない

「マギーちゃ〜ん…って、あらら……」

「あっララさん。お疲れ様です」

「うん、お疲れ様。…なんだかいつにも増してくっつかれてるねぇ……」


リベリアさんとテューレの商業ギルド組(プラス)ピコットさんと別れたところで、ララさんがこっちに近づいてきた。


「さっき商業ギルドの方々が私の頭を撫でたり、私に抱きついたりしてるのを見ていたらくっつきたくなったそうです」


そう答える俺は今、メイカさんとユーリさんに抱きつかれながら頭を撫でられている。

その代わりと言ってはなんだが、俺はユーリさんの尻尾をもふもふさせてもらっている。


…だが…キューティクルが足りないな……。

やはり連日の旅やら迷宮探索やらでロクにお風呂に入ってないんだろう……。

…帰りにクシとか買おうかな……。


「あっ、ちゃんと会えたんだね。待合室で待っててもらったんだけど、中々マギーちゃんが帰ってこないからまた日を改めて、って言ってたんだけど……」

「うっ……!大変遅れて申し訳ございません……」


もうこの状況にも慣れてしまった俺が普通に答えたので、ララさんも気にせず話を続けた。


…そんな待っててもらってたとは……しかもその上で俺は「やる事あるから今は無理」って言ったのか……!

今度会う時はお詫びの品を用意しないと……。


「いいよぉ〜。それで?武器は見つかった?」

「はい。いろいろありましたが、最終的に杖になりました」

「その()()()()が気になるよねぇ、マギーちゃんの場合。また何かに巻き込まれたの?」


いやいや…そんな毎日面倒事に巻き込まれているような言い方……妥当かな、うん。


「とはいえ、今日はそんな面倒事にはあってませんよ」

「えぇ〜?ほんとかなぁ?まぁその辺のお話は後でね。私からもお話があるからこっちに来て欲しいんだけど……大丈夫?ですか?」


大丈夫かと問われれば、俺は別に良いのだが……。


「メイカさん、ユーリさん」

「やだぁ〜、もうちょっと〜」

「わ、私も〜……」


んも〜…メイカさんは確信犯、ユーリさんは恥ずかしいならやめりゃ良いのに……。

まぁそんな2人を拒まずに好きにさせてる俺が言うこっちゃ無いけどさぁ。


「だって今日のマーガレットちゃん凄かったのよぉ?モニカちゃんをギューってしたと思ったら、何かお話ししてそのまま寝かせちゃったんだから!」

「えっ!?なんですかそれ!?気になります!」


あっやばい。

ララさんが興味持っちゃった。


「しかもマーガレットちゃん、魔法の才能もあるのよ!可愛くて優しくてかっこよくておまけに強いだなんて…もう最高っ!!」

「メイカさん、恥ずかしいのでもうやめてください」


そんな持ち上げられても困るというか……マグの評価が上がるのは良いが、あんまり上がりすぎても困るというか……。


よく人気者が殺害予告出されたり、イベントで問題起こされたりと妨害行為やら名誉毀損(めいよきそん)やらを受けたっていうニュースを見たからなぁ……。


ほんっと怖い……。


「駄目よ!マーガレットちゃんは良いことをしても隠すクセがあるんだから私が代わりに言わないと!」

「ストレートにありがた迷惑なのでやめてください」


というか良いことっつったってなぁ……。

…そういうのメイカさんたちに隠した覚えが無いんじゃが……なんかしたか?


「ララ姉ぇ〜!ちょっと分かんないことが…あっ!マギーちゃんだ!」

「やっほーチェルシー、助けてチェルシー」

「私もギュッてするぅ!」

「やべぇ増えた」


メイカさんとユーリさんがそれぞれ斜め後ろから抱きついているので、空いてる前面から抱きついてくるチェルシー。


すでに2人抱きついていることで勢いが弱めだった事と、ユーリさんの尻尾がクッションになって衝撃はほぼ伝わってこなかった。


君既婚者だよね?俺のこと知ってるよね?

なんで抱きつくん?

ハルキとコト構えるの嫌なんだけど?

