魔族領
ー奏ー
ファントムに連れて来られた僕は、床に激突した。転移魔法は、物体に突き刺さるといけないから、少し、上空に転移するものなのだろうと思う。でも痛い。エメリアが髪を引っ張って、上から思いっきり叩きつけるように起き上がろうとして手を突いたから。
ファントム相手に手構えている様子は勇ましい。勇ましいが・・・・・。
その位置・・・。見えそう。でも見えない。司よりやり手だ。
「あら、そんなに構えないで。」
「無理です。貴方は奏に酷い事をした。だから、許せません。」
「それは奏君と話しをしたかったからよ。二人切りでね。」
そういうとこちらを見る。
「エメリアちょいと待って。殺そうと思えば殺せたはず。でも死んでない。」
「でも傷つけた。」
エメリアさん、めっちゃ可愛いです。そして嬉しい。僕の為に怒ってくれるなんて。
でもここで重要なのは、戦闘じゃない。情報だ。情報を得る為なら戦闘だってしてもいいけど、相手がめんどくさい相手。しかも情報提供してくれる気が満々だから。
「エメリア。落ち着いて。ファントムさん。僕達をここに連れてきた理由を教えてください。」
「あら、あなたは冷静ね。いいわ。先ずここに連れてきたのは、取引をしたいから。その為、拘束はしていないでしょ?」
確かに、拘束はしていない。けど、取引とはいったい?差し出せるものは無い・・・とすると、やっぱり『魔王候補』のスキルという事になるかな?
「もう予想はついてると思うけれど、『まお・・・・・」
「ちょっとまった!」
言いかけた言葉をしゃべらせない。天井をみる。一匹の蛾が張り付いていた。
ないとは思うけど、盗聴する使い魔的なのだとしたら、怖い。
「・・・・ほんと。使い魔ね。よっと。」
金属の棒のような針のような物で蛾を倒すと、青い光と共に霧散した。
「やっぱり盗聴でした?」
「ええ・・・。隠ぺい魔法が完璧にされていたのに良く分かったわね。」
「ちょっとした手品があるんですよ。」
本当は魔力探知・・・サーチ魔法なんだけれど、結構使われていないのかな?
「じゃあ本題から入るわね!奏。貴方。私と組みなさい。」
「組む?」
「ちょっと奏!この怪しいおばさんと組むなんて。」
エメリアさん。完全に敵扱い。やめてよ。
「エメリア?まだ22歳のおねーさんだと思うけど・・・。」
「・・・・・・・・・・・・この子達の扱い、とても難易度が高いわね。」
?よく分からないけれど、ファントムからジト目でみられる。なにかしただろうか?
「とにかく組むってどういう事なんです?」
このままでは話が進まない。脱線から戻るとしましょう。
「先ず、あなたの能力についてよ。魔王候補について、どの位知っているかしら。」
「初代魔王の思いで、5人から最強の一人を選ぶ?」
「そうよ。で、その選出方法は?」
「全くなにも知らないです。」
素直に答える。エメリアも分からないという顔をする。こっちの世界の住民でも知らないのに、僕が知っているはず無し。
「5人で戦って戦闘で勝てば、魔王様になるの。」
「?そしたらなんで組むって話に?」
それぞれ魔王候補がバトルしても、ファントムには関係ない。はずだ。でも組みたいというには何かありそうだ。
「3人で組んで戦う形式なの。つまり3対3対・・・・って5グループ出来る訳。」
「なるほど。理解したよ。組もうか。」
「ちょっと待ちなさい!」
いきなり即決した僕の判断をエメリアが断る。
「どうしてこんな風に連れ去ったのかしら。」
「それは、こうでもしないと魔族が人間と話せないでしょ?」
「それはそうだね。そして、あんなに大群の魔族が動いてるって事は、ファントムさんの思惑で動いていたんじゃなく、誰かお偉いさんが俺を連れて来るように命令したこの騒動に便乗した。違います?」
「・・・理解が早くて助かるわ。概ね正解よ。今はちょっと命令から背いてるけれど、この話が成立したら魔王代理の所に連れていくわ!それでミッションコンプリート。で、改めて聞くけれどどうかしら?」
......恐らくファントムは輝に変身出来ればかなり強いと踏んでいるのだろう。
「輝本人連れてきた方が色々都合が.......。」
「パーティーメンバーは魔族限定よ。昔勇者連れてきて、無双するっていう魔王候補が過去にいて、しかも呼んだ本人も勇者に殺られてしまったらしいわ。」
なるほど、そうするとファントムが、勇者輝と同じスペックで戦えるなら、連係も取れるし確実か.....。
「そのパーティー私もいいかしら?」
するとエメリアは元気良く手を挙げる。
僕と話す時以外はちょっとお嬢様っぽく話すの何でだろう?
「ええ、いいわ。竜人族って元々魔族が源流らしいから、良いことになっているわ。過去一回も竜人族を連れてきた魔王候補は居ないけれど。連れて来れるなら連れてきてみなさいと、有るみたい。」
なるほど、強すぎるとか言うのではなく、そもそもそんなことに首突っ込む訳無いって事か。
「よし!それでいきましょう!宜しくお願いします!ファントムさん。」
「私は奏が心配だから守ってあげるだけだからねー!お姉さんとして」
「こちらこそ宜しくね。奏!エメリア!」
ファントムさん余裕を見せつける。お、大人だ!




