お出掛けと思いがけない再会
日間ランキング2位ありがとうございます!
それと深夜投稿すみません!
今日は十一時から由紀と咲、花と出かける予定だ。
昨日、その事を二人に話すと花は大喜びしてくれたが、咲の反応はイマイチだった。ただ、咲の表情が嬉しさを雄弁に語っていた。
俺は予定の時間までの間、今度の映画の原作を読むことにした。
普通、学生のこういう時間は勉強をするのが一番いいのだろうが、正直言って、俺は勉強しなければいけない所がない。
入試の時に難問に気づかないくらいには、俺はいろんな問題と向き合ってきた。
内容は全て頭の中にはいっている。
本に集中していると、カイが突然話しかけて来た。
「何してんの」
「見れば分かるだろ。本読んでる」
「あーいや、そうじゃなくてその本。今度の映画のやつだろ?」
「ああ、うん。ていうかカイこそ今日は早起きだね?いつも昼ぐらいまで寝てるのに」
「俺、今日ちょっと実家帰るからさ。日帰りだけど」
「へぇ、そっか実家……俺も帰ればよかった」
いや、由紀にあんな事言っちゃったし無理なんだけどさ。
心配じゃん?あいつの事。
「あぁ、なここちゃんだっけ?律の妹ちゃん」
「そうだよ。……ちゃんと飯食ってるかな」
「おかんかよ」
「え、なになに?りっつんって妹いるの?」
そう言ったのは、同部屋の一人、朝比奈 信だ。因みにもう一人の佐藤 翔はまだ寝ている。カイと同じでこいつも睡眠時間が長い。
あとそのりっつんってやめてくれない?照れるから。
「そうだけど」
「え〜!写真ないの?」
「あるけど……妹のプライバシーは兄が守るのが役目だろ」
「なっ……もしかしてりっつんってシスコン……?」
「律はれっきとしたシスコンだぞ。信」
何を言うんだ海斗さんや。
「逆に妹が可愛くない奴っているのか?」
「うわ〜本当だ。俺、姉いるけどそんなんにはなれないわ〜」
「姉と妹じゃ結構違うと思うけど、下の子って可愛いだろ?信のお姉さんもそうなんじゃないの?」
「あっ……なんかちょっと心当たりが……」
「お前ら仲良し兄弟だなっ」
素早くカイの突っ込みが入る。
「て、そんな事はどうでもいいっ!見してくれよ〜気になるじゃん!」
「……絶対ブスとか言うなよ。殺すから」
「待って、なんか真顔で言われると怖いけど、大丈夫。人様の大事な子にそんなことは言わない」
信がそう言った。
俺は信のこう言う所が好きで、落ち着く。
ポケットからスマホを取り出して、写真アプリを起動。フォルダ「なここ」(329枚)を開いて信に渡してやる。
「ん」
「さんきゅ〜!どれどれ〜……ってなっ!?えっ!め、めちゃくちゃ美人じゃねぇかよ!!おい!!こんな妹さんがいるなら早く言えよ!!!」
「可愛いだろ?俺の妹。もうそれは世界一」
「ちょ、ちょっとだけでいいから写真送ってくんない?」
「無理」
「金出してもいい……」
「間に合ってます」
「ちぇっ。じゃあ今度しょうか」
「断固拒否」
「えぇ〜まだ言い途中だったじゃん……」
信はあからさまにしゅん、として見せる。
いくら友達の頼みでも、妹を誰かに紹介するなんざ絶対にしない。
うちの妹にお近づきになりたかったら自分で来やがれってんだい!!
「信。こいつにそんな事言っても無駄だぜ。写真見して貰えただけいいと思え。俺なんか最初写真すら見して貰えなかったからな!」
と言ってバチコンッ☆とウインクをかますカイ。
事実、始めこいつがなんかチャラそうだと思ったため断固として写真を見せてやらなかった。
妹のプライバシーは絶対に死守してやる。
と、ふと時計を見てカイに話しかける。
「ところでカイ。お前、もう行かなくていいのか?早起きしたっつー事は早くに出るんだろ?」
「うおっ!?いっけねー!!電車遅れちまうっ!!てことでさらばだ!」
茶番は終わりだぜっと、そそくさと部屋を出て行った。
「てことで、俺も本読むから」
「え〜〜〜」
そう言うと、渋々と言う様子で信は自分の机に向かった。どうやらきちんと勉強するらしい。偉い奴だな。
さぁ、俺も読書に集中する事にしよう。
〜〜〜〜〜〜〜
約束の十一時が近づき、電車にも間に合うようにそろそろ部屋を出ようと思った頃、ようやく翔がむくっと起きてきた。
毎度思うのだが、翔の起き方はさながらゾンビが起き上がるようだ。そのくらい突然なんの前触れもなく起きてくる。
すると、俺に気づいたのか翔が眠そうな目をこすりながら話しかけて来た。
「あれぇ、りっちゃん。お出掛け〜?」
なんとも気の抜ける声で話すのが、翔の特徴だ。それと多分、瑠衣とはまた違ったタイプの癒し系だと勝手に思っている。
だけど、りっちゃんはやめてくれ。やっぱり照れるから。
「そうだよ。ついでにカイも実家帰るってさ」
「ふぅん。そっか。行ってらっしゃ〜い」
それだけ言うとまたベッドにバタッと倒れてしまった。
まだ寝るのかこいつ……。
「りっつん行ってら〜」
「行ってきます」
そうして俺は由紀の元へ向かった。
〜〜〜〜〜〜〜
由紀の家に着くと、昨日のようにインターフォンを鳴らす。
すると間を空けずに、ドアが開いた。
「おはよう。いや、今はこんにちはかしら?」
「うん。おはよう。……その服、似合ってるよ」
今日の由紀の格好は白を基調としたワンピースを着ている。足は歩きやすいスニーカーを履いて、髪もポニーテールにされている。
ただ、指の包帯は相変わらずで痛々しさが強調されてしまうのが残念だ。
「そう……ありがとう。外用の服がこれしかないのだけれど、良かったかしら?」
「全然大丈夫だよ。可愛い」
と、みるみるうちに由紀の顔が赤くなっていく。
あれ、俺何かしたかな?
