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彼は取り敢えずピアノが弾きたい

前、五話に引き続き、律と上納先生の会話の所を少し変えております。

矢嶋の処分やいかに……

 翌土曜日には、朝から雑誌の撮影が入っていた。

 カイと一緒にスタジオに向かっていると、不意に見知った人を見かけた。


 それは美扇だった。


 俺達と進行方向は同じなようで、美扇の後を俺達が付いて行っている形になる。


 流石に目的地は違うだろう……と踏んでいたのだが、美扇はあろうことか、俺達と同じスタジオに入って行った。


 俺は呆然としていると、カイに「どうした?」と声をかけられた。

 素直に同じクラスの子が入って行ったと言うと、何やらニヤニヤした顔でこちらを覗き込んできた。


 すんごく嫌な予感がするんだが……。



 スタジオに入った俺は、すぐにマネージャーの倉持さんに捕まった。


「お、さらりくんおはよ〜」

「おはようございます」

「早速で悪いんだけどさ、なんとぉ!映画の指名が入りましたぁ〜っ!!パフパフ!」


 相変わらず元気な人だなぁと思っていると、向こうから美扇が近づいてくるのが見えた。


「げ……」

「え、何どした?ちなみに拒否権はないよ?」

「いやさりげなく酷い事言ってくれますね……。映画の件は構わないんですけど、あの……ちょっと失礼しますねぇー」


 と、回れ右をしたが、時すでに遅く、向こうの美扇に気付かれてしまった。

 仕方ない。今はボサ髪スタイルなんだ。目立って仕方ないだろう。


 ついでに倉持さん。肩、痛いです。そんなに強く掴まないでください。


「あれ……晒くん?こんな所でどうしたの……?」

「いや〜……バイト?」

「なんで疑問形……」

「で、所で新田さんこそどうしてここに?」

「すごい勢いで話題変えたね……。実は私、今日からここでマネージャー見習いを始めるのです!」

「へぇーそりゃすごい」

「絶対思ってないでしょ」


 さてと、話もした所で、控え室へ向かいますか、と。


 やめて倉持さん。どんどん力強くなってきてるって。


「あれ〜美扇ちゃん。律くんとお友達〜?」


 おお、倉持さんにしては呼び方変えてくれるなんて気がきくではないですか。

 あとお友達は無理があるでしょう。こんな奴が?こんなキラッキラな子と?ないない。


「はい!クラス一緒で、席もお隣なんですよ〜」

「へぇ〜そうなの〜!そりゃ良かったねぇ〜!!」


 恐らく倉持さん、わざと友達って聞いたなこりゃ。

 そのいやらしい眼が語ってくれている。


 俺も負けずに、倉持さんを虫けらでも見るように睨みつけると、倉持さんはグリンっと首を百八十度回転させた。


 何だよクソっ……。


「あの、倉持さんそろそろ行かないと間に合わないんですけど……?」

 にっこりとビジネススマイルで言った。

「おおごめんごめん。それじゃよろしくね〜」

「はい。新田さんも、また」

「うんっ!」



 控え室に入ると、カイはもう準備万端のようだった。

 メイクさん、衣装さんがいそいそと準備を始め出し、俺の周りに人が集まってくる。


「律ー。遅かったな」

「うん。ちょっと捕まってて……(色々と)」

「?そうか。そうそう、律。今日の撮影ピアノ使うんだってよ〜」

「!!本当か!?何で!?」

「おぉ〜予想通りの反応頂きました」

「ちょっと律くん動かないで!!」

「あ、すみません」


 メイクさんに怒られてしまった。

 カイめ……。


「で、何でなの?」

「それがさー次のお前の映画、またピアニスト役なんだと。で、その宣伝ってわけ」

「撮影終わったら使わせてもらえるかな……」

「おい、聞いてる?」


 最近周りのごたごたのせいであまりピアノに触れられていなかった。

 そろそろ指が鈍ってきそうだったので丁度良かった。渡りに船である。


「ふふっ…さらりちゃん、今日も可愛いね……」


 何か良からぬ言葉がメイクさんの口から聞こえた気がしたが、気にしない気にしない。


 〜〜〜〜〜〜〜


 撮影が終わった頃。俺はピアノを貸してもらい、少しだけ弾かせてもらう事にした。

 衣装さんから早く着替えるように催促があったので、あまり長居はできないだろう。


 俺がピアノを弾いている途中、来訪者が二人いた。

 一人は美扇。


「あのっ!」

「ん?」

「さ、さささサイン頂けませんかっ!」


 中々に鬼気迫った顔で、色紙とペンをズイッと差し出してきた。

 そういえば、彼女は俺のファンだったか?


