3話
ティーポットからお茶を注いで村松は弛んだ息を吐いた。
「はぁー、この紅茶美味しいですね。」
「ダージリンファーストフラッシュだからな。」
窓に張り付く女の視線がまとわりつく。
「嫌だー、帰りたーい。」
カウンターに突っ伏してジタバタしてみる。
「何だよ、高瀬。」
「何の解決策も見いだせないまま、時間だけが過ぎてるー。もー、やだー。」
「帰りたきゃ帰れよ。俺はこれ飲み終わったら帰るし。」
村松の発言に頬がひきつる。予想以上にマイペースだ。
「無理、帰れない。私には無理ー。」
「んー、エンマがそう言うなら無理かー。」
「志賀さんが何とかしてー。」
ムクリと起き上がり、わざとらしくお祈りのポーズをとってみる。村松は紅茶を一気に飲み干すとズカズカとドアに向かった。
躊躇無く外に出る。
「え? 志賀さん、あれ大丈夫なの?」
「んー? んー、概ね。」
暫くして、村松は何かを左手に握りしめて戻って来た。女の姿はもう無い。
「…………」
村松の行動にかける言葉が見つからない。
「何で、何にも聞かないんだよ。」
「何で聞かないといけないのよ。」
「もう居ないから帰られるんじゃないか?」
呑気にそう言うと、志賀さんは窓の向こうを見通した。早く追い出したいようだ。
「高瀬が無理って言うから行ったのに……」
「それはありがとー。」
剥れる村松の拳を見詰める。
「でもね、危なかったかも知れないじゃない。」
「なんかさ、そうでも無い感じがしたし。」
「本人がそう言うなら、まー大丈夫。」
適当な相槌で私達の傍らに立つとほら、さっさと帰れよと言わんばかりにドアに促した。
「あの! これ貰ったんだけど……」
拳を突き出して村松はわたしと志賀さんを交互に見る、どうしたら良いかと。
「知らない人から物を貰うとか、どうかと思う。」
「あー、でもあの"子"何らかの答えが無いと離れないタイプっぽかったけどね。」
「そうなんだ、村松の犠牲は忘れないわ。」
「え? ヤバい感じ?」
「私は初めからそう思ってたけど。」
「僕にはそんな風には見えなかったけどねぇ。」
「えー? どっちなんだよー。」
情けない顔をして、何でこんなの貰っちゃったんだろー。等と、頭を抱え始めた。
考える前に歩く人しかここにはいない。
志賀さんは単純に面倒な事には関わりたく無いだけです。




