体力測定
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日曜日も明け、翌、月曜日。
クラスでガヤガヤやっていると、上納先生がガラリと戸を開けて入って来た。
一瞬で静まり返る教室。
そう、何と今日は体力測定がある。
皆(特に男子)緊張の面持ちで先生を見つめている。
先生もそれに気づいているのであろう、頰がピクピクと動き、笑うのをこらえているのが分かる。
別に足が速いからモテるとか言うのは中学までの話だと思うのだが……。
そう思っていたが、そういえばここは普通の学校とは違うのだと思い出す。
実力至上主義であるこの学校は、身体能力もポイントの一つであり、重要な役割を担っているのだ。
俺は入学初日からまだ一度も自分の数値を見た事は無いのだが。
「えー今日は前知らせた通り体力測定がある。もちろん、この結果もお前たちの数値に関わってくるから、手を抜く、などとは考えないように」
何故だろう、先生は一瞬俺を睨んだ気がした。
ああ、もしかして入試のテストについて根に持っているのだろうか……。
いや、正直悪かったとは思うよ……うん……。俺だってまさかと思ったし。
「特に、他の連絡事項はないので、これでSHRは終わりにする。それと、これは個人的な理由だが、晒はこの後私の所へ来るように。以上だ」
ええ……俺何かしたかな……。
と思ったが、多分由紀の事で間違い無いだろう。
そうであって欲しい。
「晒くん、何かしたの……?」
お隣の優しい美扇はわざわざこんな俺に声をかけてくれた。
有難や……。
「いや、特に何も……」
「そっか。それじゃ、気を付けてね〜」
「うん、ありがとう」
俺はその場を離れ、上納先生の所へ向かった。
すると、何故か上納先生はご立腹の様だ。
理由は……聞いて見なければ分からない。ああ、分からないとも。
「……上納先生。どうされましたか」
「いいからちょっとこっち来い」
怖い。すごく怖い。
今からリンチにされるのではないだろうかと思うぐらい怖い。
側から見たら今の俺は蛇に噛まれそうな兎に見えるだろう……。
先生について行くと、人気の少ない廊下に辿り着いた。
まさか本当にリンチ……。
「晒。本当の事を言ってくれ。これはどう言う事だ……?」
そう言って見せてきたのは入試のテスト用紙。
全部で五枚のそれらの斜め上には全てに一とゼロが二つ。
やっぱりか。
「すみません。今度からは手を抜く様にします」
彼女もあくまで教師だ。自分が生徒を落とそうとうんうん唸って、頑張って作ったテストを、こうも簡単に満点なんてとったら気に食わないだろう。
「は?お前は何を言ってる?」
「……はい?」
あれ、違ったっぽいぞ。
じゃあ何をそこまで怒っているのか……。自然に首が傾いてしまう。
「何だその顔は。手を抜くとかそうじゃなくて、カンニングしたんじゃないのかと聞いているんだ!」
「……え?」
いや、試験監督も居たじゃないですか。一体どうやって俺がカンニングしたと思ってるんだ?この人……。
「とぼけても無駄だぞ……!こう、私達の思いもよらない方法でカンニングしたんだろう!!」
「え、壁から誰かが答え言うとかですか?」
「そんなこと出来るわけないだろう!!」
「はい。俺もそう思います」
「じゃあ何故言った……」
「いやー面白いかな、と」
「何も面白くないわ!!!」
廊下中に上納先生の怒鳴り声が響く。
本当に人がいなくて良かった……。見られていたらそれだけで俺の人生終わり……。
「何より証拠もあるんだぞ」
「へぇ、何ですか?」
そう言うと、上納先生はそれぞれのテスト用紙の最後の問題を指す。
もちろんそこにはくっきりと赤い丸が付いている。少々荒々しげではあるが……。
「それがどうかしたんですか?」
「ここの問題は例年、中学じゃ習わない問題が出る様になっている。何なら今年は大学の問題もだしたんだ!」
「えぇ、そんなんありですか……」
「ふん。ようやく認め……」
「結構簡単だったんですけど……」
「な!?まだ認めないのか!?この〜!!」
なんだか先生が癇癪を起こし始めた。これは危ない。
「でもつまり、それの解説ができたらいいって事ですよね?」
「まぁ、本当に自力で解いたのなら……」
「じゃあ、今からやりましょう。問題なら覚えてます」
そう言ってテスト用紙を一枚いただき、その裏面に図をスラスラと描いていく。
その後、十分程解説を続けた俺はペンを置き、先生の方を見る。