というかいつもそのぐらい加減して欲しいんだけど?


とはいえそれを冒険者ギルドホールで言うわけにもいかないので、俺は仕方なくチェルシーの頭を撫で始める。


「んふ〜…!」

「あっ!良いなぁ〜チェルシーちゃん」

「良いなぁ〜じゃなくてみんな離れてくださいよ」

「じゃあ私も撫でて?」

「わ、私も…!」


なんでみんなそんな撫でられたがるの?


(なんなん?マグの体に撫でられるのそんな気持ちいいの?)

(え?コウスケさんの撫で方が上手いからじゃないですか?)

(そうかな?マグの体が抱き心地いいから、抱きつかれるし撫でられるし撫でてほしいってねだられるんじゃないか?)

(だっ!?こ、こほん……私はそういうコウスケさんの撫で方が優しくてふわふわして気持ちいいからだと思うんですがっ!)

(んっ!?…今日はこのぐらいで勘弁してやろう……)

(ふふふ…許しましょう……)


くっ……マグも中々言うようになったではないか……!


でもなぁ…マグの体だし、抱き心地良いのは知ってるし、頭撫でるのも楽しいし、撫でられるのも…………おん?


あれ……?

俺…マグに撫でられたことあったっけ……?


ちょっと待て…ちょっと待て……!?

よ〜く思い出すのだ……!


う〜〜〜〜〜ん………無いな。

抱きしめたり抱きしめられたり、アベック座り(片方が足開いて座って、その間にもう片方が座って抱きしめられるというアレ。今考えた)とかしたし、キスだって……ふ、触れるだけの軽いやつだけどちゃんとしたし……。


だのに他のみんなはマグ(の体に入った俺)に撫でられたことがあるのに、俺は無い……!


なん…という…ことだ……!

俺もマグに撫でられたい……!


…いやダメだっ!

甘えたら際限なく甘えてしまいそうだ……!


マグは甘えてほしいって言ってくれてるけど、なまじ同人の世界を知っているせいでその先のことを考えてしまう俺の頭から理性が消えないようにしないと……!


異世界とはいえ…いや、だからこそやって良い事と悪い事はある……!


自分勝手に迫って相手に嫌な思いをさせるわけにはいかない……。

……単純にヘタレなだけとも言えるけど……。


あぁ!でも確か、優柔不断なのもマイナスポイントなんだっけ……?

確かに「早よしろや!」って思うとイライラするもんなぁ……!


…じゃあこうやって考え込んでるのもダメなんじゃないか!?

でも下手なことやって嫌われるのも……!


うぅ〜ん……!?

世の男性諸君はいったいどうしてんだ……!?


「マギーちゃん?そんなに難しい顔してどうしたの?」

「あっ!いえっ…!えーっと……!」


俺が考え込んでしまったせいでなでなでが中断されたチェルシーが、俺の顔を覗き込んで来たことで、俺の意識はこちらに戻ってきた。


いかんいかん…またあれこれ考え始めちゃった……。

だって心配なんだもん……!


………どうせなら聞いてみるか……?


「ねぇチェルシー……」

「うん?」

「…優柔不断な人ってどう思う……?」

「えっ?う〜ん……」


って何聞いてんだ俺はっ!?

うっかり聞いちまったけど、これもあんまり褒められたことじゃないんじゃないか!?

いや、そう考えるのがもうダメ!?


あぁぁ〜!!ダメだぁ〜!!

思考がループし始めてるぅ〜!!


後悔とかでまた考え始めてしまった俺に、チェルシーから答えが返ってきて、俺はまたこちらに引き戻された。


「…あたしは良いと思うな。だって、それだけ考えてくれたってことでしょ?そりゃあ大事な場面で選べなくてダメでした〜っていうのはアレだけど、精一杯考えてくれる人がいるっていうのはとても素敵なことだと思うな」

「……なるほど……」


チェルシーは優しい口調で俺にそう言ってくれる。


…もしかして俺個人の質問だってバレてる……?


