ピン
すみません…。普通に予約ミスしてました。
本当に遅れてすみません!
朝、目が覚めると、スマホに連絡が入ってきた。それも連続で。
すげー…ジャストタイム……。
だが、俺の持ってる連絡先などなここやカイ、あとはなここと居候していたおばさんぐらいなもので……あ、いや、確かⅣ組の連絡網があったか。
俺の存在を無視しないでくれた美扇に誘われたものだ。中学の時は連絡網なんて存在したのかすらも知らない。というか存在していてもまず誘われない。特段、話す相手も居なかったし。
でも連絡網が活用された日は未だに来ていないかった。
俺は訝しみつつ、スマホを手にした。
ロック画面に表示された連絡達の主は…………見間違いか。うん。
俺はいつのまにかすっ……とスマホを伏せていた。
いかんいかん。つい、現実逃避癖が出てしまった……。
もう一度こちらにスマホを向ける。そこに表示された名前は、やはり変わらない。
『美扇』……だよな?目を擦っても美扇。
うん、美扇だ。
俺の記憶が間違っていなければ、美扇と連絡先を交換した覚えはないのだが……。
とにかく何か色々来ている。小分けにされているからだろうか、量が多く感じる。
俺はスマホを開き、ラインを確認する。
その内容はと言うと……
『晒くんごめん!!』
『集合時間話し合うの忘れてたぁ〜』
『勝手ながら少し言い訳させて!』
『倉持さんが時間指定して来なかったんだもん…』
『だから時間なんて忘れてたっ☆』
『いやほとんど私が悪いんだけど…』
『はっ!』
『因みに晒くんの連絡先は連絡網から引っ張ってきました』
『勝手にごめんね?』
『それで、時間だけど、どうする?』
『良かったらお昼一緒に食べてから行かない?』
『あっ!これは本当に出来ればでいいから!!』
『じゃあ出来たら早めに返信下さい〜』
これぞJK!と言う感じだ。
所々で絵文字や顔文字がある所とか、これら全文が時間の差僅か一分で送られている所とか……。
え、逆にどうやったらそんなに早くなるの?
そういやなここもすげぇ速度で送ってくるからろくに返信出来なかったという苦い思い出が……。俺もこの一年で早くなった方だと思うのだが。
まぁ、それは置いといて、取り敢えず返信をしなければ。
まずは、そうだな。
『それは倉持さんが悪いんだから、そんなに謝らなくていいよ』
返信。
そうじゃないか。何故倉持さんの尻拭いを美扇がしているんだ。
これは倉持さんに全ての非がある!
『それに、俺も気付かなかったし、ごめん』
『ううん!倉持さんから話聞いたのは私だし!その時気づけてたら良かったね〜』
やはり返信が鬼早い。
どうやら美扇もリアルタイムで見ていたようだ。
『昼の事だけど、こっちは大丈夫。十二時に駅前集合でいいか?』
『おけ!』
『じゃあ倉持さんには俺から連絡しとく』
『そう?ありがと〜!!』
改めて見るとあまりにも自分の文が淡白すぎる気がする。今度から顔文字に挑戦してみようか……。
などと考えながら、美扇には『グッ!』という白黒猫のスタンプを送る。
さて、時間が出来てしまった。
特にすることもないし……寝るか。たまにはカイや翔みたいになってみるのもいいかもしれない。
俺は倉持さんに昼を食べてから行く旨を連絡すると、そのままアラームを十一時にセットし、眠りに落ちた。
〜〜〜〜〜〜〜
ピピピッというアラームの音に叩き起こされ、もぞもぞしながらも起き上がる。
「珍しいな。律がこんな遅くに起きるなんて」
ベッドから降りると、第一にカイがそう言ってきた。
信は翔と外出中らしい。
よく翔が了承したな……。
「俺一回起きたんだけどな」
「え、まじ?全然気付かなかったんですけど……」
「まぁ、ちょっとスマホ触っただけだったし」
ふぁ〜っとあくびが出る。
なんだか二度寝したら逆に疲れた気がする。
やはりカイや翔の気持ちは分からん!
