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100.モデル依頼…とモデル雑誌

祝100話!

ご愛読してくださった皆様に感謝を!

無事にユーリさんの武器も選び、今度はきっちりと代金を払い(ユーリさんばかり出費が(かさ)むのは申し訳ないので、みんなでカンパした)鍛治ギルドから冒険者ギルドに帰って来た。


お詫びとしてもらった杖は、練習用の杖と短剣と共にバッグに入れてある。

あの高価そうな杖もCランク以内だったようで安心した。


…あんな立派なもん背中に提げて街を歩く子供とか……絶対面倒事に巻き込まれるやーつだし。


兎にも角にも、メイカさんたちと一緒に冒険者ギルドに戻ってきたときにはすでに3時半ほど。


う〜ん…長居しすぎたか……。

ララさんに怒られないといいなぁ……。

怒鳴られはしないだろうけど……だからこそ怖い……。


俺は少し緊張しつつもギルドへと入る。


「それじゃあ私はララさん…上司に連絡して来ますね」

「うん!私たちはここにいるから、終わったら……って、あら?」


メイカさんに一言伝えてからカウンターに向かおうとしたのだが、そのメイカさんが何かを見つけたようで声を上げた。


どうしたんだろう……?

ん……?誰かこっちに向かって来てる……?


「あ、あの!マーガレットちゃんでしょうか!?」


そう俺に話しかけて来たのは、クリーム色のボブカットの女性だった。

女性は手にメモを持っており、興奮した様子で俺のことを見つめてきた。


いや誰?怖っ。

着てる服はギルドの制服だけど……あの色は知らないな……。


「えぇと……」

「ちょっとあなた。いきなり来て名乗りもしないなんて、失礼じゃない?」

「あっ!?す、すみませんっ!つい興奮してしまって……!」


女性は慌てて姿勢を正すと、俺たちに向かって自己紹介をし始めた。


「こほん…私は《テューレ》と言います。えっと、商業ギルドに入ったばっかりの新人ですが、よろしくお願いします!」


何をよろしくすればいいのかは分からないが、彼女が素直に名乗ってくれたのだから、俺も返さなければ。


「テューレさんですね。改めまして、マーガレットです。こちらこそよろしくお願いします」

「は、はい!…ふわぁ…!本当にしっかりした子だぁ……!」


そういうことは本人の前で呟かないもんだよテューレさん。


まぁいいや。


「それで、テューレさんは私に何かご用事でしょうか?」

「うん!…じゃなくて…はい!」

「あっ、自分の楽な方で良いですよ。その方がこちらも気楽なので」

「は、はひ!で、でもその…それだと先輩に怒られちゃうし……!」

「私の意向に沿っているんですから、怒られる(いわ)れは無いですよ」

「そ、それは確かに……」


…自分から言っといてあれだけど、チョロくないこの子?


「え、えと、じゃあその…マーガレットちゃん……!」

「はい」

「こ、これでいいかな……!?」

「はい、良いと思います」

「そ、そっか……!」


ていうか最初からちゃん付けだったじゃん。

危ないねぇ……。

俺が気難しい性格だったら、それだけで怒られたかもしれないよ?


そんなめんど…マナーとかに厳しい感じの人間じゃなくて良かったね。


「では改めて、テューレさんのご用事は?」

「うん!えっとね…これの件でお願いがあって来たの!」

「!これって……!」

「あっ!この前の……!」


急に饒舌になったテューレさんが差し出したのは1冊の本だった。

その本の表紙には、真っ白いドレスに花のカチューシャを着けた黄色い髪の少女…マーガレットが描かれていた。


一昨日ユーリさんと一緒に、ローズさんのお店でモデルのアルバイトをしたときの転写物だ。


「わぁぁ!マーガレットちゃん可愛いぃぃ!!何これ何これ!?どうしたの!?」

「ほぉ…!すごく似合ってるな……!」

「えぇ…!」


隣で見ていたメイカさんのテンションがはちゃめちゃ上がる。

そんなメイカさんの問いに、俺は一昨日のことを話そうとしたところで、ここに近づいて来る人影を見つけた。


「テューレ、急に居なくなってどうしたの…ってあら?」

「テューレさん、ボクの本を勝手に持ってかないで欲しいっス…って、マーガレットちゃんじゃないっスか!」

「ピコットさん!一昨日ぶりですね!」

「一昨日ぶりっスぅ!ユーリさんも一昨日ぶりっスね!」

「はい、一昨日ぶりです!」

「えっ!?あ、ほ、ホントだ!ユーリさんもいるぅ!?」


やって来たのはピコットさんと、知らない女性。

女性はテューレさんと同じ制服を着ている。


ふむ……多分上司かな?


