決意とそして………
バン!
僕は部屋の扉を開ける
ベッドから扉に行くまでに時間がかかったけどね!
「……………」
ゴーレムが僕を見張っていた
「ゴーレム!ちょっとお願いがあるんだけど!」
「…………?」
ゴーレムが僕に近づく
「魔王に会わせて、僕は決めたよ!」
ゴーレム「………!」
ゴーレムが僕を持ち上げて歩き出した
・・・・・・・
「………来たか」
ゴーレムに運ばれて、僕は魔王の座る玉座の前に降ろされた
「決めたよ……」
「ならば聞かせてもらおう………ゴーレム、下がれ」
「……………」
ゴーレムが玉座の間から出ていく
「………他の者も下がれ」
「よろしいのですか?」
「構わん………」
魔王に多分報告をしていた魔物が出ていく
「では…聞かせてもらおう」
「うん、僕の答えは…………」
帰るよ
……………………
「ほう?元の世界に帰ると?」
「うん!僕は帰る!帰るったら帰る!」
「…………………理由を聞かせてもらおうか?」
「そんなの話す必要ないよ!」
「………いや、あるな………」
「なんで!」
「悩み、苦しみ、考え抜いた者は、その様な迷いに満ちた眼をしない………」
「!?」
「黒井流星よ………貴様が本当に決意した事なら我は貴様を帰すつもりだ………時間はある、後悔なき選択をせよ」
「……………時間はあるって……いつ勇者が攻めてくるかわからないのに?」
「勇者はまだ未熟、魔界には来れん………」
「僕が決めるのに10年20年かかるかもしれないよ!」
「構わん、待とう………我等は人間と比べて長寿ゆえ、10年も20年も30年もたいして変わらぬ」
「でも、でも!」
「黒井流星……言い訳を考えるな………焦らず、悩み、決めよ」
「………なんだよ………なんでそんな風に言えるんだよ………」
「………………」
「僕みたいなただの子供を見てなんでそんな事言えるんだよ!!身体強化で強くなってるかもしれないけど!もっと強い人なんていっぱいいるんだよ!僕なんて喧嘩も弱いし運動神経も普通だし!良いところなんて何もないよ!!」
僕は叫ぶ
「魔王の貴方は僕に何かを期待してるかもしれませんけど!僕には何もないんだよ!」
人に自慢できることも!
人を惹き付ける何かも!
自分に自信を持てる何かも!
「何も………ないんだよ………」
僕は俯いた
「………何もない……」
魔王が呟く
「くだらぬ………」
「!?」
くだらない?何が?
「くだらないって………」
「くだらぬことだ…黒井流星、貴様は己を知らなすぎる」
魔王が玉座から立ち上がり僕に歩み寄る
ズシッ
1歩
「貴様には勇気がある、我に殴りかかるくらいにはな」
ズシッ
2歩
「貴様には魔物を受け入れる心がある、城の者達と普通に接する事が出来るほどのな」
ズシッ
3歩
魔王が僕の目の前に立ち、僕を見下ろす
「貴様には可能性がある、我の下に居れば必ず戦力になれる程の」
そう言って僕の眼を見ながら言う
「僕には………そんなもの………」
「そうか、ここまで言ってもわからぬか………ならば言い方を変えよう」
「………?」
ガシッ
「!?」
魔王が僕の肩を掴む
そして屈み、目線を合わせた
「黒井流星、我の下で戦え………我には貴様が必要だ……」
必要?………僕が?
「そ、そんな事言われて………従う…わけ………」
「……………」
魔王は僕の眼を見続ける
「そんなの………」
…………必要なんて言われたのは初めてだよ
「…………………僕は人間ですよ?」
「わかっておる」
「すぐ死ぬかもしれませんよ?」
「貴様は死なん、強くなるからな」
「裏切って勇者の味方になるかもしれませんよ?」
「貴様を繋ぎきれていなかった我の責よ、貴様を責めはせん、好きにせよ」
「………………」
なんだよ………この人、魔王なのに優しすぎない?
