黒猫シャムール
冒険にはペットがつきもの
ー奏ー
「よし、今夜はここで寝よう。疲れました。」
「んー、そうね。水浴びはしたかったけれど無理そうだし....。ご飯食べてねましょうか。」
エメリアの許可ももらったし、早速料理を始める。今回はエメリアは完全に傍観を決め込んでいる。どうやら料理スキルでは負けを認めたらしい。
女の子なのに....と一瞬思ってしまったが、逆に男が出来る方がモテるのでいいかー!とか思ってしまう。
「さて、これで終了!っと。」
「わー!美味しそう!でも、このお肉はもう飽きたわ。贅沢は言わないけど。仕方ないけれど。」
「確かに5日同じもの食べてればね。でも、これでラスプラスのお肉も底をついたから、明日からは、今日捕まえたビッタの肉を使おう。」
ビッタとはウサギの形をしたモンスター。ただし角と翼さえ生えていなければ。その卓越した脚力と角による突進。翼により地面付近を滑空するように迫って来る。
それをギリギリかわしつつすれ違いざまに攻撃して何とか倒した。ちなみに僕は一匹、エメリアは4匹倒していた。
「ご馳走さまです!ふー!疲れた!毛布毛布。がさごそ。」
「お粗末様です。さて、寝る準備を....。」
「ふふ!普通見張りが要るのに奏は凄いスキル持っているわね。」
「スキルというか特技というか....。」
実は旅では当たり前の見張りで、どちらかが寝ている時にどちらかが起きていなければならないという問題は無い。
何故なら、このダンジョン、音が反響しやすく、モンスターが近づくと音がする。また、俺は音に敏感で、直ぐに音で飛び起きる。故に二人とも寝てても起きれるから問題は無い。
あれ?ビッタ飛ぶんじゃなかったっけ?と思うかも知れないけれど、実は敵に飛びかかる時だけ翼を使うけれど、普段はジャンプで移動している。また、飛んでも5m位しかならないから、着地したら直ぐにわかる。それだけじゃないんだけれどね。
さて、エメリアも寝てしまったし、早速寝ますか。
zzzz
.................
黒い影がゆっくりと近づくのに気がついたのは、1m迄接近を許してからだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
ーシャムールー
我輩は猫である。
何?分かりにくい?であれば......
我輩はイケメンである。
どうだ。分かりやすいであろう?
何?もっと分かりにくい?うーむ。
我輩はアサシンである。
このダンジョンにむざむざ寝ている生き物を狩り殺すアサシンである。
昨日は巨大な熊も仕留めた。この音がなりやすい場所でも、一切音を出さず、仕留める。最高のアサシンである。
ちなみにほぼ最下層に要るのに何故ここに要るのか。それは獲物であれば何でも良いからな。
別に帰り道を迷っているとかではない。決してない。はいそこー。疑わない。ダウト?なにそれ?暇潰せるの?
今日の獲物は....あの寝息を立てている猿.......じゃない!人間?!?何故こんなところに。あ!隣に竜人がいる。なるほど、泉の水飲みに行く竜なのだな!
竜人は大抵仕留めようとしても、皮膚が鱗になっているので一撃で仕留めることは無い。その為手を出さないけど、あのメスは鱗がない。仕留めることが出来そうだ。
隣の人間は.....なに?赤ん坊レベルの貧弱さ!
あやつが起きていても何とかなる。
仕留めるなら先にメスの方が先決。
そうと決まれば暗殺決行!こんなところにボーナスが落ちているとは!ぐふふ!ぐふふふふ!
そーっと近づく。まずは音もなく近づく。片方が気がついたら、どちらも起きると思って間違いない。故にどちらにも気づかれない.....よう........にく!
人間の足元に一口大の肉の塊が。恐らくあのウサギの肉であろう。
だが何故人間の足元に?旨そう!気にするな!暗殺が先だ。速く食べたい。暗殺すれば全て食べられる。先に食べても問題無いのでは?気づかれる可能性が。逃げられたらどちらも食べられない!
うーむ!だが我輩はアサシン。1秒にも満たない葛藤を経て、メスの首もとを見る。気づかれないように、狩りを優先...出来なかった。
気づかれぬように、肉を咥えすぐさま飲み込む。音もなく。気がつかれないように。
なでなで。
気づかれた場合、逃げられるか襲われるかどちらかだ。
口元の肉塊を頬張る。 ナデナデナデ。
気づかれたら、猫の振りをしよう。このようにナデナデしてくれるかも知れない。
ナデナデナデさわさわ!
このように気持ちが良いかもしれ........。
「..................................................。」
「.........................?」
「にぎゃぎゃにぎゃーーーーーーーーー!」
「し!静かに!エメリア起きちゃう!」
「に、人間!何故我の事に気がついた!って言葉通じないよな.....。」
「ふふん。実は音以外にも気配とマナの動きで直ぐに分かる。」
「な!我の言うこと分かるのか?」
「喋る猫とか流石ふあんたずぃー!」
「ど、どういう奴にゃ!何者だ!人間!」
「奏って言うんだ。宜しくね?」
「..................................................。なに?」
何故だ!我輩は厄災の魔物。本当の名前を知ると、相手を即呪い殺せる。が、目の前のかなで?は呪った直ぐに呪いが解除される。
「ふしゃーーー!」
ならば、首を切り裂き、我輩の飯にしてくれよう!
そう思い飛びかかる。が、気がつくと地面に這いつくばっていた。
体を抑えつけられている。首の付け根付近を手で抑えられている。
ステータスにおおよその感じでは有るが、全く負ける道理が無い。が、実際奏の手中。もう訳が分からない。
「よし、この子をペットにしよう!」
数分前にボーナスとか考えてた自分を呪いたい。
その後、竜人のメスに飛び掛からなかった自分を誉めておきたい。
あのまま飛びかったら恐らく命が無かったかも知れない。
目の前の人間のオスはそれほどに未知であった。
シャムール
職業:アサシン
Lv:64
HP:820
At:4820
Gp:250
Ma:560
Mg:220
Sp:2420
スキル:暗殺Lv:8
アビリティー『シャドーアサシン』