襲来
ベティーおばさん(レーズンパンのおばさん)再登場
詳しくは翡翠のドラゴン参照
ーエメリアー
古来から、この神聖な泉は竜人にとって神聖な場所なの。何故なら三女神様にまつわる聖地で、未来、現在、過去を見ることが出来、あらゆる厄災から一族の危機を守って来た。
最強の一族。それは間違いなく竜人。だけれど、自然災害、一族の裏切り、領主候補のすれ違い等から幾度となく壊滅する可能性があった。
そして今、この泉には、一族の危機。
最強のはずの竜人がまさかの魔族にやられている。こんな未来変えなきゃいけない!
「奏!お願い!私達の町を助けて!」
麦にもすがりたい気持ちが大きかった。奏が弱い事も知ってる。そして、何となく奏が何か誤解してここまでついて来たのは、多分気のせいじゃないと思う。けれど、今頼りになるのは奏しかいない。
「なんで?」
心臓が飛び出そうだった。
分かっていた。断られるのは。だって奏には全く関係ない事だもの。
「ごめん!奏、私急いで戻らなきゃ。今まで楽しかったよ!シャムもまた会えたらいつかまた触らせてね!じゃあ。」
私は故郷を、私の町に急いだ。
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ーベティールノー
村長さん(領主様)がエメリアを清めの儀式に出させて2週間。少し戻るのが遅く、心配が少し焦りに変わる。
大丈夫。エメリアなら大丈夫。
風魔法だって同じ位の子にだって引けを取らない。あくまでも、竜人とエメリアの成長度合いを無視すると...だけれども。普通の子が150歳位と、エメリアが15歳っていう誤差をあのエメリアは覆して見せた。
本当に良い子。でも、ちょっとおっちょこちょいだから、少し.....ほんの少し心配しているだけです。
そんな事を考えながら洗濯物を取り込んでいました。なんだか雲って来たからです。
さっき迄あんなに天気が良かったのに。
さて、全部取り込めたわ!
そろそろエメリアも帰って来る頃かしら。またレーズンパンを焼いておこうかしらね!あれエメリアの大好物なのだから。
私はそのまま家に入ろうとしました。すてん!
けれど、家の段差で躓いてしまったわ!あ、洗濯物が!やり直しだわ!ああ、年は取りたくないわね!もう580を越えた辺りから数えてないわ。
盛大にぶちまけてしまった洗濯物を直そうと思って、立ち上がろうとします。が。
「あ、あれ?立ち上がれない。」
体が重く、動けませんでした。まるで誰かが背中に乗って居るような。でも、誰も上に乗っていたりしません。
助けを求めようと周りを見ると、他の人たちも自分と同じ様に倒れていました。
そして遠くで爆発が起きました。
何事かと必死にそちらに顔を向けると、空に大量の靄が掛かっており、そこから爆発魔法の様な物が落ちてきました。
視力を強化してみると....。
あれは魔族?何故魔族がこんな所に?その時、頭の中に声が響く。
『皆のもの、村長じゃ!村を守る戦士達が数日前、半数程遠征に出ている状態じゃが、町の守りは強固であった。じゃが、この体たらく。町にはどうやら麻痺の霧が掛かっておる。息をせず、逃げ仰せよ!あの洞窟に逃げるのじゃ。戦える者は全線で戦っておるが、あの数じゃ!何人かは抜けられるじゃろう!どうにか生きながらえておくれ!』
『一番隊伝令士レイシです。一番隊が戻って来ます。それまで持ちこたえてくだ.......。』
『村長じゃ!レイシ!どうしたのじゃ!レイシ!』
それ以来声が聞こえなくなってしまったわ!
村長さんの言う通り逃げたいけれど、逃げられそうにありません。
魔力も使えない状態。恐らく村長さんが逃げる一手を指示したのは、魔力が使えなくなるから。
ブレスも魔法だから使えなくなるわ。そうなると、体術での戦闘だけれども、麻痺していては、ただ、事を見守るしかない。
この場にエメリアがいなくて良かった。あの子の母親のアリアはどうにか逃がしたいけれど、とにかくエメリアだけでも生きていてくれたら。
「若い娘だけ奪え!後皆殺しにしろ!」
「うぇーい!やっちまって良いんですかい?お頭!」
「殺す方はな!」
こっちに飛んで来る。
「は!は!は!本当に麻痺が効いてやがる!先ずはあのババアから!しね!」
あの子の帰りが遅くてよかった!ああ!どうかエメリアが幸せになってくれたら。三女神様!どうかあの子には祝福を。
しゅぱっ!
首が飛んだ。
鋭い刃が首を跳ねた。
. .
魔族の首が空中を舞う。
「え?」
一瞬何が起きたのか分からなかった。
「ベティーおば様!」
「え、エメリア?!」
幻覚かとも思った。けれど、間違いなくエメリアだった。
「あ、ああ!エメリア!無事だったの?でもここは危険!早く洞窟にお逃げなさい!」
早くしないと!この霧で体が動かなくなるから。
「ベティーおばさん!もう体が動くんじゃない?」
「へ?」
この麻痺の霧で動かないはず....。
「あ、あれ?動く!エメリア!」
私は泣き崩れてしまった。孫のいない私はエメリアが唯一の孫の様なもの。
弱みは見せたく無かったけれども。強くなったエメリアをぎゅっと抱き締める。
「おば様痛いです!痛い!」
「ああ!エメリアよかった!」
私はエメリアを離すと。
「エメリア!早く逃げましょう!助けられる人達を連れて早く!」
「ええ!おば様お願いします!私は行かなければ。」
「行くってどこへ?まさか!」
「あの魔族をどうにかして来ます。だから皆はどうか逃げて!」
「駄目よ!あなたも逃げるの!」
「大丈夫!何とかなるわ!だって....。」
「強力なスケット呼んできたから。」
近くに小柄な少年が立つ。
その少年は一言で言えば不気味だった。あの少年からは、何も感じない。強さという言葉とは正反対。
けれど、何か得体の知れない何かで私をこの霧から守っているのは事実です。そして、抱えた厄災の魔物を抱えているのはどう考えても異常。
見るだけで動けなくなる呪いを放つ獣をさぞペットの様な感覚で従えているなんて。狂気の沙汰じゃない。
でも、この窮地を救ってもらったのは事実。
そんなこんな頭がパニックになっていると。
「奏!治療は終わった?」
「この村全域に麻痺解除、状態異常無効付けといた。これで皆動けるよ。」
麻痺解除は良いとして、状態異常無効?そしてこの町全域に?そんなバカな!
でも実際、あっちこっちから、家族達が逃げていく。
そうさっき迄動けなかったお隣さんまで。
「じゃあ!いってくるわ!ベティーおばさん!」
「あ!ちょっとエメリア!」
二人と一匹は駆けていく。まるで別人の様に強くなった孫と怪しい人間族と共に。
ああ!三女神様!あの子にご加護を!
この祈りが後に現実となり、事態が変な方向に転がるとも知らず。
レーズンパンのおばさん
ベティールノ
雷魔法が得意。実は意外と強い。
けど、前戦を退いてからは、弱気思考が強く、弱者の立場に居る。
エメリアの叔母に当たる。けれど、竜人にとって人とは違い、子供が少ない為、結構子供は重宝される。
竜人は10年で人間で言う一歳になる。
しかしエメリアは竜人と人とのハーフ故に人と同じ成長をする。10か月経って立ち始めた時、皆驚いたという。
次回町防衛戦。一週間後の更新となりそうです。
奏君は町を村だと思っているみたい。