腕斬られたけどさ、強制的に召喚されたけどさ
でも………今はこの人の事を信じてみようって、僕は思い始めてる
「ここに、いてもいいですか?………貴方の部下になってもいいですか?」
涙が出る
「願ってもないことだ………」
「…………っ!」
僕はひれ伏す
「貴方の下で………戦わせてください………」
「………よくぞ、決めてくれた」
魔王様が立ち上がる
「………フレイ」
「はいよ!」
魔王様が呼ぶと魔王様の隣に人が現れた
なんか全体的に赤い人だ
「鐘を鳴らせ」
魔王様が玉座に座り言う
「了解!っとその前に………」
フレイと呼ばれた魔物が僕に近付く
「ほら、立ちなよ」
僕に手を差し出す
「あ、ありがとうございます………」
僕は手をとる
「!?」
その瞬間、僕の身体に悪寒が走る
この人………抑えてるみたいだけどかなり強い殺気を感じる………身体が震えてくる
怖い、怖い、怖い、怖い
「フレイ………」
「ちょっと驚かせただけですって!ほら、上司はこんなに強いぞって教えただけで!!」
「上司?」
立ち上がった僕はフレイさんの発言に首をかしげた
「そうそう、先に自己紹介しとこうか!俺はフレイ、"灼熱"のフレイだ、四天王をやってるよ」
四天王!?………つまり魔王軍のNo.2の役職………
「じゃあちょっと行ってきますか!あ、流星!この後の事で………ちびるなよ?」
「へっ?」
ボッ!
フレイさんが消えた
「えっ?ちびる?えっ!?」
何言ってるのあの人!?
僕がフレイさんの発言に混乱しているとき
カラーン!
ゴゴーン!
カラーン!
カーン!
「鐘の音?」
鐘の音が響く、凄くうるさい
ゾクッ………
「えっ?」
僕の身体が震える
原因はなんとなくわかる
僕の後ろに現れていく気配………僕に向けられる視線、殺気
色々な気配がドンドン現れてきた
そして………
ダン!
「36師団長…揃いました」
ドン!
「魔獣将………集いました」
僕は振り返る
そこには昨日も見た魔物達がいた
あ、ヒョウガさんやフブキさんにフィルユさんもいた
ヒュン!
僕と魔王様の間にフレイさんみたいな気配が現れた
僕は前を見る
「四天王、ここに………」
フレイさんと3人の魔物が立っていた
僕に1番近いところにフレイさん
それから離れるように
和服で鬼の仮面をつけてる魔物
身体に大量の鎖を巻き付けている魔物
女性の人間の姿をした人がいた
「揃ったな………皆、聞け………」
魔王様が僕を手招きする
「…………」
僕は玉座に近付く
「この異世界の少年、黒井流星はこれより我が軍で共に戦うことを誓った………」
ざわ!
「あの子供がか?」
「へぇ、昨日は断ってたのに?」
「信用できんな」
そんな声が聞こえた
信用か………これから稼ぐよ!
「よって、この流星に相応しい役職を命じようと思う」
魔王様が立ち上がる
「ブルムよ、前に出よ」
「はっ!」
昨日僕に襲い掛かった魔物が僕の隣に立つ
「覚悟はしていたであろうな?」
「…………はい」
魔王様が手をかざす
ボワッ!
ブルムの右肩から紫色の炎が出てくる
その炎が魔王様の手のひらに乗り
「ブルムよ、貴様の第6師団長の役職を剥奪する、これからは副師団長として励め」
「はっ!」
「そして流星よ……」
「はい!」
「これより貴様には第6師団長の役職を与える」
炎が僕の肩に飛び込む
「あつっ………くない?」
僕は服を捲って右肩を見る
なんか紫色の文字がある
「それはこの世界で6と読むんだよ」
フレイさんが教えてくれた
「6………師団長………」
「そして師団長としての、貴様に名を与える」
「名前?」
「師団長からは二つ名があるんだって」
フレイさんが教えてくれる
フレイさんの灼熱みたいな?
「流星……」
魔王様が僕の頭を掴む
すると何か黒いもの………闇って言うの?僕はそれに包まれた
「貴様には"黒騎士"の名を与える、この鎧と共にな」
ズシッと身体が重くなる
これって………鎧を着せられた?
……………どんな鎧かはわからないけど………
こう答えた方がいいよね?
「………この"黒騎士"、必ず魔王様の力になります!」
こうして僕の物語が始まった
魔王の部下として
黒騎士として
"決意とそして…………"
"黒騎士誕生"




