三竜包囲戦
ー奏ー
『魔王候補』。おそらくあの時覚醒したのかもしれない。
そう。敵も味方も皆殺しにしたあの・・・幻覚?未来予知?タイムリープ?をする時。あれが自分だけ時間軸が繋がっているなら覚醒が引き継いでいると仮定できる。おそらく司か輝、クルシュさん辺りが、なにかしてくれたのかもしれないし、あの泉になにか秘密があるのかもしれない。
けど今はどうでもいい。今度こそエメリアを、村の皆を助ける。皆殺しは論外。だからこのスキルは今は使わない。そして見過ごす選択肢はない。僕は略奪する側を許せない。
武夫が他のクラスの男子をいじめている所に乱入して、ターゲットをこちらにされた時は面倒な事をしたと思った。それでぼこぼこにされた事は何回かある。一か月が保ったけれどね。
後悔?してないよ?同じ場面に出会ったら、また面倒だと思いながらも助けに行く自信はある。そこの信念だけは変えられない。いくら敵が強大であろうと、なにか手はあるはず・・・・だから。
「あのーそろそろ、やってもいい?」
「エメリア、作戦がある。」
「待ってました。奏!で、その作戦は?」
その前に・・・。敵さんに。
「あ、ちょっと待ってください。今作戦タイムです。」
作戦をエメリアに伝える。
「ん?俺らなんで律儀に待ってるの?」
「さあ、とりあえずあのひょろひょろ倒せばあいつら皆状態異常で狩れるだろ?」
「よし、ではやるか。」
三竜が僕に襲いかかる。まあそうだろうね。毒の霧、麻痺の霧を食らわせたかったら、まず状態異常無効を解かないと。
「まずは弱体化を食らってもらおう。これで状態異常の耐性を大幅に下がってもらう。ガガガガ!」
ドラゴンが咆哮を上げる。どうやらこの咆哮に弱体化の効力があるみたいだ。
「くっ!」
「フハハハハハ!弱体すれば、状態耐性を無効に出来る。つまりワシら最強!手ごたえ十分!べる!もる!頼む!」
残りの2体が毒と麻痺のブレスを吐く。エメリアが発生させた風上に向かって。
その間にベルモレーティと名乗った弱体化の竜は物理的に襲い掛かる。
「フハハハハハ!人間ごときが、爪のみで葬ってやろう。」
「そうはいかない!俺はお前たち略奪者を許さない。」
「ふん!死ね!」
ひらりと躱す。爪の攻撃に合わせて体を捻じり、相手の腕を機転にくるりとまわり、ぎりぎりでバックステップで躱し、時には懐へ潜り込む。
「な!ちょこまかと!」
「ふふふふふ!しかしレティ―。もう他のやつらは倒れているのではないか?」
「それもそうだな。ん?何故お前は動ける?状態異常耐性を完全に消し、確かに弱体化を付与したのに。」
・・・何か勘違いしているようだな。
「何いってるの?僕は状態異常耐性を上げてなんかいないよ?」
「何!?だが実際状態異常を防いでるではないか?」
残念な竜に教えておこう。重要な事を。
「それもそのはず。だって僕が村の皆に掛けたのは状態異常耐性なんかじゃないから、弱体化させたって無駄だよ・・・・。」
「なに?お前は!お前は何をしたんだ!」
「僕は『状態異常無効』を掛けただけ。だから状態異常にかかりやすくなっても、状態異常は無効だから。」
「な!であればわしの能力では、お前には通用しないと?」
「そういう事。ほら、僕を倒さないと、他の竜人族がお仲間殲滅しに行くよ?状態異常の竜と属性攻撃の竜。状態異常が効かない今。恰好の的だよ?」
「ぬ!レーティ、べる!三人で奴を殺すぞ。」
「おう!」
「なかなか素早いから、当たらない!」
僕は三竜の攻撃を掻い潜りつつ、村の竜人達にヒールと状態異常無効を掛けていく。
「ぬー!三人でも追い詰められないとは。」
「素早しっこい。」
さて、時間稼ぎも終わったかな?そろそろだと思うんだけれど。
「む?」
急に毒竜が僕に攻撃するときによろめいて、地面に激突する。しかも頭から。
「ベルよ!大丈夫であるか?」
「う・・・ううむ。なんとか。」