いやそりゃそうか。

だって基本的に俺だもん。

そりゃ俺の質問として受け取られるわ。


はっず!


1人静かに恥ずかしくなっている俺に、今度はメイカさんが話し始めた。


「う〜ん…私はもうちょっとがっついてくれる方が良いなぁ……もっと積極的にきてほしいというか〜…奥手なのも可愛いんだけど、大事にされすぎるのもつまんないって思うのよね〜」

「つ、つまんない……」


た、確かに……あまりにも奥手だと、相手は飽きちゃうかも……!?

やっぱりもっと自分の欲に忠実にいかないとなのか……!?


そんな俺に次はユーリさんが自分の意見を口にする。


「私は良いと思うよ?確かに大事なときははっきり言ってほしいけど、それ以外だったら別に良いと思うし…何より可愛いって感じるもん」

「か、可愛い…ですか……?」

「うん!物凄い悩んでぇ…もじもじしてるのを支えてあげたいっていうか〜…私が大体やるから甘えさせてくれるだけで良いっていうか〜…♡」

「ユーリちゃん…ダメな男に引っかかりそう……」

「えぇっ!?なんでですかっ!?」


いやぁ…俺もそう思う……。

ユーリさんダメ男製造機になりそうというか、もうその片鱗が出てるというか……。


「あはは…まぁとにかく真面目なお話、そろそろマギーちゃんを解放していただけませんか?」

「そうね…ごめんなさい。それじゃあ私たちは向こうで待ってるから、お仕事頑張ってね」


ララさんが止め、メイカさんの言葉をきっかけにユーリさんとチェルシーも俺から離れ…あっチェルシーは手を繋いだ。


「は〜い、いってきま〜す」


俺はチェルシーと手を繋ぎながらララさんに着いていって受付カウンターの裏に行く。


「それじゃあまずは改めて…おかえり、マギーちゃん」

「おかえり〜!」

「はい、ただいま戻りました」


改めて挨拶を交わした後、チェルシーが早速俺に聞いてきた。


「ねぇねぇマギーちゃん!武器は何にしたの?」

「メインは魔杖、サブで短剣だよ」

「おぉ〜、魔法使いだ〜!」

「マギーちゃんは魔法を使えるの?」

「はい。私の魔力は子供のもんじゃないって言われました」

「「何やったの……?」」


そんな呆れた目で見ないでくれ……。

俺は普通に魔法を使っただけだ……。


俺は今日あったことを2人に話しながら、仕事を手伝った。


ある程度話し終え、仕事も落ち着いた頃に、ララさんから明日の予定を聞かれた。


「マギーちゃん、明日はマギーちゃんお休みだけど、早速闘技場の練習室を使ってみる?」

「はい、空いてるのなら是非使いたいです」

「うん、大丈夫だよ。誰かにコーチは頼んだ?」

「メイカさんに頼もうかと思っています。他の方はちょっと…私が……ね?」

「あぁ……」


魔法使いの冒険者は何人か知ってるのだが、メイカさんなら俺のことも知ってるということもあり、その辺を踏まえると適任者がメイカさんしかいないのだ。


「それならチェルシーちゃんも適任者かな」

「チェルシーが?」

「うん、あたし闇属性と無属性が使えるの。だから魔法のことなら教えられるよ!」

「そうなんだ。あ、でも私だけじゃなくチェルシーまで引き抜いちゃったらお仕事の方が……」


ただでさえ人手が足りないのに大丈夫なの?

そう言おうとした俺の口に人差し指を当て、ララさんはセリフを中断させる。


…この人らは人妻の自覚が無いんじゃないか?

なんでそう男性がドキッとするようなことすんの?


「大丈夫だよ。それぐらい慣れっこだから♪それよりも私の可愛い妹をいじめた子と戦ってくれる子を応援する方が大事だよ♪」

「ララ姉……えへへ…ララ姉ありがとう!」


ララさんの言葉に喜んだチェルシーがララさんに飛びつく。

ララさんはそれを軽く受け止めると、チェルシーの頭を撫でる。


良い話だなぁ……。


「あ、そうだ」


俺が2人を微笑ましく眺めていると、ララさんが何かを思い出したようだ。


「マギーちゃん。今度魔術ギルドに書類を届けるときマギーちゃんに任せて良い?」

「えっ?あっはい。大丈夫ですよ」


突然の仕事の話に動揺しつつも答える。


魔術ギルドかぁ……今言うって事は、魔法について何かしらあるのかなぁ……?


