〜side由紀〜
申し訳ないです!
前回の話の内容ちょっと変えました。
矢嶋先生のざまぁは先延ばしに……。今は矢嶋先輩の土下座で我慢を……!
また確認の程、よろしくお願いします!
ちょっとした自虐も加えたんですけど分かりますかね?w
父が亡くなった。
それはまだ、私が小学三年生の頃だった。
その時、咲は年長さんで、だだもこねる甘えたがりな年。花もまだ一歳で、お母さんは世話が大変で手のかかる年だった。
そして私の家は、その名の通り地獄になっていた。
母は泣き崩れ、咲もわんわん泣いて、そんな皆んなが泣いているのを見た花も大声で泣いた。
近所からは苦情が絶えなかったが、どうする事も出来なかった。
こっちも傷ついているのに、毎日目を真っ赤にした母が頭を下げるのを見るのは辛かった。
その時に私は悟った。
私は、私だけはしっかりしなければ、と。
私も悲しかったけど、そう思うと涙はすぐに枯れ果てた。
枯れ果てさせた。
父が亡くなると、今までの家には住めなくなった。だから今のアパートに引っ越してきた。
ボロアパートだから家賃も節約できる。
それからの私は、今までとは違う、ニュー由紀を生きてきた。
母の手伝いを頑張り、家事も覚えた。
母が仕事で忙しい日は、咲や花の面倒を見た。
母の負担にならないように母に甘えていたのもやめた。
でも、私は一つだけ我が儘を言ってしまった。これだけは曲げたくはなかったから。
ピアノだけは続けさせてほしい、と。
母は笑顔で「良いわよ」と言ってくれた。
嬉しかった。
楽譜代やレッスン代は、決して安くない。
それでも笑顔で言ってくれた母に、心底感謝した。
ご近所さんで、ピアノはあるけど使わないから、と言って練習に使わせてくれる優しい人もいた。
だから、私は、ピアノに全てを賭けた。
将来、それでお母さんにお金を返すために。
私は咲達の面倒も見ながら必死に頑張った。
ようやく結果も出せるようになり、お母さんや、弟達も、とても喜んでくれた。
“自慢の娘、姉だ”と。
でも、私は指を折ってしまった。
いや、どちらかと言うと折られたの方が正しいのかもしれない。
でも転んでしまったのは私だ。
それに勝負を受けてしまったのも私。
どうしてあんな事を受けてしまったんだろう。どうしてもっと早くあの人の危険さに気づけなかったんだろう。
私の中は、自責と後悔の念でいっぱいだった。
指を折られたあの日、病院に行ってから帰ると、珍しくお母さんが既に家に帰っていた。
慌てた様子でこちらに気づき、近づいてくる。
お母さんの所に電話が入っていたらしい。
お母さんがまず開口一番に言ったのは、
―――突き指で骨折したんだって!?
だったからだ。
突き指……。正確には突き指なんかじゃない。きっと電話してきたのは担任の矢嶋先生だったのだろう。
怒りがフツフツと湧き上がってくる。
一体、私は何のために今まで…頑張ってきたと思ってるのっ……!?
でも、母に迷惑も心配もかけたくなかった。
だからここは矢嶋先生の嘘に、乗っかる事にした。
―――……うん。ごめんね。治療費、かかっちゃう。
―――そんなの気にしないでいいわよ。それより、ピアノ、弾けるようになるの?
―――うん。でも……元通り弾けるようになるまで時間かかるって……。ごめん。
―――そう……。とりあえず、安静にしてるのよ。
悔しい。
治療費などと言う無駄な出費までさせてしまう。
そんな自分が、不甲斐なくて仕方がなかった。
あの時の決意はどこに行ったのだろう……。
だからその日は、誰にも気付かれないように泣く事しか出来なかった。
〜〜〜〜〜〜〜
焦る。どうしようもなく焦ってしまう。
頬から汗が流れ落ちる。
背中もベタつく。
弾けない。右手がまだ言う事を聞かない。
何度弾いてもダメだ。
リハビリもまだ途中だし、しょうがないのかもしれない。
でも……。
どうすればいい。音楽祭当日まではあと数日しかないのに……。
受けたものは最後までやると言ったのは私だ。今更出来ないなど、そんな事は言えない!。
すると、音楽室の扉が開いた。
入って来たのは……やっぱり。律だ。
最近来てないと思ったら、久しぶりの登場だ。
なんてタイミングなんだろう。
こんな私なんて、私じゃない。こんなところ、律には見せたくない。
律には今まで沢山助けてもらった。
今日、矢嶋先生とあの先輩が突然謝りに来た。何があったのか分からなくて、ただ困惑してしまったけど。
でも後ろから律が来るのが見えて、なんとなく察した。
どうやったのかは分からないけど、この人がやったんだろうなって。
でも今は、ここを離れなきゃ。弾けない事がバレたら……律にも、心配させてしまう
「あら……律じゃない。ピアノ…使う?」
「いや、いいよ。お前の方が優先」
「そ、う……。でも、もう帰るし、いいわよ」
「え?もう帰るのか?」
律は驚いたようにこちらを見てきた。
ごめんね。やっぱり無理だった。
そう言えたら、楽だろうなぁ……。
「ええ。だからどうぞ」
そう言って私はピアノを彼に明け渡した。
だけど、彼はやけに察しがいいものだから困る。
「……もしかして、上手く弾けてないのか?」
……何よ。何も言わなくてもバレてるじゃない。
「……ごめんなさい。もう帰るわ。それじゃ」
「あ、おい!」
律が私を引き止めようとしてきたが、それを振り切り音楽室を出た。
家に帰る道中、雨がポツポツと降り出した。
あ、今日は家に来なくていいって言うの忘れた。
……まぁ、いっか。またピアノ、貸してもらいに行こう。
咲達には悪けど、律がいるし大丈夫だろう。
結局は人頼みな所も、やっぱりダメだなぁ……。
私、おねぇちゃん、ちゃんと出来てるのかな……?
そう思うと、不意に涙がこみ上げて来る。
何を泣いている。今はピアノに集中しなければ。
そう思う程に、涙は止まらなかった。
音楽業界のお偉方もきっと見にくる。
下手は出来ない。
申し訳ないが、明日からは学校を休もう。
そうしなければ、間に合わない。
無駄だろうと分かっていても、やらないよりはマシだ。
そのために、わざわざⅠ組に入れてもらったようなものなのだからーーー。
そして私は、雨に打たれながらも自分の家じゃなく、ご近所の家に向かった。
由紀ちゃんと右手取り替えてやるぜっ!!という勇敢な方のボタンは下のお星様になります……。
今更な話なんですが、前アニソン総選挙ありましたよね〜。
あれは……テンション爆上げでした。
また皆様の好きなアニソンとか教えてください〜




