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初任務 3

 炎のオーブを奪いにフソレという村を襲撃したら

 勇者に遭遇した



「覚悟しろよ! 黒いの!」


 レオンが剣を抜く……流石に素手で挑もうとは考えないか

 僕も剣を抜く


『黒騎士と呼べ……』


 僕がそう答えるとレオンが一気に踏み込んできた

 速いけど……うん、余裕で対応できるね


 ギィン!


 上から振り下ろしてきたレオンの剣を受け止める

 ……うん、力はあるけど……何て言うか……重くはないね


「おら!」


 ドゴォ!


 レオンは剣を受け止められたのを見た後に、僕のお腹を蹴ってきた


『……今、何かしたか?』


 しかし僕には効いていない!

 魔装のお蔭でノーダメージだよ!


「なんだ? 手応えはあったんだがな!」


 レオンはバックステップして距離を取る


『……この程度なのか? 我には全く効いていないのだが?』


 わかりやすい挑発

 まあ、本当に効いてないからね……


「これからだ! 見せてやるよ……俺の本気を!!」


 そう言ってレオンは剣を縦に構える

 すると……剣が光だした


『むっ!?』

「あれは!?」

 

 ブルムが驚く


「師団長! 気を付けろ! 光魔法だ!!」

『あれがか!』


 光魔法……一部の人間にしか使えない魔法で……魔族特効な魔法……

 魔族の皆が警戒してる魔法だったよね……それが目の前に!


『させん!!』


 僕はレオンに向かう

 相手の魔法の発動を待つ気はない


「もう遅い!!」


 ニヤッとレオンは笑って剣を縦に振る

 刀身がさっきよりも伸びてる!


『ちっ!』


 僕は剣を防ぐために止まって剣を構える


『なっ!?』


 僕は剣を防いだ……筈だった

 レオンの剣が僕の剣をすり抜けた


「光に実体は無い!! 剣なんかで防げないんだよぉ!!」

『ぐっ!』


 避ける前に……光の剣が僕の身体を縦に斬った

 そんな……こんなアッサリと斬られるなんて!

 嘗めてたつもりは無かったけど……油断したのかな?

 最初のふざけた態度は相手の油断を誘うためだったのか!

 くそ! こんな簡単に死ぬなんて……


 …………あれ?


『…………?』

「……………?」


 先ずは僕が異変に気付く

 次にレオンが首をかしげ……周りの人が驚く


 斬れてない……


『……むっ?』


 身体を触ってみる……うん……斬れてない

 頭も上半身も無事……下半身は触ってないけど無事なのはわかる

 あれ? 光の剣は僕の身体を斬ってたよね?


「なっ!? どうなってる!? ええい! 『シャイニングスラッシュ』! 『ライトニングクラッシュ』!」


 シャイニング……なんて?

 ライトニング……なんて?

 えっ? それ技名?

 てか全然斬れてないんだけど!?

 ふざけてるの? ねえふざけてるの?


「そんな! あり得ない! 光魔法が効かないのは人間だけの筈よ!!」


 レオンの仲間の魔法使いが叫ぶ

 ……あ、そうなんだ……人間には効かないんだ……へぇ


『どうやら、貴様の未熟な魔法は我には通じないようだな……』


 人間だってバレるのは嫌だし……ブラフでも言っておこう

 ……んっ? ていうかレオンの剣汚いな!?

 血塗れじゃないか! 手入れはちゃんとしろよ!!


『まあ、己の武器も手入れできない者に我が斬られる訳がないか……』

「うるせえ! さっきゴブリンを斬った後に駆けつけたから暇がなかったんだ!」

『……ゴブリン?』


 えっ? 今……ゴブリンを斬ったって言った?


「っ!? ぐわっ!」


 僕は一気に近付いてレオンの首を掴む


『その話……詳しく聞かせてもらおうか?』

「レオンを離せ!!」

『むっ!?』


 ゴォン!!


 レオンの仲間の武道家の拳が僕の脇腹に入る

 痛くは無いけど……響いた

 レオンの一撃より効いたけど!? 君の方がレオンより強いでしょ!?


「ごほっ! ごほっ!」


 レオンから手を離してしまった

 レオンは武道家と一緒に僕から距離を取る

 てかブルム! 君も手助けしてよ!


