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再会 一 (side美扇)

「え…えぇ…いや、でも冗談でしょ??」

「冗談じゃないわよ〜!美扇ちゃん、さらりくんのファンなんでしょ?サインとか頼んじゃいなさいよ!!」

「いや、きっとあれだ!!ちょっと遅めのエイプリルフールだ!!」

「いや、それだったら遅めどころじゃなくない……?」

「あの、無視しないでくれるかしらぁ?」


 倉持さんが何やらしょげてしまった。

 それに晒くんの顔色もだんだん悪くなってきている気がする。

 だが、今私はそれどころじゃない!


 本当なの?嘘じゃないの?

 次の瞬間には扉から人がダダダ〜ッと出てきて、テッテレ〜!!ドッキリ大成功〜!!なんて事はないの……!?


 ……いや、でも晒くんが芸能人だと言われてもなんら違和感はない。


 むしろ今までの()()()()の謎がちょっと分かった気がする。



 ーーーどうやら、私がもう一度会いたいと願った「晒律」は、芸能人になってしまっていたらしいーーー



 〜〜〜〜〜〜〜



 今から九年前。

 晒くんを初めて見たのは、小学校の入学式だった。


 当時、私は極度の人見知りで、ガッチガチに緊張していたのを、今でも鮮明に思い出せる。


 私は、校門の前に立て掛けてある看板の少し前に立って記念撮影をしている途中だった。


 その時突然、ビューッッと風が通り抜けた。


 その風に乗せられて、私が被っていた帽子が飛んで行ってしまったのだ。


「待ってっ……!!」

「ちょ、ちょっと美扇!待ちなさい!!」


 失くしたら大変だ!!と、ただそれだけを考えて、私は一生懸命、飛んでいく帽子を追いかけた。


 後ろからは両親が追いかけてくるのが分かる。


 ようやく帽子がある女の子の前に着陸した。


「はぁっ…はぁっ…良かったぁ……」

「これ、君の?」


 その女の子は、足元に落ちた私の帽子をさっと拾い、砂を払ってからこちらへ渡してくれた。


「あ、ありが…と……」


 私は顔を上げ、帽子を受け取ろうとしたのだが……彼女のあまりの美しさに帽子を取りこぼしてしまった。


(綺麗な子……)


 それだけしか言いようがない。

 ただただ美しい。

 顔立ちもそうだが、サラサラの髪や差し出してくれた手。その全てが輝いて見えた。


 今までに出会った事もない、それこそ天使のようだと思った。


「えと……大丈夫?」

「はっ……!!ご、ごめんなさい!!せせ、せっかく取ってくれたのに……!!」


 急いで落ちた帽子を取ろうとすると、それよりも先にまた彼女が拾ってくれた。


「はい。今度は落とさないでね?」

「ごめん…。ありがとう……」

「うんっ!じゃあね!!」


 私は今度こそしっかり帽子を受け取ると、その女の子は去って行ってしまった。


 去り際に見せた笑顔もただただ、美しかった。



「いたっ!美扇〜勝手に走ってっちゃダメでしょ〜〜!!」

「ちょ、ちょっと父さんは疲れた……」

「もう!あなたは体力が無さすぎるわよ!!」


 彼女が立ち去ってすぐに、両親が追いついてきた。


「パパ!ママ!あのね!今、天使さんがいたの!!」

「え?天使?あなた、この子どうしちゃったのかしら?」


 困ったように母が父に問いかける。


「天使みたいな子がいたって事だよね?美扇ちゃん」

「ううん!あれは天使だった!!」

「え、えぇ〜?そ、そうなの?それはちょっとお父さんも困ったなぁ〜……」


 両親は結局、私が何かを見間違えたのだと結論づけた。

 その後も本当だと言っても「そうだね〜」としか言わず、信じてはくれなかった。




 初登校の日はまたあの子に会える!と、入学式の日とは打って変わり、ウッキウキで登校した。


 あの子は名前すら知らない。

 入学式の日に自分のクラスは分かっていたが、あの子はどのクラスなのだろうかとかグルグルと永遠に考えていた。


(同じだといいなぁ……)


