輝の乖離
ー輝ー
奏が帰ってきた。嬉しい。
奏が美少女連れてきた。遠い。
奏が着実に強くなっている。妬ましい。
俺は嬉しかった。だって奏と司が隣にいるのが当たり前だったから。
そしてそれは固い友情で結ばれている。
奏とは趣味も出来る事も違うけれど、気が合う。
それに、俺が出来ない事を奏が、奏が出来ない事を俺が出来る。
つまり、完全相性補完だ!
そんな奏がそばにいるだけで、おれは心が穏やかになる。
「・・・・・・・・・・・。」
「すずねはお留守番してたんだ?」
「あなたがお留守番するように言った・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
なんだこの子は?何かもやっとする。
奏とフェリドさんから感じるあれと同じだ。
つまりこの子も魔王候補。
危険な香りがする。
そして、司やエメリアと同じ空気もする。
「奏。話しがあるの・・・。」
「なにかな?すずね。」
「私の物になって・・・。」
「え?無理だけれど。そんな急に言われても。」
そりゃそうだ。会って間もないから、そうなる。
「そう、原因は輝にあるのね・・・。奏が私の物にならないのは輝が原因・・・。」
そういってこっちをジト目で見て来る。
「すずね。違うから。俺はすずねの事あんまり知らないし、いきなり君の物になれって・・・。」
「そうだ!奏は俺のもの・・・。」
俺の物だと言おうとして、目の前にすずねが居た事に驚き距離を取ろうとする。
しかし、腕を取られた。
「みすず!なにをする気なんだ?」
「奏はだまってて!」
離れようにも、万力に掴まれたように離れない。
魔力による身体能力強化のようだ。
急にがくんと意識が持っていかれる。
あれ、なんだこれ。
「く、頭が・・・。」
「「「輝!(先輩)(君)」」」
南ちゃんだけ先輩呼び、黒木先輩だけ君づけ。
いつも通りだ。
「っ!大丈夫だ。」
みすずを見ると手を離してくれた。
この!キッとにらむとふいっと振り向いた。
「私帰る・・・・。」
「ふー、良かった。輝。大丈夫か?」
輝?なんで下の名前で?
「癒吉くんって結構慣れ慣れしいのな。」
「輝・・・・?」
「魔王候補のクラスメイトに下の名前で呼ばれたくない。」
「ど、どうしたの?輝?」
癒吉君とフェリドが魔王候補として勇者の俺を訪ねて来た。
何故直ぐ殺さなかったのだろう。
魔王なんて悪に決まっている。
そう、元々癒吉くんが魔王候補だとしても、クラスメイトだ。
俺はクラスメイトを全員無事に異世界から地球へ戻す使命がある。
「癒吉はいいとして、フェリド。お前は先に始末する。」
「な!輝よ!さっきまで受け入れてくれていたのに。」
「魔族が悪なんだろ?じゃあさくっと始末しようじゃないか。」
俺は剣を抜く。
「みすず!輝の過去を変えたな!?元にもどせ!」
癒吉君が叫ぶ。何を訳の分からない事を?
「輝剣!」
「くっ!!」
フェリドは空間魔法で輝の剣技を別空間へと飛ばす。
なら、高速で攻撃して使う暇を与えなければいい!
俺は最速で踏み込む。そして・・・。
意識は暗転した。
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ー奏ー
「やられた。だから、ああいう手合いは怖い。」
みすずに過去を改変された。
輝は俺が鎮静化させた。
恐らく僕との過去が消されたのだと思う。
つまり、僕の技に対する対応策を練ってきたあの日々も無かった事になっているだろう。
さて、困った。輝をどうしよう?そこでふと気が付く。
「エメリア!輝に触って!」
「え?どうして?」
「いいから!」
「う、うん!」
エメリアが輝の頭に触る。
魔王城で、エメリアが僕に触れた時にすずねの過去改変の能力が消えた事が
あったからだ。
すると直ぐに輝が気が付く。これで元に・・・。
「く!癒吉!お前まで邪魔するか!」
「だめだこりゃ・・・。」
なんで?前はこれで解けたのに・・・。
「ぐ、二人相手は厳しいか。一旦引く。司!来い!」
「行かない!」
「っ!なら仕方がない。」
輝が司を攫おうとする。
「分かったよ高枝君。僕達もう行くから。」
「!攻めてきたんじゃないのか?」
「違うよ。行こうフェリドさん・・・。」
「あ、ああ。」
「奏!!!」
フェリドさんが空間魔法を使用する。
そこへ司が静止しようとするけど、止まらない。
今ここにいてもどうしようもない。
それよりかみすずを連れてきた方が建設的だ。
「みすずを連れて来る。だから輝を頼む。」
「わ、分かったわ!」
「待て!逃げる気か!」
言っていることとやっている事がばらばらだ。
「また来る。」
「癒吉!お前も俺たちの敵だ。」
「!!」
胸にぐさっと来た。いままで絶対の味方が今敵になった。
これほど心が堪える事は無い・・・。
司の悲痛な顔と共に俺たちは魔族領へと戻った。
魔族領への帰還へ。暫く帰らない・・・・。かも。