「お前には関係ないだろ!」


 レオンが僕を睨む


『いや、関係ある……』


 最悪の考えが浮かぶ


「ちっ! 近くの森のゴブリンを狩ってきただけだっつーの!」


 舌打ちしてから答えるレオン

 ……近くの森……そこのゴブリン……

 それってさっき僕達がお世話になった……


『…………何故だ?』

「あん?」

『彼等は森で静かに暮らしていた……彼等がお前達に何かしたのか?』


 襲ったとか……物を盗んだとか……


「お前は馬鹿か? 魔物を殺すのは当たり前だろ?」


 レオンがそう言うと


「そうだ!」

「魔物なんて殺すべきだ!」

「殺っちゃえ勇者様!」


 村人達が賛同した


『…………』


 あれ? なんだろ?

 この……モヤモヤした感じ……

 あ、身体から魔装が溢れてきてる……


「し、師団長?」


 団員の1人が怯えてる

 ……僕を見て怯えてる


『…………すぅ……はぁ……』


 僕は深呼吸してから周りを見る


 ブルムや団員達が僕を見てる

 怯えてる者も居るけど……心配そうに見てる者も居る


 次に村人……彼等は僕らを罵っている

 魔族は殺せ

 魔物は殺せ

 …………彼等は本当に僕と同じ人間なの?

 さっきまで感じていた筈の罪悪感が消えていた……


 そしてレオンを見る


「なんだよ? 怒ってんのか?」


 ああ、コイツは何とも思ってないんだ……

 ゴブリンを殺した……命を奪ったって事を……

 殺した相手が人間だったら何か感じたのかな?

 殺した相手が魔族だったから何とも思ってないのかな?



 ああ……もうどうでもいい

 ごちゃごちゃ考えるのは止めよう

 今……やりたいことをやろう

 後悔するのは……終わってからだ……


 ザシュ!


「……へっ? ぁ……うわぁぁぁぁぁ!?」

「なっ!?」


 一気に踏み込んで、レオンの右腕を斬り飛ばす


『貴様を殺す、理由が出来た』


 正直悩んでたんだ

 勇者を殺す……つまり僕と同じ様に召喚された……ある意味被害者と言える人間を殺す

 それは普通に人を殺すよりも重いと僕は感じていた

 人を殺した事がない僕が……そんな人を殺すなんて……そう悩んでたんだ


 でも……もう悩んでない

 いや、悩むのを……考えるのを放棄した

 今は……こいつを殺そうという自分のやりたいことをやることにする


 終わった後……後悔するのはわかってるけど……それでも……

 僕はレオンを殺したいと思った


 遊び感覚でゴブリンを殺した男を

 魔族ってだけで殺した男を……

 殺したいと思ったんだ


 わかってるんだ……こんな理由でレオンを殺す僕も……レオンと変わらないんだって

 わかってるけど……殺したいんだ


『叫ぶな……その程度、すぐに治せるだろう?』


「ぐっ! がぁぁぁぁ!」


 レオンの仲間の僧侶がレオンの腕をくっつけた


「くそ、卑怯な真似を!!」

『卑怯? 今は戦いの最中だ……油断した貴様が悪い』

「この野郎ぅぅぅぅ!!」


 レオンは剣を振り回す


『愚か者が……』


 僕はまた距離を詰めて、レオンの腕を掴む


「っ!」


 ボキッ!


 そして左の拳をレオンの顔に叩き込んだ


「ぐっ! がぁ!」

「この!」


 武道家が踏み込んできた

 武道家の拳が僕の身体に何発か叩き込まれた

 それだけ素早い拳だった


『効かん!』


 でも魔装に防がれてるんだよ……


 ゴスッ!


「かっ!」


 僕の右膝が武道家のお腹にめり込む

 そしてぶっ飛ぶ武道家……受け身をとったけど、立ち上がれずに膝をついてる……

 そこまで効いたんだ……


「レオン君! 逃げるわよ!」


 魔法使いが叫ぶ


「なっ! んな事できるわけ……」

「アイツは攻撃に剣を使ってないわ! 全然本気を出してないの! 光魔法が通じないなら今のレオン君に勝ち目が無いわ!」

「ぐぅ……」


『逃がすと思ったか?』


 僕は剣に魔力を通す……魔装の応用だ

 これで消し飛ばしてやる!!


 僕は剣を振る

 闇の魔力が剣の先から飛んでいく


「テレポート!!」


 ヒュン!