 だけどその願いは叶わず……。


(いない……他のクラスなのかな……)


 席もどんどん埋まって、遂には全ての席が埋まってしまった。


 残念だったけど、仕方がなかった。




 それからしばらくして、仲のいい女子の友達からある事を聞いた。


「ねぇねぇ美扇ちゃん!」

「どうしたの?」

「あのねあのね!三組にすご〜くカッコいい子がいるんだって!!」

「ふぅん?」


 その時の私は、入学式のあの美少女に夢中で、男子なんかには興味が無かった。


「ねぇ一緒に三組に行ってみようよ!」

「えぇ〜?私はいいよ〜」

「いいから行こっ!」

「え、ちょっと……!」


 私はその子に腕を引っ張られて、三組まで向かった。


「ねぇ私は男子に興味ないよ……」

「私は見てみたいの!一緒の方がいいし〜」


 その後もズルズルと引っ張られ続けた。


「どこかな?」

「分かんな〜い」

「も〜一緒に探してよ〜」


 そもそもこの時まで他クラスになんて行ったことが無かった。勇気がなかったのだ。


 もう、戻っちゃおうかと思ったその時、見覚えのあるサラサラの髪の後ろ姿が目に映った。


「あっ……!」

「え、何?いた??」

「いや、違うけど……ちょっと行ってくる」

「え、ちょ、ちょっと待って〜!」


 三組の中に足を踏み入れると、クラス中の視線が私に突き刺さる。

 私が他クラスに入るなどという自分にとっての暴挙へと打って出れたのはこの一度きりだった。


「ね、ねぇ……」

「ん?……あれ、どっかで見た事ある……」

「あ、あの時は帽子、拾ってくれてありがと!」

「?……あぁ、あの時の!いいよ別に〜前にも聞いたし!」


 また彼女はニカッと笑ってみせた。


(天使……)


 すると、彼女の元に一人の男子が近づいてきた。


「どうしたん?律。この子誰?」


(りつ……りつっていうのかぁこの子の名前)


「ん?いや、入学式の時に会った子なんだ〜」


(ひゃ〜男子とも仲良いんだぁ……私には無理かも……)


 私はしばらくその場でフリーズしてしまった。

 男子と話すのはどうにも慣れなかったのだ。


 すると今度は女子達が律の近くに寄ってきた。


「ねぇねぇ()()()!今から外でドロケイしない?」

「ん〜……いいよ!」

「やった!!他にしたい子いる〜??」


 その女子達は律の返事を聞くと、嬉しそうにしながら他の参加者を募っていた。


 というか……


(り、()()()()……??お、男の子……!?)



 そう。私ははじめの方、晒くんの事を女の子だと思っていた。

 綺麗な顔立ちで、髪の毛も他の子より少し長めだったから。


 相手が男の子と知った時の私の行動は早かった。


 そそくさとその場を立ち去ると、戸の近くの友達の所まで引き返した。


「美扇ちゃんっ!あの子!あの子だよ!!ぬけがけだっ!!ずるいぃ〜!!男の子に興味無いって言ったのに〜!!!」

「ご、ごめん……あの子だって知らなくて……」


 というか男子という事まで今の今まで知らなかったのだ。仕方がない。



 それから同じ友達経由であの子のフルネームが判明。「晒律」くんと言うらしい。


(晒律くん晒律くん……)


 それから、この名前だけは忘れないでおこうと決めた。


 もう、話しかける事も出来ないだろうから、名前だけは、と。



 それからやはり、彼女改め、彼に話しかける事はその先一度しかなかった。


 そしてこの会話を最後にすぐ、彼は転校してしまった。


 二年生の冬だった。

明日ハロウィーンですねボタン(?)は下のお星様です


美扇編次も続きます〜!


それと感想の返信ですが、ちょっとこの先は控えさせて頂こうと思います。

理由は返信が最近遅くなっちゃう事と、本編の方を集中したいからです。


見てはいます。返信はできません。すみません……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しく見させてもらってます。 [一言] フルネールになってます。
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