「そろそろか。やい、三馬鹿竜よ。僕の状態異常のお味はどうだい?」
そう言うと、三竜は同様しだす。
「お前の仕業か!お前、状態異常も使えるのか、人族。」
「いや、僕はめまいを起こす事しかできない。お前たちの体を蝕んでいるのはお前たち自身で撒いた毒と麻痺の霧の効果。弱体化の竜よ。お前が咆哮した時にお前の仲間は弱体化が効く様に細工しておいたのさ。」
※はったりだけどw。
「なに?なら、ベルとモルは!」
「ぐ!そういえばさっきから体が・・・・。モルはどうだ?」
「く、こっちもなんだか体が重く・・・。」
「く、これでは・・・。」
それぞれ体調の不良を訴える。ただ、貧血のような状況を少し作っただけ。
「こ、これは一旦退却を・・・。」
「人間相手に退却なぞありえるか?倒してしまえば・・・。」
「レーティ。倒せんからこうなっておるんだろ。」
三竜は喧嘩を始めたようだ。そして。
「私は引かせてもらう。では。」
「ベル!?」
「ではな、ワシも行くけんのー。」
「モル!?」
ベルとモルはさっさと逃げ帰る。姑息な手で敵を打ち倒す戦法なら、逃げるのも優秀だろう。多分逃げ出せないだろうけど。
ドドドガガガン!という大きな音がして、あっちでドンパチやっている。
「ぬー!ベル!モル!まさか!」
「正解。僕達のまわりに風を渦巻かせて、霧を閉じ込め、目隠しに使った。そして、わらわら僕を襲って集まってきたところを囲い、戦力を分散させる。」
「つまり、各個撃破するという事か。」
「そ!そして、弱体化したら弱体無効化も弱体耐性にまで下がる。っていうブラフも張らせてもらったよ?」
「我々を引き離す為に、我にだけ挑発しておったのか。囲んだつもりが、囲まれてたとは・・・。」
「動揺して一人称ぶれぶれだよ?」
「それをわしに話すということは・・・。」
そこですっと霧が晴れる。周りを取り囲んだ村の竜人達が現れる。
その足元に、毒竜と麻痺竜が横たわっていた。
「お、おのれ!」
「奏!大成功!」
一陣の風が吹きあれ、エメリアに回収してもらう。今エメリアはドラゴンモードだからあれだけど。
「おののおぉれぇぇ!」
その日断末魔が響き渡ったとさ。
「ところで奏!どうやってめまいを起こさせたの?」
「聞いてたんだ!?」
「うん。風魔法でね。魔力は奏が回復してくれるから使いたい放題だし。」
「うん、なんか妙に使いまくってる奴いるなとか思ってたら、君かよ!」
「てへ。」
回復大変苦労しました。
「僕の能力に鉄を操作する能力があるんだけれど、血液の中に鉄分があって、それを操ると、貧血に似た状態を起こせるんだ。」
「なるほど分からん。」
「それどこで覚えたの?」
斯くして闇竜人族には勝利した。あれ、魔族は?
「大変な時は俺を呼べと言っただろ?奏」
「こんなキラキラなイケメンで、正義感無駄に強く、魔族を大軍勢を相手に軽く消し飛ばす知り合いはおりませぬ。」
そこにはかつての親友が立っていた。
「かつてかよ。」
「勝手におれの心のナレーション読むな!」
何故かそこに、輝が立っていた。
ここまでの輝の道のり。
クルシュさんに止められた。
「迷いの森の方角じゃ。夜は通行できん。朝出た方が、結果速くたどりつける。」
「問題ありません。消し飛ばすので。森ごと。」
「無理に決まっておろう・・・・。」
「エクス・・・・・カリがふ!」
「待って!輝!それはダメ!」
「なんだよ?司は奏が心配じゃないのか?」
「それは著作権に引っかかる可能性があるからダメ。」
「著作権!!?」
結果輝は、技名を考える方が、時間を食ったという。
「本当に森を薙ぎ払うとは。この始末どうしようかのー・・・・。任せたクルセイダー。」
「私の管轄外でございます。」
「裏切られた!」
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次回更新9月10日です。




