英雄とはほど遠く
そういえば、司の能力ってなんでしょうね。
ここから明らかになってきます。
ー奏ー
「助けて!奏!」
戸惑った。エメリアが助けを求めている。
戸惑った。自分には何が出来るのだろう。
戸惑った。クラスメイトを殺した相手を?
「なんで。」
つい口にしてしまった言葉。何に対してなんでと言ってしまったのか。
なんで助けなければいけないの?
なんで僕なんかが助けられる力になれると思うの?
なんで僕なんか信用できるの?
どう思ったかは自分でも分からない。
けれど、言ってしまった言葉は戻らない。
「分かったわ!私行くから!」
断ったと伝わった。頭の整理が出来ない。
先ず何をすべきか分からない。
だって、最初は近藤を生き返らせる事。
そして地上に戻る事を最優先で行動してきた。
エメリアは駆けていく。このまま村へ向かう。
思えば、他の竜族の戦士が守る事が叶わなかった厄災から
エメリア一人向かったところで何かできるのか?
ふと、湖を見た。
そこには、知らない村に居る自分がいた。
聖なる泉。未来にすべき事を教えてくれる泉。
「エメリア・・・・」
出来るのか?自分に。
なんの力も無い自分に。
再び泉を見る。
「泉よ。僕はどうすればいい?」
水に触れてみると、冷たかった。
自分がエメリアと行動している様子が映っている。
すると波紋が広がり、光景が変わった。
魔法で飛んでいるのか、剣を持っている。人?いや、おそらく文献にあった魔族かもしれない。
皮膚に幾何学模様を刻んだ人だ。この世界の魔族はほぼ人族と変わりない。
しかし、魔族には、生まれながら呪術を親から受け継いで生まれてくるため、皮膚に幾何学模様が刻まれているらしい。おそらくあれは魔族だと思う。そういう趣味のヤーさんかもしれないけど・・・・。
その魔族にエメリアは立ち向かう・・・・。
しかし、すぐに動けなくなってしまう。なぜだろう?特に何もされていないのに。
エメリアは必至に抵抗するが、魔法の糸に縛られて連れていかれてしまった。
「え、エメリア?」
気が付いたら泉に同じ映像が映る。
おそらくここまでで、僕に見せる映像は終わり・・・・。
「僕になにが出来るのか?何も出来ない。けど。」
自分は非力だ。
自分は無力だ。
自分は最弱だ。
「だけれども、こんな運命は嫌だ!」
ラスプラスは直線的に動くから何とかなった。
しかし、次は魔族が相手。
なぜ、エメリアが動けなくなったか謎のまま。
「けど、このままじゃ。エメリアは殺されてしまうかもしれない。」
いいのか?エメリアが殺されてしまっても。
いいのか?エメリアが嬲られても。
「良いわけが無い!」
俺はエメリアを追いかけた。
エメリアにはお守りを渡してあった。
そこには、魔術で作った、魔力反応式のお守り。
こちらにもお守りがあって、そのお守りに魔力を流すと、エメリアが持っている対のお守りが反応して位置を教えてくれる。
と言っても、わかるのは、いる方向のみだけれども。
僕は急いで追いかける。
洞窟を駆け抜ける。
魔物にかかわっている時間は無い。
魔物の意識の隙を掻い潜り、エメリアを追いかける。
途中トロールのようなモンスター、ラスプラス、巨大な蛇みたいなモンスターに見つからないようにする。
見つかるのが一番の時間ロス。今は見つからない事を最優先すべきだ。
最速で岩陰から岩陰へ移っていく。
途中見つかった、ウサギ型のモンスターや、蜥蜴型のモンスターを気絶させ、進む。
所どころ先頭の跡が見られる。どうやらエメリアが戦闘をしながら村へ向かっているようだ。
・・・・・・・・・・・。
何時間経っただろうか。
そこには出口があった。
すぐさま出口から出る。
そこには村があった。木造の家が立ち並んで、自然と暮らしていることがすぐに分かる。
とてもいい街並みだった。村だけど。炎に包まれているけれども。
僕は周りを探した。
エメリアはどこ?
「エメリア―!!!!」
村を進むと魔族が竜人の首を切り取っている。おばさんの竜人はなす術無く殺された。
それを隠れてやり過ごす。今はエメリアだ。エメリアが最優先だ。
こっそり村中回るとそこには、魔法の糸で縛られたエメリアがいた。
ぐったりと倒れていた。
その周りには女の竜人ばかりのようで、どうやらここに集められているらしい。
生きてはいる。が・・・・・・・・・・。
間に合わなかったらしい。
尊厳を奪われた後だった。
.
それから、俺はどうしたのだろうか?
覚えていない。
気が付いたら・・・・・。
竜人は全滅していた。
そして・・・・・・・・・・・・・・・・。
魔族も全滅していた。
そういえば、奏の能力ってなんでしょうね。
mについて少し明らかになってきます。




