魔界の人間
僕が黒騎士として正式に就任してから数日
僕は城下街に来ていた
というのも
『流星はそろそろ城から出てみるべきじゃない?』
っとヒョウガさんに言われ
『でしたら私がご案内します』
っとルサに連れられてやって来た訳で
「あの、ルサ?」
「どうしました?」
「その、僕"流星"として来て良かったの?」
そう、僕は鎧を着ていない
黒騎士ではなく
流星としてやって来た
「問題ありません黒井様」
「でも僕は人間だって簡単にわかるよね?」
「問題ありません」
「そうなの?なんで?」
「魔界にも人間は普通に暮らしてるからです」
「うそ!?」
えっ?暮らしてるの?魔界に?人間が?
「例えばそこの八百屋をご覧下さい」
ルサが手で指す店を見る
「らっしゃい!安いよぉ!」
そこには呼び込みをしてる白髪の男性が居た
「他にはあちらも」
ルサは今度は僕達の側にある酒場の中を手で指す
「エールとハチミツ酒お待ちどうさま!!」
そこにはエプロンを着けた白髪の女の人が居た
・・・・
他にも色んな場所に人間が居た
確かに居た
「………ねぇルサ」
「はい」
僕はその人達を見て、疑問に思ったことを聞く
「魔界に住んでると白髪になるの?」
ルサが指した人達は皆、"白髪"だった
「…………」
ルサが黙る
「僕の髪も白くなるのかな?」
まあ歳をとればいつかは白髪だし、別にいいかな?
そう思っていたら
「そのような事はありませんね」
ルサに否定された
「えっ?なんで?」
僕が首を傾げる
「全員が元から白髪だからです」
えっ?つまり最初から?
「この世界の人間は白髪が普通なの?」
「………………」
ルサが僕を見る
その視線からは『何言ってんだこいつ』って言われてる気がした
「はぁ」
ルサは溜め息を吐く
「この世界でも人間の髪色は色々あります、黒や赤、青に黄色等」
「じゃあなんで?」
「地上界では白髪の人間は差別されているのです」
「差別?」
なんで?髪の色が白いだけだよ?
「ハーフと同じ特徴だからです、地上界では人間と魔族のハーフは化物として認識されており、そのハーフと同じ特徴の白髪の人間は化物として差別されるのです」
「なんだよそれ……」
白髪なんて皆老人になったらなるだろうに
「そういえばルサも白髪だよね……」
「…………なにか?」
ひょっとしてルサも地上界で酷い目にあったのかな?
だから魔界で魔王様に仕えて、城でメイドをしてるのかも
あ、でも人間じゃないとか言ってたよね?
…………うーんわからない
けど………うん
「綺麗な髪だと思うよ?」
「……どうもありがとうございます」
ルサは無表情でお辞儀した
・・・・・・・
取り敢えず地上界では差別される白髪だけど
魔界ではそんなの気にしないらしく
普通に皆暮らしてた
少し話してみたら魔界の方が住みやすいとまで言っていた
……地上界って……
しかしそれならそれで他に気になることも出てきた
「ルサ、魔界では人間も普通に食料なんだよね?」
僕はある店を見ながら言う
そこには肉屋だ……人肉を販売してる……
奥には裸の人達が並んで立っている
男の人も女の人も
子供の姿もある
全員が無表情で前を見ている
「ええ、人間を食べる種族も居ますからね」
「魔界に住んでる人達も食べられるとかないの?」
その種族からしたら食べ物が歩いてるようなものだよね?
「黒井様、貴方は少し誤解していますね」
「えっ?」
「魔族は獣とは違います、しっかりと理性や常識を持って生きています」
「あ、うん……」
「そんな彼等は人間だからと襲うことはありません」
ルサが言う
肉屋で売られてる人間はそういう牧場で育てられた人間らしい
つまり人間牧場だね
あちこちにある牧場で子作りさせて産む
産まれた子供は育てる為の人に育てられてから出荷されたり産む個体になったりする
親の方は子供を産んだ後は状態を見て次の子供を産むか、出荷されるからしい
数百年前なら産む個体はそれこそ捕まった人間とか志願してきた人間らしいけど
今は全員が牧場で産まれた人間らしい
つまり家畜の人間版
「………そうなんだ」
それを聞いて少しモヤモヤする僕
いや、僕達だって牛とか豚とか鳥とかで同じ事をしているから
理屈はわかるし、仕方のないことだって頭では理解してるけど
やっぱり同族となるとね?思うところはあるよ?
「色々と思うところはあるけど、うんわかったよ」
「理解されたのならいいのです」
人間牧場か……でもそれがあるから魔界でも人間は暮らしていける訳で……
うん……一つだけ確かなことは
「僕は人肉を食べることは無いね!」
「そうでしょうね」
それだけは確実だった
・・・・・・
城下街の案内をしてもらって
これからお世話になるかもしれない人達と挨拶をした
武器屋とか道具屋とかね?
あと酒場も案内された……少し高級感があるところでルサが言うには
「師団長達がよく利用しています」
って酒場なんだって
僕もそのうち利用するのかな?
まあそこは割合して
僕は魔王城に戻った
「食事の用意をいたします、部屋に運びますね」
そう言ってルサはどっかに行った
多分キッチンなんだろうなぁ
何でも僕が食べてる料理はルサのお手製らしいし
専属メイドの仕事の1つなんだろうなぁ
取り敢えず僕も部屋に戻るかな……
あ、でもブルムから報告を聞いておかないと……
「流星殿」
声をかけられて前を見る
「フブキさん?」
フブキさんが居た
「鎧を着て玉座の間に来てくれ、魔王様からの言伝だ」
「魔王様の?わかりました」
僕は急いで部屋に戻って鎧を着る
手間取っていたら料理を持ってきたルサが部屋に入ってきて
すぐに理解したのか手伝ってくれた
・・・・・・
玉座の間
僕が召喚されたあの部屋だ
玉座には魔王様が座っていた
えっと……こういう時のセリフは……
『第6師団長、黒騎士、参上しました……』
そう言って僕は魔王様の前に行き、跪く
「黒騎士よ……」
魔王様が僕を見て話す
「貴様に任を出す……」
こうして僕の初めての任務が言い渡された




