と思ったら四津さらり!
活動報告にて!しばらく不定期更新になる事をお伝えいたしました!
昼休憩も終わり、午後からは有志発表と、残りのクラス発表が控えていた。
『続きまして、三年Ⅴ組の生徒達による発表ですーーー』
順々にクラス発表は進んでいった。
あのミュージカルよりもインパクトがあるのは特になかったように思える。
だが、二年Ⅲ組の発表も、俺的には中々面白かった。
それは、楽器隊と、声楽隊に分かれての演奏だった。そこまでは普通なのだが、どういうわけか、そのクラスは曲を決めてはいなかった。
観客に曲を募り、それを演奏、合唱するものだった。
そしてそれは歌に限らず、バッハ、モーツァルトと、名だたる音楽家達の曲のリクエストにも答えていた。
その曲がわからない場合は、リズムや拍に合わせ、るるる〜と即興でハモりや、伴奏に回っていた。
観客参加型のそれは、こちら側にとっても楽しませてくれるものだった。
それに楽器隊の面々の演奏を見ること自体、俺的には結構楽しかった。
「晒、ちょっといいか?」
上納先生にそう言われたのは、クラス発表が終わり、有志発表が始まる少し前の事だった。
何だろう?と思いつつ付いていく。
多分この後の有志発表の事かな?とあたりをつける。
そして、上納先生は会場を出た通路の奥の方まで進み、誰もいない事を確認すると、そこで止まった。
あれ、何かこれデジャブを感じる……。
「すまんな、晒。急に呼び出して」
「いえ……で、どうしたんですか?」
前回学校で呼び出された時とは違い、リンチされそうな雰囲気も無いので、取り敢えず話を進める。
「あぁその、なんだ……付け回したりして悪かったな」
「……はい?」
俺は思わず首を傾げる。
何?何で今そこを謝る!?タイミングおかしくないですか!?
「いや、あのな、何かお前が逃げるから、こんな感じになってしまっただけで、別にお前のファンでもなんでもないし……何か誤解されてるかな〜……と」
「はぁ。そうなんですか。てっきり熱狂的なファンか、狂信者なのかと」
「ほらっ!ほらやっぱり!!」
いやいや、仕方ないのでは?
だって貴方が事あるごとに俺を捕まえようと追いかけて来たんだから。
「狂信者って…別に、私はお前をトイレとか寮まで追いかけはしなかったじゃないか!!」
「まぁ……確かに?」
「だろうっ?ていうか、お前が逃げるから私は追いかけちゃったんだよ!申し訳ないとは思ってるけど!!」
「はぁ。まぁ、取り敢えず落ち着きません?」
いつものごとく、段々上納先生がヒートアップしてきたのでどーどーっと宥めてやる。
先生も徐々に落ち着きを取り戻し、一度肩でふぅーっと息を吐くと、また俺に向き直る。
「それで?まさか謝りに来ただけなんですか?」
早くして欲しいので、俺はそう聞いた。
「いや、違う。これは前置きみたいなものだ」
「じゃあ何を?」
「私がお前に聞こうとしてた事だ」
だからあの前置きという事か。うん。全く分からん。
「なぁ、晒。何でお前はⅠ組に入らなかった。というか何故正体を隠す?」
「……そんな事聞くために追いかけてたんですか?」
「だからお前が逃げるから……」
何故か先生は悲しそうに肩を落としてしまった。
ファンだったとしたらあまり関わりたくはないんだから、仕方ないんだよ……。
ていうか、何故、ねぇ……。
「それは目立ちたくないからですよ」
「本当か……?もう既にそれは不可能に近くはないか?」
「俺もそう思います」
「はぁ?からかうのはよせ」
上納先生が少し苛立ちだす。
やばい。俺この先生苛立たすプロかもしれない……。
「で、本当の理由は?」
そう上納先生が聞いてくる。
「目立ちたくない、も本当の理由ですよ。……そうですね。普通でいたい、認められたくないって感じですよ」
「認められたくない?」
「はい。これは親に関係がありますが……知りたいですか?」
「……いや、お前が言いたくないなら、構わない」
「そうですか」
だが……先生には知ってもらっていた方が楽なのかもしれない。
……でもこの先生に言うのはちょっと不安だなぁ……。
だから、この先生には条件を出させてもらおう。
「……お話しますよ。ただし、先生のこれからの態度によりますけど」
「……お前なんか偉そうだな」