それはそれとしてテューレさん……今気づいたの……?遅くない……?


「こほん…そちらの方は初めまして…ですよね?」

「はい、初めまして。私は商業ギルド所属の《リベリア》と申します」

「リベリアさんですか。私はマーガレットと申します。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします、マーガレットさん。そちらの本はマーガレットさんに渡すための物で…こちらがユーリさんに渡す分の見本誌です。どうぞ」

「ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます…!」


俺が落ち着いて、ユーリさんがやや気恥ずかしそうに本を受け取る。


その様子を見ていたテューレさんが一言呟いた。


「おぉ…大人の会話ですぅ……!」

「…ウチの新入りが申し訳ありません……」

「いえ…元気があって良いと思いますよ…?」


フォローなんだかなんなんだか分からん相槌を入れつつ、俺はそのままリベリアさんとピコットさんにさっきの話を切り出すことにした。


ちなみにテューレさんはメイカさんたちに本を見せて一緒に盛り上がり始めた。


あんた仕事どうした。


「えっと…あの本って、やっぱりこの間転写したものですよね?」

「そうっスよ!厳密には、ローズさんところと、もう2、3軒ほどのお店の転写絵のまとめっスけどね」

「ピコットさんには、我々商業ギルドで本の製作を依頼していただいてるのです」

「へぇ〜…ということは、他にも本を出してたり?」


例えば「魅惑のボディ 冒険者編」っていうグラビア雑誌とか。


「やぁ〜…まぁ出してるっスけど……まだその本で5冊目なんスよぉ…!」

「へぇ、5冊も!」

「はい。ピコットさんの絵は、まるで本物のようだと好評でして、我々もピコットさんにはとてもお世話になっております」

「そんなお世話だなんて…!ボクの方があれこれ良くしてもらってるというか……!」

「そんなに謙遜しなくてもよろしいのに……。マーガレットさんはピコットさんの絵をご覧になったことはございますか?」

「はい、私たちの絵を描いてもらったときに見せてもらいました。私も、もっと胸を張っても良い出来だと思います!」

「マ、マーガレットちゃんまで……!もう!おだてても何も出ないっスよ!(なでなで)」


ピコットさんが顔を赤くして謙遜しながら俺の頭を撫でてくる。


…何故照れ隠しに俺の頭を撫でるのか。

別に良いけどさ。


「それで、今日はどのようなご用件でしょうか?」

「はい。実は、マーガレットさんにお願いしたいことがあって、今回参ったしだいです」

「私に?」


んー…なんだろう?


(さっきの本に、ピコットさん…そして商業ギルドからのお願い……もしかして、モデルをまたして欲しい、じゃないですか?)

(ん、なるほど。その線が濃厚かも。冴えてるねぇマグ)

(えへへ…)


マグの予想はモデルの依頼。俺もこれだと思う。


そしてリベリアさんが答え合わせをする。


「マーガレットさんに、商業ギルドから正式にモデルの依頼をしたいのです」

「ビンゴ」

「えっ?」

「いえ、なんでも」


(マグ大正解。おめでとう!)

(えへぇ〜…ありがとうございまぁす!)


今日の夜に、何かご褒美をあげようかな?


まぁそれは今は置いといて、リベリアさんとのお話に戻ろう。


「それでモデルというと、また服の紹介とか…ですか?」

「いえ、言葉が足りなかったですね。我々商業ギルドは、正式にマーガレットさんを商業ギルド専属モデルとして雇いたいのです」

「せ、専属っ!?」

「えっ!マーガレットちゃんモデルデビューするの!?」


うおっ!メイカさん!

そっちで本読んでたんじゃないの!?