『何!?』


 魔力がレオン達に届く前にレオン達が消えた

 相手がいなくなった魔力はそのまま飛んでいき……先にあった民家を一軒消し飛ばした


『何処だ! 何処に行った!!』


 僕は周りを見渡す


「師団長!」


 ブルムが僕の側に駆け寄る


『ブルム! 奴を探せ! 今すぐだ! 殺してやる!!』

「落ち着け! 勇者の奴は逃げた! テレポートだ! 瞬間移動する魔法だ! もう近くには居ない!」

『っ! ……逃げたのか? 奴等は罪の無いゴブリン達を殺したんだぞ? それなのに……逃げたのか!!』


 僕は怒りのままに剣を地面に突き刺す


 ズズン!!


 地響きが起きて……地面に大きな亀裂が入る


「ひぃぃぃぃぃ!!」


 村人どもの悲鳴が聞こえる……ああ……まだこいつらがいたな


『……貴様らも……殺すか……』


 完全に八つ当たりだ……でも殺さないと落ち着けない

 そう思って歩く僕をブルムが後ろから押さえつけてきた


『離せ……』

「いや、無理だ……おい! お前らの頼みの勇者は逃げた! 早くオーブを出せ!! 死にたいのか!!」


「ひっ!?」


 司祭が懐からオーブを取り出した……持ってたのか

 団員の1人がオーブを手に取る


「これに間違いなさそうです!」


 そう叫ぶ


「よし! 退くぞ!!」


 ブルムの声で全員が走り出す


『離せ! ブルム!』


 僕はブルムに担ぎ上げられて運ばれた


 ・・・・・・・・


 ゴブリンの森に入った所で降ろされた


『どういうつもりだ! 何故止めた!』

「落ち着け! 俺達の仕事はオーブの回収だ!」

『だが奴等はゴブリンを!』

「こんな事は良くある事だ!! いちいちキレるな!」

『っ!』


 そうか……ブルム達は落ち着いてると思ってたら……慣れてるのか

 地上界ではこんな事が良くあるのか……でもだからって……


『奴等を生かす理由には……』

「奴等を殺すよりも生き残りのゴブリンを見つけて保護するのが先だろ!」

『…………あっ』


 そうだ……もしかしたら生き残りが居るかもしれないんだ……

 村人を殺すのに時間をかけてたら……生き残りのゴブリンが死ぬかもしれないのか


「……落ち着いたか?」

『…………すまない』


 少しずつ冷静になれてきた……そうだ、レオンは逃げた、オーブも手にいれた

 ならゴブリンの生き残りを見つけるのが優先される事だ……

 そんな事に気付けないなんて……僕って本当にダメだな……


『皆、ゴブリンの村に向かうぞ! 生き残りのゴブリンを救出する!』

『おおおおおお!!』


 ・・・・・・・・・


 ゴブリンの村に到着した


「うわ……」


 団員達が息をのむ


「生き残りは絶望的だな」


 ブルムが呟く


 村は壊滅していた

 家にしていた木は折れたり燃えたり

 村のあちこちにはゴブリン達の死体

 さっきまで……生きていたのに……


『……もう少し、滞在していたら……』


 そうしたら僕達がレオンと対峙できた……撃退できたんだ……


「…………ちっ! うざってえ……自分を責めたってなんにもならねえぞ!」


 ブルムが言う


『……しかし』

「勇者が現れるなんて予想できないし、情報もなかった、『もしも』とか思ってんじゃねえよ! それよりも今やるべき事をやれ!」

『……そう、だな……すまない』

「ふん!」

『ああ、そうだ……ブルム』

「なんだ?」

『そんな感じで敬語は使わない方がらしくていいぞ、だから敬語は使わなくていいからな』

「……そうかい」


 フン! っと鼻で笑うブルム

 僕を嫌ってる筈なのに……色々と助けられたなぁ……


「師団長! ブルム様! いました! 生きてます!!」


 1人の団員が叫ぶ


『本当か!』


 僕とブルムが駆け寄る


「危険な状態です!」


 団員が生き残りを抱き上げる


「……あ……う……」


 生き残りのゴブリンは……ボブだった



 ・・・・・・・・・・


 ーーー魔王城ーーー


 ボブを連れて第6師団は帰って来た


 ブルムや団員達にボブを任せる

 治療を担当している人に診てもらう為に

 その間に僕はオーブを持って、魔王様に報告をしに行く

 師団長の役目だからね


 僕は玉座の間に辿り着く

 扉の前に立つ兵に話を通して扉を開けてもらう


 ゴゴゴゴゴゴゴ!