「すみません。こっちのが俺の性に合うんです」
正直、俺の性分の話はどうでもいいが。
「まぁいい。で?態度、とは?」
先生はそう催促する。
「先生、何かと頼りないんですよねー」
「な、何だとっ!?」
「なんか教師としての威厳は足りないですし、俺の事カンニングだって言ってきますし……」
「うぐっ…!そ、それは〜……申し訳なかった……」
そう言って頭を下げる先生。
ダメだ。このままじゃなんか俺が悪役になってるじゃないか。
「いや、もう頭上げてください」
先生はそうか?と言い、頭を上げた。
「とにかく、今の先生は何か俺的には頼りないんです。だから今後はもっと……いざと言う時、俺が頼りたくなるような教師を目指してください。こんな餓鬼が、こんな上から言うのは、頭にくるかも知れませんが……俺は、どうも、大人を信用できないたちになってしまったので」
「……何があったのかは知らないが……不甲斐ない教師ですまないな」
「いえ、あれもこれも、俺の我が儘ですので」
そう。どれも俺の我が儘だ。
どれも俺という人間が、生まれてしまったから……。
〜〜〜〜〜〜〜
あの後、上納先生とは別れ、俺は客席の方に戻った。
有志発表はやはり、有志を募るだけあり、皆レベルが高い。
この学校が元々レベルの高い学校という事もあって、実家が金に余裕のある者達が多いのも関係あるかもしれない。
とは言え、そのトリを務めるのがこの俺な訳だが……どうしよう。意外と緊張する。
「ちょっと、晒くん、大丈夫?」
横から美扇が心配そうに尋ねてくる。
俺あんま顔には出ない方なんだけどな……?
「汗やばくない?ここそんなに暑いかな?」
流石に俺でも汗腺は操れなかったようだ。
「大丈夫だよ。……多分」
「多分……?」
美扇はこてっと首を傾げさせる。
こういう仕草が男子達のハートを射止めているのだろう。知らないが。
チラッと時計を見ると、もう俺の出番までは後四十分を切っていた。
そろそろこの場を自然に退散しなければならない。
スッとその場を立ち上がり、控え室に向かおうとしたのだが、お隣さんがそれを許さなかった。
「晒くん、どうしたの?」
「ギクッ」
「ギクッ?」
美扇は単に心配してくれたのだろうが、今はありがた迷惑だ。
何とか言い訳を探さなければ……!
「えと……その、トイレに〜……」
「あ、そっか。ごめんね、引き留めて」
「いや……大丈夫」
だっっっっさ!!!!!
いやだっさ!!今から四十分以上はここ離れるのにトイレとか!!!恥ずかしい……。
でもトイレ以外に言い訳思いつかないし……!
とにかく、恥ずかしさをこらえながらその場を立ち去ると、俺は足早に控え室に向かった。
控え室が並ぶ通路に出ると、既に上納先生が待ってくれていた。
「先生。この事は……」
「あぁ、一応ゲストという事にしてある」
「……ありがとうございます」
先生は頼りないが、こういう気配りや察しはいいのでこちらとしては有難い。
そのまま先生に連れられ、朝来た控え室に通された。
「そこに必要そうなものは全て用意してある」
周りを見た限り、確かに一通りの道具は揃っているようだ。
「それと、朝言った通り、男子用の衣装はないから、その制服で出てもらう。すまんな」
「いえ。そのくらい幾らでも言い訳はできますよ」
「じゃあ、出番までは外に出るなよ」
「はい」
先生はそれだけ言うと、俺を残して部屋を出て行った。
さて、準備を始める事にしよう。
いつもメイクはメイクさんに頼んでいるが、朝もやった通り、別に自分でできない訳ではないのだ。
ただ、自分の顔を自分で弄るのがそんなに好きじゃない。自分の顔が好きなわけでもないけど。
取り敢えず前髪をあげて、ピンで留める。
メイク道具からいるものだけぽんぽん取り出し、後はしまっておく。
本日二度目のメイクである。
髪の毛のセットも終えて、俺は椅子の背もたれにもたれかかる。
少し疲労も溜まってきている。
だが、これで音楽祭も終わりだ。
意外と楽しかったな。女装以外は。
出番まであと五分ちょい。そろそろ上納先生が迎えに来るはずだ。
すると、予想通りにドアがノックされた。
「晒。そろそろ出てくれ」
「はい」
ドアを開け、外に出る。
と、上納先生が少しビクッとなった気がした。
「どうかしましたか?」
