メイドとお世話
「うわぁ!」
ボフッ!
僕は連れていかれた部屋のベッドに落とされる
「な、なんなの?」
僕はまだ混乱している
「失礼しました………こうでもしないと貴方様は大人しくして下さらないと判断しましたので。」
「………」
僕は目の前の2人を見る………
「紹介させて頂きます、私はルサ、魔王様より貴方様のお世話をさせていただきます。」
メイド服を着た白髪の女の子がお辞儀をしながら言う
「………………」
岩の魔物はだんまりだ
「彼はゴーレム、主に力仕事は彼にご命令を、彼は喋ることが出来ませんので御容赦を。」
「僕は黒井流星………あの君は人間なの?」
取り敢えず僕も自己紹介をしてルサに聞く
「私は人間ではありません。」
「えっ?でも見た目は完全に人間だよ?」
「擬態しているだけです。」
「じゃあ種族はなんなの?」
「…………」
僕の質問に答えない
「種族は?」
僕が聞くと
「………はぁ」
ルサはため息を吐いた
そして僕を蔑むような眼で見る
「私は魔王様より貴方様のお世話を命じられました、貴方様のお世話に私の種族は関係ありません、そして私は貴方様を全く信頼していません、その様な方に種族を教えると思いますか?」
「……………ご、ごめんなさい」
この子怖いよ!?凄い怖いよ!?
ようするにお世話はするけどそれ以外は全く関わらないと………
「それでは先ず入浴をさせていただきます。」
そう言われて僕は今の状態に気づく
僕の学生服はさっきの僕の出血で血まみれだ
ベッドのシーツも血で汚れている
「は、はい………」
「では衣服を脱がさせていただきます。」
「えっ!?いいよ!自分で出来るから!!」
僕は拒否する
「………それでは身体を洗わさせて頂きます。」
「自分で出来ます!お風呂の使い方を教えてください!」
「かしこまりました………では入浴の準備をしますのでお待ちを………」
そう言ってルサは部屋の端にあった扉に入っていった
あの先にお風呂があるのか………
「………………」
「………………」
ゴーレムがずっと立っている
…………あ、そうだ今のうちに逃げればいいんだ!
僕は部屋の扉に近付く
スッ!
「……………」
すると扉の前をゴーレムが腕で塞ぐ
「通っちゃダメ?」
「……………」
無言の圧力………扉からは出られないか
「それなら………」
僕は窓に近付く
この大きさなら僕は通れる!ここから外に…………外に………
「うわぁ…………」
窓から外を見ると凄く暗い………いや夜みたい暗いとかじゃなくて………なんていうの?いかにも魔界ですって風景だ………
「そして高い………」
地面との距離もある
いくら強化されているからってこれは………死ぬ
死ななくても動けなくなりそうだ………窓からの脱出も無理
「そもそも行くあてがない!」
魔界からどうやって出るの!?てか僕はこの世界で生きていけるの!?詰んでるじゃないか!!
「入浴の準備が整いました………」
「あ、はい………」
打つ手なしか………
僕はお風呂に入る
ルサから教わったけど僕の世界のお風呂と対した違いはなかった
ガスとか電気の変わりに魔法で動く道具でシャワーも出来るし浴槽にもつかれた
「…………はぁ、逃げれないし………帰れないし………どうしろって言うんだよ。」
魔王に従うしかないの?でもあんな事されて従うなんて嫌だ………
・・・・・・・
お風呂から出たら着替えが用意されていた
そして部屋に戻ったら食事が用意されていた
「お食事です。」
そう言ってルサは僕を椅子に座らせてナプキンを僕に掛ける
「…………」
目の前にある料理は美味しそうだ………ステーキやサラダにスープ………美味しそうだけど
「これ……なんの肉?」
牛肉に見えるけど………まさか人間の肉とか
「牛肉ですが?」
「………………本当に?」
「はい」
…………信じていいのかな?
「…………………………」
無理だ、とてもじゃないけど信じられない
「ごめん、いらない………」
「……………………」
「本当にごめん」
「…………はぁ」
ルサは食事を片付ける
「では今日はこのままお休みください。」
ルサがベッドを手で指す
僕が入浴している間にシーツを変えたのかベッドは綺麗に真っ白だ
「……………」
「……………」
「お、お休み………」
僕はベッドに入る
ここは従った方が良さそうだ
フッ!
部屋の明かりが消えた
何も見えない
ガチャ
ルサとゴーレムが部屋から出るのを扉から漏れる光で見る
………………………
数分経ったかな?もう二人とも居ないよね?
僕はベッドから出て手探りで部屋の扉を見つける
「廊下がある程度明るかったらいいな、そしたら見えるし」
真っ暗だったら僕は見えないけどさっきのルサとゴーレムの様子だと二人は暗くても見えてるみたいだったし………少しでも明かりがある方がいい
カチャ
静かに扉をあける
「………………」
「……………はは」
扉を開けたら目の前にゴーレムが居た
「…………………」
「…………お、起きてる?」
ズズッ
ゴーレムが少し動いて起きてる事を証明する
「ま、まさかずっといるの」
ズズッ
ゴーレムが腕を組む………ずっといるって意味かな………つまり
「逃げれないんだね?」
「……………」
「はぁ…………」
僕は扉を開けて廊下からの明かりを頼りにベッドに戻る
ガチャ
僕がベッドに入るとゴーレムが扉を閉めた
「……………詰んだ」
僕はそう呟くと諦めて眠ることにした。