「いいよ」

 にっこりビジネススマイルを忘れずに答えてあげると、彼女はばぁ〜っと顔を綻ばせた。

 やっぱり可愛い。


「名前は?」

「み、美扇です。美しいに、扇って書きます……」

「いい名前だね」

 再びビジネススマイル。

「はぐぅっ……」


 顔を真っ赤に染めた彼女は、実に何とも取れない言葉を発した。

 俺は色紙にサインと美扇ちゃんへ、と書くと彼女に渡してやった。


「どうぞ」

「あ、ありがとうございます!!家宝にしますっ!!!」

「ははっ。ありがとう」


 家宝は少しばかり言い過ぎだよ……。


 すると、美扇はもじもじした様子でこちらをチラチラ見てくる。

 どうしたのか不思議に思っていると、彼女は意を決したようにガバッと顔を上げると、


「あのっ!さらりさんって来栖校生

 …なんですか!?」


と言った。

 おぉ、そうきましたか。

 どう答えたものかと考えていると、横から全くいらない助け舟が出された。


「おう。こいつも俺と同じ来栖校生だぜっ!」


 語尾に星がつきそうなそいつは、紛れもなくカイだった。


 何いらないことしてくれてんだか……。


 俺がぶすっとしていると、彼女はさらにあたふたし出した。


「か、かか海斗くん!?」

「?いかにも、海斗ですが……?」

「お前、勝手に入ってくんなよ」

「えぇ〜いいじゃん別に」


 始めから美扇に接触する気満々だったであろう事ぐらいバレバレだ。


「ていうかえっ!?やっぱり来栖校生なんですか!?でも噂しか耳にしないし、誰も姿見た事ないし……」

「こいつ、変装上手だかふぐぐ」


 これ以上いらないことを言われないようカイの口を手で塞いだ。


「お前はさっさと戻ってろよっ!」

「ふぐんぐ、ふぐぐごふぐ!」


 すまん。何言ってるか全然分からん。


「美扇ちゃん」

「は、はい!!」

「この事、学校では内緒ね?」

「はい!!了解ですっ!!」


 それだけ言うとカイを控え室に押し込み、ようやくピアノを弾こうとした時、二人目の来訪者が来た。


「あの〜すんません」

「何です……!!っ」


 そいつは、あの息子の方の矢嶋だった。

 こんな所に何の用なのか……と思っていると、矢嶋から口を開いた。


「来月からここに配属になったんでぇ〜まだまだ下っ端だけどよろしく〜」

「は、はぁ……」


 どこか間延びしたやる気のない声で、矢嶋はそう言った。ここの配属になる、という事はいわゆる出世か。

 だが、よりによって何でこんな奴が……。


「お、さらりってピアノ弾けるんすか?」

 しかもいきなり呼び捨てっ!!

「ま、まぁ」

「へぇ〜。うちの学校に生意気なピアニストがいるんですけどねー」

 生意気なピアニスト、とは十中八九由紀の事だろう。

「俺、一回そいつにピアノでボロボロにされてさぁ、ムカついてたから……前のはすんげぇスカッとしたんすよねぇ……。あ、全く関係ない話すけどw」


 獰猛な表情を浮かべ、矢嶋はそれだけ言い、去っていった。

 まず、俺はこいつがピアノをやっていた事に驚きだ。まあ、飽きてやめてしまったって所だろう。


 それにしても……相変わらずムカつく野郎だ。顔ぶん殴ってやりたい。指が傷つくのはゴメンだけど。


 ただ、動機ははっきりした。

 あまり収穫ではないが。


 さてと、ようやくピアノが弾ける……。


「さらりぃいいいいい!!!早く来んかぁああああ!!!!」


 衣装さんの怒号が飛んで来た。

 あぁ……せっかくのピアノが……。

課題終わってないのにこれを書いてしまった僕は罪です……。


倉持さん力持ちっ☆ボタンは下になります。


少しでも面白い、続きがきになると思っくくださったらブクマの方よろしくお願いしますっ☆

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