奏捜索開始
ー輝ー
ハアハア!
流石に疲れた。だって魔法をぶっ放し続けたから。といっても、一日15発が限度だけれど。
奏が知ったら、絶対そこに付け入ってくるに違いない。
今日は、森に道を作るのに3発。魔族を倒すのに10発。あと2発はしばらく回復しないと使いたくない。
使うと昏倒してしまうから。
けれども、使う予定も無い。何故なら・・・。
「ば、バケモノ・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
魔族の高濃度の魔力を持った個体はすでに人族の存在を凌駕していた。
どっちがバケモノだって?他の人族と比べれば、お前らだって十分バケモノだよ。
そんなこんなどうでもいいことを考えていると、闘技場のような方から爆発音が聞こえてきた。
そこから、影が飛び出す。
「!!奏!?」
「ぐひひ。どうやら成功したらしい。」
「な!なにをだ。なにが成功したんだ!」
「・・・・・・・反応が無い。ただの屍のようだ。」
「それをお前が言ってはいけないだろう・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
いろいろ突っ込みたかったけれど、今はとりあえず・・・・。
「おい、マゾ・・・・く。お前たちの目的はなんだ。」
「・・・・・・・。」
死んでいた。どうやら舌を噛みちぎったらしい。
普通の成人男性の人族に、体中走る模様があるだけで、殆ど俺たちと変わらない。
これじゃあ、戦争となんら変わらない。俺たちが日本で諸外国の戦争を、残念そうに眺めるような、戦争を無くしたいとぼやっとした希望を抱く状態じゃない。今まさにその戦争の戦場に立たされているのを感じた。日本に居て、いきなり凶悪な武器もって戦争を終わらせろとか、ムリゲーにも程がある。
仕方なく、先ほど奏を担いで運んでいた魔族の方向をお守りをたよりに追いかける事にした。
・・・・・・・・・・・・・
森のなか、暫く追いかけると、地面の色が変わった場所があった。
そこに奏のお守りは指示していた。俺は反応を調べる。サーチ魔法・・・とは言っても。魔力を周囲に放ってなにがあるのかを確認するだけの魔法。要は蝙蝠の超音波みたいな物だと奏は例えていた。
さて、掘り起こしてみるか。
すると後ろから殺気が下りてきた。
後ろを振り向きざまに剣を盾にしたと同時にドラゴンの爪と激突した。
ガッキー――ンとすさまじい音がする。
敵のトラップか!いや、あのドラゴンは・・・・。
近藤と武雄先輩が言っていたドラゴンの特徴にそっくりだ。
そしてその背中に司、南ちゃん、そしてスカートがきわどい黒木先輩が乗っている。
たーすーけーてー!と叫んでいるのか、すごい顔している。くっここにカメラが無いのが惜しい。とても残念だ。
すると、みるみる内にドラゴンが萎んでいく。
そっちの方に注視し、サーチ魔法を放つ。すると真横から反応があった。
すぐさま右に剣を構えると、きーーんという金属音が発生。そこには美少女がいた。
「奏を返せ!!」
「!?」
すると次の瞬間鋭い上段突き下段・・・中段・・・回転切りと続く。
それを危なげなく躱し、いなす。とても鋭い攻撃だけれども、なんというか、分かりやすい攻撃だった。
攻撃の組立方もばらばら。そもそも三段突きも回転切も隙を作る技だったり、相手の意表を突いたりする技でもあったので、使うなら反対だと思う。うまく説明できないけれど。剣の素人だからわかってないとか言われるのかもしれないけれど。
分からない。目の前の美少女が何故攻撃してくるのかは分からない。
けれど、二つ分かっているものがある。それは。
1.目の前の少女がドラゴンで、司達を人質にしていたであろうという事。
2.近藤を殺し、奏にまで不幸を振りまいた、憎き相手であること。
そこまで考えたら、全力で圧倒しようと思った。少女に光の剣劇を浴びせ掛ける。
そして・・・・。
かきーーーん。少女の刀が折れた。
「な!?」
「近藤の仇!」
「う!?」
がきききききき!少女の首に到達する前に何かに阻まれた。風の鎧。
こんなこと考えるの・・・。おそらく奏位。
「まさか・・・・。」
「はああああああああ!せいやーー!」
少女はその辺にあった木の棒を拾いあげ、居合ぎり。
がきききききききききき!これまた俺の光の鎧に阻まれる。
危ない!ちょっと気を緩めていた。下手したら死んでた。
きっ!とお互いに睨む。すると・・・。
「ちょ!ちょっと二人ともストップ。」
「司!?」
「つかさちゃん!」
突然司が出て来るものだから驚いた。
「司ちゃん気を付けて。」
なんでお前がそれを言うねん。
「司!このドラゴン強い!下がっててくれ。」
「輝!小学校6年生の時のプールの時に・・・・。」
「おいおいおいおいおいおい!俺の黒歴史ほじくり返すなよ!」
「・・・・・どうやら本物のようね。」
女性が多く居るところで、黒歴史ばらされたらたまったもんじゃない。
「けど、さっきは・・・。」
ドラゴン娘、ちょっと不満そう。
「輝。奏は?」
「分からない。けれど、この落とし穴の中から反応がある。おそらく、発信機の存在にきがついて、お守りをここに投げ捨てた・・・・。かもしれない。」
反応からして人はいない。中からは金属の反応。
追ってにここにくぎ付けにしておいて、時間を稼ぐ寸法だろう。おそらく中に武器やらトラップがあるだろうけど、引っかかってくれたらラッキー程度のものだろう。
「なら奏はどこに?」
「な、なら、つかちゃん先輩!奏先輩を手分けして探したらどうですか?」
「それをしたいのはやまやまなんだけれど・・・。相手は変装のプロ。だまされたら命に係わる。どうしよう。」
「なら、あなた達で手分けして。私は私で空から探すから。」
「そうしましょう。ファントム(幻)は大きな体積は変えられないそうだから。」
探索の方法は確定。そこで気になった事を聞いてみた。
「ところで、ファントムって奴が俺に変装してたのか?」
「ええ!正確には、相手に自分の知っている誰かの幻覚を見せる技。幻覚を本人の想像で補っちゃうからとても見分けにくいの。しかも本人と同じスペックになれるのもまた厄介な事。でも、ひとつ弱点があるの。過去の事実は知らないから、過去の事を聞くと直ぐ反応からして分かるのよ。疑問を答えられるか疑問ってことは、本物なら、答えてほしい。偽物なら答えないでほしい。という事だかららしいの。」
「司・・。詳しいな。」
「村長さんの受け売りよ。」
どうやら、さっきの村の村長に会ったらしい。
「とにかく探そう。奏が心配だ!」
「ええ!そうね!」
俺たちはそのまま探しに行く。
いまだに探索が続く。これは次の章に移るのに時間が必要ですね。
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司「あれ、この白い空間どこ?」
天の声「来週の予告をお願いします。」
司「次回『奏見つかる』」
天の声「え?ちょいーーー!センス無い!しかも見つからない・・・こともないけど。君の願望はいっているよ?」
司「え?じゃあなんですか?来週の予告。」
天の声「ごにょごにょ。」
司「次回『奏・・・・・』ないわー。」