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ヒーラー奏の立位置は?前衛です!  作者: 梅花 零度
異世界転移
3/118

領主1 

ー輝ー

(中学の時の話)


「輝ー!決めろー!」

「はっ、はっ!よし!まかせろ!」


 俺は奏からのパスをもらいゴールへ。中学の校庭で体育の授業。からっと晴れた日でとても暑かった。汗が滝のように噴き出て来る。ずっと走りっぱなしで息も上がっている。

 走り続けて辛い。でも奏の期待を裏切る方がもっと辛い。上がる息を押しこらえてサッカーボールを蹴る。所詮中学の体育の授業。頑張る必要も無いと言う人もいるけれど、頑張らない理由もなかった。何より奏からのアシストだ。


 ゴール迄後一人とゴールキーパー。相手は子供の時からサッカーをやっているサッカー少年榊原君。普通なら勝てない。一人では。


 俺は右に高速で抜きにかかった。当然榊原君も反応してくる。そしては左に進路変更...のフェイントを入れる。しかし榊原君にはバレバレだった。


そんな困った時には必ず...


 諦めた俺は左サイドに蹴り込む。誰も居ないはずのその場所に。そのボールを目で追ってしまう榊原君。俺が出したなら榊原君たちのチームボールだから。俺はその隙にゴールへ走る。

その場所へボールが戻って来る。


「輝シュート!!」


「おおおおお!」



 全力でシュートした!今でも忘れない。あの綺麗に決まったゴールを。自分の凄さでは無い。いつの間にか奏はそこにいた。パスを出すことが分かっていたかのように。成し遂げた功績を作り上げた奏が。苦しくなった時に必ずそこに居てくれる奏が。


本当に凄くて、好きで、大好きで









大嫌いだった。






※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 豪華な客間に生徒全員が入っている中、領主と名乗る金髪の小さな女の子が入ってきた。

一見可愛い顔等で誤魔化されそうになるが、雰囲気が違う。言うなれば重厚感、大きなオーラ。何とも言えない何かがある。そう思った。


「(この人は敵に回してはいけない)」

直感がそう告げた。ただただ蛇に睨まれたカエルの気持ちになったようだ。


 由利子先生がその雰囲気に気づくのが遅れてしまって粗相をしてしまう。が、クルシュさんは年長者の余裕なのか慣れているのか軽く流される。

 輝は胸を密かに撫で下ろし、直ぐに交渉の覚悟を決める。この部屋には奏がいる。大丈夫。この人の気分次第でこの部屋の全員の命が掛かっている。けど大丈夫。俺には奏がいる!


「お初にお目にかかります。領主様。今回私輝が代表に代わりお話を進めさせていただきます!」


 これは満場一致で可決された。先生を除いて。

 まず、武雄達先輩達を率先して丸め込んだこと。学級委員長の司が真っ先に承諾したこと。一重に俺が学校で有名人だった事の結果では無いだろうか。


内心辟易しながら話し出す。


「良い、そんなに畏まらなくて。領主と言っても所詮国の中でも小さな所じゃ。どうか楽にしてくれ。早速じゃが名乗らせてもらおう。私はアマリリス クルシュ。知っての通り領主をしておる。」


 周りに騎士達を配備しておいて楽にも何も無いが、騎士達に何か言いたそうにしているので何か理由がある、そして本気でそう思っているのだと分かる。


「お気遣い感謝します。でわ、早速ですが、ここはどこですか?どうしていきなり場所が変わった...気がついたらここにいたのでしょう。」

「そう急くでわ無い。わしも全て状況を把握しておる訳ではない。順を追って話してやるから先ず状況の整理からじゃ。」



と相手の対応に期待と焦りが走る。急ぐなと言われて焦らない訳がない。


「ごほん!」

はっ!と冷静になる。例え早く帰りたくても落ち着けという奏からの合図。


「失礼しました。」と俺は直ぐに落ち着きを取り戻す。今は交渉の場。焦りは禁物。俺には今侵入者であり不審者だ。ここで早まれば...


「先に言っておくが、お主らは侵入者では無い。わしの客人じゃ。いいな!害意はないから落ちつ....落ち着いたな...」


「失礼しました。」



 領主に再び謝る。そして無言で続きを促す。


「ふむ、良かろう。どうやらそち達は混乱しておるようだし、先ずわしから説明しよう。それから数人から鋭い視線を感じるから初めに訂正しておくが、お主らがこの世界に連れて来られた原因はわしでは無い。」


いきなりわしの客人じゃなんて言うから勘違いするのも納得かもしれない。

ただ気を使ってくれているだけなのに。


「まず、この世界の事じゃ。この世界は我々人族と魔族との争いが絶えぬ世界じゃ。たまにお主らと同じように迷い込む者達もおるのでのう。」


 そう言って巨大な長テーブルの上に地図のようなものが出てきた。ただし、それはどう見ても見た事がある地図では無かった。先ず、隣の国と陸続きだし。


「異世界転移?」


 誰かが言った。知らない地図に写し出された大陸を見て誰かが呟いた。皆思い思いの事で話始める。


「静まるのじゃ!」



その一言で場は静まる。


何か厄介事に巻き込まれたのは確実。そこからどうにかなるのだろうか?先ず帰ることが出来るのかが分からなかった。一寸先は暗闇。不安は積もるばかりだった。

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