 ……重そうな扉だなぁ


 僕はそう思いながら冑を外す


「失礼します、黒騎士……戻りました」


 玉座の間に入り、玉座に座っている魔王様の前まで歩き、膝をつく


「……戻ったか」

「はい、こちらがオーブです」


 僕がオーブを取り出すと、オーブが浮き上がり、魔王様の手におさまった


「…………」


 オーブを眺める魔王様

 そして……


「……外れだな」

「えっ?」


 オーブは僕の手元に返ってきた


「えっと……?」

「それはオーブではない……魔石(ませき)だ……オーブを見たことない者ならオーブだと勘違いするだろうがな」

「……つまり今回の任務は」

「無駄足であったな」


 そう言って魔王様はため息を吐いた


「諜報員達には闇のオーブを見せていたのだが……わからなかったようだな……」


 そう言ってから僕を見る


「ご苦労だった黒騎士……褒美は後程贈ろう」

「あ、ありがとうございます……それともう1つ……」

「なんだ?」

「勇者と遭遇しました」

「……ほぅ?」


 興味深そうに僕を見る魔王様


「どのような者だった?」

「えっと……歳は僕より上で、何か調子にのってる男って印象でした……」

「戦ったのか?」

「はい、光魔法を使ってきましたが……人間である僕には効かなかったみたいで……戦闘の方は素人って感じでした……一緒に居た武道家の方が強かったです」

「それで……仕留めたのか?」

「いえ、一緒に居た魔法使いが転移魔法を使って……逃げられました」

「……そうか、なら次は手強いだろうな」

「そうですか?」

「1度敗北を知ったのだ……次は勝とうと鍛える筈だ……」

「…………」


 確かに、負けっぱなしは嫌って性格っぽかったなぁ


「まあ良い……次は仕留められるようにお前も更に強くなれ……」

「はい!!」


 あ、まだ報告があるんだ!


「すいません! もう1つ!」

「?」


 ・・・・・・・・・


 僕は魔王様への報告を終えて治療室にやって来た


「……ボブは何処だろう……あ、冑を被っといた方が良いかな?」


 治療室は広い……大きな病院の待合室くらいある

 これがあと何ヵ所かあるんだよね……迷いそう


『さてと……ここの治療室に間違いはない筈だが……』


 僕は周りを見渡す……うーん、人が多いから見つけにくいな……


「あ、く、黒騎士君!」

『……フィルユさ……フィルユ殿』


 危ない危ない、今は黒騎士として振る舞わないと……また鞭が飛んできそうだ


「ど、どうしたの? け、怪我したの?」


 フードで顔は見えにくいが、心配してくれてるのがわかる


『いや、私は平気だ、ここには見舞いに来たのだが……ボブというゴブリンの少年は知ってるか?』

「あ、そ、その子なら治療が終わって、ね、寝てるよ、あ、案内しようか?」

『助かる』


 フィルユさんにボブの所まで案内してもらう

 ボブの寝ているベッドに辿り着いた、側には数人の団員とブルムが椅子に座っていた


「あ、師団長! お疲れ様です!」

『お疲れ様です!!』


 団員達が挨拶する


『ああ、ご苦労……』

「椅子どうぞ!」

『すまない』


 団員から椅子を貰って座る


「じゃ、じゃあブルム君にも話したけど……ボブ君の容態を説明するね?」


 フィルユさんが僕に言う


『ああ、よろしく頼む』

「ボ、ボブ君は怪我はもう完治しているよ」


 フィルユさんは治療の腕が良いからね、その辺りは心配してない


「幸い、光魔法も受けてないから……うん、もう身体は大丈夫」


 そう言って優しくボブの頭を撫でるフィルユさん


『……身体"は"』

「ほ、他のゴブリンを殺されたんだよね? ……だから……その、もしかしたら精神的に苦しむかもしれない……」


 家族を殺されたんだ……平気な訳がない


「も、もしかしたら激しく憎むかもしれない……ゆ、勇者だけじゃなくて……に、人間を……」

『冑を被って正解だったか……』


 ボブが人間を憎んだら……同じ人間である僕も憎まれるかも知れない……

 そうしたら何か不都合があるかもしれない……そんな所か

 

「だ、だから……その、黒騎士君は気に病まないでね? き、君は何も悪くないんだから!」

『ブルムにも似た事を言われたよ……大丈夫だ』


 今は先の事を考えてるよ……


「……んっ」


 そうしていたらボブが目を開いた


『気が付いたか?』

「く、黒騎士様! がふ! ごふ!」

「ひゃあ!?」


 驚いて飛び起きたボブ

 飛び起きた時に勢い良く、頭を撫でていたフィルユさんの胸に突っ込んで……なんか跳ね返されて枕に頭を突っ込んだ

 てか一瞬だったけど……フィルユさんの胸が思いっきり持ち上がって……ヒョウガがナイスバディとか言ってたなそう言えば……


『……大丈夫か?』


 2人とも


「ま、枕が上にもあったの?」


 あ、ボブは目を回してる……


「だ、大丈夫です……」


 フィルユさん? 真っ赤になってませんか?


