美扇とランチ
おかしい…おかしいぞこの状況……!!
遡るはたったの十分前。
美扇と合流した後、美扇おススメのハンバーガー屋へ行く事に決定した俺達は、その目的地へ向かって歩みを進めていた。
そして今、これでもう声を掛けられているのは三回目である。
もちろん俺にじゃなく、美扇に。
相手はイケイケ系の兄ちゃん方。
俺の存在は完全無視である。あからさまに邪魔に思われてるのが時折こちらに向けてくる視線で伺える。
「で、どう?この後ちょっとお茶でもしない?」
「あはは…すみません。今から行く所あるので〜……」
美扇はそう言うと、さっと俺の腕を取り、男の脇をすり抜ける。
ていうかなんで皆やけにお茶したがるんだよ。
だが、相手の方もしぶとく美扇についてくる。これまた先程の者達も同様の事をしてきた。
「お友達も一緒でいいからさ〜!ほら、行こう?」
そして男は遂に美扇の腕をを取った。
美扇がギョッとした顔をしている。
今までに無かったタイプだ。
……もうナンパ野郎をタイプ分けしだしている自分がいる……。
だが、今はそれどころではない。
未だに手を掴まれたままの美扇の顔色がみるみる青くなっていく。
あはは〜と誤魔化しつつ、手を振り解こうとしているのだが上手くいっていない。
なので、またまたこれもさっきから同じように、仕方なく俺が止めに入る事にする。
俺は男の腕を掴んだ。
「え〜?つまり私ともお茶したいって事よねぇ〜?」
全力で声を演じる。全力でやってもキモいものはキモいのだが。
「え、え〜っと、別に君はどっちでもいいっていうか〜……むしろいない方がいいというか〜……」
おい、最後声小さくしても聞こえてんぞ。
「えぇ〜っ?ほんとう?じゃあ〜私と一緒に〜……お茶しようぜ?」
「ひぇっ!!」
決まったぁああああ!!
最後の最後で男声に切り替え作戦〜!!かっこダサいかっこ閉じる〜!!!!
「……ん?でもよく見たらあんたも可愛……」
「あ??何言ってんだこらさっと失せろ」
「では失礼しまっす☆」
男を解放すると、スタコラ〜ッと早足で去っていた。
逃げ足が速いのもナンパ野郎の共通点だな。
次ナンパする役とか来たら使えそう。
「うぅ〜ごめんね晒くん……」
うぅ〜っと唸りながらもじもじしている。
そういう仕草も男はツボなんだろうな……。俺でも可愛いと思ってしまう……。
「いや別にいいから。ていうか、いつもこうなの?」
「う〜ん今日は一段と多いかも……。いつもは一日で五、六回ぐらい」
「えぇ〜めんどくせぇ……」
「あはは〜私も……」
はぁとため息を吐く美扇。
表情も明るく見せているが、いつもよりは暗い。
「新田さんも変装とかしたら?」
「え〜有名人じゃあるまいし……ていうか新田さんもってどゆこと?」
「あっごめん忘れて。今すぐ記憶からデリートして」
「え?え?わ、分かった……?」
やばい。油断して口が滑った。
最近気が緩んで来ている気がする。気をつけなければ。
「あ!着いたよ〜!」
美扇が止まった所は『バンビ』という名前のハンバーガー屋だった。外観はポップでカラフル。偏見かもしれないが、いかにも女子が好きそうだ。
因みに意外と俺もこういう所は好きだ。
中の内装も可愛いく、比較的客には女子が多かった。男女の組み合わせもチラホラ見える。つまり何が言いたいかというと…
「う〜ん気まずい……?」
「それな?」
どうやら美扇も同じ事を考えていたらしい。
〜〜〜〜〜〜〜
「ごめんね?こんなとこ連れて来ちゃって……」
「いいって。それにほら、今の俺なら女子に見えなくもない……かもしれないだろ?認めたくないけど」
「レ○だね」
「いやもうヤメテ?」
注文も済ませ、暇になった俺は内装をパシャパシャ撮りまくっている。
なんでも食べ物や内装を撮ってSNSに上げたのを会計で見せると割引してくれるらしい。あとは俺の為だ。
「じ〜〜〜」
「な、何?」
聞き間違いでなければじ〜〜〜って口に出して言っていたような?
「いや〜晒くんがこういうのに興味あるなんて意外だなぁ〜っと」
「そう?可愛い物とか、綺麗な物は結構好きだけど……」
「ふぅん?」
何故かずっとこちらを見てくる。
と、撮りづらい……。
「お待たせしましたぁ〜!!ハンバーガーAセットとCのチーズ倍で〜す!!」
そこへ、店員さんがハンバーガーを乗っけた皿を二つ持ってきた。Aの方を美扇の前、Cの方を俺の前に置いて去っていった。
「チーズ倍だなんてお若いね〜」
「歳同じじゃん。ていうか最近の女子のブームはチーズじゃないの?」
「いや〜私は胃もたれしてどうも無理なんだよね〜。もしかして晒くん、流行りにも敏感な人なの?」
「女子並みには」
「もう自分からネタにしに行ってるよね?」
それからしばらく俺達は黙々とハンーバーガーを食べた。
半分ぐらい食べ終えると一旦手を止める。
「なんだか晒くんってイメージと大分違ったな〜」
「何?どんなイメージだったの?」
「一人じめじめ黙々と本を読む、私みたいな人衆嫌っているタイプの人間」
「悪い方のイメージなのね?はじめの方はあながち間違いじゃないけどね」
美扇のような人でも、やはり俺の印象は悪かったらしい。
中学でも似たような印象を与えていたのだろう。その証拠によく話をする友達など一人もいなかった。
「それなのに流行りには敏感だし、SNS映えとか気にしちゃってるし、ノリも結構いいし」
「それは……ありがとう?でいいのかな?」
まぁ、流行りに敏感なのも映えを気にするのも職業柄そうなってしまっただけなのだが……。
話もそこそこに、俺達はハンバーガーを食べ終えるとバンビを出た。
「結構美味しかったよ。ありがとう」
「そう?良かった〜!」
そして今日最大の目的である、倉持さんの待つ事務所へ向かった。
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土曜日編意外と長い……。