「魔術ギルドって何があるんですか?」

「魔術ギルドには図書館があるんだよ」

「(図書館!)」

「ということは……!」

「うん、魔導書とかも置いてあるよ」

「(おぉぉ!!)」


魔導書!

いや、魔導書も見たいけど……それよりも!


(この世界のいろんな本!)

(やったぁ!図書館♪図書館♫)


楽しみだねぇ!


「楽しそうだね、マギーちゃん」

「はい!…あっ…こほん……」


いかん…はしゃぎすぎた……。

恥ずかしい……。


「マギーちゃん目がキラキラしてて可愛いぃ!」

「チェルシー…ちょっと勘弁して……」


そんなニコニコした顔で見んといて……!

恥ずいから……!


「ふふふ…それでね?その図書館は誰が入っても良いんだけど、さすがに貴重な本まで誰でも読めるわけじゃないの」

「あっ、もしかして…ランク分けされてるんですか?」

「当たり♪Fランクまでは誰でも見れるようになってるから、その辺りだと……初級編の魔導書ぐらいまでだね」

「しょ、初級編……」

(ってあれですよね……)

(…ジーガとかいう愚痴愚痴親父の本……)

(…ジーガさんって男の人なんですかね……?)

(知らぬ……)


しっかし初級編かぁ……あんまり期待出来そうに無いなぁ……。


「それとマギーちゃん。はい、これ」

「?これは?」


そう言われてララさんが手渡してきたのは3枚の銀貨。

俺はなんでこれが渡されたのか分からなかったので、ララさんに聞いた。


「《ダンジョンマスターの相談役》としてのお給料だよ」

「えっ、いや、確かにそのお仕事はありましたけど……」


相談に乗った覚えが無いというか……


「その顔は納得してないね?」

「まぁ…はい。まるで相談に乗った覚えが無いので……」

「良いんだよ。ごしゅじ…こほん。あの人の話し相手になってくれるだけで。…私たちじゃ、あの人のお話を理解できないことが多いから……」

「ララさん……」


それは……確かに……。

今のところ向こうの話が出来るのは俺とハルキだけ。


俺もハルキも話せる相手がいるのは嬉しい。

だから盛り上がるのだが、周りの人は分からない。


しかもララさんもチェルシーも、リンゼさんだってハルキのお嫁さんなのだ。

分からない話で盛り上がる夫を見てるのは、どこか思うところがあるのだろう……。


(…私、ララさんの気持ち分かります……)

(マグ……)

(私も…コウスケさんがハルキさんと楽しそうにおしゃべりしてるのは嬉しいんです。でも……とっても寂しくもあるんです……)

(ごめん……)


そうだ。マグだって同じような立場なのだ……。


(いえ、嬉しいのは本当ですから……だから…その……コウスケさんの世界のこと…少しずつでもいいので、教えてくれませんか?)

(!…うん、もちろん!)


いつかもそんなことを考えていた気がする。

俺としたことが、すっかり失念してしまっていた。


あぁ、そうだ。


「…それじゃあ、たまに私が向こうのお話をしますよ」

「「!」」


ララさんたちにも知ってもらおう。

そしてハルキを驚かせてやろう。


「とはいえ、いっぱいあるので話が合うまで時間が掛かるかもですが」

「全然全然!それぐらい大丈夫だよ!」

「うん!マギーちゃん!ありがとう!」


良かった。

喜んでくれたみたいだ。


(マグにはもっと色々教えてあげるね)

(んふ〜♫ちゃんと私を特別扱いしてくれるんですね♪)

(そりゃあ婚約者ですから)

(〜〜♡)


あぁ…今日の夜はいろいろありそうだな!

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