「いや……本当に四津さらりなんだなぁ、と」
「あぁ。そんな事ですか」
「まぁ確かにそんな事だがっ!」
俺は上納先生がまた突っかかって来そうなのを無視して、スタスタと舞台裏まで歩いていく。
後ろからは上納先生が直ぐに追いかけてきた。
すると、裏方役のスタッフ達が一様にざわめき出す。
俺はそれにも無視を決め込み、壁にもたれて出番をじっと待った。
『で、では最後に!スペシャルゲストをお呼びしたいと思いますっ!!』
司会者が息巻いてそう言うのが聞こえる。
観客側のざわめきも大きくなり、既にゲスト当て合戦が始まっていた。
『では、どうぞっ!!』
司会者の合図に合わせ、俺は一歩前進する。
あっ、と思い、俺は一旦その場を振り返ると、上納先生に「いってきます」と言った。
先生は驚いた顔をしていたが、「あぁ」と返してくれた。
その言葉を背に、舞台の中央に向かって歩いていく。
舞台裏から出た途端、スポットライトが俺目掛けて当たる。
遂にその顔が露わになるとーーー。
「う、うっきゃーーーーーっっっっ!!!」
「ぎゃいえーーーっっっ!!!うえ!?まじ!!?」
「しっしししし四津さらりくんっっ!!??」
観客席から黄色い?発狂が聞こえてきた。
主に女子から。
「え、あれ?私夢見てる??」
「やったじゃん美扇っ!!」
微かにそんな会話も聞こえてくる。
どうやら美扇と美扇の友達が話しているらしい。
チラリと由紀の方を見ると、ただポカーンとした顔をしていた。
「ぷっ」
あ、やった。ちょっと吹いてしまった。
いや由紀のあの顔は反則だろう。
「えっ!今さらりくんぷって言わなかった!?」
「何に笑ったのか分かんないけど……でもでも、なんか可愛いっ!!!」
「ね!笑いのツボは変なのか知らないけど!!」
なんか客席の方から褒めてるのかよく分からん会話が聞こえたが……気にしない気にしない。
俺はスタスタ〜と中央まで来ると、司会者からマイクを受け取る。
「えっと〜皆さん!はじめまして!!四津さらりと申します!」
と、適当に挨拶をする。客席からは「知ってま〜す!!」だの「うきゃーーっ!!よく見たらうちの制服じゃんっ!!!!似合い過ぎ、えぐっ!!えぐの富士っ!!!」だのと言う声が上がる。
え何?えぐの富士って。
まぁ、取り敢えず気を取り直して、挨拶の続きを行う。
「本日はゲストとして、お招きいただきありがとうございます!え〜早速ですが!実は俺、やりたい事があるんですよね〜」
「「「な〜に〜〜〜???(女子一同)」」」
「それは〜〜〜」
そう言うと、俺は舞台から降りて、生徒がいる客席の方に向かっていく。
「えっ!?何何!?さらりが降りてきた!!!」
「こっち向かってる!!?」
申し訳ないが、そっちじゃない。
俺が向かった先は……一年Ⅰ組。弥生由紀の元。
「え、えっ???」
由紀はテンパってあたふたしている。
そんな由紀に向かい、俺は腰を曲げ、手を差し伸べる。
「弥生由紀さん。俺と連弾していただけませんか?」
「うぇ??えっ!?わ、わわ私!?」
「はい!あ、もちろん指の事は知ってますので、お遊戯程度の連弾で十分ですけど……ダメですか?」
「いえ!!そんな事ありませんっ!!!」
即答で答えが返ってきた。
俺はくすっと笑い、由紀の手を取った。
「では、こちらに」
「ひゃ、ひゃい……」
周りからキャーーーッッッ!!!と歓声が上がる。
由紀をピアノの前まで連れて行き、先に椅子に座らせる。今度は俺がセコンド側だ。
「ああああの…!きょ、曲は……!!」
由紀が顔を真っ赤にしながら聞いてくる。
「そうだね〜アンダー・ザ・シーとか?」
「え、ディズニーのですか?」
「そうそう。なんか楽しいじゃん?即興、大丈夫?」
「は、はい!」
「右手使わずに、左手だけでメロディー弾いたら大丈夫だから」
「へ、へい!!」
なんかどっかからか外人が出てきたような……気がする。
「じゃあ、いくよ?ワン、ツー、スリー、フォー」
〜〜〜〜〜〜〜
由紀との連弾にて、俺の出番も終了。
やりたい事もやれたし、会場も盛り上がってくれていた。
音楽祭は俺的には大成功……なのかな?
へいへい!そこのにぃちゃんねぇちゃん!!下のお星様、全部塗ってきなっ!!コッ!!☆
誤字多くてほんとすまねぇなぁ!まじ感謝だぜっ!!((殴




