律くん。(side美扇)
お久しぶりです!
これにて第一章は無事終幕ーー
音楽祭の帰り道。
ブレザーのポケットの中にあるスマホが鳴った。
スマホを取り出す。そこに表示されている名前は、『倉持さん』。
あれかな。マネージャー、どこに付くかの件。
私はすぐに応答ボタンを押して電話に出た。
『もしもし〜?美扇ちゃん?』
「はい〜。何でしょうか?」
『あれ、なんかお疲れ?』
やばいやばい。疲れがつい声に……!
「いえいえ〜!今日、音楽祭があっただけです!」
『へぇ〜そんなのあるんだ〜』
「音楽なんて興味ない私にはもうほへ〜ってただ座るしかできなかったですよ……」
『てことはやっぱお疲れ?』
「ギクッ!」
やってしまった…!と思った時にはもう遅い。
前からやってきていた同い年くらいの女の子に不審な目で見られてしまった。
あ〜この擬音まで言っちゃう癖直したいな〜……。
『そうかそうか、音楽祭ねぇ〜。てことは律くんはウキウキしてたんじゃない〜?』
先程の私のギクッ!など意にも介さない倉持さん。有難い……けどなんだか寂しい。
「晒くんですか?まぁ、この日の為にクラスの軍曹として頑張ってくれてましたね」
『ん?軍曹??』
「スパルタ律くんについたあだ名です」
すると、電話の向こう側からぶふっという声が聞こえてきた。
いつまでたっても笑い続ける倉持さんに、流石に少し心配になってきた。
「だ、大丈夫ですか……?」
『ふーふーーっ…。大丈夫大丈夫〜っくくっ。それにしても軍曹かぁ……今度呼んじゃおっ』
もしかしたら私は良からぬことを言ってしまったのでは……?
というか、倉持さんって笑いのツボ浅くないかな?
まぁ、いっか。とこの件は置いておき、そろそろ本題に入ってもらいたい。
「それで、どうしたんですか?マネージャーの件ですよね?」
『そうそう〜!美扇ちゃんが付く所決まったわよ〜!』
「そうですか!!……で?どの方に付くんですか?私」
何気に楽しみにしていた事なので、ワクワクしながら倉持さんの次の言葉を待つ。
『それは〜〜……土曜までのお楽しみっ!!』
「あ、もう切りますね〜」
すっと耳からスマホを外して流れ技で切ボタンを押す。
ニヒルな笑みを浮かべて勝ちに浸っていると、間髪入れずに、また倉持さんから電話がかかってきた。
渋々応答してスマホを耳に当てる。
「はい」
『はっはっはっ!!いや〜先程はすみませんでした……』
徐々に倉持さんの声が萎んでいく。
「はぁ…分かりましたよ。でもまさかこんな事言う為に電話掛けたんじゃないですよね?」
『いやいや、流石にそれはないよ〜。ちょびっとからかっただけだから』
からかってるじゃないですかっ!!それめっちゃ無駄な時間じゃないですかっっ!!
「で??本当は何が言いたかったんです??」
『あ〜土曜日だけど、律くんも一緒に連れてきてくれる?』
「?一緒にですか?」
『そうそう、一緒に!』
なぜそこまで一緒に固執するのかは分からないが……それも土曜に分かる事か。
うぅ〜気になる〜っ。
「分かりました。伝えときます」
『ありがと〜!あ、そういえば、今日の音楽祭って律くん出たの?ほら、個人演奏とか』
「いえ?クラスで指揮した以外は、特に」
『ふ〜ん、そか。ありがと!じゃ、また土曜に〜』
プツッと電話が切れる。
嵐が去った後の静けさとはこの事だろうか。
少しの間ボーッとスマホの画面を見つめた後、ブレザーのポケットにスマホをしまった。
今はもう土曜日が待ち遠しい。
私は軽やか足取りで角を曲がり、家を目指すのだった。
今日でテストが終わりました!
来週から、毎週火、金曜日の週二投稿になります!
第二章も乞うご期待!(してくれるといいなぁ……)




