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あの日の約束

作者: 彼方
掲載日:2017/07/28

 ふと休日の朝、流れてきたそのラジオに、私ははっと我に返って、体を跳ね起こしてしまった。CDラジカセのスピーカーから流れてきたのは、聞き覚えのある声だった。

「ミナミさんは、現在高校三年生のシンガーソングライターでいらっしゃいますが、四月にリリースされた4thシングル『あの日の約束』が大ヒットして、テレビ番組にも数多く出演されています」

「おかげさまで、やっと自分のやってきたことが結果に繋がったような気がして、ほっとしています。この曲は自分でもとても思い入れのある曲なので、その想いが聴いている方の心にも伝わってくれればいいと思います」

 その落ち着いた喋り方は、あの頃と全く何も変わっていなかった。凛とした声で、どこか甘く囁くような感じの口調をしており、いつも普通の人とは違うオーラを出していたものだ。

 南ちゃんがこうして話しているのを久しぶりに聞いた気がした。あれほど仲が良かった友達が今では一躍有名になってテレビで活躍しているなんて未だに信じられない。

 私はベッドから起き上がって音量をさらに上げた。南ちゃんは次々とパーソナリティが質問することに淡々と答えていき、終始落ち着いた様子で会話していた。あの頃から大人びた印象を与えてくる子だったけど、今でもそれは変わっていないみたいだった。

「ミナミさんは、この『あの日の約束』に、どんな想いを込めたんですか?」

 すると、少しだけ彼女が沈黙する間があり、すっと息を吸い込む音が聞こえてきた。

「昔、私にはとても仲が良かった友達がいて、もうその子とは疎遠になって今どうしているのかはわからないのですが、今でもその子との思い出を私はずっと忘れていないんです。あの頃私を支えてくれた彼女の言葉を思い出して、それで私も今までやってこれたんです」

 私は息が止まり、全神経がラジオに向かって流れていくのがわかった。南ちゃん、と小さくつぶやき、拳を握ってしまう。

「その子、Nちゃんはとても優しい女の子で、誰にでも分け隔てなく付き合う子でした。彼女は大人しいので男子にからかわれたりするのですが、いつもにこにこと微笑んでいました。私はそんな彼女と一緒にいるのが大好きでした」

 私は涙がこみ上げてくるのを感じたが、ふっと笑い、同じ言葉を返した。

 私も、南ちゃんのこと、忘れてなかったよ。

 その言葉はもう彼女には届かないけれど、確かに私達は繋がっている……そんな気がした。

「私はその子に、今でも忘れてないよ、友達のままだからね、って伝えたかったんです。きっと今、どこかで聞いてくれていると思います。もう私のことなんか忘れてしまっているかもしれないですけど、この曲の想いは受け取ってくれると思うんです」

「本当に、大好きな友達だったんですね」

「はい、とても大事な友達でした」

 私は俯き、大事な友達、と繰り返して、目元を拭った。その日の朝は、とても穏やかな空気で満たされ、乾いた心が潤っていくのを感じた。

 受験勉強で萎えかけていた熱い想いが、再び心の底から湧き上がってくるのを感じた気がした。


 了

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[気になる点] なぜ疎遠になったのか?がわからないです。 最後の一文の受験勉強ってことで、受験シーズンが疎遠になった理由でしょうか? でも、「昔」といっているのでかなり前から疎遠になったともうかがえま…
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