何それめんどくさpart2
総合ポイント50pt達成しました!
ありがとうございます!!
追加:ご指摘いただいた矢嶋の所の内容を変えてみました。
今後も、ここおかしいんじゃね?て所がありましたらご指摘のほう、よろしくお願いします。m(_ _)m
翌日。相変わらずクラスの連中が執拗に俺に構って来るので、今日も秘儀、机突っ伏しを決め込んだ。
昨日も風呂場では男どもに捕まり、前よりも多い人数に握手を求められた。
ついでに腹筋タッチも。
ほんとに何なのか。
それに加えて、四津さらりの存在の信憑性が更に高まり、カイの友達=さらりも友達と、謎の式が出来上がってしまい、いつにも増して周りがうるさかった。
そして放課後。
昨日と同じように音楽室に向かうと、由紀は何故か扉の前に佇んでいた。
どうしたのか不思議に思っていると、彼女は顎をクイっと扉の方にやった。
どうやら先客がいるらしい。
俺は音楽室の前で止まり、そっと扉を開けて中を覗いた。
そこでは上級生が音楽室に溜まっていた。
ピアノはまともに弾いていなく、遊びで来ただけの様だ。
「中入らないのか?」
「あなたを待っていたのよ。今から入る」
律儀にも俺を待っていた由紀は扉に手を掛けると、一気にバンッと開いた。
結構やり過ぎだと思うぞ。
それに気付いた上級生達は、鬱陶しそうにこちらに目をやると、
「てめぇら一年だよな?今ここは俺らが使ってんだわ。他当たれ」
と言い放った。
テンプレ過ぎるヤンキー君の脅し文句だ。
ちなみに学年はブレザーのラインの色で分かり、向こうは二年生だと分かる。
しかも全員バッチ付きときた。
こんなやんちゃな芸能人って何なんだ?所詮顔だけの奴らか。
それに比べてカイは顔良し、スポーツ万能の秀才だ。もう逆にこっちが誇らしい。
などと脳内親友褒め大会をしていると、由紀が打って出た。
「先輩方は正規の音楽室の使い方をご存知でない様ですが、そんなぐらいなら私達に貸してくれませんか?」
「はぁ?誰に向かって言ってんの?ここは実力至上主義だぜ?上級生と下級生、ましてやバッチ付き三人とバッチ付き一人じゃ、俺達の方が上に決まってんだろ?」
どうやら実力至上の意味を履き違えている様だ。
上級生、下級生は実力など関係ないし、ここは音楽室だ。音楽での才なら由紀の方が圧倒だろうに。
何よりバッチ自体にはそこまでの影響力は無い。
そこを踏まえて由紀も上級生には食ってかかった。
だが、
「ふっ、お前の事は知ってるぜ。弥生由紀。そっちの地味なやつは知らないがな」
え、俺はあなたの事知ってますけど。
今俺の専属の雑誌の弟分雑誌の更に見習いモデルの方ですよね〜。
「ではどうして、そこを退いてくれないのです?」
「こいつ、実はお前よりもピアノ上手いんだぜ?試してみるか?」
そう言って見えなかった所から、新たに一人が加わった。
なんか、この為だけに脅してきた感じの奴で、終始キョドっている。
「ええ、もちろんいいわよ」
どうやら由紀は乗り気な様だ。
確かに、いくらピアノが上手かったとしても、由紀はそうそう勝てる相手ではない。
由紀よりも上手い演奏とは……実に見ものである。
だが、俺は見逃しはしなかった。
相手の口元に笑みが浮かんでいたことを。
何か嫌な予感がするな。
「じゃあまずこいつからな」
そう言って、命名、キョドり君を椅子に座らせた。
キョドり君は息を整え、演奏を始める。
曲はピアノソナタ第二番。
中々の難曲だ。
今思い出したが、こいつもコンクールの入賞経験のある一人だ。
だが、やはり由紀には及ばない。
どこにああ豪語するだけの素質があったのだろうか。
難なく演奏は終わった。
横の由紀を見ると、やはり余裕の笑みを浮かべている。
「次はお前だ」
「分かってるわよ。よくあの程度の演奏であんな事が言えたわね」
おいおい、由紀さん。いくらなんでもそれは辛辣過ぎやしませんかね……。
ほら、キョドり君がもっとキョドキョドしているではないか……。
仕方ない。適当に声を掛けてあげよう。
「……十分上手かったと思うぞ」
「え、あ、ありがとう……」
何故だろう。心なしかあまり嬉しくなさそう……。
まあ、どこの馬の骨かも知らない奴に褒められてもなぁという感じだろう。
そして今度は由紀が椅子に座った。
由紀は大きく息を吸い込んで深呼吸すると、目を開き鍵盤に手を置く。
演奏が始まると、周りの空気がガラリと変わる。
そのまま順調に進み、中盤に差し掛かった時、リーダー格のあの男が動いた。
素早い動きでピアノの横に移動すると、鍵盤の蓋を持ち、それを一気にーーー
由紀の指に落とした。
間一髪で直撃は免れたものの、その勢いのまま椅子から落ちてしまった。
その時、右手の指が床に叩きつけられてしまう。
「いっ……!」
由紀は床でうずくまり、手と手を痛そうに包んだ。顔には苦悶の表情が見て取れる。
