吹き荒れる風1
遅くなりました。すみません。暫くゆっくりになります。
ー奏ー
目が覚めると、暖かい物に包まれている事が分かった。
「ああ、どうやら成功したらしい。」
周囲を見渡すと、奏は自室で寝ていた。布団を除けるとそこにエメリアも寝ていた。可愛い熊さんのパジャマだ。さっき殺しに掛かってきた同一人物とは思えない・・・・・。
「んんーー。むにゃむにゃ。カナデー。」
僕は頬が緩むのを感じながらエメリアの頬をつつく。良く考えれば、エメリアが僕を殺したのではなく、エメリアの中の女神が僕を殺したのだ。まあ、ぬーちゃんに阻止してもらったけど・・。そんなことを考えていたら、エメリアが目を覚ます。
「んーんーー。あれ、私・・・・・・。かなで?かな・・・・・。奏!!!」
がばっと急に抱き着いてくるエメリアに少し動揺してしまう。さっきまで殺気を漲らせていたのに、今は急に涙を浮かべている。
「え、エメリア。なんともない?」
「うん。・・・・・。その・・・・・・・・・・・。ごめん・・・・・・・。」
急に謝ったと思ったら、慌てて部屋を出てってしまった。ベッドの下を見ると、眠そうにシャムが寝ぼけてあくびをしながらベッドの支柱で頭をぶつけていた。
「シャムはどこかしらいっつもドジるよな・・・。」
「にゃー。(失礼である。)」
どこかまだ覚醒しきっていない頭を振りながら、目覚めたシャムはベッドにチョンと座った。
「にゃーーに。にゃー(カナデはエメリアの事どうおもうであるか?吾輩からは不安定に見えるであるが。)」
「そりゃあ、まだ決めてない。そういえば、シャムはおぼえているのか?」
「にゃー。にゃにゃな(ああ、吾輩は覚えていない。カナデの経験した事を呪いでのぞき見しているだけである。)」
え?そんなことも出来るの?驚く僕の顔を見てシャムは髭を弄りながら得意げに背筋を伸ばす。
「にゃーにゃ!ふしゃーー!(吾輩は誇り高き、厄災の獣であーる。って何故ジト目でみるであるか!)」
思い出してみよう。
1.出会いは餌で釣られた。
2.あっちこっちで鬱陶しがられている(他の猫)
3.皆に触られて気持ちよさそうにしている
4.時々長い毛でモップになってくれている
5.時々ドジっ子
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。うん埃多かーいね。」
「にゃー。(そうであろうそうであろう)」
満足そうに頷くシャムをみて、僕は一つ思いつく。
「ねー、シャム。エメリアの心も読めるの?」
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「おーい奏。まだまだだなー。」
「そっか・・・。親父も金属を操作出来るんだったね。」
僕は親父を捕まえてまた逃げられていた。ただし、今度はどうやって逃げているのかを注意した。
「ほーう。なんだ。見ない内に成長したなー。」
「うん。それと、風の対流は結界で防いだから防音も完璧かな?」
親父は周囲を見回し、僕の作った結界を見回す。ちょっと焦った顔をしてこちらを見る。
「おい、何があった?いきなり成長しすぎだろ・・・・。こういう事あると俺は大抵碌な事に・・・。」
「いや、今度こそ碌な事にはさせない。さっきシャムとも獣魔契約もした。」
さきほどシャムと契約した。獣魔契約をすると、その獣魔の持つ能力の一部を使用できるようになるのだ。それによって心も多少読む事が出来るようになった。
「そうか。え?お前ら獣魔契約してなかったのか!!?」
「そうだよ!親父が獣魔大会にだそうという話を出すから大変な事になっただろうが・・・。」
すると、親父は明らかに変な顔をする。まるで知らないかのように。いや、知らないのだろう。未来を経験した事など。
「俺が今から誘おうと思っていたのに・・・・・。」
「あ、まだこの日付だったか。」
すると急に親父は訳知り顔になって顔が急にこわばる。何かミスしたのだろうか?
「奏。未来や過去を変える能力に頼るのはやめろ。因果が完全に崩壊する前に・・・。」
「因果が崩壊?」
急に良く分からなくなる。親父は説明をするかしないか迷った挙句、説明をしてくれるようだ。一つ呼吸を整えてから切り出す。
「女神の能力は、他の女神の力で打ち消すことが出来る。例えば、どうせ司ちゃんに頼ったのだろうが、今女神持ちに触れられれば、過去に戻った事実自体を消す事が出来る。」
なるほど・・・。確かに美鈴の能力をエメリアは打ち消した事がある。今女神に打ち消されれば、過去に戻った今という結果を変える事も出来る。
「エメリアちゃんに今日触れなかったか?」
「あ・・・・・。」
寝起きの時に触れてしまった。というか司の能力はどこまで巻き戻すか分からないのか・・・・。
「司の女神ヴェルダンディの現在を否定し現在を変える能力・・・・。ぬーちゃんの女神ウルドの過去を否定して現在を変える能力。そしてエメリアの女神スクルドが未来を見て現在の行動の最適解を得る能力・・・か。親父は知っていたの?」
「ああ、まあな。俺らの時も引っかきまわされたからな。というより、女神を殺す事には成功したんだが、女神の存在自体を消す事が出来なかった。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
親父が僕のいくつか立てていたプランの一つを実行していたという事か。けれど、重要な事が抜けている気がする。
「まさか、依り代になっている人を?」
「・・・・・・・。逃げられない様に全てを・・・。全てを滅ぼす必要があったんだ。」
どうやら相当な事情があるらしい。僕には関係ない。僕はエメリアも、ぬーちゃんも、司だって救ってみせる!
「因みに親父。その方法を教えてくれないか?失敗例を知っておきたい。」
「いいだろう。ドラゴンの集落の少し離れた所に霊樹がある。そこに封じ込め、殺した。」
「それになんの意味が?」
「・・・女神は依り代を壊されると、簡単に体を抜けてしまえる。故に殺すには、霊樹のマナで蓋をしておくことで逃げる事が出来ないようにしたんだ。」
へー。そんな事が出来る木でもあるんだ。
「まあ、これから話を詰めよう。」
親父は緊張した面持ちで急にドアを見る。そちらからは凄まじい魔力が吹き荒れていた。
「エメリア・・・・・・・。」
次回も少し開く可能性が・・・