俺はカイと共用のクローゼットを開き、服選びに取り掛かる。
さて、今日はどうしようか。飯食うだけだし、さしてオシャレする必要もないか。
いやまずこの髪でオシャレとかどの口が言ってんだよっつう話なのだが。
「あれ、お出かけ?今日俺ボッチ??」
「うん、今日カイはボッチ」
「えぇーーーっ??何?誰と??あれか?もしかして弥生さんか?」
あ、これもしかして音楽祭ので仲疑われてる感じだな。四津さらりで出た所で、カイには俺にしか見えないだろうし。
「違う、新田さんだよ。ていうかお前なんか勘違いしてんじゃないの?」
「いや?もしかしていい感じなのかな〜?って思っただけだし」
ほらやっぱ疑ってるじゃんっ!!
「ていうか新田さん?てあれだよね。前撮影に居た子」
「そうそう。倉持さんから召集かかって……やっぱカイはない感じ?」
「おん。そんなんないけど?」
やっぱりな〜。てことは美扇のマネージャーの件で間違いないか……。嫌な予感的中じゃん。
そして悩んだ結果、俺は適当にシャツとジャケットにジーンズという格好になる。
「グラサンは?」
いつのまにやらカイが両手にサングラスを構えていた。
「何?前髪で目を犠牲にしろってか?」
カイがえ〜?とぼやいているが、そんな事は知ったこっちゃない。
こんなんでサングラスでもしてみろ。それ程滑稽な事はない。
「シャツに掛けるだけでいいじゃんか〜」
「ぜっっっったい嫌だ。イキリ簾野郎になる」
「もういっそのこと前髪あげちゃえば……」
「あ??」
「はいすみませんでした」
渋々サングラスを棚に戻すカイ。
俺のスタンスを崩しに来やがるなこいつ……。
「でも、なんでそんなに頑ななんだよ?」
まだ恨めしそうにこちらを見てくるカイがそう聞いてきた。
……出来ればそんな顔されずに話したいんだが。
それにしても頑なに顔を見せない理由ね〜。
「なんだろう?子供の頃の反動?かな」
「何だよそれ。全然分からん」
「いつか話すよ」
とか何とか言って、本当に話すのはいつになるのやら……。俺の親とのいざこざなんて、聞いて楽しいもんじゃない。
カイはまだ納得しきれていない様子だが、まだ俺の支度は終わっていないので構っていられない。
歯磨きと顔洗いを済ませてから、珍しくボサボサの髪を整える。
「ねぇ、ピンとか付けちゃう?」
「……お前は一体何がしたいの?」
何だか今日はいつにも増して構ってちゃんな気がする。
あれか、ボッチが嫌なのか。だから出掛ける前に構ってもらおう作戦か。
女子みたいだな。
「いやいや、別に前髪全部留めろって言ってる訳じゃないから。ちょっと横留めるだけだから」
「はぁ……貸して、それ」
「ほい!」
カイからピンを受け取って横に付けてみる。
「どう?」
「か……」
「か?」
「可愛いっ……」
「お前ふざけてんの?」
速攻ピンをぶち取る。
「あ!待って待って!!これはまじ大丈夫だから!!付けて行ったら女子受け間違いないから!!ギャップに萌えるから!!!」
「何言ってんの?もはや語彙力崩壊してんじゃん」
「いや本気だから!!付けてった方がいいよ絶対!!女の子みたいだし!!」
「完全に前の事いじってんじゃねぇかよっ!!!」
クソぅ……!俺の忘れたい過去を……っ!!
「あーごめんごめん…!それもあるけど〜ピンはいいよ!絶対!!」
なんだよ。どこがそんなにいいんだよ。
チラッと時計を見ていると、もう時間が迫って来ていた。
時間もないし、一向に折れる気の無いカイに、もういっそのこと俺が折れてしまう事にした。
「あ〜もう分かった分かった!付けてくから!!これでいいだろ!?」
俺は一度取ったピンを元に戻す。
「どう!?」
「いいねぇ!!」
「オッケーイ!!じゃあ行ってきますっ!!」
爽やかな笑顔とサムズアップに見送られ、俺は荷物を取ってやけくそで寮を出た。
〜〜〜〜〜〜〜
思いの外早めに着いた俺は、柱にもたれて美扇を待っていた。
時折、「あれってリ○ロのレ○意識してるのかな〜?」とか「男でレ○って……ま、そういう趣味の人もいるかぁ」などの心外な言葉が聞こえてくるのが苦しい。
やっぱやけくそに付けて来てしまったのが失敗だった……。
「…………レ○?」
「あんたもか……」
美扇がこちらに近づくなりそう言ってきた。
やっぱ失敗したぁ……!!
カイの構ってちゃんボタンは下のキラキラお星様っ☆です。