キョドり君はそれを見てガタガタと震えていた。
俺はすぐに由紀の元へ駆けつけると、あの男を睨みつけた。
「お前……何やったのか分かってんのかっ!!」
「ぷっ……くくくくくっ。駄犬が吠える吠える……。おい、弥生〜。演奏やめちまっていいのかなぁ〜?負けを認める事になるけど……そんなんで弾けるわけないかぁっ!くくくくくっ!」
どうやらこいつはこれが目的だったらしい。
由紀の指は既に腫れ上がっており、もしかするとどこか折れてしまっているかもしれない。
ピアニストにとって指は命だ。
数日ピアノが弾けないだけで、音色は変わってくる。
その生命線を、こいつが断ち切ったのだ。
「……まだ弾けるわ」
「何言ってんだよ。そんなんで弾いてみろ!もっと酷くなるだけだ!!」
至ってピアノを弾こうとする姿勢を崩さない由紀に、流石に見かねた俺はピアノの前から抱き上げて遠ざける。
「保健室、行くぞ」
「っ……」
「おうおう、行ってらっしゃい。くくくくくっ」
俺もあいつにいいようにされるのは癪だが、今は由紀の指が一番大事だ。
保健室に着いたが、先生がいなかったので、仕方なく俺が手当てしてやる。
「お前、次のコンクールいつだ?」
「……七月」
「そうか。……これ多分折れてるぞ。全治二週間から一ヶ月。コンクールには間に合いそうか?」
「……分からない。悔しいけど、棄権するかもしれない……」
由紀はそう言って俯いてしまった。
「あなた、慣れているのね」
「何が?」
「手当て」
「ああ、そうだな」
手際よく右手の固定を終えるのと、保健室の先生が帰ってきたのは同時だった。
その先生ーー春薪先生は、中に入ってくるると、慌てた様子で由紀の元へ駆けつけた。
その後、先生が電話を掛けて、由紀と一緒に病院へ向かって行った。
一緒に俺も向かおうとしたのだが、大丈夫だと由紀に断られてしまった。
天才ピアニストの指の怪我は一大事だ。
あいつも退学、停学処分は免れないだろう。
そう思っていたのだが……。
次の日、また音楽室には奴らの姿があった。
「どういう事だ……?」
すぐに職員室に引き返し、一年Ⅰ組の担任の矢嶋先生に問いただした。
「すみません。矢嶋先生、弥生さんが指を負傷したのはご存知ですよね?」
「あぁ、そうだな」
「しかも生徒が意図的に行った事によって」
「意図的に……?まあ、我が愚息が申し訳なかったと思っているよ」
どうやらあいつは、この矢嶋先生の息子の様だった。
「ならどうして、あなたの息子さんは、今日ものうのうとこの学校に来ているんですか?」
「う〜ん。君は意図的に、と言ったね?僕の息子からはあれは事故だったと聞いている。それに、弥生さんはあいつの申し出を受けた。そして負けた。これが事実だからね。実力ある者が上。当たり前のことだろう?」
「は?事故?あれは矢嶋先輩が意図的に行った事ですよ」
この先生の言っている事がわからず、少々口調が荒くなってくる。
「それじゃあ君はこの学校の方針に楯突く訳つもりかい?それに、証拠は?弥生さん側の君が証人だと言われても無理があるねぇ」
「っ……。ですが…彼女は将来有望なピアニストです。少しでも意図的だと疑わしいのなら、せめて、停学処分を下すべきです」
「それはこちらの息子も同じなんだ。あまり大事にしたくないんだよ」
「今現在の優先度は弥生さんが上なはずですが、そこの所はどうするのですか?」
「どうするも何も、ねぇ……?」
このままでは埒があかない。
すると、意外な人物が助け舟を出してくれた。
「矢嶋先生。私もあなたの判断はおかしいかと」
そう言ってくれたのは、上納先生だった。
「ほう。君も学校に楯突くと?」
「あなたは何を言っているのですか?そもそもこの案件、理事長も納得していませんよ」
どうやら、この学校の最高責任者はその理事長とやらのようだ。
まだ姿は見た事がないが……。
「戯れ言を。これは会議で決定したでしょう」
「いえ、貴方が強制的に打ち切ったの間違いでは?決定権は理事長にあります。貴方こそ何様のつもりですか?」
「っ……」
どうやら上納先生の方が優勢のようだ。
「上納先生。出来れば、矢嶋先輩に停学処分をお願いします」
「私が決定するわけではないが、理事長にも話を通しておこう。弥生の怪我は、この学校にとっても大きな損害になりかねん」
俺はそれだけ取り付けると、職員室を出た。
そう言えば、何故、俺はここまで熱くなっているのだろうか。
いままで人のために動いたのは妹の事一度きりだった。
ただ、面倒な事に巻き込まれているのは事実だろう。
それに何故、あんな事が許されているのだろうか。
俺はただ、音楽室を貸してもらいたかっただけなのに。
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