「…………」


 団員達、興奮するんじゃありません


『話は出来るか?』


 僕は椅子から立ち上がってボブを上から覗きこむ

 ボブが寝たままでも話せるように


「だ、大丈夫! あ、皆は! 他の皆は!?」


 ボブが聞いてくる、自分が助かったんだ、他の皆も助かった!

 そんな希望を持った目で見てくる


『死んだ……生き残ったのはお前だけだ』

「っ!」


 僕ははっきりと現実を伝える

 変に希望を持たせたら後が辛いだけだから……


「皆……死んだの? 父ちゃんも母ちゃんも? じいさんも? おっちゃんもおばちゃんも?」

『ああ、皆だ……』


 誰が誰かはわからないけど……生きてたゴブリンはボブだけだ


「…………なんで……俺達は普通に生きてたのに……」

『…………』


 泣き出すボブ

 何を言えばいいのかわからない……何も言えない


「弱いからだろ」

「っ!?」

『ブルム!』


 ブルムが口を開いた


「ガキ、お前らは弱かったんだ、だから死んだ! それが現実だ!」

「ブルム君!! 子供に何を言ってるの!」


 フィルユさんが怒る


「子供だったら甘えさせるのか? 違うだろ! おい師団長! ちょっとどけ!」


 ブルムは僕を押し退ける

 そしてボブの首元を掴み、無理矢理起こす


「ボブ! お前はこれからどうしたい? このまま泣いていたいのか?」

「……討ちたい、皆の仇を討ちたい!!」


 泣きながらだが、ボブははっきりと言った


「なら強くなれ!! 今日からお前もここに暮らすんだ! 俺が鍛えてやる!!」

「……えっ? いいの? ここに居ていいの?」


 驚くボブ


『ああ、魔王様には既に話を通している……』


 身寄りのないボブを引き取る事を魔王様から許可をちゃんと貰った

 てかまだ誰にも話してなかったんだけど……予想できたのかな?


「じゃ、じゃあ、俺頑張る!! 皆の仇を取るんだ!!」


 荒療治だが……ボブは元気になった

 ブルムはこうなるってわかってたのかな?

 

 ・・・・・・・・・・


 ーーー自室ーーー



「ふぅ……」


 鎧を脱いでルサに渡す


「お疲れ様です、黒井様」

「ありがとう……」


 はぁ、1日で色々有りすぎだよ……


 僕は椅子に座る


「食事を運んできます」


 そう言ってルサは部屋から出た


「さてと……これからどうしよう」


 ボブは孤児として城に住まわせる事になってる

 暇があったらブルムがボブを鍛える……

 たまに僕も参加するつもりだ……


「……ボブには僕の事がバレないようにしないと」


 ボブは少なくとも勇者……レオンを憎んでいるのはわかった

 人間を憎んでるかはわからない……いつか時が来たら聞いてみるべきかもしれない


「……いつか……バレるんだろうな……」


 黒騎士の正体は人間って……


「責められるかな……罵られるかも……」


 よくも騙したな! とか言われそう


「……耐えれるかな」


 想像だけでも結構ダメージ受けてるんだけど……


「いや、受け止めなきゃいけないんだ……それが僕の受けるべき罰ってやつだ……」


 むしろ、責められた方が楽になれるかもしれない……このモヤモヤが晴れるかもしれかい……


「てか地上界……ここまで酷かったのか」


 魔物ってだけでむっちゃ罵ってきたし……あれは酷い


「魔界の方が住みやすい……か……」


 魔界に住む人間達は皆そう言った

 …………


「重い……なんか色々と重い……」


 慣れていかないとな……

 よし! 取り敢えず! ちゃんとご飯を食べて明日からも頑張ろう!!


「食事をお持ちしました」

「ありがとう!」


 僕はルサの持ってきてくれた料理を食べるのだった



























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