来栖高校
出来るだけこれから毎日投稿頑張ります……!
出来るだけ……((
それから一年が経ち、俺晒 律は来栖高校へと入学した。
来栖高校は芸能活動に寛容的で、補助も出る。そのため、この学校には芸能クラスが存在するのだが……俺はそこには入らず、一般入学で入った。
もちろんクラスは芸能クラスではない。
いや、こんな奴が芸能クラスにいてたまるかっ!!という唯の俺の意地なのだが……。
一年前、西井さんがAKスタジオに来た理由は、ドラマの演者を探していたからだと言った。ピアノが弾けなければならなく、いいピアニストはいないかスタジオを転々としていたらしいが……何故か俺にたどり着き、何故か俺が抜擢されてしまった。
演技なんてこれっぽっちもやった事なかったが、アニメ好きが功を奏し、そこそこの演技は出来ていたと思う。多分。
何よりこの西井D、その役以外のシーンは撮り終えても納得のいく者がおらず、クビが飛ぶ寸前まで行ったらしい。
だから妥協した結果…だったと思いたい。
そんなこんなで翌日から撮影が入り、学校はお休み……(二週間)。
不登校みたいな状態が続き、もともと友達などいない俺は、その年も見事にボッチを勝ち取った。ついでに陰口のおまけ付き。
西井さんとの出会いから一ヶ月後。無事かどうかはさておき、全国放送が始まった。
するとどうだろう。最後の方の数話しか登場しなかった、主人公のライバル天才ピアニストだったのに、ネットでは大騒ぎされた……らしい。
正直怖くて、それは西井Dの言伝なのたが。できればいい意味で騒がれていて欲しい……。
それからなんだかんだで仕事が回ってくるようになり、今は、有名メンズ雑誌「グローバー」でモデルをしている。
因みに、この雑誌はこの仕事をするまで全く知らなかった。
また、この高校に入学するため、俳優業は一旦停止していた。
今のところまた再開する予定である。
そして、今日は入学初日。いつものボサ髪、黒縁眼鏡で登校した俺は、まずクラス表を確認しに向かった。
周りは俺を見て何やらひそひそと喋り出す。
「え、何あの人」
「うわ、不潔そー。ぷぷっ」
「まじ隠キャの鑑じゃん?」
あーこれは俺の事を言ってるんだろうな〜。中学の時も似たような事を言われた事がある。
「てか、ここの制服似合わな過ぎでしょっ」
いやいやそもそも誰だよ。語尾に『w』ばっか付きそうなあの女は…。
そう思い、振り向いて見るとそこには見知った顔の奴らが二人居た。
片方は真田 真愛。最近テレビでもよく見る若手女優だった。
俺も一度だけ番組で共演した事があり、連絡先も入っている。
もう片方は村雨しお。こちらは最近売れ始めたばかりの新人歌手で、俺は初めましてだ。
現場では猫撫で声で絡んで来ていた真愛も、今は幾分か低いトーンで話している。
彼女たちの本性にゾッとしつつも、言われている事自体事実なので、俺は何も聞こえていなかったかのように装うのだった。
〜〜〜〜〜〜〜
さて、この来栖高校は芸能クラス含め、全クラスで六クラス存在する。
先程真愛達が言っていたように、ここの制服は、周りの高校と比べて特殊ななりをしている。
芸能クラスの奴らにはさらに、分かりやすいようにブレザーの襟にバッチが付けられている。商品となる彼、彼女らに傷でもつけようものなら、大人の力によって即退場(つまり退学や訴訟案件)となることは間違いないだろう。
そしてクラス表の前に立った俺のクラスはⅣ組。
もちろん、知った奴など一人もいない。
他のクラスにもざっと目を通すと、ちらほらとは前の学校の奴らの名前も見かけたが、指折り数えられる程しかいない。
それと、芸能クラスのⅠ組にも知った奴がチラホラ……。
…大丈夫。多分関わる事はないはず……。
そう暗示をかけながらクラス表の前を離れ、Ⅳ組へと向かう。
クラスに入った俺は、まず座席の位置に絶望する。
ドア側から三列目の一番前。一クラス三十六人の一列六人。つまり『真ん中の一番前』というポジション。
最悪だ……。誰か後ろと変わってくれ。
「はぁ……。」
「どうしたの?」
「いや、一番前とか最悪……え?」
突然左隣りから声を掛けられた。
「あぁ、ゴメンね?私、新田 美扇。お隣、よろしくね!」
「はあ。」
「君は?」
「晒 律。まあ、よろしくな」
「うん!」
声を掛けてくれたお隣さんは大層可愛かった。
長い黒髪を後ろでハーフアップにし、吸い込まれるような黒い瞳を持った美人。
こんな俺に声を掛けてくれるような良い人…いわば陽の存在の人だろう。
俺は挨拶も早々に、机に突っ伏した。
すると、お隣さんの周りに女子が集まりだした。
やはり陽の者だっか……。
その女子達は、隣の俺には目もくれず、大きな声ででぺちゃくちゃと喋り出し……。
「ねぇねぇ、今月のグローバーの表紙、四津さらりくんだったんだよねぇ〜!」
そう言って美扇が鞄の中から『グローバー』を取り出した。
その表紙には……俺がいた。
いや、正確にはもう色々と別人な俺がいた。
「ほんとだ。でもそれってメンズ雑誌でしょ?」
と、女子A。
「うん、でも私さらりくんのファンなんだ〜」
うん、ありがとう。これで君とはあまり話さない方がいい事が確定したよ。
「へぇ〜知らなかった〜!」
「言ってなかったからねぇ〜」
「あ、それって四津さらり?私もファンなんだ〜!」
と、新たな女子B。
「え、そうなの!?一緒に語ろうぜ〜!!」
「うんっ!」
やめてください。本人の前で語るとか恥ずか死にます。
意外に俺の知名度が高めだと分かり、俺は女子とはあまり話さないでおこうと決心した。
だが、この後、この決意表明は早々に打ち砕かれる事となる。