領主3
ー奏ー
「ま、魔法...。」
あまりに皆興奮している。それはそうでしょ!だって魔法だよ?あの魔法が目の前にあるんだよ?男子なら勇者的な存在を夢想するだろう!引きこもり中結構それらしいゲームもやりましたよ!はい。
しかし気になる。さっきから司の様子が変だ。
妙に落ち着き過ぎている。色々煩いあの司が。
「ここにお主らが転移したのも何かの縁。お主らに頼みがある。」
「頼み事でしょうか?一応僕らに出来る範囲ならお伺いいたします。私達も領主様にお願いがありますので。」
クルシュと名乗る領主は頼み事とやらがあるらしい。それに対して輝は敢えて乗っかる。今日のお宿確保の為だ。何とか交渉しようと皆で移動中会議決定したものだ。知らない場所行ったらまず寝泊まりの心配だよね!クルシュはそれを汲み取ってか。
「宿の心配はこの領主宅を使ってくれれば良い。頼みとは衣食住の事であろう?2人1部屋位はぎりぎりあるじゃろう。無論こちらで食事の手配もしよう。」
「!は、あ、ありがとうございます!」
由利子先生がお礼を思わず言う。こちらの思惑、心配を的確に掴んでくる。さすが領主と言った所か。
こちらはこれ以上頼み事はしづらくなった。かつ相手の要求をよっぽどが無い限り飲まなくてはいけない。
「それで頼み事とは?」
「ふむ!実は地図の儂の領土の中にシモーネ洞窟というダンジョ....」
「ダンジョン探索!」
ダンジョンに釣られて誰が興奮した面持ちで叫んだ。お前誰だっけ?
「近藤!静かに!」
「す、すまん。」
輝が近藤に注意する。近藤...熱血野球馬鹿な奴だ。朝練に入れ込み過ぎて、HRに遅れて入ってきて先生に怒られてたっけ。
「おほん!良いかの?では続けるぞ?そのシモーネ洞窟をお主らに探索してほしいのじゃ。何、異世界転移したものは高ステータスと相場が決まっておる。」
「おおー!」
歓声が上がる。これから俺たちファンタジーするんだ!と思いきや。
「私は反対です!」
輝が承諾する前に反対した。由利子先生が。確かに先生の立場だとそうなるだろう。保護者の立場なのに危険が伴う場所に行かせるはずがない。
「危険が伴うのでしょう?命の危険があるなら、皆の保護者、として承諾しかねます!」
「先生!僕は賛成派です!ダンジョンと言っても最初は危険が低いはずだし、恐らく今ここで生活するのに必要だと思います。クルシュ様。違いますか?」
「本当にお主...ヒカルと言ったかの?この世界は初めてなのじゃよな?」
「ええ、僕達の世界にはそういうサブカルチャーがありまして...」
「さ、さぶ?」
「い、いえ何でも無いです!それに先生。クルシュさんは衣食住を代わりに提供してくれています。僕達に拒否権はなさそうですよ?」
どうやらクルシュの反応から正解みたいだ。お金が稼げるならモンスターを狩らねばならない。多分その他の職業じゃああまり安定しなさそうだ。
だって高ステータスだよ?乗るしかないよね?
乗らなければあんなことにはならなかったかもだけれどと後悔するまで後2日。
次はステータス解禁!