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きっかけ

これが実質処女作になるかと思います。

温かい目で見守って頂けると、誠に恐縮でございます!

 きっかけなんて、ありきたりなものだったと思う。

 ある日、街を歩いている時に声を掛けられた。


「あの〜、このAKスタジオってどこにあるか分かりますか?」


 AKスタジオ。俺がよくピアノを弾かせてもらっている行きつけのスタジオだ。歌やダンスに様々な楽器も弾ける、大きめのスタジオである。


「あぁ…、俺も今からそこへ行く所だったんですが……一緒に来ます?」

「いいんですか!?ありがとうございます!!」


 その人は人相の良さそうな30代後半くらいの男の人だった。背は当時の俺よりも少し高いぐらいだ。


「そこで何するんですか?」


 俺はちょっとした興味で聞いてみた。

 ずっと黙っているのもなんだか嫌だったし。


「僕が何かする訳じゃないんですけど、少し、聞き込みを」

「へぇ。何をやられてるんですか?あ、迷惑じゃなかったらでいいんですけど……」

「迷惑だなんてそんなことないですよ〜。僕、実はドラマのディレクターやらせてもらってまして……」


 そう言って彼は少し恥ずかしそうに頭をかいた。

 ディレクター…ディレクターが聞き込みって、何のだ?

 てっきりライターか記者の類だと思っていた俺は、つい呆けた顔をしてしまった。


「珍しいですね」

「そうですかねぇ?」


 結局、それっきり会話は途切れてしまい、俺たちは黙々と目的地へ向かう事となった。

 声を掛けられた所からスタジオは、あまり遠くなく、大体五分ぐらいですぐに着いた。


「着きましたよ」

「あぁ、ありがとうございました!」

「いえ。じゃあ、俺はこれで」

「はい!」



 スタジオへ着くとそそくさと中へ入って行き、俺は店長の高橋さんに声をかけた。


「高橋さん。また三時間借ります」

「おぉ〜律くん!!今日もイケメンだねぇ〜」

「冗談はよしてくださいよ」

「いやいや、私の目は騙されないぞっ☆」


 こんなモサモサ頭に黒縁眼鏡の根暗野郎のどこにそんな要素があるのか、逆に聞きたい。

 中々ウザったい口調をした高橋さんは、そう言って『5』のカードキーを渡してきた。


「わざわざこんないい部屋じゃなくても……」

「サービスだよ〜!お代は普通部屋と同じでいいからさっ!」

「はい。言われなくてもそのつもりですよ。でないと立派な詐欺です」

「つれないな〜もうっ!」


 俺は高橋さんを無視して、5番のカードキーを受け取ると、さっさとその場を立ち去った。


 突き当たりを右に曲がり、さらに奥の部屋へと入る。

 中には立派なグランドピアノに、巨大スクリーン、更にはスピーカーなどもあり、さながらミニコンサートホールの様である。

 実際、リハーサルに使われる事もあるらしく、観覧用の客席も数席用意されている。


 俺はピアノの前に座ると、楽譜を広げて置いた。

 前髪をピンで止め、大きく深呼吸をする。

 少し冷たい鍵盤に手を乗せると、始めの音を奏で始める。


 そう、これが俺の大好きな『ピアノ』


 弾いている内に曲の世界に入り込んだかのように、周りの音は一切遮断される。

 だから、ドアのノックの音にも、誰かが部屋に入って来たことも気がつかなかった。


 最後の音まで弾き終える。すると、後ろの客席から拍手の音が二人分聞こえて来た。

 さっきの男の人と高橋さんだった。


「凄い…凄く良かったよ!本当に素晴らしかった!!僕は君に決めたよ!!」

「は?」

「そのビジュアルもそうそういるものじゃないしね!!」

「ん??」


 話の内容が全く飲めないまま、その男の人はサムズアップをするのだった。



 それが俺が中三の春の事。敏腕ディレクター西井さんとの出会いだった。


 ついでに高橋さんが「ほら、言った通りでしょ!?」と、ドヤ顔でこちらを見てきたのはなんかウザかったので、全力で無視させていただいた。


好き要素詰め込みマン参上

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