「あー!律がねぇちゃんの事口説いてる!!」
「……てるー」
後ろから咲と花が顔を出す。
というか口説く?俺が?彼女を?
「いや、大丈夫だぞ。お前らのねぇちゃん奪うような事しないから」
「…なんだかそう言われるとちょっと腹がたつわね」
「俺も」
「ふんふん」
あれ、安心させようと思って言っただけなんだけど……逆効果だったらしい。
なかなかどうして人の心は難しい。
「なんか、ごめん?」
「いや、いいのよ。それより早くいきましょう」
「ああ」
由紀の家から真っ先に向かったのは、街の方にある大型ショッピングモールだ。
咲や花もいるし、遊園地やテーマパークに連れて行ってやりたいのはやまやまだが、由紀の指に何かあっては困る。
そのショピングモールには、飲食店や衣服店が数多くあり、その他、娯楽施設や映画館、はたまた屋上庭園もある。
ここなら咲や花も楽しめるだろう。
中に入ると、目をキラキラさせながら、弥生姉弟、妹は周りをキョロキョロしている。
「ここに来るのは初めてか?」
「え、ええ。あまり外へ出る事もないし……」
「なぁ、律!早く行こう!!」
「待て待て、まずはお昼だろ。遊ぶのはそれからな」
「へーい」
俺たちは早速、フードコートに向かう事にした。
フードコートに着くと、そこは多くの人でごった返しており、また弥生姉弟、妹は目をぱちくりしていた。
どうやら大人数にもなれていないらしい。
「咲、花、何食べたい?」
「え?えっと……」
「お金は気にすんな。俺が奢ってやるから何でもいいぞ」
「ほ、ほんと……?じゃあ、ラーメン……」
「花は?」
「はんばーがー食べてみたい……」
「オッケー。由紀は?どうする?」
「え?私は悪いからいいわよ」
「でも、そうもいかんだろ?」
「それでもいいわ。この子達に奢ってくれるだけで十分ありがたいわ」
「そうか……。じゃあ俺もいっかな」
「え?どうして?」
「別にお腹空いてないし」
「そ、そう……」
ちゃっちゃと二手に分かれてラーメンとハンバーガーを頼みにいく。
一緒にいる咲はちょっとばつが悪そうだ。
「ねぇちゃん。また俺たちの為に我慢してる……」
「そうだな。でもねぇちゃんはそういう人だからな」
「でも……!」
「なら、お前達がちょっとねぇちゃんにお昼分けてやれ」
「え?」
「お前たちが食べて欲しいって頼んだら、多分ねぇちゃんは食べると思うぞ。後で花にも言っとけ」
「う、うん!」
食べ物が揃うと、早速咲がさっきの事を言い出した。
「ねぇちゃん、俺のラーメンちょっと食べてよ」
「花のもあげる……!」
「え?いいわよ。二人で食べて?」
「これは俺たちからのお願い!」
「おねがい!」
「……じゃあ、ちょっとだけいただくわ」
「うん!」
咲は満足そうに顔を綻ばせた。すると、俺の方も向いて、
「律も」
と言った。
「え、俺も?」
「うん。これは強制だから」
花もコクコクと頷く。
仕方なく、咲と花のラーメンとハンバーガーを四人で分ける事になった。
もちろん、二人の分は多めに。
次に向かったのは服屋が並ぶ所だ。
先に咲や花の服を買ってやり、その後は由紀の服選びに入った。
だが、ある服屋に入った所で俺は見たことがある頭が見えた。
頭だけだったが間違いない。
「久しぶり、人気者さん」
振り返ったその少女は紛れもなくーーー
「……おお!お久ですな有名人」
「おい」
「てへぺろっ」
俺の妹の、晒なここだった。
何それ弥生兄弟健気っボタンは下のお星様になります☆