ってか…専属!?


(専属って…マジか……!)

(?コウスケさん、専属になると何かあるんですか?)

(ん…いや、俺もそこまで詳しいわけじゃないけど……確か専属契約すると、その契約した会社…えーっと…職場だな。その職場の名前を背負って働く代わりに、いろんな支援をしてもらえるんだ)

(へぇ…その職場で頑張ることによって、そこの名前が売れて有名になる…ということですか?)

(そ。ほいで、有名になればその分仕事も回ってくるから、契約者は食うに困らないし、職場は社会からの信頼を得られる。どっちも美味しいってこと…だと思う、多分)


正直全く分からないが、とりあえず俺の予想はこんな感じだ。

リベリアさんに直接聞けばいいんだが……


「…お話はありがたいのですが、私にはやる事とやりたい事が山ほどあって…これ以上用件を増やすのはちょっと……」

「「えぇ〜!?」」


断るつもりなのに、あんまり深く話をしてもらうのは申し訳ない……。


だからメイカさんとテューレさんはそんな残念そうな顔しないの。


「えっと…差し支えなければ、その用件というのを教えてはもらえませんか?」

「今やんなきゃなのは訓練ですね」

「えっ…く、訓練ですか……?確かマーガレットさんは冒険者ではなかったはずですが……」

「そうなのですが、ちょっと友達のために試合をすることになりまして……そのために体を鍛えないとなんです」


面倒ってわけじゃないけど、やっぱり大変なんだよなぁ……。


今日の仕事は軽めなものだったし、そのあとも武器を選んだりご飯を食べたりだったから、今日のところはまだ大丈夫だけど、正直あの特訓をやった後にいつも通りの仕事はキツい。


ただでさえ眠気に襲われる時間帯があるのに、疲れてたらその時間がもっと増えるかも……。


それはヤバい。

何より俺らはトラブル体質らしいから、試合までの間にも絶対何か起きるはずだ。


それが回避不能なもんだった場合……また仕事が増える……。


だからリベリアさんには悪いが、避けられそうなものは避けさせてもらいます!


「友達のために……?どういうことですか……?」


まぁ別に知られて困ることでもなし、他の冒険者に聞けば知られることでもあるしで、俺はリベリアさんとピコットさん、それとテューレさんに昨日のことを話した。


「なるほど…そんな事が……」

「それは大変っスねぇ……」

「マーガレットちゃんえらいねぇ!(なでなで)」


事を説明すると、テューレさんが俺の頭を撫でながら褒めてくれた。


俺の頭はフリーなでなでポイントでは無いよ?

まぁ優しくしてくれるなら構わないけどさ。


「そういうわけなので、残念ですがモデルの件は……」

「う〜ん…そうですか……そういう事ならあまり無理強いも出来ませんね……」

「マーガレットちゃんが来てくれたら、みんなも喜ぶんだけどなぁ……」

「みんなって…商業ギルドの皆さんが?」


会ったこと無いのに。


「そうそうそうなの!前から冒険者ギルドに新しく「可愛くて礼儀正しい子」が入ったって話題になってたんだけど、マーガレットちゃんの転写絵を見たら、会ってみたいって人がいっぱい出てきたんだよ!」

「えぇ……ホントですか……?」


テンション高めのテューレさんの言葉に「マジかよ……」と思った俺はリベリアさんに尋ねる。


「はい。それと、《戦慄の天使》と呼ばれていることも知っておりますよ」

「その名前は忘れていただけるとありがたいのですが」


なんで毎日のようにその名を聞くのかねぇ……?

どうにか《冒険者ギルドの天使》ぐらいに……いや待てよ?

チェルシーとコンビで《ギルドフェアリー》とかどうだろう……?

絶対人気出ると思うんだけど。


「だからおねがぁい!ヒマなときでいいからぁ!その試合終わった後でもいいからぁ!」

「ぬあぁぁぁ……!揺らさないでぇぇ……!」


テューレさんに揺らされながらも、俺はマグと相談する。


(…終わった後なら確かに良いかもなんだけどさぁ……)

(そうですねぇ……またいろんな服を見ることが出来るのは嬉しいですね)

(そうなんだよねぇ…でもなぁ……)

(でも?)