先生は解説の途中から段々と眉間に皺が寄っていたためか、今ではもう鬼の形相である。
少し間を置くと、先生ははぁ……と溜息を吐いた。
「今回は……今回だけは見逃してやる。だが、これで全ての疑惑が晴れた訳ではないからな。いいな!」
「はい……」
「そう、それと矢嶋の件だが、あいつは一ヶ月の停学処分となった」
「一ヶ月ですか……」
「ああ。これでも頑張ったんだ。もう矢嶋先生がうるさくてうるさくて……あぁっ!なんか思い出したらまた腹が立って来た!!」
結局、先生は終始苛立たしげにして去っていった。
矢嶋の件は、ひとまず良かったが……。
参ったな。今度からはどこか手を抜かなくては……。
教室に戻ると、もうほとんどの生徒はいなくなっており、皆、更衣室に移動したのだろう。
俺もせっせと体操着を持ってクラスを出ようとしたその時、美扇が声を掛けてきた。
「晒くん、大丈夫だった?」
「ああ。大した事ないよ」
「そっか〜。上納先生って怖そうだから、心配したんだよ〜?」
「んー怖いっていうか、(顔が)面白いって感じだけど……?」
「え、面白い?どこが??」
「色々?」
「……なんか晒くんって不思議だよね〜」
「そうかも」
「なんで肯定!?ぷふっ、やっぱ不思議〜!」
すると、後ろの方から美扇を呼ぶ声が聞こえてくる。
「ごめ、もう行くね!じゃね〜!!」
勢いよく手をブンブン振りながら美扇は遠ざかっていった。
俺もクラスを出て、更衣室に向かった。
〜〜〜〜〜〜〜
体力測定は、午前中を全部使って長距離、短距離、ハンドボール投げ、握力etc…と続いていく。
男子の皆様は気合満点で、準備運動を行なっている。女子も各々、友達と喋りながらも準備運動をこなしていく。
俺も一人ポツンと準備運動をしていると、後方から女子の声が聞こえてきた。
「見て、あの陰キャやっぱボッチじゃん」
「ねぇ〜。でも海斗くんと友達なのは羨ましいなぁ〜」
「それな〜。でもどうせ、海斗くんの情けで付き合ってくれてるだけでしょ」
やっぱり悪口を言われているっぽいな。
カイが情けで付き合ってくれてる、か。もしかしたらそうなのかもしれないが、カイはそういう奴じゃない。だから俺はカイに信頼を置いているんだ。
ただ流石に耳が痛い。
俺はそっとその場を離れた。
「……でもさ、あいつ無駄にスタイルいいのムカつくよね〜」
「そこがあるから海斗くんと並んでてもあんま違和感ないしね」
「はぁあ。あれで明るくて顔が良くて、勉強もできて、スポーツ万能だったらな〜」
「なに幻想言ってんのよ。それだったら海斗くんがいるでしょ」
「それもそうだね〜」
体力測定は順調に進んだ。と思う。
「な、なんだよあいつ。足速くね!?」
「い、陰キャのくせに……」
ダメだ。
結構手は抜いた気がするんだけど、そうもいかなかったらしい。
短距離走と長距離走では三位を取ってしまった。出来れば真ん中を目指していたんだが……。
一位を取らなかっただけマシだと考えよう。
どっちにしろ、これで周りのレベルは分かった。
そのおかげか、その他の測定ではボチボチを維持。
平均的には真ん中よりちょっと上、という事になった。
クラスに戻ると、また美扇が話しかけてきた。
「いや〜晒くん驚いたよ!足速かったんだ〜!」
「いや、俺もびっくりしたよ」
「え?でも中学とかでもやったよね?」
「やっ……たよ。うん、やった」
「え、何その間」
いや、正直ちゃんと測ったことはないのだ。
病欠とか、去年は撮影とかでことごとく潰れた。
だから最後に測ったのは小学校だ。
と、そんなことを考えていると、横から一人の男子が声を掛けてきた。
もちろん美扇に。
「なあなあ美扇ちゃん!俺はどうだった??」
そう聞いてきたのは短距離、長距離共に一位を取った橋方 一輝だ。
こっちをチラチラ見てドヤ顔してくるのがちょっとウザい。
「うん!凄かったよ〜!!橋方くん中学の時何かやってたの?」
「俺、陸上部だったんだよ〜」
「へぇ〜通りで速いはずだね!」
橋方は鼻の下を伸ばしている。相変わらず、美扇は男女問わず人気者だ。
なんだか横で会話が盛り上がり始めたので、俺は一気に場外に押し出されてしまった。
別にいいけど。
そして俺は安定の机突っ伏しタイム。
俺にライバル視する必要ないと思うんだがな……。
そんなこんなで午後の授業も終わり、すぐに下校となった。
壁からのカンニングボタンは下のお星様になります(?)
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