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実力至上主義

 始業式。今年度始まりの儀。

 それと校長の長話耐久の儀。

「え〜今年も元気な皆さんと新しい年を迎えられて、本当に喜ばしく思います。え〜」


 長い。恐ろしく長い。

 なんかさっきから同じ事をずっと言い続けている。


「やっぱどこの校長も話なげぇよな」

「もう立つの疲れた……」


 周りも会話が増え始め、もう校長の話に飽きている。

 いや、最初から聞いていない者が多い。


「えー始めの挨拶もこれくらいにして、今から皆さんに重大なお知らせがあります」


 突然、校長の空気がガラリと変わったのが分かった。

 それと同じように、生徒達の空気も疑問一色となり、話し声が聞こえなくなった。


 体育館内が静寂に包まれる。


「今年度から、我が来栖高校は、高度教育指定校に政府から指名された」


 その言葉でさらに生徒達の疑問の色が濃くなり、体育館内はざわめき出した。


「え、何?教育…何ちゃら?」

「政府って、そんな大掛かりな事なのか?」


 だが、次の校長の言葉でその全容が明らかになった。


「よって、今年から校風をガラリと変え、完全実力至上主義とする」


 そして、体育館は爆発したように喧騒に包まれた。


「は?実力至上主義って、実力が全てって事だよな……?」

「え、じゃあこれからどうなるの?」

「分かんねぇ……」


 生徒達の顔に困惑の色が伺える。

 と、そこに凛とした声が発せられる。


「静かに!この後、各自教室に戻り次第、説明は行います」


 誰だかは分からないが、まだ二十代後半くらいの若い先生だった。

 生徒達は、一瞬押し黙るが、まだ困惑はぬぐいきれず、チラホラと話す声は聞こえていた。


 〜〜〜〜〜〜〜


 クラスに戻ると、案の定、先の事についての話題は持ちきりだった。


 そこに、一人の教師らしき女の人が入ってくる。

 顔を見れば、先程生徒達を静めていたあの先生だった。


 クラスは一気に静かになる。


 その教師は教壇に立つと、こちらを向いて自己紹介を始めた。


「私はこのⅣ組の担任になった上納 京(じょうのう けい)だ。これから一年よろしく」


 彼女はそう言うと、まず出席番号一番から順に自己紹介するよう求めた。

 もちろん、そこに横槍を挟む奴もいたが、上納先生に一刀両断されていた。


 そして遂に俺の番が回って来た。

 何を言おうか考えていたらあっと言う間に回って来てしまい、何も決まらなかった。

 もう適当に言うしかない。


「晒 律です。趣味は、読書と円周率を覚える事で、特技は…そうですね、ピアノを少し。これからよろしくお願いします。あ、無理に俺に話しかけるのはやめて下さい」


 それだけ言ってさっさと座る。

 周りの反応は今までと全く違い、拍手はまばらだった。


 まぁ、明らかに失敗した。

 別にいいけど。


 そのまま順調に自己紹介は進み、遂に上納先生が本題に入る。


「それでは、これから本校の方針の説明に入る。一度しか言わないから、皆、心して聞くように」


 それだけ前置きをすると、上納先生はチョークを取った。

 どうやら重要な事は黒板に書いてくれるらしい。


「まず、実力至上主義という事だが、まあそのままの意味に取って貰っていい。勉学、身体能力、他にも芸術的センスや社交性など、あらゆる才能でお前達を常に数値化して測るという事だ。因みに、その数値は今から配る電子生徒手帳に随時更新されて刻まれていく。数値は最高で千。今のところは全員五百からのスタートだ」


 配られた生徒手帳はスマホ型の生徒手帳だった。

 全員の名前や顔写真、それと先程の数値が表記されていて、常に携帯しておけとの事だった。


 おぉ、自分の顔はやはり酷い……。見なかった事にしよう。


 そしてまだ上納先生の説明は続いた。


「この数値でその人の優劣が分かるというものだ。毎月、上位十名の名前が配信されるようになっている。下位の生徒は配信される事は無いが、数値順に人物の並べ替えが可能なので、調べようと思ったら出来るようになっている」


 その辺りでクラスは混沌とし始めていた。

 上納先生は構わずに続ける。


「皆、下に埋もれていくのは嫌だろう?是非、皆で切磋琢磨して己を磨いて行け。さぁ、何か質問があれば受け付けるが?」


 と、一人の男子が手をあげる。名は確か志々田(ししだ)と言った。


「何だ?志々田」


 先生は座席表を見ずに指名した。どうやら人の名前はすぐに覚えれるたちの様だ。

 教師として最高の才だろう。


「あの、芸能クラスの人達は初期の数値が僕達よりも高いようですが……?」


 手帳を確認すると、確かに七百と俺達よりも二百も高いようだ。


「あぁ。我が校では重宝する存在だからな。少し特別扱いになっているが、別に上回る事が出来ないわけじゃ無い。初期のちょっとしたアドバンテージとでも思ってくれ」


 ほう。俺は今こそ芸能クラスに入っておけば良かったと思った時はない。

 つまりちょっとの間は差の分楽できる、という事だろう?


「なお、この数値は毎日八時更新だ。毎日チェックするように。他に質問はあるか?」


 するとお隣の美扇が手を挙げた。


「何だ?」

「あの、勉学、身体能力以外の部分を詳しくは教えてもらえないでしょうか?今後の参考にしたいのですが」

「そうだな。例えば音楽。楽器の演奏技術、歌唱力。他は演技、創造力や文才といった感じだな。社会性はコミュニケーション能力や社会貢献などだ」

「ありがとうございます」


 それを聞いて少し驚いた。音楽も入るのか、と。


 今まで話を聞いて、俺が考えた事は一つだ。


 なにそれめんどくせぇー。


 特に目立つのも嫌だったので何もする気は無かったのだが、音楽も入ってくるとなると、話は別だ。


 音楽と俺は切っても切れない縁がある。

 音楽が恋人。

 まじで。

 特にピアノ。


 目立ちたくないし、俺にも事情はあるんだけどなぁ。と、考えたその時HR終了のチャイムが鳴った。


 今日はこれで帰宅なのだが、この学校は寮制度があり、俺も寮生の一人だった。


 今中三の妹を家に置いて行くのはなかなか心苦しかった……。


 そんな風な事を言ったら「は?もう私中三だよ?子供じゃないから大丈夫だよ〜」と返されてしまった。


 妹よ、達者でな。


 心でそう呼びかけて俺は寮へと帰るのだった。

妹)え、何だろ寒気する。呪い?


兄の思いは届かなかった……。



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