(まぁた一悶着ありそうなのがなぁ……)

(…まぁ、確かに……今のところ訪れたギルド…全部何かしらありましたからね……)


ギルドが悪いってよりは、特定の個人が悪いって感じだけどさぁ……。

そのあとちゃんと謝ってもらってるし、オーバー気味な謝礼も貰ってるからまだ良いんだけど……。


…その謝礼にも気を揉んでる現状だと、どっちに転んでも心労は避けられないんだろうなぁ……。


(じゃあやっぱりこのまま断るんですか?)

(んー…それで冒険者ギルド業に専念できるようにするのも良いけど……マグはどうしたい?)

(そうですね……私は、その…少し気になるので……試合が終わった後にやってみてもいいかなぁ…って思います……)


…ん〜…もじもじしてるマグの姿が容易に想像できるな。可愛い。


(じゃあとりあえず、今は無理だけどある程度落ち着いたら行ってみる、でどうかな?)

(…!はい、それでお願いします!)

(ん、了解)


俺は意識を戻すと、いつの間にか肩持ちガクガクから、再び頭なでなでにシフトしていたテューレさんに声をかける。


「テューレさん」

「う?なぁに?」

「さっきのモデルの件ですが…私の用事が終わった後でもよろしければ考えます」

「えっ!?ホントに!?」

「はい。とはいえ、何をやるかは分からないので、お話を聞いてから決める、ということでよろしいですか?」

「うんうん!いいよいいよ!ねっ先輩!」


ホントにいいのそれ?大丈夫?

そういうの言質取られるから気を付けないとだよ?


「そうね…はい、分かりました。それでその試合というのはいつ頃なのですか?」


あ、いいんだ。


俺はなでなでからハグに移行したテューレさんを気にしないようにしつつ、リベリアさんの問いに答える。


「来週の日曜日です」

「ふむ…もしかして講習会の日ですか?」


お、知ってるのなら話が早い。


「はい、その講習会の模擬戦の時間にやることになってます」

「なるほど…分かりました。では、そう上にそう伝えさせてもらいますね」


良かった。

とりあえずはこれで丸く収まったかな。

と…ちゃんと謝っておかないと……。


「はい。…申し訳ございません、わざわざこうして足を運んで頂いたのに……」

「いえ、今後の約束を取り付けられただけでも上々ですので。…それでその……私事(わたくしごと)で非常に恐縮なのですが……」


俺の謝罪を受け取ってくれたリベリアさんだが、俺のことを見ながらもじもじと何かを言おうとしている。


「?はい、なんでしょうか?」

「え、えっと……こほん」


俺が首をかしげつつ尋ねると、リベリアさんは覚悟を決めたようで、1つ咳払いをしてから口を開いた。


「…あの!わ、私にも頭を撫でさせてもらえませんかっ!?」

「……どうぞ」

「ありがとうございますっ!」


思ったより簡単なお願いだったので驚いたが、俺がOKを出すとリベリアさんはお礼を口にして頭を優しく撫で始めた。


(…なんでこんなに皆さん私の頭を撫でるんでしょう……?)

(ん〜……可愛いからだろうなぁ……俺だってそうだし)

(…そう言ってくれるのは嬉しいんですけど……なんというか…コウスケさんにも何かあると思うんですよねぇ……)

(何かって?)

(う〜ん……甘えさせたい感じ…ですかね……?私もそうなので)

(…甘えさせたい……?)

(はい。コウスケさんいつもしっかりしてるので……甘えて欲しいなって…思うんですよねぇ……)

(えぇ……)

(…今日の夜が楽しみですね?)

(……俺の心が持つぐらいにしてくれる……?)

(うふふ…♡それはちょっと…その時次第…ですかね?)


…やべぇ……。

今日の夜は気を引き締めねぇと、理性が持たないかもしれない……。


俺がマグと話している間もリベリアさんは嬉しそうに頭を撫で続け、テューレさんは後ろからギューっとしていた。

100話記念のお話とか良いなって思ったけど、何も思い浮かばなかったの巻。


…これからも趣味全開の小説を書いていこうと思います、はい。

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